捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編 作:ローリング・ビートル
放課後、何となく商店街にあるCDショップに足を運ぶと、運命のイタズラだろうか、またもや高海の姿を見つけた。
だが彼女はCDを物色しているらしく、こちらには気づいていない。ならば俺も気づかずに素通りするのが礼儀だろう。
俺は新譜のコーナーを少し眺めてからCDショップを出た……のだが……
「比企谷さ~ん!!!」
「っ!」
背後から高海から呼ばれ、慌てて振り向く。そこまで大声出さなくてもいいだろうに……。
彼女はやたら笑顔で駆け寄ってくる。それだけで今からどんな話題になるか容易に想像できた。
「聞いてくださいよ!とうとう作曲できるメンバーが入ってくれたんですよ!」
「お、おう、そうか……てか、それ言う為にわざわざ走ってきたのか?」
「はいっ!せっかくだし一緒に帰りましょうよ」
「……別にいいけど」
……本当にこいつは渡辺がいなかったら何人の男子を死地に送り込んできたのやら。高海千歌……恐ろしい子!
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今日も穏やかな帰り道は、人通りも少なく、隣を歩く彼女の足音がやけに響いていた。
「比企谷さん、聞いてます?」
「……ああ。三人揃ってよかったな」
「全然聞いてないじゃないですか!もうっ、これから応援団長やってもらうんだから、シャキッとしてもらわないと!」
「ああ、応援団長……はっ?応援団長?」
「え、違うんですか?」
「いや、そもそも絶対ライブ行けるわけじゃないからね?」
「観に来てくださいよ~」
「……ライブの時、暇ならな」
「ふっふっふ~。お客さん、可愛い子揃えてますよ~」
「怪しい店の客引きかよ……てか、自分で言っちゃうのかよ」
「あはは……」
高海の横顔を見ると、その瞳はキラキラと輝いていた。
その瞳は海の彼方の水平線、さらにその向こうを見ているようで、何だか眩しく感じた。
「これから曲作りも始まるし、楽しみだなぁ」
「……そっか」
「あっ、でも曜ちゃん可愛いし、梨子ちゃん美人だし、私普通だから、あんまり人気でないかも」
「……んな事ないだろ」
「えっ?」
高海が驚いた表情でこちらを見上げてくる。
その反応を見て、自分が何を言ったのかに気がついた……だからこいつ……いや、今のは自分のせいか。
少し頬が熱くなるのを誤魔化すように首筋に手を当て、海に目を向けた。しかし、彼女の視線がまだこちらを捉えている気がする。
「……ありがとう、ございます……」
ふいに呟かれた言葉は、あっさり風に溶けて流れていったが、確かに耳朶を打った。
彼女を見ると、ほんのり夕陽が照らす口元が小さく綻んでいた。
「ふふっ、ほら早く行きますよ!」
「あ、ああ……てか、何で急ぐんだよ」
「何となくですっ!」
春風に揺らぐ二つの影は、跳ねるように駆け出し、帰り道を辿っていった。