ルイズと幻想郷   作:ふぉふぉ殿

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なつかしい我が家

 

 

 

 

 オーク達はじりじりとパチュリー達に近づいてきていた。敵意をむき出しにしながら。降ろしていた棍棒を、今はしっかり握りしめている。さらに仲間を呼んだのか、森の中からぞろぞろとオークの群れが姿を現した。

 だが当の敵意を向けられている方はというと、面倒くさそうにしていた。深夜から早朝にかけて、アルビオンとの戦をやったのもあって、この場は簡単に済ましたかった。それが想定外の事でご破算。もっとも、楽しそうにしているのもいたが。

 

 そんな微妙な表情を浮かべている彼女達の頭の上から、声が届いた。魔理沙だった。

 

「失敗したか」

「あんた、留守番しててって言ったでしょ」

 

 見上げたアリスの顔は、さらに面倒くさそう。もっとも魔理沙、意に介さず。

 

「来たって問題ないだろ?」

「そうだけど……」

「で?なんで失敗したんだよ。翻訳魔法がうまくいかなかったのか?」

「それ以前よ。連中、物の貸し借りとか売買って概念がないのよ」

 

 あきれたように答える人形遣い。

 アリス達はオークの縄張りにある寺院を借りたいと、オーク達に申し出ていた。対価として、人間を彼らの縄張りに近づけさせないという条件で。だが通じない。最初、少々困惑した幻想郷の面々だが、しばらくして理解した。オークの所有の概念は、とんでもなく単純だったからだ。なんとか彼らのわずかな言語で、説明したものの。知らない概念を理解させるのは、短時間では無理。

 逆にオークにとっては、自分達の言葉を話しながら、訳の分からない事を言う連中。少なくとも、縄張り内のものを欲しがっているのは確か。オークは彼女達を敵と認識した。

 

 二人の話を聞いていた明るい声が横から入る。悠然と腕を組んでいる天子。見ていて楽しくなるくらい、嬉しそうな笑顔。

 

「つまり、方法は一つしかないって事ね!」

「だな。力づくだ」

 

 魔理沙も幻想郷の住人らしい答え。

 天子と魔理沙の会話を、耳に挟んでいたパチュリーが振り返って言う。

 

「力づくでいいけど、一つだけ条件があるわ」

「なんだよ」

「ボコボコにね。トラウマになるほど。まるで歯が立たないと理解できるように」

 

 大きくうなずく二人。

 

 キュルケとタバサは、空から様子を窺っている。じわじわと包囲を縮めてくるオーク達。そんな様子をまるで気にしてないかのような幻想郷の住人達。

 

「どうするのかしらね?」

「見ていれば分かる」

「それもそうね」

 

 こちらも楽しそうな表情を浮かべている。

 

 その時、天子が叫んだ。明るい声で。

 

「とっか~ん!」

 

 天子、真っ直ぐオークへ突撃!もちろん素手。ターゲットとなったオークは驚いて、目を見開く。思わず棍棒を振り上げ、そして下ろそうと……。

 

「天子ぱ~んち!」

 

 棍棒が下りる前に相手はすっ飛んでいた。ゴロゴロゴロって具合に。

 

 脇にいたオークは唖然。どう見ても、人間の少女にしか見えない相手が、その十倍はあろうかという相手を、素手ですっ飛ばしたのだから。

 オーク達は訳も分からず、雄叫びを上げながら天子に襲い掛かる。棍棒を振り下ろす。

 

「フゴーッ!」

 

 しかし天子、棍棒を素手で軽く受けてとめた。

 

「すごい、すごい!腕力はさすが。けど、鬼って呼ばれてんなら、その10倍は出さないとねっ!」

 

 軽い気持ちで放たれるパンチ。だがその拳はオークを森の奥へと吹き飛ばしていた。天人無双。

 

 空のキュルケとタバサ、呆然。キュルケ、人の視線を常に意識している彼女にしては、珍しくポカーンとしている。一方のタバサは相変わらず変化のない表情ながらも、その目は見開いたまま。瞬きもしない。

 天子に天候の操作や大地を揺るがす力があるというのは、側で見ていた。それだけでも驚愕ものだが、単純な身体能力がここまで高いとは予想外。これが天使かと。人間の尺度で図るものではないと、改めて思ってしまった。

 

 一方、その様子を見ていた魔理沙が悔しそうにつぶやく。

 

「ちっ、出遅れた!」

 

 ズドンと箒でオークに突入。

 

「行くぜ!『メテオニックデブリ』!」

 

 手に持った八卦炉から、カラフルな星状の光弾がオークに向かっていく。

 星型の弾幕は全弾直撃。向かって来たオークに見事なカウンターになってしまった。大き目の石でもぶつけられたかのように、もんどり打って、ひっくり返る。気絶したものも何匹かいる。その仲間の状況を見て立ち尽くすオーク達。メイジとの戦いを何度か経験した事もある連中だが、こんな魔法は見た事がない。本能的な恐怖が彼らの頭の中をぐるぐる回り、余計に混乱する。もうそうなると、ただただ棍棒を振り上げ突撃するだけだった。その度に返り討ちに会うのだが。

 

 暴れまわる二人に目が奪われていたキュルケ達だが、ふと戦っているのは天子と魔理沙だけというのに気付く。脇を見ると、他のメンバーは皆、空に浮いたままその様子を眺めていた。その視線にアリスが気づく。

 

「なんで、手伝わないのかって顔ね」

「え、ええ……」

 

 人間らしい見かけとは言え、まだ人外に慣れてないキュルケ。

 

「面倒だからよ。やりたい連中だけが、やればいいの。まあ、危なくなったら手を貸すけどね」

「ふ~ん……」

 

 幻想郷の面々の微妙な距離感に、ちょっと驚く。分からなくはないが、理解しづらい感覚。

 

 やがて地上が静かになる。オーク達は算を散らして逃げ出していた。結局、天子と魔理沙にやられたのはそれほど多くない。だが、彼女達が得体のしれない連中と思い知るのは、それだけで十分だった。訳の分からない攻撃に慌てふためいたオーク達は脱兎の徒。

 キュルケとタバサは、静まり返った廃村を見下ろす。ハルケギニアでのオーク討伐と違う様子が、ちょっと気になった。脇のアリスに尋ねる。

 

「その……。なんで、殺さなかったの?」

「ん?殺しちゃったら、誰が酷い目に遭ったって伝えるの?」

「ああ。それもそうね」

 

 ついつい亜人は殲滅すべき敵という発想が、頭に出てきてしまう。だがよく考えれば、彼女達はこの廃村を拠点にしに来たのであって、オークを討伐しに来たわけではない。オークが近づかなければ、それでいい。変に恨みを買わずに、一方で恐怖だけ刻み付ける。それはオークを数匹、痛めつければ可能だった訳だ。アルビオン戦の時。死者を出すような直接攻撃をあまりしていなかった様子を見ていて、人道主義的なのかと思ったが、今の様子を見ているとどうも、そうではないらしい。オークに対し、話し合いが通じなければ、実力行使にすぐ出てしまうのだから。要は幻想郷の面々は目的にストレートで、面倒くさがりなのだろう。そんな考えがふと浮かんだ。

 

 やがて一同は地上に降りる。そして廃村の寺院を拠点と決めると、辺りに結界を張っていった。

 

 

 

 

 

 トリステイン領の端。広大な領土を持つ公爵家があった。ヴァリエール家。居城もその領土に見合う巨大なもの。だが、威勢を露わにする城とは不釣り合いなほど、ここは静まり返っていた。無理もない。今、この家には思わぬ災難がいくつも降りかかっているのだから。それを象徴するのが、次女、カトレアの寝室かもしれない。

 ルイズが行方不明になって以来、こうしてベッドに伏せっている。体は重く、気分は落ち込んだままに。

 

 そんなカトレアの寝室が、ノックもなく突然開いた。

 

「カ、カ、カ……」

「どうされたの?お姉さま」

 

 目を見開いたまま入り口で立ち尽くす金髪眼鏡の女性。長女、エレオノール。病床の床にあるカトレアは、彼女の様子にちょっとばかり驚く。いつもわがままいっぱいでヒステリックなイメージのある姉だが、いきなりノックもなく部屋に飛び込んでくるなんて事はまずしない。しかも病床の身の妹をいつも心配していたのだから、なおさらだ。

 

 相変わらず呂律の回らないエレオノール。

 

「ル、ル、ル……」

「ちょっと、落ち着いて。これを飲んで」

 

 カトレアはコップに水を入れて勧める。エレオノールは一気に飲み干すと、大きく息を吐く。

 

「ルイズが!ちびルイズが帰って来たわ!」

「え……」

 

 言葉が止まるカトレア。驚いて体を起こそうとする。だがまだまだ回復してない身。その体はどこか頼りない。エレオノールが肩を支える。

 

「ありがとう。お姉さま……」

 

 そう言って顔を上げた先。部屋の入り口に懐かしの姿が目に入った。もう見る事もないと、半分あきらめつつあった姿が。

 

「ちいねえさま。ただいま、帰りました」

「ルイズ……」

 

 カトレアはベッドを飛び出していた。ふらつく体をなんとか操り。

 その姿にルイズは思わず、駆け寄る。倒れそうになる姉を支える。すぐ側にある姉の顔。その瞳には涙が浮かんでいた。その時ルイズはふと感じた。帰って来たんだと。自分はようやく帰って来たと。

 二人は不思議と抱き合って泣いていた。

 

 やがて三人は、落ち着きを取り戻す。するとまずはルイズからの報告。

 

「えっと、父さまと母さまですけど。王城の留守居役が終わり次第こちらに戻るとおっしゃってました。後、数日だそうです」

「えっ?あんた、父さまと母さまに会ったの?」

 

 エレオノールの意外という声。うなずくルイズに、彼女は少し厳しく言う。

 

「よく頭下げたんでしょうね。あんたの事、本当に心配してたんだから」

「う、うん……」

 

 少しばかり小さくなって答えるルイズ。

 伝令として両親の前に出ていった時の事を思い出す。抱き着かれるわ、もみくちゃにされるわ、行方不明の理由をごまかそうとしたら厳しく追及されるわ。喜怒哀楽がぐるぐる回って出て来るような出会いだった。最後はやっぱり喜で終わったが。

 

 一段落すると、次にエレオノールは、いや、誰もが一番聞きたいことを口にする。

 

「それで、どこに行ってたの?」

「え、えっと……信じてもらえないかもしれませんけど、ロバ・アル・カリイエに行っていたんです」

「はぁ!?なんで、そんな所行ってたのよ!?っていうか、どうやって?」

「えっとですね……」

 

 それから召還された事、召喚先が幻想郷という所だと話した。もっとも異世界の幻想郷ではなくロバ・アル・カリイエの一地域と説明して。さらに妖怪の事もなんとかごまかす。エレオノールは最初こそ疑っていたが、あまりにルイズが真摯に話すものだから、本当ではないかと思い始めていた。少なくとも幻想郷での出来事自体は、本当だったのだから。

 

 しばらく三人に話した後、エレオノールとルイズは寝室を出ようとする。まだまだ語り足らないが、カトレアの体調の事も考えて。先にエレオノールが出る。そしてルイズが続こうとする。その時、カトレアが呼び止めた。

 

「ねぇ、ルイズ」

「はい?」

 

 振り返るルイズ。

 

「ちょっと来て」

「?」

 

 ルイズは訳も分からず寝ている彼女の側に寄る。一方、エレオノールはそのまま部屋を出ていった。

 カトレアは少しばかりいたずらな表情を浮かべ、ルイズを見る。

 

「さっきの話、嘘が入ってるでしょ」

「えっえっ……!?は、入ってないわ!」

「そうかしら?なんか、嘘ついてるような気がしたんだけどなぁ。でも全部嘘って訳じゃなさそう。隠さないといけない事なの?」

 

 自信ありげに言ってくる姉に、ルイズ、たじたじ。長らく心配かけていた引け目もあって、とうとう折れる。

 

「えっと……あの……その……。うん……。できれば……」

「父さまや母さまにもないしょ?」

「えっと……、ばれちゃって……」

「怒ってたでしょ」

「……うん」

「とっても心配してたのよ。やっと帰って来たのに嘘をつかれたんじゃ、怒るのも無理ないわ」

「……うん。ごめんなさい……」

 

 カトレアは余計に小さくなったルイズの頭を、やさしく撫でる。

 

「何か事情があるんでしょ?無理には聞かないわ。でも話したくなったら聞かせてね」

「うん……」

「そんなに、縮こまらないでよ。別に叱ってる訳じゃ……ごほ、ごほ……」

 

 不意にカトレアが咳き込む。ルイズは思わず背筋をさする。

 

「ちいねえさま!」

「ふう……。だいじょうぶよ。最近は大分落ち着いて来たから」

「だけど……」

「ルイズが帰って来たんだもの。しばらくすれば良くなるわ」

 

 笑顔を作るカトレアだが、その顔色はあまりいいとは言い難い。元々体の弱い彼女だが、それを悪化させてしまったのが、ルイズがいなくなったから。もちろん自分の意思ではない。しかし、じわっとした罪悪感を抱かずにはいられなかった。

 

(ちいねえさま……。必ずなんとかしてあげる)

 

 ルイズはカトレアをベッドに寝かせながら、そう心の中でつぶやいた。

 

 それからルイズはカトレアの事を思って、しばらく留まる事にした。ちなみにエレオノールがいたのは、両親が出兵している間、留守を任されていたから。今はアカデミーを休職中。もっともアカデミーも国家存亡の危機という事もあって、研究どころではなかったが。

 

 

 

 

 

 

 それから数日が経つ。やがてヴァリエール公爵夫妻がようやく戻って来た。自領を通る軍勢には出陣する時の緊張感や勇ましさはなく、和やかな雰囲気さえある。公爵の軍は一兵も失わず、しかも国はアルビオン軍を撃退したのだから。領民たちも喜びと安堵の表情で、彼らを迎えていた。

 

 公爵夫妻の無事な凱旋と国の勝利。この二つの幸を迎えた居城では、ささやかな宴が催される事となった。いや夫婦にとっては、むしろ一番の幸いは、末娘、ルイズの帰還だったかもしれない。

 長いテーブルには久しぶりの面々が揃う。ヴァリエール公爵に夫人のカリーヌ。長女エレオノール。体はまだ十分とは言えないものの少しの間だけという事で、次女のカトレアもいた。そして主賓扱いとなっているルイズ。家族そろっての食事はいつ以来か。礼儀に厳しい家柄ながらも、その表情はどこか緩んでいた。

 まずは家長であるヴァリエール公爵が、ワインの注がれたグラスを高く上げる。

 

「まずは祝杯を上げよう。祖国の勝利と、そしてルイズの無事の帰還に!」

 

 乾杯の掛け声と共に、一斉にグラスを空ける。それからは途切れぬ会話が始まった。ターゲットはもちろんルイズ。

 エレオノールがまずは一番手。

 

「ルイズ。あなた、父さまや母さまに最初会ったって言ってけど、お二方とも行軍中だったのよ。どうして居場所が分かったの?」

「あ、それは……」

 

 ルイズが言いかけた所で、ヴァリエール公爵が言葉を挟む。

 

「ルイズは王家の伝令として来たのだよ。なんと、トリステインに戻って来て真っ先に向かったのが、我が家ではなく危機に陥っていた王家だったのだ。見上げたものではないか。うん。トリステインの貴族としては正しい行いだぞ。ルイズ」

「……はい」

 

 褒められた彼女、照れ笑い。

 公爵は末娘が帰って来たのがよっぽど嬉しいのか、ルイズを全肯定。

 すると今度はカトレアが声を上げていた。

 

「ちょっと待って。って事は、ルイズ。あなた、アルビオン軍と戦ったの?」

「えっ……」

 

 一気にルイズのにやけた顔が冷める。

 戦ったどころか最前線で幻想郷組と共に、アルビオン軍を撃退した。これを知っているのはアンリエッタ、アニエスとキュルケ、タバサだけ。極秘中の極秘だった。

 なんとか顔をのりで固めたように平静を繕うと、他愛もないかの質問とばかりに答える。当人はそのつもりで。

 

「い、一応、陣にはいましたけど、へ、陛下のお心を支えていただけですわ」

「「「…………」」」

 

 一同、微妙な顔つき。ここにいる誰もが、動揺しているように見えたというか、嘘ついていると思っていた。ルイズの嘘は分りやすい。そんなものは家族はおろか、あのキュルケですら分かってる事。こんな答えでごまかすのは無理だった。

 

 彼女の答えを聞いて、カリーヌは一つ溜息。執事のジェロームに人払いを告げる。執事もメイドも一斉に部屋を出た。ルイズ、さらに顔が青くなる。何度も経験した、母の雷が落ちて来る前兆かと。

 だが、カリーヌの表情には厳しさはあっても、怒りはなかった。

 

「ルイズ」

「は、はひっ!」

「まだ隠し事をしているようですね」

「あ、あのその……。は、はい……。も、も、申し訳ありません!母さま」

「そうですか」

 

 カリーヌは静かに頷く。そして真っ直ぐルイズを見た。

 

「ルイズ。一つ聞きますが、なんのために隠しているのですか?」

「えっ?それは……」

 

 母親の意外な質問に戸惑う。

 何のために隠しているのか?いくつもの言葉がルイズの頭に浮かぶ。トリステインの存亡、王家の危機、戦争、異界の魔法、虚無……。やがてどれもが消えていった。そして、最後に残ったものを口にする。

 

「異界の友人のためです」

 

 確かにパチュリー達の異質さは、トリステインにとってやっかいなものかもしれない。例え国を救ったとしても。それだけでも隠す理由にはなるだろう。でもルイズは、あのマイペースな連中の気持ちを考えて決めた。自分も口を噤み、口外しないようにアンリエッタに頼む。

 

 一方のカリーヌ、いやここにいる全員の目が丸くなっていた。予想外の答えに。貴族としてと言うのはよく聞くが、友人のためなんて言葉が出るとは思わなかった。

 彼女に友人と言えるような相手は、幼い頃のアンリエッタくらいしかおらず、学院に通うようになっても友人などと言うような話は耳にしていない。公爵夫妻もカトレアも、胸の内でそれを気にかけてはいた。

 異界、幻想郷の話は、伝令に来た時にさわり程度は聞いていた。ハルケギニアとは何もかも違う土地と。だが、そんな土地だからこそ、友人を作れたのかもしれない。

 

 末娘から出てきた言葉を耳に収めると、カリーヌはハッキリと言う。

 

「そうですか。ではこれ以上詮索しません」

「母さま?」

「ただし、一つだけ確かめたい事があります」

「はぁ……」

「その友人を我が家へ招待しなさい」

「え゛っ!?」

 

 ルイズ、思わず立ち上がる。意表を突かれたというか、度肝を抜かれたというか。

 

「いえ、その……それは……!」

「先ほどの話を聞いていると、その異界の友人とやらはハルケギニアにいるようですね。今でも、お付き合いしているのでしょ?」

「その……そうですけど……。でも……!」

「ならば余計に確かめねばなりません。あなたがどのような友人を持ったか、どんな世界で生活していたのかを。それに礼も言わねばなりませんしね」

「…………」

「いいですね。落ち着いたら、連絡を寄越しなさい」

「は……はい……」

 

 ルイズは力が抜けるように、椅子へ戻る。表情はまたもや青。そんな彼女にエレオノールが、今の話を聞いていろいろと尋ねてきた。だが右から左。今、頭の中にあるのは、予想される危機。フリーダムな幻想郷の連中を、この厳格な両親の前に連れて来る。絶対にトラブルの予感しかしなかった。

 

 

 


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