捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編 作:ローリング・ビートル
「♪~~」
「どしたの、千歌?ごきげんじゃない」
「そう?いつも通りなんだけどなー。♪~~」
「ま、まあ、よくわからないけど、あんま夜更かしして寝坊するんじゃないよ」
「はーい」
私、そんなに機嫌よく見えるのかなぁ?
その理由を考えると、自然とさっきのやりとりを思い出してしまう。
『……んな事ないだろ』
あれって……気を遣ってくれたのかな?よくわかんないけど……少しくらいは自信を持っていいのかな?……ていうか、私何でニヤニヤしてるんだろ。
頬を摘まんでみても、それはしばらく直りそうにない。
……まあ、気にしないでいいかな。
「♪~~」
「千歌ちゃん、ずっと歌ってるわね」
「まあ、これが思春期ってやつなんでしょ」
*******
放課後、俺は用もないのに駅前へと向かっていた。理由は高海からメールである。
『今日、放課後に駅前でチラシ配ります!チラシ配ります!』
なんかこう……大事な事だから二回言いましたみたいなメールなんだが……いや、別にいいんだけど。
そんなわけで、別に来てくれと頼まれたわけではないが、気が向けば応援すると言った手前、このまま真っ直ぐ帰宅というのも気が引けたのだ。
さて、そろそろ駅前だが、案外もう終わってたりして……。
「ライブやりまーす!観に来てくださーい!」
どうやら絶賛配布中らしい。てか声でけえ……。
駐輪場に自転車を止め、駅前まで行くと、彼女らは三手に別れて道行く人に声をかけていた。
高海は今の俺の位置から一番近い所で、せっせと動き回っていた。とりあえず、さりげなく……何なら俺と気づかれないようにチラシを……
「あっ、比企谷さ~ん!!!」
気づきやがった。だから、名前を大声で叫ぶなっての。回れ右して逃げたくなるだろうが。
そんなこちらの心情などお構い無しに、彼女はたたたっとこちらに駆け寄ってきた。手に持ってるプリントはあと十枚もなく、頑張っていたことが窺える。
「来てくれたんですね!」
「……まあ、気が向いたからな」
「ありがとうございます。それじゃあ、比企谷さんにも……はいっ」
チラシをやや強引に手渡される。ええい、わざわざ指を開いて掴ませるのをやめろ……!
「お、おう……」
「よしっ!残りあと少しなんで、ちょっと待っててください!」
「じゃあな。頑張れよ。応援してる」
「いやいや、完全に無視しないでくださいよ~」
「いやいや、これ終わった後も何かやるんだろ?俺が待っても仕方なくない?」
「……確かにそうですね」
「おい」
「じゃ、じゃあ、観ていきますか?私達のチラシ配りと曲作り」
「いや、何が楽しいんだよ。せめてライブにしてくれ」
「……比企谷さんのケチ」
「ええぇ……」
どうして今日はそんなに見せたがりなのかしら、この子は……。
すると、こちらの様子に気づいた渡辺がささっと駆け寄ってきた。どうやら彼女は全て配り終えたらしい。向こうでは桜内が苦労しているようだが……。
「千歌ちゃーん、どうかしたの?」
「あっ、曜ちゃん!ごめんね?比企谷さんを見つけたからつい……」
「そっかぁ……」
渡辺は何故か俺と高海を何度も交互に見て、それから高海の方に優しく微笑んだ。
「とりあえず、あと少しだから頑張ろっか」
「あ、うんっ。それじゃあ比企谷さん、来てくれてありがとうございました!」
「……おう」
高海はいつものように、さっとこちらに背を向け、人混みへと駆け出した。まあ、あいつならすぐに配り終えるだろ。
俺は、このまま帰ろうと回れ右をすると、背中に「あの……」声をかけられた。
振り向くと、渡辺が遠慮がちな瞳をこちらに向けながら、おずおずと口を開いた。
「少し……お話いいですか?」