捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編 作:ローリング・ビートル
「比企谷さん!東京ですよ!東京!」
「お、おう……」
一瞬作品が変わったのかと思い、焦ったが、目の前にいるのは、Aqoursのリーダー・高海千歌だ。彼女はやたら興奮気味に、距離をぐいぐいと詰めてくる。朝っぱらから発情期ですか、このやろう。
「それで……東京がどうしたんだ?スカイツリーにでも行きたくなったのか?」
「わぁ♪確かに行ってみたいなぁ……って、そういう話じゃなくて!今度行くことになったんですよ」
「へえ……旅行でもすんのか」
「いえ、スクールアイドルのイベントに招待されたんです!この前の動画、結構再生数伸びてて……それで、イベントに出てみないかって」
「……そっか。あの動画が……」
まあ、確かに演出も良かったし、見応えもあった。
しかし、東京に呼ばれるまで話題になっていたとは……すげえな。
「比企谷さんは東京行ったことあるんですか?」
「まあ、千葉住んでたし、一応な。あれ、最後に行ったのいつだっけ?まあ、あれだ。電車乗り間違えないようにな」
「ふっふっふ……その心配は無用です!何故ならウチには東京から来た梨子ちゃんがいるから!!」
「お、おう、そうか……」
何故そこまでドヤ顔できるかわからんが、まあいい。迷子になる心配は少なそうだ。
すると、遠くを見つめるような瞳で、高海がぽつりと呟いた。
「あーあ、比企谷さんにも東京でのライブ観て欲しいなぁ」
「まあ、気が向いたらネットで観とく」
「え~!?そこは絶対に観るじゃないんですか~!?Aqoursファンクラブ会長なのに!」
「勝手な肩書きつけないようにね……」
しかも会長って……なんか役職についてるし。
高海は頬を膨らませていたが、やがて笑顔に戻り、こちらの顔を覗き込んできた。
「でも、比企谷さんって何だかんだ観てくれるんですよね。いつもありがとうございます」
「……いや、別に礼を言われることでもないんだが」
「また……旅館の掃除も手伝いに来てくださいね」
「おい」
え、何?今の話題転換。さりげなさすぎてびっくりしてるんだけど。
「だって、志摩姉と美渡姉がまた手伝ってもらいたいって言ってましたもん」
「マジかよ……」
あの二人、実は俺の事好きなんじゃねえの?そうか、これがモテ期か。違うだろうけど。
「よしっ、今日も練習頑張ろっと!この調子で廃校阻止しなきゃ!あ、比企谷さんも早く早く!バスに乗り遅れちゃいますよ!」
「へいへい……ん?」
今、すごい単語が混ざってなかったか?
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「ん?統廃合のこと?そだよ。まだ確定じゃないけど」
「マジか……」
「お兄ちゃん、この前晩御飯の時話そうとしたら、眠いって部屋に戻ったじゃん」
「…………」
そういやそんな日あったな。親父と母ちゃんがいる時に「今日学校で話があったんだけどー」って言ってたから、まあ普通の学校生活の事だろうと思い、聞かなかったな。
「でも、どしたの?いきなり」
「ん?ああ、いや、何でも……」
「そっかぁ、千歌さんかぁ」
「小町ちゃん。勝手な妄想しないようにね」
「だって二人仲良いじゃん」
「いや、仲良いとかそういうんじゃ……偶然家が近いだけだろ」
「偶然家が近いだけの男子に普通は家の片付け頼まないよ。興味のない人にプライベートな空間に入ってほしくないし」
「……そういうもんか」
過去の事を思い出してみると……いや、やめておこう。わざわざトラウマを掘り返す必要もない。
「とにかく!お義姉ちゃん候補……じゃなくて、ご近所さんと仲良くできてるのはいいことだよ!ほら、千葉にいた時はそんなのなかったし!」
「え?そうだったっけ?」
小町に古傷を抉られながら、俺は東京に行く高海の事を、ほんの少し考えた。
……あいつ、本当に迷子になったりしないよな?
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「……くしゅんっ!!」
「あら、千歌ちゃん大丈夫?」
「比企谷君が噂してんじゃないの?」
「ふぇ!?……な、何言ってんの!?美渡姉のバカっ!」