捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編   作:ローリング・ビートル

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明日への扉 ♯5

「……まさかお使いを頼まれるとはな」

「あはは、なんかごめんなさい……」

 

 高海次女から何を言われるかと思い、うっかりドキドキしていたら、お使いを頼まれてしまった。いや、別に変な期待はしてないんだけどね?それに、送ってもらったのだから、何らかの形でお礼をする必要はあるだろう。

 ふと夕陽が紅く染め上げる海に目をやると、静けさも相まって、何だかセンチメンタルな気分になる。そうしてて飽きないのがこの景色の魅力なのかもしれない。

 

「…………」

「……どした?」

「あっ、いえ!何でもないです!」

 

 視線を感じたので振り向くと、高海がさっと目を逸らした。その頬は夕陽を浴び、ほんのり赤く色づき、何だか夕陽がすぐ傍にあるような温かな気分になった。

 彼女は前を向いたまま口を開く。

 

「比企谷さん、学校楽しいですか?お友達できました?」

「急にオカンみたいな質問だな……まあ、高校三年になると楽しむって感覚もあまりないし、この時期だと受験とか先の事しか興味ねえよ」

「そっかぁ……大学はどこ受けるんですか?」

「……正直、まだあまり考えてない」

「私もまだよくわかんないんです。来年は受験なのに。先の事ってよくわからなくて」

「……そっか」

「あっ、そうだ!今日作曲できる子が転校してきたんですよ!とっても綺麗な子で、ピアノ弾けるんですよ!」

「そ、そうか、よかったな……それで、入部したのか?」

「……それが、断られちゃって。あはは……」

 

 まあいきなりスクールアイドルやってくれとか言われて、首を縦に振る人間は少ない気がする。人前で歌って踊るって難しそうだし……てか、話題転換いきなりすぎて驚いたわ。渡辺、普段大変そうだな。

 

「小町ちゃんにも声かけたんですけど、家の手伝いがあるからごめんなさいって断られました」

「そっか」

 

 まあ、あいつはこっちに来てもバリバリ働いてるからなぁ、俺と違って。それにしても小町のスクールアイドル姿か……ただの天使じゃねえか。戸塚とユニット組ませたいなぁ!

 

「ひ、比企谷さん?どうしたんですか?いきなりニヤニヤして……」

「……いや、何でもない。てか、スーパーまであとどのくらいなんだ?」

「そろそろですよ。あっ、あれです!」

 

 高海が指を差した先に、少し古ぼけた看板のスーパーマーケットが見えてきた。

 

 *******

 

「何……だと……」

 

 俺は今、猛烈に感動している!!

 何と……マッ缶が置いてある!!

 

「おお……」

「えっ?ちょっ、比企谷さん!それ、頼まれたやつじゃないです!」

「え?あ、ああ、悪い……何つーか、感動のあまり……」

「そ、そうですか……」

 

 いかんいかん。高海が引いている。自重せねば。

 まあ、ここにマッ缶があることはわかったんだし、後で買いに来ればいい。

 まずはお使いを済ませますかね。

 隣に目をやると、高海はいつの間にか移動していて、高い所にある商品を取ろうとしていた。

 俺はそれを取り、彼女に渡す。

 

「あ、ありがとうございます」

「気にすんな。きっちり手伝わんと、お前の姉にどやされそうだからな」

「ふふっ、そうですね。でも頑張ったらご褒美があるかもですよ?」

「いや、お使いとか頑張りようがないだろ。しかもご褒美って……」

「でも、ほら…」

 

 *******

 

「あの、本当に持たなくて大丈夫ですか?」

「……ああ、このぐらいなら」

 

 ……めっちゃ重いんですけど。

 てか、あの次女。さりげなくメモに追加で何か書いてたな。本当にちゃっかりしてやがる。

 まあ、『一色いろは被害者の会』に所属している俺にとっては、この程度のパシリはどうってことないが。いや、やっぱり重い……。

 

「比企谷さん、このお礼にライブする時は必ず特等席用意しますから!」

「いや、特等席とかいいから、早く部員集めろよ……」

「うっ、確かに……でも大丈夫です!明日からガンガン桜内さんを勧誘しますから!!」

「…………」

 

 桜内さんとやら……御愁傷様。

 

 *******

 

 旅館の前に到着すると、高海次女が大きな犬と戯れていた。何あれ可愛い……。

 彼女は俺達に気づくと、思いきり手を振ってくる。

 それに応じるように、高海も手を振り返した。

 

「美渡姉。ただいま~」

「おかえり~!二人共、お疲れ」

「ええ。疲れました……」

「おいおい、男子~。こういう時は嘘でも全然平気ですって言うもんだよ?」

「自分に正直がモットーなんですよ」

「じゃあ、お茶でも飲んでいきなよ。入れたげるから」

「いえ、今日はもう帰りますよ。妹が待ってるんで」

「そっか。じゃあ、時間ある時は旅館の中にある喫茶店に寄ってよ。志満姉がご馳走したいってさ」

「……はあ、どうも」

「比企谷さん、ありがとうございました!明日はいい報告できるように頑張ります!」

「お、おう、程々にな……」

 

 せめて桜内さんが疲れない程度にしてあげて!あとそんな言い方されたら、俺がスクールアイドル大好きみたいじゃんか……まあ、動画見た感じ嫌いじゃないんだけど。

 

「じゃあ……失礼します」

「じゃあねー」

「また明日!」

 

 また明日、ね。本当にまた遭遇しそうだ。

 俺は二人に背を向け、再び帰路についた。

 

 

 

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