捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編 作:ローリング・ビートル
さて、高海の奴は問題は解決したのだろうか……いや、俺が考えても仕方のないことだが。しかし……。
あれから高海とは顔を合わせていない。
これまでがエンカウント率高過ぎたといえばそれまでだが。
帰り道、そんなことを考えながら歩いていると……あ、いた。
前を歩く彼女は、何かの材料を両手に抱え、よたよたと歩いていた。
……まあ、これも何かの縁か。
小走りで彼女の隣に駆け寄ると、すぐにこちらに気づき、笑顔を向けてきた。
「あ、こんにちは」
「……ほれ」
「ふぇ?あ、ありがとうございます!」
小町にする時と同じように、さりげなく荷物を持つと、高海は驚きながらも頭を下げてきた。てか、これ、案外重い……。
「何の材料なんだ?」
「ランタンです」
「ランタン?なんかイベントがあるのか?」
「えっと、普通は海開きで使うんですけど、今回ちょっとした演出に使いたくて、余分に必要になっちゃって」
「そっか……作り方教えてくれると助かるんだが……」
「え?それって……」
「とりあえず応援するって言ったからな。それに、今回もなんかパフォーマンスするんじゃねえの?」
「さすが比企谷さん!そんなに待ちわびてくれてるんですね!?」
「いや、違うから。テキトーに言っただけだから」
なんでそんな目をキラキラさせてんの?あと顔近い。
*******
当日。
不思議と目覚ましが鳴るより先に目覚めた俺は、さっさと用意を済ませると、まだ薄暗い砂浜へと足を踏み入れた。
真っ暗な海はどこまでも広く、ついぼんやり見入ってしまいそうになる。
もう既に沢山の人が集まっており、それぞれごみ拾いを始めている。その中に小町も混じっていた。もうすっかり溶け込んでんな。
そして、その近くにいるのはAqoursのメンバー。
最近本当によく見慣れた奴が、偶然だろうけど、すぐこちらに気づき、ひらひらと手を振ってきた。
それに軽く手を挙げて応えると、いきなり背後から首をホールドされた。これはもしや……
「おっす、比企谷君!」
「おはよう」
「……おはようございます」
やはり高海姉妹だった。俺の場合、こういう事をしてくる人間が限られているのでわかりやすい。
「いや~、えらいね~。比企谷君が遅刻せずにきちんと出てくるなんて」
「え、まあ、その……暇だったんで」
「またまた~、この前もウチの座敷で千歌の手伝いしてくれてたじゃん。何度か覗いたけど、黙々と作業してたし」
何度も覗いてんじゃねえよ。
「いつもありがとう。千歌も喜んでたよ」
「そうすか」
当の本人は何故かさっきの笑顔から一転、こちらを睨んでいるんですけど……。
*******
その日の夜、商店街近くの特設ステージにて、Aqoursのライブが開催された。
以前のライブと違い、今回は最初から人だかりができている。
彼女達の
後方で……しかし、彼女達の姿がしっかり見える位置でライブ鑑賞していると、ステージ脇にランタンのほのかな明かりで文字が作られる。
『Aqours』
それは彼女達のグループ名。
町の人達の協力もあり作られた特別な演出。
今日、そこに加われた事が何故か割と嬉しかった。
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ライブ終了後、一人で余韻に浸り、ランタンが彩る通りを眺めていると、隣に誰かが並んでくる気配がした。
目を向けると、やはり高海だった。ライブの時に付けていた髪飾りを付けたままの彼女は、清々しい表情で行き交う人々を眺めていた。
二人してそうしていると、思ったより近かったせいか、手の甲が微かに触れ合う。
「あ、ごめんなさい!」
「い、いや、こちらこそ……」
「…………」
「…………」
しばしの沈黙。
このまま気まずくなるのかと思いきや、高海の方から吹き出し、空気が和む。
「あははっ、ねえ、比企谷さん!どうですか、内浦は?」
「……まあ、来てよかったと思うよ」
俺の言葉に、高海はにっこりと笑った。
「じゃあ、次はここが一番って言わせてみせます!!」
「いや、それは無理だ。俺の千葉愛なめんなよ」
「むむっ……あ、そうだ!あっちから見ると、すっごい綺麗なんですよっ、ぜひ観に行きましょう!」
「うおっ!ちょっ……はや……」
いきなり手を掴まれ、無理矢理走らされるが、不思議と嫌な気持ちはしない。なんかどっかから鋭い視線は感じるが。
そんな賑やかさにまぎれて、乱暴に繋がれた手も、これまで感じた事のない胸の高鳴りを生んでいた。