捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編   作:ローリング・ビートル

9 / 24
明日への扉 ♯8

「♪~~」

「どしたの、千歌?ごきげんじゃない」

「そう?いつも通りなんだけどなー。♪~~」

「ま、まあ、よくわからないけど、あんま夜更かしして寝坊するんじゃないよ」

「はーい」

 

 私、そんなに機嫌よく見えるのかなぁ?

 その理由を考えると、自然とさっきのやりとりを思い出してしまう。

 

『……んな事ないだろ』

 

 あれって……気を遣ってくれたのかな?よくわかんないけど……少しくらいは自信を持っていいのかな?……ていうか、私何でニヤニヤしてるんだろ。

 頬を摘まんでみても、それはしばらく直りそうにない。

 ……まあ、気にしないでいいかな。

 

「♪~~」

「千歌ちゃん、ずっと歌ってるわね」

「まあ、これが思春期ってやつなんでしょ」

 

 *******

 

 放課後、俺は用もないのに駅前へと向かっていた。理由は高海からメールである。

 

『今日、放課後に駅前でチラシ配ります!チラシ配ります!』

 

 なんかこう……大事な事だから二回言いましたみたいなメールなんだが……いや、別にいいんだけど。

 そんなわけで、別に来てくれと頼まれたわけではないが、気が向けば応援すると言った手前、このまま真っ直ぐ帰宅というのも気が引けたのだ。

 さて、そろそろ駅前だが、案外もう終わってたりして……。

 

「ライブやりまーす!観に来てくださーい!」

 

 どうやら絶賛配布中らしい。てか声でけえ……。

 駐輪場に自転車を止め、駅前まで行くと、彼女らは三手に別れて道行く人に声をかけていた。

 高海は今の俺の位置から一番近い所で、せっせと動き回っていた。とりあえず、さりげなく……何なら俺と気づかれないようにチラシを……

 

「あっ、比企谷さ~ん!!!」

 

 気づきやがった。だから、名前を大声で叫ぶなっての。回れ右して逃げたくなるだろうが。

 そんなこちらの心情などお構い無しに、彼女はたたたっとこちらに駆け寄ってきた。手に持ってるプリントはあと十枚もなく、頑張っていたことが窺える。

 

「来てくれたんですね!」

「……まあ、気が向いたからな」

「ありがとうございます。それじゃあ、比企谷さんにも……はいっ」

 

 チラシをやや強引に手渡される。ええい、わざわざ指を開いて掴ませるのをやめろ……!

 

「お、おう……」

「よしっ!残りあと少しなんで、ちょっと待っててください!」

「じゃあな。頑張れよ。応援してる」

「いやいや、完全に無視しないでくださいよ~」

「いやいや、これ終わった後も何かやるんだろ?俺が待っても仕方なくない?」

「……確かにそうですね」

「おい」

「じゃ、じゃあ、観ていきますか?私達のチラシ配りと曲作り」

「いや、何が楽しいんだよ。せめてライブにしてくれ」

「……比企谷さんのケチ」

「ええぇ……」

 

 どうして今日はそんなに見せたがりなのかしら、この子は……。

 すると、こちらの様子に気づいた渡辺がささっと駆け寄ってきた。どうやら彼女は全て配り終えたらしい。向こうでは桜内が苦労しているようだが……。

 

「千歌ちゃーん、どうかしたの?」

「あっ、曜ちゃん!ごめんね?比企谷さんを見つけたからつい……」

「そっかぁ……」

 

 渡辺は何故か俺と高海を何度も交互に見て、それから高海の方に優しく微笑んだ。

 

「とりあえず、あと少しだから頑張ろっか」

「あ、うんっ。それじゃあ比企谷さん、来てくれてありがとうございました!」

「……おう」

 

 高海はいつものように、さっとこちらに背を向け、人混みへと駆け出した。まあ、あいつならすぐに配り終えるだろ。

 俺は、このまま帰ろうと回れ右をすると、背中に「あの……」声をかけられた。

 振り向くと、渡辺が遠慮がちな瞳をこちらに向けながら、おずおずと口を開いた。

 

「少し……お話いいですか?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。