捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編 作:ローリング・ビートル
夜、俺は携帯を前に悩んでいた。
画面には数時間前に会ったばかりの高海の名前が表示されている。
これは出過ぎた真似じゃなかろうか。
そもそも俺がやるべきなのだろうか。
つーか、俺がやったところで……。
……いや、こんな風に考えても仕方ないことはもうわかってる。悪い癖だ。
一旦深呼吸をしてから、ゆっくりと指を動かし、通話ボタンを押してみた。
「…………」
8回ほど呼び出し音が鳴ったが誰も出ない。
そのまま電話を切ると、空しい沈黙が訪れた。
「出ないのかよ」
何だかほっとしたような……肩透かしを喰らったような気持ちだ。
だらしなく寝転がり、天井を見上げると、少しずつ気分が落ち着いてくる。
あれこれ考えるより先に、いつのまにか眠りについていた。
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翌朝。俺は早くに家を出た。
もしかしたら会えるかもしれない……とか考えたわけではない。
やたらとはやく目が覚めたので、気まぐれで散歩しているだけだ。
まだ薄暗い道を、波音をBGMにゆっくり歩くと、それだけで癒されていく。
だが、すぐに彼女の顔が浮かんできた。
……やっぱ気にしてんじゃねえか。
すると、砂浜を歩く人影が目に入る。
のろのろと海へ進む一つの影。
間違いない。あれは……
「……高海?」
まさか、あいつ……!
嫌な想像がよぎるより先に、俺は慌てて駆け出した。
同時に視界に見覚えのある少女が飛び込んできた。
あれは桜内か……いや、今はそれより……!
海面に足を踏み入れ、高海が見えなくなった辺りで潜ろうとすると、近くから彼女が跳ね上がった。
「ぷはぁっ……あれ?二人ともどうしたの?」
「千歌ちゃん……」
「…………」
あっさり現れた彼女に、俺も桜内もぽかんとしてしまう。
だが、彼女はそれに構わず、真っ直ぐな瞳で桜内に話しかける。
「梨子ちゃん!やっぱり私悔しいよ!こんなんじゃやだ!リベンジしたい!」
「……そっか。わかったわ。私だって悔しいもの」
「…………」
よくわからんが、何やら解決したらしい。
あとは若い二人で……みたいな気分でその場を離れようとすると、高海の視線がこちらに向いた。
「そういえば、比企谷さん。どうしたんですか?こんな朝早くに……」
「……いや、別に」
「千歌ちゃんが心配で来てくれたんですよね?」
「…………いや、別に」
「違うんですか?」
そんなまっすぐ見るんじゃねえよ。特に上手いことは言えねえよ。
俺は首筋に手を当て、踵を返した。
「……まあ、あれだ。一応応援してるからな。元気そうならよかった。じゃあな」
「あ、待ってください!」
「?」
「えいっ」
いきなり水をかけられた。
高海の表情はわかりづらいが、何故か笑っている気がした。
「おまっ……いきなり……」
「えいっ!えいっ!…………う」
「?……なんか言ったか?」
「何も言ってないです!えいっ!」
やたら嬉しそうで、それでいて容赦ない水かけ攻撃はその後もしばらく続いた。
のんびりと散歩をするつもりが、予定よりかなり賑やかな早朝。
こんな朝は初めてかもしれない。
気づけば朝日が現れていた。