捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編   作:ローリング・ビートル

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明日への扉 #19

 さて、高海の奴は問題は解決したのだろうか……いや、俺が考えても仕方のないことだが。しかし……。

 あれから高海とは顔を合わせていない。

 これまでがエンカウント率高過ぎたといえばそれまでだが。

 帰り道、そんなことを考えながら歩いていると……あ、いた。

 前を歩く彼女は、何かの材料を両手に抱え、よたよたと歩いていた。

 ……まあ、これも何かの縁か。

 小走りで彼女の隣に駆け寄ると、すぐにこちらに気づき、笑顔を向けてきた。 

 

「あ、こんにちは」

「……ほれ」

「ふぇ?あ、ありがとうございます!」

 

 小町にする時と同じように、さりげなく荷物を持つと、高海は驚きながらも頭を下げてきた。てか、これ、案外重い……。

 

「何の材料なんだ?」

「ランタンです」

「ランタン?なんかイベントがあるのか?」

「えっと、普通は海開きで使うんですけど、今回ちょっとした演出に使いたくて、余分に必要になっちゃって」

「そっか……作り方教えてくれると助かるんだが……」

「え?それって……」

「とりあえず応援するって言ったからな。それに、今回もなんかパフォーマンスするんじゃねえの?」

「さすが比企谷さん!そんなに待ちわびてくれてるんですね!?」

「いや、違うから。テキトーに言っただけだから」

 

 なんでそんな目をキラキラさせてんの?あと顔近い。

 

 ******* 

 

 当日。

 不思議と目覚ましが鳴るより先に目覚めた俺は、さっさと用意を済ませると、まだ薄暗い砂浜へと足を踏み入れた。

 真っ暗な海はどこまでも広く、ついぼんやり見入ってしまいそうになる。

 もう既に沢山の人が集まっており、それぞれごみ拾いを始めている。その中に小町も混じっていた。もうすっかり溶け込んでんな。

 そして、その近くにいるのはAqoursのメンバー。

 最近本当によく見慣れた奴が、偶然だろうけど、すぐこちらに気づき、ひらひらと手を振ってきた。

 それに軽く手を挙げて応えると、いきなり背後から首をホールドされた。これはもしや……

 

「おっす、比企谷君!」

「おはよう」

「……おはようございます」

 

 やはり高海姉妹だった。俺の場合、こういう事をしてくる人間が限られているのでわかりやすい。

 

「いや~、えらいね~。比企谷君が遅刻せずにきちんと出てくるなんて」

「え、まあ、その……暇だったんで」

「またまた~、この前もウチの座敷で千歌の手伝いしてくれてたじゃん。何度か覗いたけど、黙々と作業してたし」

 

 何度も覗いてんじゃねえよ。

 

「いつもありがとう。千歌も喜んでたよ」

「そうすか」

 

 当の本人は何故かさっきの笑顔から一転、こちらを睨んでいるんですけど……。

 

 *******

 

 その日の夜、商店街近くの特設ステージにて、Aqoursのライブが開催された。

 以前のライブと違い、今回は最初から人だかりができている。

 彼女達の

 後方で……しかし、彼女達の姿がしっかり見える位置でライブ鑑賞していると、ステージ脇にランタンのほのかな明かりで文字が作られる。

 

『Aqours』

 

 それは彼女達のグループ名。

 町の人達の協力もあり作られた特別な演出。

 今日、そこに加われた事が何故か割と嬉しかった。

 

 *******

 

 ライブ終了後、一人で余韻に浸り、ランタンが彩る通りを眺めていると、隣に誰かが並んでくる気配がした。

 目を向けると、やはり高海だった。ライブの時に付けていた髪飾りを付けたままの彼女は、清々しい表情で行き交う人々を眺めていた。

 二人してそうしていると、思ったより近かったせいか、手の甲が微かに触れ合う。

 

「あ、ごめんなさい!」

「い、いや、こちらこそ……」

「…………」

「…………」

 

 しばしの沈黙。

 このまま気まずくなるのかと思いきや、高海の方から吹き出し、空気が和む。

 

「あははっ、ねえ、比企谷さん!どうですか、内浦は?」

「……まあ、来てよかったと思うよ」

 

 俺の言葉に、高海はにっこりと笑った。

 

「じゃあ、次はここが一番って言わせてみせます!!」

「いや、それは無理だ。俺の千葉愛なめんなよ」

「むむっ……あ、そうだ!あっちから見ると、すっごい綺麗なんですよっ、ぜひ観に行きましょう!」

「うおっ!ちょっ……はや……」

 

 いきなり手を掴まれ、無理矢理走らされるが、不思議と嫌な気持ちはしない。なんかどっかから鋭い視線は感じるが。

 そんな賑やかさにまぎれて、乱暴に繋がれた手も、これまで感じた事のない胸の高鳴りを生んでいた。

 

 

 

 

 

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