ルイズと幻想郷   作:ふぉふぉ殿

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好機到来

 

 

 

 

「しまった……」

 

 ルイズは真っ暗な宿場町を見て、茫然とする。今から宿に入るのは無理だと。

 彼女達がヴァリエール城下に着いたのは、深夜。比較的ゆっくり飛んだとは言え、やはり飛ぶのは速い。祭りでにぎわっていた町を出た同じ夜に、待ち合わせ場所の宿場町についてしまった。見ての通り真夜中に。

 天子が頭の後ろで腕を組み、あっけらかんと言う。

 

「野宿するしかないわねー」

「…………やっぱり、泊まっておくんだったわ」

「いいじゃないの。野宿初めてじゃないでしょ?」

「何度やっても、野宿よりボロ宿の方が何倍もマシよ!」

 

 憤りをぶつけるように喚くルイズ。しかし天子には通じず。するとルイズ、パンと両手を叩く。何かを思いついた顔で。

 

「あ、そうだわ。駐屯所があるからそこに泊めてもらいましょう」

「そんな所があるんですか。何が駐屯してるんです?」

 

 思わず、メモを取り出す文。

 

「自警団よ。泥棒やら賊やらを取り締まるためのね」

「ほう……。番所みたいなものですね。それは面白そうです」

 

 さっそく、宿場町の屯所に向かう一同。そこには夜番の自警団員がいた。暇そうに、ぼーっとしていた。ルイズが入口に立つ。

 

「ちょっと、いいかしら?」

「ん?なんだお前たち。こんな時間に」

 

 目元をしかめて彼女達を見る団員。こんな深夜にやって来たのだ、不信に思っても仕方がない。しばらくルイズの事を凝視していたが、急に目が見開かれる。慌てふためく。

 

「ル、ルイズお嬢様!?」

「そうよ」

 

 ここは城も近く、ヴァリエールの居城からの出入りで、必ず通る場所。公爵一家が一時的に泊まる事もあり、ヴァリエール一家の姿は、ここの住人ならだいたい分かっていた。知らないのは、唯一、あまり城から出ないカトレア位だ。

 団員は恐縮して膝を折る。

 

「な、なんの御用で、ありましょうか?」

「ここに朝まで、泊めてもらえないかしら?」

「え?このような場所に?」

「ええ。ほら、もうこんな時間でしょ?宿屋に泊まるにも泊まれないし」

「ああ、なるほど。それにしましても、いったい何故こんな時間に……?それに……馬車が見えないようなのですが……、どのようにしていらっしゃったのです?」

「……!」

 

 一瞬顔が青くなるルイズ。飛んできたのだから、馬車なんてある訳ない。とは言っても真相を説明する訳にもいかない。妖魔が化けていると、思われかねない。

 彼女は、なんとか動揺を押さえて説明。どこか視線が泳いでいるが。

 

「え、えっとね……。もちろん馬車よ。馬車は先に進んで、適当な所で休んでおくように言ってるわ」

「そうですか。ですが、ここはご覧の通り、お嬢様が泊まれるような場所ではないのですが」

「別にいいわよ。屋根があるだけマシよ」

 

 その返答にちょっと驚く団員。文句を言いながら泊まるとばかり思っていたので。ルイズのヒステリックと気位の高さは、噂でそれなりに知られていたのだ。それが、まさかの口ぶり。所詮風聞だったのかと、ルイズに対する見方を変える彼だった。

 ちなみに、エレオノールのヒステリックと気位の高さも、知られていたりする。

 

 やがてルイズ達は駐屯所の奥にある、休憩室に滞在。簡単なベッドがあるだけだったが、今のルイズにはそれで十分だった。衣玖や鈴仙もそこで休む事にした。だが、天子はどこかへフラフラと出かけて行って、文は団員にインタビュー攻勢をかけていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 もう日が落ちていた。旅の日程はあと一日。少なくとも明日には全員集合しないといけない。ルイズ達は、魔理沙達が来るのを待つだけである。では魔理沙達の方はというと、未だフラフラと、夜の空を飛んでいた。

 

 ラグドリアン湖を離れてから、街道付近、と言っても結構離れた場所を適当に回っていた。大したものはなかったが、幻想郷とはまた違う自然を見て、彼女達はそれなりに満足していた。

 それからまたあちこち行っていたのだが、気づくと日が落ちていた訳だ。

 

 魔理沙は飛びながら、アリスに話しかける。

 

「どうする?このまま合流場所に行くか?今なら、ギリギリ宿屋に泊まれると思うぜ」

「そうね。もう日にちの余裕もないし。そうしましょうか」

 

 だが、後ろから好奇心のありそうな声が届いた。吸血鬼姉の。

 

「何かしら?あれ?」

 

 指さした方を、魔理沙は凝視する。しかし、よく見えない。暗視スコープでもなければ、さすがに無理。夜目が効く吸血鬼ならでは。同じく夜目が効くこあが答える。

 

「村があるようですね。灯りが見えます。ずいぶん街道から離れた村のようですよ。近くに他の村は……見当たりませんね」

「ふ~ん……、孤立した村か……。面白そうね。行ってみましょう」

 

 向きを変えると、突っ込んでいく。ぎゅんという具合に。それにフランドールも、咲夜も続いた。

 慌てて魔理沙が声をかける

 

「おい!ちょっと待てよ!」

 

 だが、手遅れ。随分先に行ってしまった。

 すると側にパチュリーが寄って来る。

 

「大丈夫よ」

「何がだよ」

「孤立した村だもの。少々騒ぎを起こしても、広まったりしないわ」

「そっちの大丈夫かよ」

「逆に、意外に楽しめるかもしれないわよ」

 

 それだけ言うと、紫魔女も吸血鬼達の後を追う。少々呆れて、頭をかかえる白黒魔法使い。しかし、開き直った。

 

「それもそっか」

 

 箒を握りしめカッ飛んでいった。アリスも同じくついて行った。

 

 皆、とりあえずルイズに迷惑はかからないだろうと、考えていた。騒ぎになっても大したことないだろうと。それだけで小さな村を訪問するには、十分な条件だった。ただ当の村の住人の事は、あまり考えてなかったりする。

 

 村は狭い盆地にあった。畑に囲まれ、一か所に民家が集まっている。中央に小さな広場。それを囲むように民家が建っていた。

 魔理沙達は畑の端に降り立つ。レミリアは、民家を見て腕を組みだす。少々がっかりしたような顔つきで。

 

「何かありそうな所じゃないわね」

「確かにな。幻想郷のと、そんなに違わない感じがするぜ」

「う~ん……」

 

 もっとも、レミリアの言う事も分からなくもなかった。建物の外観、作っている作物は違うが、纏う雰囲気が幻想郷のそれととても似ていた。もちろん農村なんて、そんなものなのだろうが。

 少々後悔しているレミリアの横を走る影があった。夜に目立つキラキラした羽が。フランドールである。思わず声をかける姉。

 

「ちょっとフラン!」

「面白そうだから、行ってみる!」

「面白そう?」

 

 首を傾げるレミリア。すると耳元に従者からの声。

 

「妹様は、外に出てそれほど経っておりませんから、いろいろと新鮮なのではないでしょうか」

「……」

 

 レミリアは、一瞬、村に向かって行くフランドールから、目が離せなかった。楽しそうに走っていく後ろ姿が。

 やがて、目を伏せると、わずかに笑みを浮かべる。

 

「そうね。あの子の言う通り。こんな所でも、面白そうな事があるかもしれないわ。行きましょ、咲夜」

「はい」

 

 主従は、フランドールに合わせるように、少々はしゃいで彼女の後を追って行った。

 

 残された魔理沙達。三人の姿を神妙な顔で見ていた。どうしたものかと。

 

「行っちまったぞ」

「いっそ、あそこに泊めてもらう?」

 

 パチュリーは平然と提案。どこか楽しそうに。彼女自身も、あまり外に出ないタイプ。こんな村でも、多少は面白みを感じているのかもしれない。

 それにアリスの冷めた声。

 

「あんな村に、宿屋なんてある訳ないでしょ」

「別に宿屋じゃなくてもいいでしょ?それに泊めてもらえないなら、出て行くだけ。ま、できたらって程度の話よ」

「ならいいけど」

 

 結局、魔女達は紫寝間着の言い分に賛同する事にする。とことことゆっくり足を進めだした。

 

 村の中央の広場についた。すっかり日の落ちた時間だ。誰もいない。ただ、家々には薄暗い灯りが灯っていた。まだ寝るという程の時間でもないらしい。

 辺りを見回す一同。アリスが一言。

 

「やっぱり宿屋なんてないわね」

「ま、当然だろ」

 

 こうなると泊まるにしても、適当の泊めてくれる所を探すしかない。ただこの人数だ。ちょっと難しいかもしれないと思いながら。

 するとそんな彼女達を他所に、歩き出す姿が一つ。フランドールだ。近くの家に行き、窓から中をのぞき込む。楽しそうに。その後に、レミリアと咲夜もゆっくり続いた。

 

 その時、家の住人は窓の人影に気づいた。女の子が覗いている事に。一家は不信に思ったのか、夫がドアを開ける。

 

「なんだ、お前?こんな時間に」

「フランだよ」

「フラン?どこの子だ?それに……この辺りじゃ見ない顔だな。いったい……」

 

 男はフランドールの事をマジマシと見る。見れば見る程異様な姿。見た事のない服装に、宝石のぶら下がった奇妙な飾り。真っ赤な双眸。背中に冷たいものが走り始めた。おかしな悪寒が。

 するとフランドールは、人懐っこい笑顔を浮かべる。ニッという具合に。一方、男の目は見開いたまま、その笑顔から視線をずらせずにいた。

 何故なら、開いた口の中に牙があったから。

 

「きゅ、きゅ、吸血鬼!?」

「うん。そうだよ」

「う、うわぁーーーー!」

 

 勢いよく扉を閉めると、家の奥へ走り出す。一家は裏口から逃げ出す。

 

 一連の出来事を見ていた魔理沙達。帽子を抱え、目を伏せる。

 

「あちゃぁ」

「やっちゃったわね」

 

 やけに冷静な魔女達。ある程度は、想定していたのだろう。トラブルになる事を。

 

 すると突如、甲高い音。

 見張り櫓の鐘が鳴り響く。悲鳴を上げるように。

 一斉に村がざわめき立つ。村人がドアから次々に外へ顔を出す。

 

「いったいなんだ?」

「火事か?」

 

 全員が注目した見張り櫓。そこで鐘をならしている男が叫ぶ。

 

「吸血鬼だ!吸血鬼が出たぞ!」

 

 顔が青くなる村人。その中でふと気づいた者がいた。広場の中央に見かけない集団がいる事を。しかも何人かには羽が生えている事を。誰もが妖魔と思うしかない姿を。

 

「あ、あ、あそこだ!」

 

 彼が指差した先に、全員が視線を集中。村全体が起こった事を理解した。吸血鬼が、この村を襲おうとしているのだと。

 一斉に家へと戻る村人達。

 

 対する、幻想郷の住人はあまり動揺していない。パチュリーが溜息一つ。

 

「しようがないわね。とっとと出ましょ」

「そうね」

 

 人形遣いも賛成。

 何故こんなに落ち着いているかと言えば、飛んで逃げてしまえばいい事くらい、誰もが分かっていたからだ。

 

 レミリアもこの場はしようがないと思いながら、飛ぼうとした。すると、視界にさっきの村人たちが入って来る。家々から出てきたのだ。手に武器を持ち、人によっては鎧に身を固め。その姿は、恐るべき妖魔に前にして、逃げ出す農民のそれではなかった。むしろ、立ち向かおうとしている。

 

 ここは町や街道から離れた村。妖魔や賊に襲われれば、自分達の身は自分達で守るしかない。それに戦争に徴用される事もある農民たち。彼らの武装はバカできないものだった。そして吸血鬼は正体さえ分かってしまえば、比較的与しやすい相手だ。さらにこの村に限っては、それだけではない。強力な助っ人がいるのだ。

 

 村の端にある家、その助っ人の家に飛び込んでくる若者がいた。

 

「先生!」

 

 先生と呼ばれた少女達が振り返る。黒髪の少女達が。ダルシニとアミアス。メイジの医者と、この村では通っている双子の少女だ。だがその正体は、吸血鬼。しかし、人間を殺したりはしない珍しい吸血鬼で、ここの村人と共存していた。

 ダルシニが若者に近づく。

 

「あの鐘は何?」

「きゅ、きゅ、吸血鬼が現れた!」

「……!」

 

 ダルシニもアミニスも、思わずその身が固まる。自分達の事かと、反射的に思ってしまって。吸血鬼である事は、一部の村人にしか明かしていなかった。だが若者の表情は、吸血鬼を見ているような顔ではない。彼は外を指さす。

 

「広場の中心に、あいつらが集まってるんだ!」

「え!?」

 

 意外な言い分に、二人は窓から顔を出した。

 武装した村人たちが、大きく何かを囲んでいた。その中心にいる数人の少女達。中には羽の生えた者もいる。

 ダルシニは若者の方を振り返った。

 

「翼人じゃないの?」

「違う!牙を見たそうだ。それに自分から吸血鬼って言ってたって」

「……?」

 

 神妙な顔になる二人。自分達が知っている吸血鬼と、何か違う。首を傾げる。ともかく妖魔には違いない。あらためて若者に話かける。

 

「分かったわ。なんとかしてみる。村長さんには逃げる準備もしてもらって。それから、みんな無茶しないようにね」

「おう。分かった。先生が加勢してくれるってなら心強いぜ!」

 

 明るくうなずくと、若者は家から出て行った。アミアスが不安そうに姉に尋ねる。

 

「お姉ちゃん。吸血鬼に見えないんだけど」

「うん。でも妖魔には違いなわよ。羽生えてるんだもん。みんなを守ろう」

「うん。そうだね」

 

 吸血鬼である二人がこうしてここで平和に暮らしているのも、ヴァリエール公爵夫妻、そしてこの村人のおかげだ。その恩に応えないといけない。そう姉妹は心に決めた。

 

 一方、幻想郷メンバー。

 厄介な事からさっさと退散したい、とか思っていた。だが、違う事を考えていたのが二人ほど。

 お嬢様達が。

 ずいっと前に出るレミリア。胸を張って。やけに楽しそう。露骨に不敵な笑みを、浮かべていた。

 

「フッ……。月夜だというのに、吸血鬼に剣を向けるとはね。勇敢な人間は、嫌いじゃないわ」

 

 ニタリとさらに口元を釣り上げると、あえて牙を見せびらかす。真っ赤な双眸を、煽るように村人に向けた。

 

「相手をしてあげる」

 

 と言った瞬間、ギュンと真上へ飛ぶ。そしてピタッと宙に止まった。すると吸血鬼は、ゆっくりと両手を広げる。交響曲でも奏でるかのように。

 弾幕。レミリアを中心に弾幕が広がっていく。

 その量、ルナティッククラス。

 まさに空を覆い尽くす、光弾の嵐。

 

 突如、現れた無数の光の玉。空を赤で染め上げる。村人たちにとっては、空に天井でもできたかのよう。その天井に押しつぶされるような、恐怖が彼らの身を貫く。

 

「な、なんだ!?ありゃぁぁ!?」

「う、うわぁぁぁーーーー!!」

「に、逃げろーー!」

 

 村人たちは、一斉に武器を捨て逃げ出した。まさしく脱兎。脇目も振らず走り出すもの、転びかけながらも四つん這いで逃げる者、全員がレミリア達と反対側に走り出していた。

 

 さて、お嬢様の方はと言うと、高らかに宣言。それは謳うかのよう。

 

「胸に刻みなさい!恐怖と共に、我が名を!このレミ……。あれ?」

 

 だが、眼下には誰もいなかった。いや、先の方に、慌てて逃げてく村人の姿はあったが。

 白けて、ゆっくり降りて来るレミリア。

 

「何よ。逃げるんだったら、かかって来るんじゃないわよ」

 

 少々ご機嫌ななめ。隣にパチュリーが寄ってくる。こっちは呆れ気味。

 

「そりゃ逃げるわよ。弾幕なんて見た事ないんだもの」

「あ~、なんかつまんなくなっちゃったわ。もうルイズの所、行こうかしら」

「それとも、ここで、泊まっていく?家ならより取り見取りよ」

 

 と言って、家々に視線を向けた。

 確かに、ほとんどの住人は逃げ出して今は空き家だらけ。半ば追い出したようなものなのだが。それに、他人の持ち物には違いない。しかし、お構いなしの紫魔女。すると人形遣いが一つ忠告。少々呆れた態度で。

 

「さすがに、勝手に借りるのはマズイでしょ」

「とは言ってもねぇ。許可を貰うにしても持ち主は、どこかへ行ってしまったわ。なんなら色付けて宿泊代置いとけば?」

「けど……」

 

 もう少し言葉を添えようかとしたアリス。しかし、フランドールが一か所を指さして声をかけてきた。一斉に彼女を見る一同。指先はある家を差していた。

 

「あそこに、まだいるみたいだよ」

 

 全員の視線の先にあった家。灯りは消えているが、確かに気配がする。一同、なにやら考えてだす。そして最初に動き出したのが魔理沙。足を進めだす。肩にほうきを担いで。

 

「話付けてみるか」

「結局、泊まるの?」

「悪くないんじゃねぇか?それに、言い訳くらいしておいた方が、いいだろうしな」

「そう。武装してるみたいだから、一応気をつけなさいよ」

「おう」

 

 アリスも彼女について行った。

 一団から離れていく二人。目標の家の5メイルほど手前で、止まった。そして魔理沙が、声を張り上げる。

 

「ちょっといいかぁ?あのなぁ……」

 

 しかし、そこで停止。首を捻る。どう説明したもんだか、思いつかないので。

 

 吸血鬼というのは事実だが、危害を加える気はない、とでも言えばいいのか。しかしハルケギニアでは吸血鬼という時点で、人間の敵なのは当たり前。どうやって危害を加えないと説得するのか。では実は吸血鬼ではないと言うのか。しかし、さっきレミリアが飛んで、弾幕を撃ってしまった。系統魔法では飛びながら、魔法を使う事はできない。先住魔法と説明すれば、それはそれで妖魔確定である。適当な言い訳が思いつかない。

 白黒魔法使いは、腕を組んで悩みだす。口をつぐんでしまった。それはアリスも同じ。

 

 すると突然、後ろから大きな声。

 

「私たちは、吸血鬼と妖魔の集団よ!ちょっとここに泊まらせてもらうわ!代金は一応置いとくから!」

 

 思わず振り返る魔理沙とアリス。彼女達の視線の先にいたのは、こあとパチュリーだった。こあがパチュリーの告げた事を、そのまま大声で言っていたのだ。

 二人は怪訝な顔で、パチュリーを見る。何のつもりだと、言わんばかりに。対する紫魔女は、そんな事は分かっているというふう。

 

「この方が手っ取り早いでしょ?彼らはこっちを恐れて、何もしてこないわよ」

「それはそうだけど……」

「明日には、ヴァリエールの城に行かないといけないから、ここにいるのは一晩だけよ。一晩だけなら、この程度かまわないでしょ。旅の恥は、かき捨てって言うじゃないの」

「使い方、間違ってると思うわ」

 

 アリス、呆れた気味に溜息を漏らす。

 どうにもパチュリーは、この農村の民家に泊まってみたいらしい。何が彼女を引き付けているのか、アリスには今一つ分からないが。まあ、本で知るのと実感するのとでは、また違うという事だろうか。

 

 魔理沙とアリス、パチュリーが前にしている家。実は、ダルシニとアミアスの家である。用心して灯りを消したのだが、何故かいる事がバレてしまったようだ。

 実は、いっしょに逃げるよう村人から言われたのだが、妖魔達が彼らを追った場合防げなくなるので、ここに残ったのだ。

 

 カーテンの隙間から覗く二人。妖魔が四人、家の前に立ち止まっているのがわかる。その向こうには、残りの妖魔たち。

 顔を寄せ合う二人。アミアスが不安そうに聞いてくる。

 

「どうする?おねーちゃん?ちょっと泊まるだけって言ってるよ」

「ちょっとってどのくらい?妖魔のちょっとって、人間のちょっとと違うのよ」

 

 妖魔の寿命は、人間のそれより長い。ちょっとと言っても、意味合いがまるで違う可能性はある。長く居つかれれば、この村にとっては死活問題だ。ダルシニは、さらに不安そうな表情を浮かべる。

 

「それに……今、ヴァリエールって聞こえたわ。もしかして旦那様や奥様達を、襲おうとしてる連中かもしれない。たぶん、ここには準備をするため寄ったのよ」

「でも……」

「さっきの見たでしょ?変な魔法で、みんなを追い出して、勝手に泊まるとか言ってるのよ。あんな乱暴な連中なんて、信用できないわ」

「じゃぁ、どうするの?」

 

 ダルシニは固い表情で、妹の方を向いた。

 

「あいつらを引き付けるの。今に、村長さん達が、助けを呼んでくると思うから」

「旦那様と奥様?」

「うん。軍隊も連れて来ると思うわ。そうすれば勝てる。それまで頑張るの」

「分かった、おねーちゃん。私も手伝う」

 

 力強くうなずくダルシニとアミアス。お互いの手を取り合う。決意を胸に抱え、扉を開けた。

 

 表に出ると、視線の先に四人の妖魔。観れば見る程、奇妙な恰好。まるで祭り帰りかのように、カラフルな衣装なのだ。どうにも妖魔らしくない。妖魔はどちらかというと、粗末な衣装の方が多いのに。しかし、さっきの蝙蝠の羽のある妖魔が、村のみんなを追い立てたのは事実。しかも恩人である、ヴァリエール家を襲おうとしているのだ。

 みんなを守るという覚悟を強くし、妖魔を相対した。ダルシニは、厳しい視線を三人に向けると宣言する。

 

「あ、あなた達の思い通りには、させないわ!」

 

 と言って、家へと戻った。

 

 ダルシニとアミアスは吸血鬼だ。吸血鬼は先住、すなわち精霊魔法が使える。この魔法は、ものによっては系統魔法より強力だ。しかし弱点がある。"場"との契約によって成立する精霊魔法は、防衛戦など拠点を決めた戦いには有効だが、遊撃戦など場所を定めない戦いは苦手なのだ。船や馬車など移動する"場"を伴わない限り。

 さらに、二人はこの村中で戦う事になるなど、思っていなかったので、契約してあるのは自分たちの家だけなのだ。逆に家に引き込めば、かなり有利に戦いができる。そう思って家に戻ったのだった。

 

 だが、魔理沙達は全然違うように受け止めた。なんだか会話が成り立ってない双方。

 

「泊まるのダメ、って言ってるぜ」

「ま、当然ね」

 

 アリスもあっさりと、向こうの言い分を受け入れる。経緯はともかく、村人を追い出したのだ。泊まるのを許すはずもない。それに、トラブル上等でも、泊まりたいという訳でもないので。

 一方、パチュリーは残念そう。アリスは意外に思う。

 

「そんなに泊まりたかったの?」

「別に。たまにはいいかなって思っただけよ」

 

 言葉の割には、なんか不満げ。アリスはわずかに笑顔を浮かべる。こんな顔をするパチュリーも珍しい、とか思っていた。

 

「だったらルイズに頼んでみれば?一応大貴族の娘だし。どっか農家に一泊させてって言えば、なんとかしてくれるでしょ」

「それもそうね」

 

 急に納得顔の紫魔女。もう一度うなずくと、レミリア達の方へ戻っていった。魔理沙もアリスもそれに続く。三人を迎えるお嬢様。

 

「で?なんだって?」

「泊まるのはダメだそうよ」

「そ。んじゃぁ、ルイズの所に行くだけね」

「ええ」

 

 レミリアも、あまり泊まる事にこだわってなかった。幻想郷とそう変わらない農家と知って、すっかり興味をなくしていたのだ。

 ところがここで、咲夜が一言。

 

「あの……お嬢様。少しよろしいでしょうか?」

「何よ」

「家に、まだ火が灯ってるようなのですが」

 

 咲夜の言う通り、辺りを見回すと、家の中に明かりが灯っている。もちろん中に人がいる訳ではない。慌てて逃げ出したので、火をつけっぱなしにしてあったのだ。こあが何が言いたいか分かった、という具合にうなずく。

 

「あ~。これじゃぁ、火事になっちゃうかもしれませんね」

「でしょ?消しておいた方が、いいんじゃないかしら?」

 

 そう言いながら、主の方を向く従者。お嬢様は、腰に手を当て、しようがないという感じの表情。

 

「分かったわよ。好きになさい」

「ありがとうございます」

 

 礼をすると、さっそく明かりのついている家へ向かう咲夜。その後ろから、アリスもついて行く。

 

「手、貸すわ。こんなので火事になったら、いい気分しないしね」

「ありがと。それじゃぁ私は右の方を、アリスは左をお願いできる?」

「ええ」

 

 アリスは了解すると、さっそく人形達を繰り出した。小さな彼女たちが、家々へと向う。さらに魔理沙や、パチュリーから命令されたこあも手伝い始めた。ほとんど村人のいない家々。勝手にお邪魔する人外達であった。

 

 一方、ダルシニとアミアス。家に潜んで、妖魔を迎え撃つ準備をしていたのだが、ドアを開ける者はいない。構えていたダルシニから、緊張感が抜けていく。いい加減妙だと思い始めていた。実は彼女自身は、妖魔達を挑発したつもりだった。妖魔たちは怒って、一斉に向かって来る。それを、この家で迎え撃つ算段だったのだ。だがどういう訳か、近寄って来る気配すらない。

 

 彼女は妹の方を向く。アミアスも、首を何度も傾け、訳が分からないと言ったふう。

 

「来ないわね」

「うん。どうしたんだろ。どっか行っちゃったのかな?」

 

 二人は構えを解き、窓の傍までやってくる。またカーテンの隙間から覗いた。

 

「あ!」

「どうしたの!?」

 

 アミアスも彼女の下に、顔を突っ込む。

 二人に見えたのは、あちこちの家に勝手に入っていく妖魔達だった。

 

「何やってんのかな?」

「もしかして逃げ遅れた人、探してるんじゃない?」

「どうしよう……。やめさせる?けど、結構人数いるよ。それに吸血鬼って言ってたけど、他に翼人に、ガーゴイル使いもいるようだし……」

 

 ダルシニとアミアスは窓から覗きながら、これからどうするか頭をめぐらす。このまま様子を見るか。それとも戦うのか。ただ戦うと言っても、契約してない"場"で、この人数を相手にするのはかなり危険だ。一つハッキリしているのは、逃げるという手段は選べない事。もしも妖魔達が、村人達の方へ向かったら誰がそれを邪魔するのか。少なくとも二人には、その覚悟はあった。

 二人は妖魔たちの様子を眺めながら、胸の内を決めかねていた。

 

 

 

 

 

 ダルシニとアミアスが、村で妖魔達をどうするか悩んでいた少し前。村人が逃げ出して結構時間が経った頃。北上する一団がいた。数台の馬車と数頭の馬に騎乗した十数人の集団。馬車で通るには、少々狭い道を進んでいた。まるで人目を避けるように。

 シェフィールド達一行である。『アンドバリの指輪』奪還に失敗し、第二の任務、トリステイン魔法学院襲撃に向かっていた。

 

 だが、どういう訳か緊迫感が欠けていた。学生とは言え多数のメイジを相手にするという、厄介な仕事に向かうという割には。

 もっとも無理もない。この所、仕事がうまく行ってないからだ。主にシェフィールドのせいで。メンヌヴィル達は、むしろ彼女の下手打ちに、つき合わされているだけなのだが。おかげで彼らも不満を溜めている。一応報酬が出るので、そう大きなイザコザになっていないのが、せめてもの救いだ。

 

 こんな気の抜けた一同の中で、唯一緊張感、いや焦りを感じていたのが一名。シェフィールドである。馬車の中に腰を下ろしながら、いろんな事が頭を巡っていた。これからの任務が上手く行っても、ただの時間稼ぎにしかならない。何も解決しないからだ。

 

 『アンドバリの指輪』がない状態で、どう神聖アルビオン帝国を維持するのか。

 別のマジックアイテムを、皇帝に用意するのか。

 だとしても、クロムウェルの魔法が突然変わった事を、どう重臣達に納得させるのか。

 さらに指輪がない状態で、トリステイン、ゲルマニア連合軍をどう迎え討つのか。

 

 問題山積である。

 ガリア王の使い魔は、眉間に皺をよせ、ブツブツと独り言すら漏らしている。周りの部下達がちょっと引いているのに、彼女は気づきもしなかった。

 

 一方、メンヌヴィルは馬車の中で、気の抜けた態度で酒を口にしていた。それでも気分は今一つのようだ。

 

「チッ、全然酔わねぇ。酒がマズイぜ。あの便所女のせいだ」

「いっそ、仕事投げちまいます?」

 

 部下もうんざりしたような口ぶりで言う。だが隊長は、それにうなずかない。

 

「いや……。妙な予感がまだある」

「あんとき言ってた……」

「ま、今度下手打ちやがったら、あの女、メシのタネにするけどな」

「いい金になりますぜ」

「フッ」

 

 下卑た笑いを浮かべるメンヌヴィル。他の傭兵たちも似たようなもの。彼らは、こんな調子の無駄な話を続ける事で、目的地までの時間を潰していた。

 だがその時、ふと白炎の表情が変わる。茶化していたよう表情が、わずかに緊張感を纏っていた。探る様に外を向く。そんな隊長に、部下が怪訝そうに尋ねた。

 

「どうかしやしたか?」

「森の中から、こっちに向かってくる連中がいる。結構な人数だ」

「盗賊ですか?返り討ちにしちまいましょう。いい気晴らしになりますぜ」

「違うな……。逃げてるって感じだ。それにこりゃぁ……百姓だな」

 

 メンヌヴィルは目が見えない代わりに、耳と鼻、そして温度に敏感だった。森の奥から聞こえて来るわずかな足音から逃げている事を、匂いから相手が農民である事を探り当てた。

 やがてその集団は、部下たちにも見えて来た。

 

「見えやしたぜ。百姓共だ。確かに慌ててやがる。さすが隊長ですぜ」

「へっ……」

 

 わずかに口の端を釣り上げる白炎。

 だが頭の中は別の事が巡っていた。何故こんな裏街道に農民たちが逃げ込んできたのか。そもそも一体何から逃げているのか。

 メンヌヴィルは御者の方を向く。

 

「おい!止めろ!」

「え?へ、へい」

 

 馬車が止まると、彼は降りた。それに部下たちが続く。不思議そうな顔をしながら。

 やがて、農民たちは森から小道に出てきた。白炎はそれに声をかける。

 

「おい!」

「え!?」

 

 振り返った連中の顔は、あきらかに動揺している。今まで気を張っていたのだろう。突然声を掛けられ、戸惑っていた。茫然とメンヌヴィル達を見ていた。やがて一人の老人が前に出て来る。どうやら、村長らしい。

 

「その……これは貴族の方々でしょうか?大変申し訳ありませんが、我々は急いでおりして……」

「逃げてる途中なんだろ」

「は、はぁ……そうなのです……」

「何から逃げてきた?」

「吸血鬼です」

「吸血鬼だぁ?」

 

 メンヌヴィルは顎に手を添えると、考え込む。同時に体中の感覚を張りつめた。

 吸血鬼から逃げたと言っているが、今ここにいる連中の中に潜り込んでいる可能性もある。何と言っても、今は夜なのだから。吸血鬼は自由に動ける。彼は会話を続けながら、探りを入れる事にした。

 

「って事は、今、てめぇ等の村は日干しの死体だらけか」

「そうではありません。いきなり村に現れたのです。自ら吸血鬼と名乗り出て」

「そりゃ、あたまのおかしい人間だろ」

「いえ、魔法を使ったのです!いくつもの光を撒き散らすような魔法を!」

「なんだ……そりゃぁ?」

 

 怪訝な表情になる白炎。それは部下たちも同じ。いくつもの光を撒き散らす魔法など、聞いた事がない。

 だがその時、ふとメンムヴィルの脳裏に一つの光景が浮かんだ。ロンディニウムでの光景が。多数の稲光を操る妖魔が。見覚えのない魔法が。

 彼は村長に向き直る。

 

「一つ聞きてぇ。そいつは魔法を使う時、詠唱していたか?」

「えっと……確か……。いえ、してません。無言でした。杖も持ってません」

「決まりだな」

 

 白炎の笑みが浮ぶ。今までの皮肉じみたものではない、久しぶりの獲物を見つけたような笑みが。

 

 系統魔法にせよ、先住魔法にせよ、詠唱は必ず必要。詠唱を必要としない魔法の使い手には、一度しか会ったことがない。それがあのロンディニウムでの妖魔だ。間違いない。あの連中だと、確信した。もっとも、こんな所で出会うとは予想外だが。しかし、借りを返す絶好の機会。今でも、手玉に取られた屈辱は、忘れていなかった。白炎は、思わず笑い声を漏らす。

 

 するとその時、先の方から、露骨に不満気な女性が近づいて来た。足に文句を込めたかのように大股で。シェフィールドだ。先頭を進んでいた彼女達は、メンヌヴィル達が後ろで止まっているのに気付き、引き返してきたのだった。

 シェフィールドは、文字道理不満をぶつける。

 

「何をやっているの!こんな所で、足を止めてる暇はないのよ!」

「いや、むしろここは足を止める所だぜ」

「お前……!依頼を断る気か!?」

「そうじゃねえよ。まあ聞け」

 

 メンヌヴィルはシェフィールドに近づく。そして耳元で囁いた。

 

「水の精霊の仲間を見つけた」

「え!?どういう事よ?」

「つまりだな……」

 

 驚く彼女に、下卑た笑いで経緯を説明する白炎。

 目の前にいる農民は、突然現れた吸血鬼から逃げてきたこと。その吸血鬼は見た事もない魔法を使った事。しかもその魔法は系統でも先住でもない事。そしてそれに類似したのは、あのロンディニウムの賊しかいない事。

 一通り話を聞き、シェフィールドは腕を組んで考え込む。

 

「その連中を捕えれば……」

「ああ。あんたが探してるブツの在処も、分かるかもしれねぇって訳だ」

 

 確かにメンヌヴィルの言うとこは分かる。しかし大きな問題があった。その水の精霊の仲間だが、ロンディニウムでは300人以上の兵を繰り出して、逃がしたという事実があったからだ。

 

「だが……あれだけの人数を揃えても、逃がしたのよ。そんな相手をどう、捕えるって言うの?」

「逃がしたのは、あの妙な光の魔法のせいだ。人数は関係ねぇ。あれは武器を奪う効果があるらしい。だがそれさえなきゃぁ、なんとでもなる」

「報告書では、稲光と閃光のせいでまるで近づけなかったともあったが……。どうなんとでもなるのかしら?」

「フッ……」

 

 余裕の笑みを浮かべる白炎。何もかも、分かっていると言わんばかりに。

 

「連中には、致命的な弱点がある」

「何よ?」

「人が殺せねぇんだよ。いや、怪我させるのも嫌がってる感じだったな」

「はぁ?」

 

 一瞬意味の分からない、シェフィールド。稲光をいくつも操り、閃光で人を吹き飛ばす魔法を使う連中が、他人の死どころか、怪我すら恐れるとはどういう意味かと。

 メンヌヴィルは、相変わらずの不敵な態度で話を続ける。

 

「宗教なのか信念なのかは知らねぇ。だがマジだ。ロンディニウムじゃぁ、怪我人はいたが、死者はいなかったろ?怪我だって、軽かったはずだぜ」

「確かに……。ドラゴンから落ちたワルド子爵以外は、大した怪我をした者はいなかったわ……」

「だろ?そこがつけ入る隙だ」

「…………」

 

 腕を組んでうつむくシェフィールド。考えを巡らす。だが解答はすぐに出た。そもそも『アンドバリの指輪』がなければ、神聖アルビオン帝国は立ち行かないのだ。その重要アイテムを取り戻す、手がかりが偶然見つかったのだ。こんな機会を逃す手はない。学院襲撃などこれに比べれば、二の次である。

 

「分かったわ。やりましょう」

「そうこなくっちゃな。へへ……」

 

 正に獲物を前にした猛獣の笑い、とでも言うのだろうか。白炎は、やけに楽しそうで凶暴そうな笑みを浮かべていた。それを冷めた目で見る、虚無の使い魔。

 

 やがて、シェフィールドは、態度を突然あらためる。皇帝秘書の態度に。そして村長の方へ、柔らかそうな表情を向けた。

 

「吸血鬼とは、それはお困りでしょう。実は私達は、妖魔退治を生業としているメイジです。その吸血鬼、私達が退治して差し上げましょう」

「それは!ありがたい申し出です。ですが……その……何分貧しい村でして……。お支払が……」

「いえ、お金はいただきません。私達は妖魔の死体を売って、収入としているのです」

「売れるのですか?妖魔の死体が?」

「ええ。高額で」

「はぁ……。でしたら、是非ともお願いいたします」

 

 村長は深々と頭を下げた。

 

「しかし、このような奇特なメイジの方々と偶然出会えるとは、私達は運がいい」

「ええ、お互いに」

 

 シェフィールドの表情は柔らかなままだが、どこか不敵なものを漂わせる。

 

 そして副村長である息子が、村への案内する事となった。森の奥へと進む村長の息子。シェフィールドとメンヌヴィル一向は、今まで溜まった不満を全部爆発させるつもりかのように、勇ましい足取りで彼の後に続いた。

 

 ところで、ロンディニウムの妖魔と称された、衣玖や魔理沙。彼女達が相手を殺さなかったのは、全く個人的な都合だった。衣玖には五戒の縛りがあったし、魔理沙はそもそも、殺しというもの自体に縁遠かった。さて、村にまだいるお嬢様達は、どうだろうか?

 

 

 

 




 最低でも、シェフィールド、メンヌヴィル戦まで書こうと思ったのですが、思った以上に文章が多くなってしまいました。とりあえず、戦闘直前までという事で。

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