捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編   作:ローリング・ビートル

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明日への扉 #26

 

 その日の夜、勉強のリフレッシュも兼ねて一人で砂浜を眺めていると、背後から足音が聞こえてきた。

 何故かそのリズムで誰が来たのかは想像がつき、俺はそのままでいた。

 

「だーれだ?」

「⋯⋯高海」

「すっごーい!よくわかりましたね!」

「まず俺に声をかけてくる奴が少ない。仮に桜内だとしたらさっきみたいな声かけはしない。お前の姉達でも同様だ」

「あはは、そうかもですね」

 

 そのまま高海は俺の隣に腰を下ろす。髪が微かに濡れているから風呂上がりだろうか。いつもと違う香りが鼻腔をくすぐってくる。

 

「何してたんですか?」

「何も。ただ気晴らししてただけだ」

「じゃあ、私と一緒だ。ねえ、ちょっと聞いてもらっていいですか?」

「⋯⋯ああ」

「私、果南ちゃんとは小さい頃からずっと一緒だったんです。だから果南ちゃんがライブで歌えなかったからってスクールアイドルをやめたりしないってわかるんです」

 

 どうやら高海も似たような事を考えていたらしい。まあこいつの場合、幼馴染だからこその確信もあるだろうが。

 頷いて続きを促すと、高海は再び口を開いた。

 

「だから⋯⋯私、本当の事知りたいなって思うんです。果南ちゃんがスクールアイドルを辞めた本当の理由」

「松浦か踏み込んで欲しくないと思っててもか?」

「⋯⋯はい。私、自分勝手ですよね」

「いや、いいんじゃないか?」

「え?」

「あー、受け売りにはなるんだが⋯⋯お前が踏み込むことで傷つけるかもしれないし、踏み込まないことが傷つけるかもしれない。だが、お前が傷つける覚悟で踏み込むなら、それは『本物』だと思う」

「『本物』、ですか」

 

 俺は高海に黙って頷いた。かつての恩師の背中が頭の中にちらついた。

 夜の波音が少しだけ大きくなったのを合図に、高海は立ち上がった。

 

「よーし、やるぞー!!」

 

 海の向こうまで届きそうなくらいよく通る声を合図に、俺は立ち上がって砂をはたいた。

 

「じゃあ、俺はそろそろ行くけど」

「あっ、置いて行かないでくださいよー!あわわっ!」

 

 慌てて振り返った高海が足をもつらせる。

 こちらが反応する前に、こちらの腰あたりにしがみついてきた。

 

「あはは、ごめんなさい⋯⋯今日は比企谷さんに迷惑かけてばかりだぁ」

「い、いや、そうでもない⋯⋯つーか、大丈夫か?」

「あ、はいっ。大丈夫です!ちょうどいいところに比企谷さんが立ってたんで」

「⋯⋯そ、そりゃあ、よかったですね」

 

 何故か敬語になってしまう。

 俺はそのまま高海の顔は見ず、並んで砂浜をあとにした。

 

 

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