携帯で最初のひと段落開けれないの辛み
最近聞いたIAのGirlって曲がいい感じでしたので興味があればアップルミュージックで聞いてみてください。
では、本編へどうぞ
天丼は2回までなら許されるはず
「……久しぶり」
「……ゆかり」
その人を初めて見たとき、ただただ神秘的だと思った。
光の当たり具合により色が変わる灰色の髪に、透き通ったマリンブルーの瞳。視線はどこを見ているのか見当もつかず、私とは違うものをぼんやりと捉えていた。
光の粒子がこの人の周りを踊っているのを幻視したほど、あの日、学校の屋上で、月に照らされ、宙を見上げていた姿は、同じ人間とは思えないほど、ただただ、神秘的だった。
「お久しぶりです、IAさん」
とある街のとある商店街の片隅で、久しぶりにこの不思議な生物と再会した。
「お久しぶりです。IAさん」
「……ゆかり」
「……今何してるの?」
この特徴的な会話の間、変わってませんね。
IAさんとの会話で気をつけることは、彼女は言い回しが独特というか、言葉の意図が少しずれているというか、なんといいましょうか、必ずしも言葉の通りの事を言っているわけではないということです。
例えば今の言葉は、ええと、これはIAさん的には今暇ですか?と聞いた筈。
「ええ、時間は空いてますよ」
口角が少し上がりましたね。どうやら当たっていたようです。
ああ、段々とどんな会話をしていたか思い出してきました。
しかし、あれですね。昔を思い返してみると、私と IAさんが教室等で交わしていた会話は、側から見ると控えめに言って意味不明ですね。
なぜ休日に会う約束をするのに、月の満ち欠けの話が出てきていたのでしょう?
「……そっか」
「……コーヒーの匂い」
おっと、過去に思いを馳せるのはまたの機会にしましょう。今は久しぶりに会えたIAさんの相手です。
なるほど、コーヒーの美味しいカフェに行きたいと。
「それでしたら、この近くに」
「……輝きが」
インターセプト!?コーヒー以外にも要求があるのですか?輝き?一体何を指しているのでしょうか?
「……もうすぐ頂点に来るね」
頂点?輝きが頂点?輝き、光、陽の光、お昼、ランチ!ランチも食べたいと?相変わらずこの人は。言い回しが独特すぎて解読するのにも一苦労です。同級生だった頃から変わりませんね。そんなんだから流行っていた漫画の影響もあってか私達、宇宙姉妹なんて呼ばれていたんですよ!
まあ、そんなあだ名で呼ばれても、IAさんとの謎の会話を辞めなかったのは、私なのですけど。
だって仕方ないじゃないですか!この人ちょっと寂しがり屋な部分があって、時々間違えたりすると悲しそうな表情になって、眉なんてへにょんってするんですよ!?そんなのあだ名が嫌だからって、見捨てられませんよ。
って、私は誰に言い訳をしているんでしょうか。
まあ、過ぎ去ったことはもういいです。それよりもお昼ですか。それなら…。
「それならいいお店を知っています。一緒に行きますか?」
「……うん」
あ、笑った。可愛い…。
ほんと、この神秘的な雰囲気の中にある幼げな表情はずるいです。何度この不思議生物の無自覚な我儘をこれで許してきたか。
「……世界は」
「……移ろっていく」
「まあ、時々苦労することもありますが、概ね慣れましたね」
「……そう」
「はい。IAさんはどうですか?」
「……もうすぐ」
「……声が」
「……この街にも響くから」
「本当ですか?」
「……うん」
「おめでとうございます。私も聴きに行きますね」
「……ありがとう」
「……案内は?」
「そうですね、一人で大丈夫です」
「……そう」
「いつも言ってますけどチケットは自分で買いますよ?」
「……私の」
「……願い」
「ありがとうございます」
IAさんと取りとめもない会話をしつつ、喫茶店へ向かっていますが、どうも先程から跡をつけられていますね。最初はIAさんの追っかけかと思いましたが、どちらかというと私の知り合い、いえ、知ってる人ですね。
あの目に毒な蛍光グリーンのスーツに、赤いネクタイという特徴的な服装は間違いなく京町セイカさんです。
あの人も IAさんとは別ベクトルで変な人です。
自己紹介の時に、自分の事を未来から来たエージェントと名乗ってしまう人は十分以上に変人ですからね。
あの時、引越したマンションの隣の部屋が、せいかさんだった事で私の京都ライフは暗黒に包まれました。
考えてもみてください。隣に人のことを特異点だとか、因果の収束地だとか、未来がどうのこうの言ってる人がいたら、どんな噂がたつか。
1日1回は私の目の前に現れましたからね、あの人。
次第にまともな人は減り、せいかさんのお仲間が集まってきましたよええ。
何故かその内、噂の内容が真実だと信じられる様になりましたし。
「本当、いい迷惑です」
「……?」
「せいかさん、出てきなさい」
「久しぶりね特異点」
「それ、やめなさい」
「いいえ、貴方には自覚が足りない。今日も星屑の巫女を連れているというのに」
「そういう貴方は自覚がありすぎです。あとIAさんを変なあだ名で呼ばないで下さい」
今日のせいかさんは面倒な仕事モードの時ですね。
スイッチがオフの時のせいかさんは…まあ、ちょっと変ですけど付き合いやすい、いい人なのでどうも邪険にしにくいです。
「……ゆかり」
「……へん」
………………あ、あなたがそれを言いますか!?
いや、確かに人の事を特異点と呼んでる人は、控えめに言って頭がおかしいんじゃないかとは思いますけど!IAさんも十分変ですからね!?
あと人を指差ししてはいけません。
「IAさんももう少し自覚して下さい」
「……ゆかり」
「……あなただけ」
それはどういう意味ですか、IAさん?
まさかその、独特の間が空いてる変な話し方をするのは私だけだと?
確かにライブのときのMCは一言一言が短いですけど、ちゃんと喋ってますし、本当は普通に喋れる?
「IAさん?」
「……なに?」
まあ、たとえそうだとしても、このふんわりとした微笑みを見せられては追求できませんね、昔から。
「それは光栄ですね」
「……うん」
「キマシタワー」
せいかさん?今、素が出てましたよ。
マンションに住んでたころ、せいかさんの部屋から時々深夜に聞こえてくる鳴き声がばっちり聞こえました。
あの鳴き声、聞こえてくるたびにどういう意味か調べようと思うんですが、深夜に聞こえるせいで起きてから調べようとして、そのまま忘れてしまうんですよね。
今日帰ってから調べてみましょう。
それはそうと…。
「せいかさん。私達は今から喫茶店に行くので、お帰りください」
「いいえ、私も付いていきます。いいですか?星屑の巫女」
「何を勝手に…」
「……いい」
「IAさん!?」
どうしたのですかIAさんふるふると首を振って!?まさかこの蛍光グリーンのスーツを着て赤いネクタイを付けてる、自分の事を未来人と自称して、人の事を特異点と呼ぶあぶない人に何かされたのですか!?
「……星屑の」
「……巫女」
「気に入ったのですか!?」
頷かないで下さい!!私嫌ですよIAさんの事を変なあだ名で呼ぶの。
「では、案内をお願いしますね」
「まあ、IAさんがいいのならいいでしょう。こっちです」
「ありがとう。ゆかりちゃん、星屑の巫女」
「……星屑の」
「……巫女」
「呼びません!!そんな顔してもダメです!」
あからさまにしゅんとされても、恥ずかしいものは恥ずかしいです。
それにしてもこのメンバーで喫茶店ですか。
私、自称一般人、他称、特異点。
IAさん、自称星屑の巫女、他称、宇宙人。
せいかさん、自称未来人、他称、あぶない人。
…………普段とは違う意味で知り合いとは会いたくないですね。
というか、あとこれ、超能力者がいたら完璧ですね。
まあ、私の知り合いに超能力者はいませんから、大丈夫でしょう。
…………吉田くんは島根から出ないでしょうし、いけるはずです。
「っと、着きました。ここです」
「……コーヒーの香り」
「はい。ここのコーヒーはとても美味しいですよ」
「新たな因果を観測」
「喫茶店でも変な事を言い続けたらぶっ飛ばします」
せいかさんが変な事を言うからちょっと不安になってきました。大丈夫ですよね?顔色が悪い紫色の菩薩峠君とかいませんよね!?あの人怖いんですよ!眼力とか凄くて!
「……ゆかり?」
「ゆかりちゃん?」
ええい、いざ!南無三!!
「待っていましたわよ。ゆかりちゃん」
霊能力者入りましたー!!
この後めちゃくちゃお茶会した。
その後の喫茶店での会話
「IAさんは何にしますか?」
「……ふわふわ」
「……自然の」
「……甘露」
「飲み物はどうします」
「……闇夜の」
「……貴婦人」
「メープルホットケーキとコーヒーのモカですか、いいですね」
「これは!?」
「どうかいたしました?」
「因果が薄くなっている!?」
「気づきますの?」
「では、あなたが?」
「ええ。時々、厄を払ってあげないといけませんの」
「成る程、どおりで」
「元々、あなたもそのつもりですわよね?」
「ええ、そのつもりでしたが、今日はお願いします」
「任されましたわ。ですがこう見えても私、忙しいので」
「ええ、その時は私が」
((それにしても))
(さっきから一体何の話をしているんでしょうか?せいかさんとイタコさん)
(さっきから一体何の話をしていますの?ゆかりちゃん達)