捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編 作:ローリング・ビートル
それから数日後、俺は高海達が出演したスクールアイドルのイベントの生中継をパソコンで見ていた。
だが、この前のイベントの時みたいに、楽しむだけではいられなかった。
「…………」
別にAqoursが他のスクールアイドルと比べて、特別劣ってるとは思わない。そもそも素人の俺には専門的な事など一切わからない。
だが、他の参加グループとAqoursには、言葉では上手く言い表せない『壁』みたいかものを確かに感じた。
……あいつ、大丈夫だろうか。
頭の中で何故か真っ先に高海の顔が浮かんだ。
*******
「千歌ちゃん……大丈夫?」
「…………」
「千歌ちゃん?」
「えっ?あ、ごめんごめん!大丈夫だよ!ほら、せっかくこんなおっきな会場でステージに立てたんだもん!それだけでもう満足だよ!」
「千歌ちゃん……」
「ほら、曜ちゃんもはやく行かないと。せっかく東京来たんだから楽しまなきゃ!」
「う、うん……」
私は嘘をついた。
気にしてないわけがない。
自分達が今日最下位の評価だったなんて……。
「……悔しい」
小さすぎる呟きは誰にも聞かれることはなかった。聞かれなくてよかった。
……もし、比企谷さんが聞いてたら何て言ったのかな。「まあ、仕方ない」みたいな事言うのかな……。
何故か比企谷さんの無愛想な顔を思い出していた。
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高海達が東京から帰ってくる時間を、小町が意味深な笑みと共に伝えてきた。
いや、俺が出迎えてどうするんだよ。間違いなく「何でお前が?」みたいな目で見られるただの勘違い野郎じゃねえか。
とはいえ、行かないとあれこれ言われそうなので、顔見せだけすることにした。
そして駅に到着すると、既に女子が10人くらい待ち構えていた。
……こりゃあ俺の出る幕はないな。
そう結論づけて、こっそり立ち去ろうとすると、Aqoursのメンバーが出てきた。
すぐに高海を見つけることができたのは、最近見慣れているからだろうか。ちょうど目が合い、かといって周りに人がいるせいか、どう反応していいかわからず、どちらからともなく頭を下げる。
とりあえず……今日は帰るか。
そう考えてから、踵を返し、角を曲がると、背後から声をかけられた。
声だけで誰だかわかったので、ゆっくり振り向くと、慌てて走ってきたのか、少し息が荒い高海がいた。
「……おう」
「えっと……あの……見かけたからつい……」
「そっか」
夕陽に照らされた彼女の笑顔は、どこか疲れて渇いているように見えた。
だが、どう声をかけていいかわからず、俺はウエストポーチをあさり、目的の品を取り出した。
「高海」
「はい?」
マッ缶を一つ彼女に手渡すと、きょとんとした瞳がこっちを向いた。
「あ、これ……いいんですか?」
「たまたま離れたとこにあるスーパーに置いてあったからな。まあ、何つーか……お疲れ」
「……はい……」
「……戻らなくていいのか?」
「あっ、そうだった!じゃあ、失礼しますね、これ、ありがとうございました!」
「おう」
駆け出した彼女の背中はすぐに見えなくなり、その空白をしばらく見つめてから、俺は再び歩き始めた。
*******
「あ、お兄ちゃんおかえりー。千歌さんには会えた?」
「……まあ、ちょっとだけ。結構出迎えに来てる奴多かったし」
「そっかぁ」
小町と少しだけやりとりをして、部屋に戻ると、急にさっきの高海の笑顔を思い出した。
もし何か声をかけていれば、少しはあの笑顔が明るくなったのだろうか。
いや、そんな考え自体傲慢なのかもしれない。
だが、その日はずっとあの笑顔が脳内での片隅に浮かんでいた。