結月ゆかりの七変化   作:link

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結月ゆかりの七変化

私、結月ゆかりは最近人間関係で悩みができた。

それはもはや火急の事態であり、のっぴきらない状況でもあり、予断は許されない情勢だった。

詰まる所、どうしようもなく追い詰められており、この状況を打開するにはある事柄に託すしかないだろう。

 

今までならばそれは嫌な事の筈だった。

幼い頃から何度その事で悲しい思いをしてきたか。

 

親の仕事の都合で引っ越しなんて。

 

だけどそれは人間関係をリセットするということに関してはうってつけ、トランプのジョーカー並みの効力を発揮する。

人間関係のリセット、それは今の私に最も必要な事であった。

 

 

「いや、まあ、リセット出来てなかったから困っているんですけど、ね」

 

やれやれとため息ひとつ。ただし口元は笑みの形で。

嬉しくないわけじゃないのだ。ただ、それと同じくらい困っているだけで。

 

弛緩した肩に力を入れ、再びペンを取る。

 

 

さて、いつまでもぐだぐだと書いていると、日記のページが無くなるので簡潔に私の悩みを打ち明けようと思います。

 

私、結月ゆかりはある時を境に引っ越しの度にキャラを変える事になりました。

 

きっかけである同級生の金髪の女の子のときは少しあなたに甘えてる女の子でした。

 

次に訪れた北の地では友達の妹に対してすごく頼りになるお姉さんとして。

 

その次は関西という地にあまり馴染めず無口でクールな大人ぶった私です。

 

また別の県では透明感のある女の子と不思議な会話をしていたら中二病と思われて。

 

音が溢れる街では元気いっぱいな女の子に懐かれつられるように元気に笑ってました。

 

京の町……いや、なにもありません。

 

久しぶりに会った従姉妹に対して面倒見のいい姉として。

 

とにかく引っ越しを繰り返した私は、その都度他人への対応を変えていました。

昔なら、どうせ引っ越しするからと、親しい人を作らないようにしていましたが、あの人に踏み込まれ、連れ出された世界は広く、大きく、開放的で心地よくもあり、温かみに包まれ喜怒哀楽が芽吹き、毎日眼が覚める思いで夢心地でした。

 

そんな私が人々と交流を深めようとするのは当然のことでした。

 

けれども、やり方がわからなかった私は失敗しました。

引っ越しする度にキャラがぶれていくのです。

そのときはそれで良かったのに、今頃になってこんな状況になるとは…。

 

まさか。

 

まさか各地で親しくしていた人たちが、一つの町に集まってくるなんて思ってもいなかったのです。

 

若気の至りとして無かったことにし、素のままで接することができればいいのですが、いざその人達を前にすると以前接していたようにしかできませんでした。

 

そして全員から変わらないねとのお言葉をもらい、窮地に立たされました。

 

どうすればいいのでしょうか?

幸い、まだ友人達はお互いを知らない状況ですが、それも時間の問題でしょう。

頭の中で友人達が一堂に会した風景を思い浮かべると。

それは、まるで、私達は運命に導かれるがごとく、出会うべくして出会ったのではないかというほど、違和感が全くないそれが当たり前と言わんばかりに自然な一枚の絵になりました。

 

近いうちに私達は全員が面識を持ちます。

それは、必然的になるべくしてなるでしょう。

 

その時までに私は身の振り方を考えなければいけません。

どうしましょう。

 

 

「ととっ、電話ですか」

 

手元に置いていた携帯が震え、精一杯の自己主張を繰り返す。画面に表示された名前を見て、じんわりと頰があがる。もしもマナーモードにしていなかったら、太陽のように明るく、向日葵のように燦々とした歌声が響き渡ったでしょう。

私があの人に見た輝きのような。

そんな歌声が。

 

「もしもし、マキさん?」

 

「あっ、ごめんねゆかりん。こんな夜遅くに電話しちゃって」

 

「いえ、マキさんなら全然構いませんよ。それで、どうしたのですか?」

 

「いやー今度…………」

 

「その日なら大丈夫です。それより…………」

 

「うん、そうなの。それで…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「それでは、おやすみなさい。マキさん」

 

とりあえず、悩みのことは明日の私に任せましょう。

 

「このままじゃ暗いですね」

 

習慣となった日記にペンを置き、一文を書き加えた。

 

未来の私が、ふと、このページを見たときにそんな悩みもあったな、と笑えるようになることを祈ります。

 

「いい夢見れるといいな」

 

眠る前に一つの光景を思い浮かべる

 

それは

 

カラフルな色彩がまるで虹のような

 

夢みたいに綺麗で素敵な光景だった

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