捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編   作:ローリング・ビートル

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明日への扉 #21

 それから数日後、俺は高海達が出演したスクールアイドルのイベントの生中継をパソコンで見ていた。

 だが、この前のイベントの時みたいに、楽しむだけではいられなかった。

 

「…………」

 

 別にAqoursが他のスクールアイドルと比べて、特別劣ってるとは思わない。そもそも素人の俺には専門的な事など一切わからない。

 だが、他の参加グループとAqoursには、言葉では上手く言い表せない『壁』みたいかものを確かに感じた。

 ……あいつ、大丈夫だろうか。

 頭の中で何故か真っ先に高海の顔が浮かんだ。

 

 ******* 

 

「千歌ちゃん……大丈夫?」

「…………」

「千歌ちゃん?」

「えっ?あ、ごめんごめん!大丈夫だよ!ほら、せっかくこんなおっきな会場でステージに立てたんだもん!それだけでもう満足だよ!」

「千歌ちゃん……」

「ほら、曜ちゃんもはやく行かないと。せっかく東京来たんだから楽しまなきゃ!」

「う、うん……」

 

 私は嘘をついた。

 気にしてないわけがない。

 自分達が今日最下位の評価だったなんて……。

 

「……悔しい」

 

 小さすぎる呟きは誰にも聞かれることはなかった。聞かれなくてよかった。

 ……もし、比企谷さんが聞いてたら何て言ったのかな。「まあ、仕方ない」みたいな事言うのかな……。

 何故か比企谷さんの無愛想な顔を思い出していた。

 

 *******

 

 高海達が東京から帰ってくる時間を、小町が意味深な笑みと共に伝えてきた。

 いや、俺が出迎えてどうするんだよ。間違いなく「何でお前が?」みたいな目で見られるただの勘違い野郎じゃねえか。

 とはいえ、行かないとあれこれ言われそうなので、顔見せだけすることにした。

 そして駅に到着すると、既に女子が10人くらい待ち構えていた。

 ……こりゃあ俺の出る幕はないな。

 そう結論づけて、こっそり立ち去ろうとすると、Aqoursのメンバーが出てきた。

 すぐに高海を見つけることができたのは、最近見慣れているからだろうか。ちょうど目が合い、かといって周りに人がいるせいか、どう反応していいかわからず、どちらからともなく頭を下げる。

 とりあえず……今日は帰るか。

 そう考えてから、踵を返し、角を曲がると、背後から声をかけられた。

 声だけで誰だかわかったので、ゆっくり振り向くと、慌てて走ってきたのか、少し息が荒い高海がいた。

 

「……おう」

「えっと……あの……見かけたからつい……」

「そっか」

 

 夕陽に照らされた彼女の笑顔は、どこか疲れて渇いているように見えた。

 だが、どう声をかけていいかわからず、俺はウエストポーチをあさり、目的の品を取り出した。

 

「高海」

「はい?」

 

 マッ缶を一つ彼女に手渡すと、きょとんとした瞳がこっちを向いた。

 

「あ、これ……いいんですか?」

「たまたま離れたとこにあるスーパーに置いてあったからな。まあ、何つーか……お疲れ」

「……はい……」

「……戻らなくていいのか?」

「あっ、そうだった!じゃあ、失礼しますね、これ、ありがとうございました!」

「おう」

 

 駆け出した彼女の背中はすぐに見えなくなり、その空白をしばらく見つめてから、俺は再び歩き始めた。

 

 *******

 

「あ、お兄ちゃんおかえりー。千歌さんには会えた?」

「……まあ、ちょっとだけ。結構出迎えに来てる奴多かったし」

「そっかぁ」

 

 小町と少しだけやりとりをして、部屋に戻ると、急にさっきの高海の笑顔を思い出した。

 もし何か声をかけていれば、少しはあの笑顔が明るくなったのだろうか。

 いや、そんな考え自体傲慢なのかもしれない。

 だが、その日はずっとあの笑顔が脳内での片隅に浮かんでいた。

 

 

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