捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編 作:ローリング・ビートル
その日の夜、勉強のリフレッシュも兼ねて一人で砂浜を眺めていると、背後から足音が聞こえてきた。
何故かそのリズムで誰が来たのかは想像がつき、俺はそのままでいた。
「だーれだ?」
「⋯⋯高海」
「すっごーい!よくわかりましたね!」
「まず俺に声をかけてくる奴が少ない。仮に桜内だとしたらさっきみたいな声かけはしない。お前の姉達でも同様だ」
「あはは、そうかもですね」
そのまま高海は俺の隣に腰を下ろす。髪が微かに濡れているから風呂上がりだろうか。いつもと違う香りが鼻腔をくすぐってくる。
「何してたんですか?」
「何も。ただ気晴らししてただけだ」
「じゃあ、私と一緒だ。ねえ、ちょっと聞いてもらっていいですか?」
「⋯⋯ああ」
「私、果南ちゃんとは小さい頃からずっと一緒だったんです。だから果南ちゃんがライブで歌えなかったからってスクールアイドルをやめたりしないってわかるんです」
どうやら高海も似たような事を考えていたらしい。まあこいつの場合、幼馴染だからこその確信もあるだろうが。
頷いて続きを促すと、高海は再び口を開いた。
「だから⋯⋯私、本当の事知りたいなって思うんです。果南ちゃんがスクールアイドルを辞めた本当の理由」
「松浦か踏み込んで欲しくないと思っててもか?」
「⋯⋯はい。私、自分勝手ですよね」
「いや、いいんじゃないか?」
「え?」
「あー、受け売りにはなるんだが⋯⋯お前が踏み込むことで傷つけるかもしれないし、踏み込まないことが傷つけるかもしれない。だが、お前が傷つける覚悟で踏み込むなら、それは『本物』だと思う」
「『本物』、ですか」
俺は高海に黙って頷いた。かつての恩師の背中が頭の中にちらついた。
夜の波音が少しだけ大きくなったのを合図に、高海は立ち上がった。
「よーし、やるぞー!!」
海の向こうまで届きそうなくらいよく通る声を合図に、俺は立ち上がって砂をはたいた。
「じゃあ、俺はそろそろ行くけど」
「あっ、置いて行かないでくださいよー!あわわっ!」
慌てて振り返った高海が足をもつらせる。
こちらが反応する前に、こちらの腰あたりにしがみついてきた。
「あはは、ごめんなさい⋯⋯今日は比企谷さんに迷惑かけてばかりだぁ」
「い、いや、そうでもない⋯⋯つーか、大丈夫か?」
「あ、はいっ。大丈夫です!ちょうどいいところに比企谷さんが立ってたんで」
「⋯⋯そ、そりゃあ、よかったですね」
何故か敬語になってしまう。
俺はそのまま高海の顔は見ず、並んで砂浜をあとにした。