捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編   作:ローリング・ビートル

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明日への扉 ♯3

 自転車も無事に直り、高校までの道を軽やかに進んでいく。潮風の香りのする爽やかな朝の風が体を包み込むのが気持ちいい。

 そんな事を考えていると、バスがその隣を通っていく。

 ふと目を向けると、高海と渡辺の姿が見えた。

 こっちに気づいた高海が小さく手を振ってくる。

 とりあえず会釈だけしておくと、バスは緩やかに過ぎ去っていった。

 

 *******

 

「比企谷さん、自転車直ったんだぁ」

「何か用事があったの?」

「う~ん、ライブやる時連絡したいから、先に連絡先交換したかったんだけど……」

「ふ~ん、そっかぁ」

 

 *******

 

「曜ちゃんが部員になってくれたんですよ!」

「おお、そっか。よかったな」

 

 高海がやたら嬉しそうに報告してくる。昨日とまったく同じ場所で遭遇とか、中学時代なら運命感じちゃってるところなんだが……。

 高海はそんなの気にしないと言わんばかりにぐいぐい迫り、一人で喋りだす。

 

「もっと喜んでくださいよ♪あと3人。3人なんですよ!しかも既に3人可愛い子見つけてるんですよ!スクールアイドル部結成も目の前です!」

「そ、そうか……」

 

 材木座ほどではないようだが、こいつの頭の中もそこそこハッピーセットなめでたさがあるのかもしれない。おそらくその3人は頭数に入れられてることすら知らんだろう。

 

「ふふん♪あとは私が作曲できるようになればいいだけですから」

「お前、楽器とかできたのか?」

「できません!」

「何で自信満々なんだよ……」

「今から勉強します!」

「……曲ができる頃には卒業してそうなんだが」

「曜ちゃんにも同じ事言われたんですよっ。でも、スクールアイドルになりたいという気持ちがあれば奇跡が起こると思うんです!」

「そんな初っぱなから奇跡に頼ってて大丈夫か?」

「うっ……」

 

 高海が一時停止する。てか本当に渡辺という親友がいてよかったな。大事にしろよ。

 しかし、その気がなかったとはいえ、高海のリアクションに少しの罪悪感を感じていると、高海は何かを思い出したかのように「あっ」と声を出し、スカートのポケットに手を突っ込んだ。

 そして、ばっと勢いよく出した手には携帯が握られていた。

 

「連絡先交換しましょう!ライブの日程が決まったら連絡しますんで」

「……おう」

 

 特に断る理由もないので、俺は黙って携帯を差し出す。

 高海はきょとんと携帯を見つめていたが、すぐにその意味に思い至り、苦笑を漏らす。

 

「あはは、携帯あっさり渡しちゃうんですね」

「ああ。悪いが頼む」

 

 高海は慣れた手つきであっさり登録を終える。まあ、こいつコミュ力高そうだし、連絡先交換慣れてそうだしな。いや、慣れとかあるのかよくわからんけど。

 

「はいっ、終わりました」

「おう、お疲れさん……」

 

 一応労をねぎらいながら携帯を受け取る。微かに触れた指先は少しひんやりしていた。

 

「じゃあ、絶対に来てくださいね!」

「……まあ、何も用事がなけりゃな。てか、まずは部を作れよ」

「ええ、じゃあまた色々考えてきます!じゃあ、また明日!」

「ああ、またな」

 

 高海はニコッと期待に顔を綻ばせ、たったか走り去っていった。

 その際にふわりと柑橘系の香りが鼻腔をくすぐっていく。

 ついまたなと返事したが、明日も偶然会うのだろうか。

 いつの間にか彼女の背中は見えなくなっていた。 

 

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