結月ゆかりの七変化   作:link

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いいサブタイが思い浮かびませんでした。
どうして漢字三文字にしてしまったのだろうか。

あと、あらすじを変えて小説の形態を連載にしました。


結月ゆかりの人生観

 噴水の前にあるベンチに座り、手に持っている本を読み進める。

 待ち合わせ相手が来るだろう時間より15分ほど早く来たため、手持ち無沙汰になることは必然だった。

 時間をつぶすために持って来たのは先日、せいかさんから借りた本。これがなかなかに興味深い内容です。

 すばり、女の子同士の恋愛についてですね。

 

 以前から気になっていたキマシタワーの意味を調べると、どうやら女の子同士の恋愛描写が出たときに発せられる言葉らしいです。

 度々せいかさんがこの言葉を使っていたのはそういう本やテレビなどをよく見ていたからだとか。

 

 この前のお茶会でIAさんと私が恋仲同士であると勘違いしていたようなので、それを訂正しに行ったときに聴き出しました。

 その際、せいかさんに日頃の恨みもあってか、女の子同士の恋愛が好きなのかとか、私とIAさんは恋人では無いことをからかうように耳元で言ってしまったのは反省点ですね。

 せいかさんが真っ赤になって顔を伏せてしまいました。

 

 よくよく考えてみれば、世間一般的に受け入れられ難い趣味なのでしょう。

 以前、マンガを読んでいたときに慌てて止められたのも、趣味を露見させたくなかったからでしょうし。

 せいかさんには悪いことをしましたね。

 

 今度、本の感想といっしょに一言謝りましょう。

 

 けれども、変な空気を変えたくて、せいかさんにお勧めの小説を借りたのは我ながらグッジョブです。

 せいかさんの安堵したかのような笑顔を思い出します。

 

 

(「まあ、私的にはせいかさんがどんな趣味を持っていても構いませんし、付き合い方も変わりません」

「それよりせいかさんのお勧めの作品をおしえてくれませんか?」

「せいかさんが好きなものなので、少し興味が出てきました」)

 

 

「……ぁぁぅ~」

 

 いやいやいやいや、そちらは思い出さなくても…。我ながらクサイ台詞ですね。

 けど、紛れも無い本心ですし、それによってせいかさんが元気になったのも事実。

 何を恥じる必要がありますか!

 と、いうことにしましょう!!

 

 

 人の心というのは中々、わかってもらえないものです。

 目と目を合わせて、言葉を尽くして、想いを告げる。

 それだけしても伝わらない事が何度もありました。

 

 それでも、黙っていては何にも伝わらないのです。好きなことや楽しいことは共有したいですし共感したい。嫌なことはやめて欲しいしやって欲しくも無い。

 自分から動かないとわかってもらえないのです。

 それが面倒だからって周りを切り捨てることも出来ません。

 

 人は一人では生きていけませんから。

 

 孤独は、つらいものだから。

 

「……来ましたか」

 

 周りに居た人達が風に煽られる木々ように騒ぎ出す。

 視線が公園の入り口に停まった、テレビや漫画でしか見たこともないような長い車に注がれる。

 あの中に私の待ち人がいるのでしょう。

 自然と足がそちらに向かっていた。

 

 だんだんと距離が近づいていく。

 ドアを開けようとしているお手伝いさんの顔が見える。

 周囲の視線が私にも集まり、何故か私と車の間に道ができた。

 車との距離が元いたベンチから半分ほどになった。

 

 今日こそは言うんだ、嫌なことは嫌だと。

 そうしないと伝わらないから。人は、言葉を尽くす事ができるのだから。

 

 たんたんと距離を詰めていく。

 お手伝いさんが開けようとしたドアが勢いよく開き、白い少女が弾丸のように飛び出した。

 私の足は止まった。

 

「………お……さま!」

 

 今日こそは言うんだ、嫌なことは嫌だと。

 目と目を合わせて言えば、わかってもらえる娘なのだから。

 

「ゆかり……ー…ま!」

 

 どんどんと距離が近づいてくる。

 その娘は凄く嬉しそうな顔をしている。

 釣られて私も笑みがこぼれた。

 

「ゆかり…ねー…ま!」

 

 今日こそは言うんだ、恥ずかしいものは恥ずかしいと。

 そうしないといつまでもその呼び方をするだろうから。

 

「ゆかりおねーさま!」

 

 そうして、距離がゼロになった。

 その娘は強く抱きしめてくる。

 心を込めて優しく抱きしめ返した。

 

「あかり。おねーさま呼びは…」

「会いたかったです!ゆかりおねーさまっ!!」

 

 やめて欲しいのですが。

 そう続けようとして、敗北した。

 それを言えば、このひまわりのような笑顔が曇ってしまうから。

 だから、また今度、言うことにしましょう。

 

 そう思うのも何度目だろうか。

 

「ええ、私も会いたかったですよ…あかり」

 

「はい!」

 

 私より背が小さいあかりのおでこに、自分のおでこをくっつけて笑顔を見せる。

 そうすれば、また目の前で大輪の花が咲く。

 

 これもいつも通り。

 

 そうして、何故か巻き起こる周囲の拍手も、遺憾ながらいつも通りのこと。

 

 けど、巻き起こる歓声に包まれ、沸き起こる羞恥心を必死に押し込める私の表情は、それでも笑っていた。

 

 

 

 

 …………さて。

 ここからどうしましょうか。

 未だに周囲は私達を見ていますね。拍手こそ鳴り止みましたが、ここからどうなるのだろうかと、まるで舞台を観ているかのような眼を向けられています。

 あかりは全く気にすることなく頭を擦り付けて来てますし、今日の目的であるショッピングに行こうという素振りもありません。

 ほんと、どうしましょうかこの娘。

 

「お嬢様、忘れ物ですよ」

 

「セバスチャン!」

 

 決して大きくはない、けれど何故か耳にスッと入る声が目の前から聞こえた。

 白く染まった髪を後ろに流し、柔和な笑顔を浮かべ、モノクルを掛けている。燕尾服には埃一つ付いておらず、純白の綿手を着けた初老の男性が、いつのまにか私達の2メートル程離れた場所で、閉じられた日傘を片手に微笑ましいものを見るかのような目でこちらを見ていた。

 

 彼は紲星家に代々仕える執事の斎藤さん、格好や立ち振る舞いが凄くらしいですが、断じてセバスチャンという名前ではない。

 周囲の人も「凄え、本物だ」とか「生セバスチャンだ!」とか言っていますが彼はセバスチャンではありません。

 たとえ斎藤さんがセバスチャンよりセバスチャンセバスチャンしていても、彼はセバスチャンではなく斎藤さんなのです!

 

「お久しぶりです、斎藤さん」

 

「ほっほっほっ、お久しぶりですな、ゆかり様」

 

 出ましたね斎藤さんのセバスチャン笑い。この人は外見だけではなく言動ですらセバスチャンのようなのです。

 たから過去の私はあんな過ちを犯したのだ。

 

「ところで、ゆかり様はセバスチャンと呼んでくれないのですかな?」

 

「いや……あの…」

 

「せっかくゆかり様から頂いた名前なのですが…」

 

「ほんと…ごめんなさい」

 

 消え入りそうな声で謝ることしか出来なかった。

 ほんと、穴があったら入りたい気分です、鏡を見なくても顔が真っ赤になっているのが分かります。

 未だに抱きしめ合ったままのあかりの肩口に顔を埋めて呻くことしかできません。

 そうですよー、私が最初に彼をセバスチャンという渾名で呼んでいました。それをあかりが真似して、今では紲星家では誰もが彼をセバスチャンと呼ぶようになりました。

 過去に戻れるならあの日の私を何をしてでも止めたいです。

 

「セバスチャン!ゆかりおねーさまを虐めないでください!!」

 

 あかり…。庇ってくれるのは嬉しいのですが、あなたが彼をセバスチャンと呼ぶたびに申し訳なくなりますし、おねーさま呼びもできればして欲しくないので逆効果です。ダブルパンチになってます。

 

「これはこれは、怒らせてしまいましたかな?」

 

「怒ってません!もう…いきましょう、ゆかりおねーさま」

 

「ほっほっ。どうやら私の役目はここまでのようですな。それではごゆるりと」

 

「ありがとうございます。斎藤さん」

 

「あの…ほんとに怒ってないですからね?日傘、ありがとうございます」

 

 日傘を受け取り、恭しく腰を折る斎藤さんにいろいろな意味でお礼を告げ、そのままあかりの腕を取り、噴水の向こう側に見えるデパートに向かって歩き出す。

 助け舟だったとしても、もう少しやり方を変えて欲しかったですね。

 

 私達が歩き始めたことで周りに造られていた人垣が崩れ、さながらモーゼの奇跡のように道が出来る。

 なんだか、公園で待ち合わせをしただけなのにどっと疲れました。

 

「本当、前途多難です」

 

 それでも、隣であかりが楽しそうにしているだけで気分が良くなるのですから、我ながら現金なもの。

 

「あかり」

 

「なんですか?」

 

「今日は楽しみましょうね?」

 

「はい!!」

 

 ああ、今日は長い1日になりそうです。




この後一緒に買い物をする話を書いて2話構成にするか迷ってます。

どっちにしろ次の話はまだ一文字も書いてないのでしばらく先になるとは思いますが…。
どうか長い目で見てください。
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