捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編   作:ローリング・ビートル

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明日への扉 #22

 夜、俺は携帯を前に悩んでいた。

 画面には数時間前に会ったばかりの高海の名前が表示されている。

 これは出過ぎた真似じゃなかろうか。

 そもそも俺がやるべきなのだろうか。

 つーか、俺がやったところで……。

 ……いや、こんな風に考えても仕方ないことはもうわかってる。悪い癖だ。

 一旦深呼吸をしてから、ゆっくりと指を動かし、通話ボタンを押してみた。

 

「…………」

 

 8回ほど呼び出し音が鳴ったが誰も出ない。

 そのまま電話を切ると、空しい沈黙が訪れた。

 

「出ないのかよ」

 

 何だかほっとしたような……肩透かしを喰らったような気持ちだ。

 だらしなく寝転がり、天井を見上げると、少しずつ気分が落ち着いてくる。

 あれこれ考えるより先に、いつのまにか眠りについていた。

 

 ********

 

 翌朝。俺は早くに家を出た。

 もしかしたら会えるかもしれない……とか考えたわけではない。

 やたらとはやく目が覚めたので、気まぐれで散歩しているだけだ。

 まだ薄暗い道を、波音をBGMにゆっくり歩くと、それだけで癒されていく。

 だが、すぐに彼女の顔が浮かんできた。

 ……やっぱ気にしてんじゃねえか。

 すると、砂浜を歩く人影が目に入る。

 のろのろと海へ進む一つの影。

 間違いない。あれは……

 

「……高海?」

 

 まさか、あいつ……!

 嫌な想像がよぎるより先に、俺は慌てて駆け出した。

 同時に視界に見覚えのある少女が飛び込んできた。

 あれは桜内か……いや、今はそれより……!

 海面に足を踏み入れ、高海が見えなくなった辺りで潜ろうとすると、近くから彼女が跳ね上がった。

 

「ぷはぁっ……あれ?二人ともどうしたの?」

「千歌ちゃん……」

「…………」

 

 あっさり現れた彼女に、俺も桜内もぽかんとしてしまう。

 だが、彼女はそれに構わず、真っ直ぐな瞳で桜内に話しかける。

 

「梨子ちゃん!やっぱり私悔しいよ!こんなんじゃやだ!リベンジしたい!」

「……そっか。わかったわ。私だって悔しいもの」

「…………」

 

 よくわからんが、何やら解決したらしい。

 あとは若い二人で……みたいな気分でその場を離れようとすると、高海の視線がこちらに向いた。

 

「そういえば、比企谷さん。どうしたんですか?こんな朝早くに……」

「……いや、別に」

「千歌ちゃんが心配で来てくれたんですよね?」

「…………いや、別に」

「違うんですか?」

 

 そんなまっすぐ見るんじゃねえよ。特に上手いことは言えねえよ。

 俺は首筋に手を当て、踵を返した。

 

「……まあ、あれだ。一応応援してるからな。元気そうならよかった。じゃあな」

「あ、待ってください!」

「?」

「えいっ」

 

 いきなり水をかけられた。

 高海の表情はわかりづらいが、何故か笑っている気がした。

 

「おまっ……いきなり……」

「えいっ!えいっ!…………う」

「?……なんか言ったか?」

「何も言ってないです!えいっ!」

 

 やたら嬉しそうで、それでいて容赦ない水かけ攻撃はその後もしばらく続いた。

 のんびりと散歩をするつもりが、予定よりかなり賑やかな早朝。

 こんな朝は初めてかもしれない。

 気づけば朝日が現れていた。

 

 

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