Communio -In Paradisum-   作:白鷺 葵

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1-4小節.《奉納の巡業》

「――いィィィィやァァァァァァだァァァァァァ!!」

 

 

 わき目もふらず、人目も憚らず、成人男性が叫び散らす様を何と例えよう。

 娘と娘の同行者が青年を引きずろうとする姿を眺めながら、グラジオ・エーテルは沈黙していた。

 

 ……いや、正確に言えば、『何を言えばいいのかさっぱり分からなかったから、黙っているしかなかった』と称する方が正しいかもしれない。

 

 街頭に縋って「梃子でも動かぬ」と叫ぶのは、青い髪を滅茶苦茶に振り乱す成人男性――サネチカ・アカザだった。眼鏡は派手にずり落ち、貴族風の衣装はしわくちゃになっている。

 ポケモンコンテストやコーディネーターがどのようなものか、アローラ出身のグラジオにはよく分からない。だが、少なくとも、あそこまでゴネるのは問題だと言うことは分かった。

 

 

「師匠! 財団で手続するだけなのに、どうしてそんなに嫌がるんですか!?」

 

「訊くな馬鹿弟子! 俺にだって黙っていたいことの1つや2つくらいある!」

 

 

 シトナベ ヒスイの問いかけをばっさり切り捨てたサネチカは、必死になって街頭に縋りつく。

 

 彼は、グラジオたちの目的地――セクエンツィア財団の本社ビルに対し、頑なに背を向けていた。視界にも入れまいとしているあたり、セクエンツィア財団そのものに対して強い苦手意識があるらしい。嫌悪というよりは、怯えの色合いが強そうだった。

 ヒスイやナトセが力づくでサネチカを連れて行こうと試みているが、サネチカはずっとずっと抵抗していた。あの様子だと、自信の手持ちポケモンを繰り出す騒動になりかねない。グラジオがそこに行き当たったのと、ボールの光幕が炸裂したのはほぼ同時。

 

 

「ヴァン、手を貸してくれ!」

 

「レグルス、手伝って!」

 

「やめろと言ってるだろうが! リヒト、こいつらを止めろォ!」

 

 

 ヒスイのヴァン/リザードンとナトセのレグルス/タイプ:ヌルが飛び出し、サネチカを連れて行こうとする。

 勿論、サネチカも黙って連れていかれる気は無いのだろう。彼はリヒト/デンリュウに助けを求めた。

 炎や雷が迸る。ちなみにここは街のど真ん中だ。野次馬たちが何事かと集まっていている。通行人の迷惑になる行為を見過ごすわけにはいかない。

 

 グラジオは、自分の隣にいた相棒――シルヴァディに視線を向ける。純白の体躯が神々しく見えたのは、長い付き合い故の贔屓目か。

 シルヴァディは呆れた様子で兄弟/レグルスを見つめていたが、グラジオの意図を察したらしく、小さく頷き返した。

 

 ――そうして、愉快な3人組へと向き直る。

 

 

「――お前たち、いい加減にしないか!」

 

 

 グラジオの叫びに呼応するようにして、相棒は地面を蹴って飛び出した。

 

 

★★

 

 

「やあ、ダイゴさん。それにショウマくん。お待ちしていましたよ」

 

 

 レックスは穏やかに微笑みながら、ショウマとダイゴを迎え入れた。ショウマはチグサを伴いながら席に腰かける。

 

 彼の佇まいに眩しさを覚えたのは、部屋にある窓の位置とレックスの立ち位置が原因だろう。レックスが立っている場所の後ろは、丁度ガラス張りになっていた。

 社長室があるのは、20階建ての高層ビルの19階。高さ的に、パッションシティ全体を見下ろすことができる。雲一つない蒼穹の下には、他のビル群や大通りが一望できた。

 燦々と差し込んでくる太陽の日差しがレックスの後光に見えたのは、きっと気のせいではないのだろう。ショウマはそんなことを感じながら、ゆっくり目を細めた。

 

 

「先日は申し訳ありませんでした」

 

「いいや。大の大人や警察機構すら、レクイエム団には近寄りがたいと感じる者が大多数だ。そんな連中に対し、逃げずに立ち向かったキミは素晴らしいトレーナーだよ」

 

 

 先日、ツワブキ親子は会食をすっぽかすような真似をした。わざとでなかったとしても、あまり褒められる結果ではない。一歩間違えれば、デポンコーポレーションという会社の信用失墜に繋がるのだ。今回の結果がセーフだったのは、ひとえに“レックスの器が大きかった”ためである。

 レックスは先日のことを気にしていないようだ。むしろ、ショウマの行動を「素晴らしい行為である」と褒め称えてくれる。デポンコーポレーションの富に浴して育った身として考えると微妙だが、やはり、人から褒められると嬉しく思うのだ。あと、とても照れ臭い。チグサも誇らしげに胸を張った。

 

 そんなショウマに対し、ダイゴは深々とため息をついた。息子が褒められて嬉しいのが半分、社会人や会社という常識から考えると“リスクが多すぎた”ことに対する懸念が半分なのだろう。褒めるか叱るか――堅実に生きたいダイゴにとって、後者の方にウエイトが傾くのは当然だった。

 

 

「ダイゴさんも、息子さんの将来が楽しみでしょう?」

 

「……まあ、そうですね。もうちょっと堅実に生きてほしいな、とは思いますが」

 

 

 ダイゴは眉間の皺を深くしながらも、ショウマを見て目を細めた。その表情は、母・ハルカが何かをする度に浮かべていたものと非常によく似ている。

 “苦言を呈したいのに、自分にはその資格は無いから――その行動のおかげで救われている身だから、反対意見を述べることができないのだ”と言わんばかりに。

 母がまだショウマと同じ年頃の少女だったときから、父は今みたいな顔をしていたのだろう。その姿がありありと浮かんできた。

 

 ダイゴはどんな気持ちで、ハルカの姿を見ていたのだろうか。

 

 初めて2人が出会ったのは、ムロタウン郊外にある石の洞窟だったらしい。それから2人はちょくちょく顔を合わせるようになり、惹かれ合っていったという。グラードンやカイオーガのゲンシカイキ事件やホウエン地方へ隕石が接近する事件などを経て、結婚に至ったそうだ。ダイゴは今でもハルカにべた惚れだし、ハルカもまた然りである。

 周囲から話を聞く限り、昔の父は「恋愛に現を抜かすような性格ではなかった」だの、「10歳近く年齢(とし)の離れた少女を伴侶に選ぶような無茶を押し通すような人間ではなかった」だの、「周りの女たちの影響で、結婚に対する興味が失せ気味だった」と聞く。

 

 『堅実に生きるように』と常々言い聞かせてくる父だが、恋愛の話になると途端に閉口してしまうのだ。やはり、母との一件があるためだろう。閑話休題。

 

 

「ショウマくんは、将来はご両親のようにポケモンリーグチャンピオンを目指す予定なのかい?」

 

「いいえ。僕の夢は技術者になることなんです」

 

 

 ショウマの答えを聞いたレックスは目を見開く。彼の瞳の色は、どこか冷ややかな色彩を宿す水色らしい。

 

 

「勿体ない。これ程までの才能を持っているのに、磨かないなんて……」

 

「父は父、母は母、僕は僕ですから」

 

 

 レックスの言葉に対し、ショウマは苦笑した。

 

 元リーグチャンピオンでホウエン大企業の現・社長である父親と、元リーグチャンピオンにして現・ポケモンブリーダー兼社長夫人として活躍している母親――その系譜を受け継ぐショウマは、誰がどう見ても、ポケモントレーナーとしての才能を有したサラブレットである。その影響か、『周囲より実力が抜きん出ている』と評されていた。

 それ故か、ショウマが「将来の夢は技術者である」と語ると、誰もが驚き「勿体ない」と言う。才能や適正があるからといって、本人がその道を選ぶとは限らない。自身の能力(できること)希望(やりたいこと)が、必ずしも合致するわけではないのだ。夢を見て、未来を選択する自由と権利は保障されるべきである。

 

 しかし、レックスは酷く不満そうにショウマを見つめる。居心地悪くなってきたショウマを庇うかのように、父が咳払いした。

 そのまま2人はビジネスの話を始めたが、やはり、事あるごとにレックスは「その才能は勿体ない」と零し続けた。

 ダイゴがその話題から逸らそうとするものの、結局は「ショウマくんの才能を放置するのは勿体ない」という話題へ戻ってくる。

 

 

(何かいい手は無いものか……。話題を逸らすには――)

 

 

 ふと、ショウマの目に留まったものがあった。レックスが身に着けているネクタイピンである。

 何をモチーフにしたのかは分からないが、『遺跡などで見かける壁画』風のデザインだ。

 

 フォルムはドダイトスと非常に近いが、背中に背負った木はドダイトスと比べ物にならぬ程大きい。文字通りの“大樹”――いや、“世界樹”であった。世界樹は、果実をたわわに実らせている。神々しいような、禍々しいような――どこか異彩な雰囲気を撒き散らしていた。

 

 

(……何かのポケモンをモチーフにしたんだろう?)

 

 

 ショウマは思わず、レックスのネクタイピンを凝視した。ドダイトスはあくまでも類似例であり、ピンのモチーフになったポケモンとは全く雰囲気や見た目が異なっている。

 ネクタイピンはあくまでもシルバーアクセサリーなので、モチーフになったポケモンの身体の色は分からない。だが、今まで見たことが無いポケモンであることは確かだった。

 丁度、レックスがこちらの眼差しに気づいたらしい。「このネクタイピンが気になるのかい?」と声をかけてきた。ショウマは迷うことなく頷き返す。

 

 ――気のせいか、レックスの目が大きく見開かれた。

 

 心なしか、表情が一段階明るくなったように感じる。吉と出たのか凶と出たのか、判別がつかない。

 ショウマが思わず身構えたのと、レックスが破顔したのはほぼ同時だった。

 

 

「私のネクタイピンに興味を示すとは、お目が高いね。流石はショウマくんだ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「これは、コムニア地方に伝わる伝説のポケモン・ドミネエスを象ったものなんだ。ドミネエスは、この世界を楽園へ導くポケモンと言われていてね――」

 

 

 水を得たコイキングか、森の中のジュカインか、貰い火で火を吸収する炎ポケモンか。

 

 何かのスイッチが入ったらしく、レックスは怒涛のマシンガントークを披露する。語りが熱っぽいのは、ドミネエスというポケモンに入れ込んでいるためだろう。

 ……成程。ショウマの選択は、此度は悪手として作用したらしい。ダイゴが眉間の皺を一層深くしてこちらを小突いてきたので、ショウマは視線で謝る。

 

 チグサも何か言いたげにショウマを見つめてきた。大人しくしていてくれと囁きながら、チグサの頭を撫でてやる。チグサは静かに目を細め、沈黙することを選んだ。

 

 だが、レックスは親子と1匹のやり取りに一切気づいていない様子だった。

 彼が話を終えたのは、時計の針が半周した後。ようやく正気を取り戻したらしく、彼は罰が悪そうに視線を彷徨わせた。

 

 

「いやあ、お恥ずかしい限りです。ドミネエスの話になると、ついつい話し込んでしまって……」

 

「ははは。……僕も似たようなものなので、貴方のお気持ちはよく分かります」

 

 

 レックスをフォローしたダイゴであるが、自分の悪癖――石のことになると熱中してしまう――を引き合いに出したことで、その際に発生したトラブルを思い出してしまったのだろう。レックス同様、父も罰が悪そうに視線を逸らして苦笑した。

 ……無茶をしたことがバレて、ハルカに叱られるときも同じ顔をしていたか。つい最近発生した“トウカジム倒壊寸前事件”で猛威を振るった<画竜点睛>を思い出しながら、ショウマは曖昧な笑みを浮かべた。

 

 誤魔化すように咳払いをする大人2人と子ども1人。絵面にすると、何とも珍妙な光景である。

 

 何度か咳払いし終えた男3人は、取り繕うようにして向き直った。

 口火を切りづらい雰囲気が漂う。そんな中で口を開いたのは、レックスだった。

 

 

「外部の方にこういうことを進めることは滅多にないんだが……キミの実力に魅せられた者として、コムニア地方出身者として、コムニアの文化を愛する者として、提案したいことがあるんだ」

 

「えっ?」

 

「我がコムニア地方に伝わる風習――《奉納の巡業》に、挑戦してみないか?」

 

 

 何の脈絡もなく、突然の提案に、ショウマは目を丸くする。つい反射的に「《奉納の巡業》?」と鸚鵡返しすれば、レックスは微笑んで頷き返した。

 

 

「コムニア地方にジムやリーグはないが、トレーナーとしての実力試しと言われる独自の風習があるんだ。形式的には、アローラ地方に伝わる《島巡り》に近いかな?」

 

「《島巡り》……?」

 

「ああ、アローラ地方以外の出身者には、ちょっと想像つかないか。あちらの方では、『各島にいる《キャプテン》と呼ばれる立場の人間が出す試練を突破し、最後はその島にいる《島キング》や《島クイーン》の大試練――彼等とのバトルに勝利することでスタンプを集める』形式になっているんだ。《キャプテン》の出す試練は、バトル以外にも様々な要素があってね。一筋縄ではいかないんだよ」

 

「へえ。詳しいんですね、レックスさん」

 

 

 すらすらと異国文化を諳んじたレックスに、ダイゴは感嘆の声を上げた。

 

 

「《島巡り》を受けられるトレーナーは、“アローラ地方出身者”や“アローラ地方でトレーナー登録をした人間”に限られているから、外部の人間で詳しく知っている人間は珍しいんですよ」

 

「財団職員の中にアローラ出身者の方がいましてね。島巡りを終えて、こちらに移住してきたトレーナーも多いんです。……確か、ヘンヴィルくんやカノアくんもその1人だったな」

 

 

 レックスが《島巡り》に詳しいのは、名前を挙げた2名――ヘンヴィルやカノア、移住してきたトレーナーから詳しい話を聞いていたためだろう。

 状況によっては、各地方のお国柄を語り合い、比較し合うこともあったのかもしれない。その光景は、非常に活気に満ちていそうだった。

 

 

「コムニアでは、『各地にいる実力者《アニュス・ディ》からの試験を受け、エンブレムを集める』んだ。最後は、『北にある霊峰に、今まで集めたエンブレムを奉納する』ことで巡業は完了する」

 

「もしかして、《アニュス・ディ》の方々から出される試練も……」

 

「ああ。単純なポケモンバトルだけじゃない。様々な制約がついた形式でのポケモンバトル、様々な分野のパズルやクイズ、町全体の水路を使った水上レースなど、街の特色に合わせた多彩な内容となっているよ。――この地でしか体験できないものばかりだ」

 

 

 ――レックスの言葉が、ショウマの琴線に触れる。

 

 ()()()()()()()()()()()()――レックスはただ単に、事実を述べただけだ。実際、彼から聞いた《奉納の巡業》はコムニア地方に伝わる独自文化にして独特の風習である。本土のジム戦では体験できないことばかり。

 ショウマの将来の夢は、デポンコーポレーションに勤める技術者だ。技術者とトレーナーを兼任する者もいるが、ショウマは別に、両親のようなリーグチャンピオンになるつもりはない。技術者としての勉強という意味では、《奉納の巡業》を受けるメリットは少なかった。

 

 ……頭では「そう」だと分かっているのに、どうしてだろう。ショウマは、自分の奥底から湧き上がってくる興味関心に飲み込まれていた。

 《奉納の巡業》に挑戦することが、非常に魅力的なことだと思えたのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()という感覚に突き動かされる。

 気づけば、ショウマの口元は綺麗な弧を描いていた。心なしか、背中にゾクゾクとした期待が走る。どくん、と、心臓が強く脈打った気がした。

 

 

―― 夢も希望なんて保証できないし、待ち受けるのはトラブルだらけ。それでも1つ言える確かなことがある。『この旅は、ショウマにとって、決して忘れられない旅になる』 ――

 

―― 現実は甘くない。人生が長い旅路に例えられるように、困難苦難が待ち受ける。だが、諦めてはいけない。毒も薬も全部飲み干し終えたとき、その旅路は得難いものになる ――

 

 

 『鎮魂歌は歌われず、楽園は何処にも無い。在るのは現実のみ』――夢で聞いた言葉が、ショウマの頭の中でリフレインする。

 “()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”――ショウマの本能は、そう直感していた。

 

 

「ショウマ」

 

 

 隣から響いたダイゴの声に、ショウマは思わず振り返る。――どこか苦々しい表情を浮かべたダイゴと目が合った。

 こちらに冷や水をかけてくるような空気が漂う。けれどそれは、ショウマの期待や希望の火を消すには、全くもって威力不足であった。

 親子2人、無言のまま見つめ合う。沈黙でこそ語り合う。

 

 先に根を上げたのはダイゴの方だった。泣きたいのか、笑いたいのか、喜びたいのか、悲しみたいのか。相反する感情を宿した天色(あまいろ)の瞳は、どこか切なげに細められる。彼の笑い方は、やっぱり、ハルカが無茶したときに見せるものと同一だった。

 “言いたいことは山程あれど、自分には口出ししたりとやかく言う資格は無いのだ”――己の無力さを噛みしめながらも、ショウマがこんな表情を浮かべる理由に心当たりがあるらしい。だが、自分ではうまく説明できないと確信しているからこそ、ダイゴは肩を竦めてため息をついたのだろう。そんな気がした。

 

 

「――成程な。……()()()、運命に選ばれた人間ってことか」

 

「父さん?」

 

「……お前も16歳だ。どうするかはお前自身が決めればいい。僕は、お前の判断を尊重するよ。やりたいと思ったなら、迷う必要は無いからな」

 

 

 ダイゴはそう言うなり、ショウマの頭へ手を置いた。そのまま、くしゃりと頭を撫でられる。なんだか照れ臭くなって、ショウマは肩を竦めた。

 

 

「ヴィーダ」

 

「畏まりました。『外部出身者による《奉納の巡業》への推薦状と、該当者の参加手続き』ですね」

 

 

 《奉納の巡業》に挑戦する――その意志は、自分たち親子の話を聞いていたレックスにも聞き届けられたらしい。レックスは隣にいた男性秘書に合図する。ヴィーダは2つ返事で頷き返した。彼は即座に自分の仕事を開始する。迷いも躊躇いも無い、確固たる意志を感じた。

 ヴィーダは黒髪を清楚で爽やかなベリーショートに整えており、銀縁の眼鏡をかけている。着ているグレーのスーツも、さりげなくシャークスキン加工が施されていた。書類をめくる手つきや端末を高速で操作する様子からして、秘書としても優秀なのだろう。ショウマはひっそり感嘆する。

 

 

「ショウマくん。巡業への参加を表明してもらったが、大変申し訳ない。手続きに少々時間がかかるんだ。その間、少し待ってもらえないかな?」

 

「分かりました。適当に時間を潰してきます」

 

「その間、ウチの財団を自由に見て回って構わないよ。許可は私の方から出しておくからね」

 

 

 レックスは苦笑しながら、ヴィーダから手渡された書類の山を受け取っていた。それらすべてが、『ショウマが《奉納の巡業》に参加するために必要な手続き』関連の書類らしい。

 父や祖父が書類仕事に格闘する姿を見てきたショウマには、一目見ただけで、件の書類は容易に片付くものではないと察知した。

 勿論、隣に座っていたダイゴも同じだろう。――案の定、「ご迷惑かけます」と苦笑したダイゴの横顔は、ショウマが予想した表情と瓜二つだった。

 

 

***

 

 

 手続き書類に格闘するレックスを残し、ツワブキ親子は彼の部屋を出た。

 

 財団代表の部屋へ繋がる廊下の装飾は、ダークカラーで纏められている。周囲に飾られている調度品も、あまり華美なものは見当たらない。レックスのネクタイピンを見た後に改めて確認して気づいたことだが、調度品はすべてドミネエスをモチーフにしたものばかりだ。

 部屋の入り口に置かれた観葉植物の植木鉢も、扉の取っ手も、ブラインドを調節する際の紐に付けられた引手も、ドミネエスを象った装飾が施されている。絵画もだ。30分にも渡るドミネエス談義を聞かされたことも相まって、レックスの信心深さが伺えた。

 

 

「流石は信仰の地だな。シンオウとは違った意味で、古代の伝説ポケモンに対して関連深いらしい」

 

 

 ダイゴは調度品を確認した後、顎に手を当てて唸った。あちらでも神話という形で伝説のポケモンに関する情報が残されているが、現代社会との繋がりはあまり密接ではない。

 神話に関しては、図書館の本や年長者が語り聞かせるくらいでしか触れることはないのだ。しかも後者は、カンナギタウン出身者に限られる。

 コムニア地方のように、“現代社会でも、伝説ポケモンに関する情報に関して、密接に関わりが残されている”というのは、非常に珍しいパターンなのかもしれない。

 

 だが、ダイゴはそこから“少し別な所”へ連想を繋げたのだろう。非常にげんなりとした表情を浮かべた。

 

 

「……アイツ、今日も元気に遺跡を徘徊して回ってんのかなぁ」

 

 

 「10段くらい重ねたアイス片手に持ってさ。アイス舐めた手を、人のクラバットで拭いやがって……」――ダイゴは昔のことを思い出したらしい。重々しくため息をついた。

 

 父が語っている人物は、留学先のイッシュ地方で出会った友人の1人だ。リーフェウス同様、同じ師匠の元で学んだ者同士である。彼女とリーフェウスを含んだ3人組は、一部界隈では師匠の名を冠して“ジュドースリー”と呼ばれていたそうだ。

 その名前が定着したのは、ダイゴ・リーフェウス・彼女が同時期にポケモンリーグチャンピオンとして殿堂入りを果たしたことがきっかけである。その頃、父たちの師匠――ジュドー・フォルトゥナートがイッシュ地方の現役チャンピオンとして君臨していた。このことも関わっていたのかもしれない。

 

 当時のことを思い出しただけで、彼は酷く疲れ切った横顔を浮かべていた。詳しい話はあまり聞かせてもらえないが、色々振り回されてきたのだろう。

 虚ろな瞳としょっぱい顔。父は虚空に視線を向けながら、またため息をついた。「フカマルの巣穴……僕の石……」と呟き、その背中を震わせている。

 ダイゴにどう声をかければいいのか分からず、ショウマが思案していたときだった。廊下奥にあったエレベーターの到着音が響き、扉が開く。

 

 

「あれ? ショウマくん?」

 

「ナトセさん!」

 

 

 エレベーターから出てきたのは、先日パッションシティで顔を合わせた少女カメラマン・ナトセと、弟子入りを賭けた野良コンテストバトルに挑んだコーディネーター・ヒスイだった。思わぬ再会に、ショウマは彼女の元へ駆け寄る。

 

 

「どうしてここに?」

 

「パパがセクエンツィア財団の代表と話があって。私とヒスイくんは《奉納の巡業》について報告があったから」

 

 

 ナトセはそう言いながら振り返った。視線の先には、ナトセたちより遅れてエレベーターから降り立った男性の姿があった。

 透けるようなプラチナブロンドの髪、特徴的な前髪が真っ先に目に留まる。鮮やかな深緑の瞳は、ショウマの眼差しを受けても揺らがなかった。

 白を基調にしたジャケットの胸元には、見覚えのあるマークが刻まれていた。――アローラ地方でポケモン保護活動を行っている、エーテル財団のシンボルマーク。

 

 

「……エーテル財団?」

 

「うん。パパ――グラジオ・エーテルは財団の代表を務めてて、ポケモン保護に関する意見交換と視察のためにここに来たんだ」

 

「ナトセはエーテル財団のお嬢様なんだよ」

 

 

 ナトセの言葉を引き継いだのはヒスイだった。彼はちらりと、プラチナブロンドの男性――グラジオ・エーテルに視線を向ける。

 グラジオはこちらではなく、虚ろな顔して天井を眺めはじめたダイゴを見ていた。不思議そうな顔は、何か確信を得たような表情へ変わった。

 

 

「……ツワブキ社長?」

 

「誰が冬の沼でヘイガニ捕りなんかするんだよ。分布的に、ヘイガニはこの沼にいないだろうが。ドジョッチ捕りもしないからな。いい加減にしろシロナ。この前も、お前のせいで碌な目に――」

 

「ツワブキ社長」

 

「うわっ!?」

 

 

 グラジオに声をかけられ、ダイゴはビクッと肩をすくませた。いきなり過去から現実へ引き戻された衝撃か、少し呆けたような顔をして声の主を探す。

 天色(あまいろ)の瞳は声の主を視界に収めた。ダイゴは目を瞬かせると、間の抜けたような顔と声で彼の名前を呼んだ。名前を呼ばれたグラジオが、ぺこりと頭を下げる。

 

 

「お久しぶりです。この前の会合以来ですね」

 

「ああ、そうだね。……大丈夫だった? ほら、リーフェウスが怒髪天になって……」

 

「……ええ、まあ。どうにかこうにか、ゴタゴタを片付けることができました。――その分、色々吹き飛びましたが」

 

 

 グラジオは乾いた笑みを浮かべて天を仰いだ。そこから何かを察したダイゴも、目を伏せて視線を泳がせる。

 何かあったことは明らかだが、2人が詳細を聞かせてくれることは無いのだろう。ショウマにはそんな予感がした。

 暫し乾いた笑みを浮かべていたダイゴとグラジオだったが、こちらに気づいて振り返った。グラジオの眼差しは、ショウマへ向けられている。

 

 

「彼が貴方の?」

 

「ああ。僕の息子だ。――ショウマ」

 

「はい。ツワブキ ショウマです。ホウエン地方のカナズミシティから来ました」

 

 

 父親に促され、ショウマはぺこりと頭を下げた。それを聞いたヒスイが驚きの声を上げる。

 

 

「ツワブキって……ホウエン大企業デポンコーポレーションの創業者一族の名前だよな!?」

 

「知ってるんですか?」

 

「俺の親戚にホウエン地方出身の人がいるんだ。俺と同じブリーダーやってて、この前は『デポンの新製品を買った』って言ってたんだよ」

 

 

 ヒスイはそう言いながら、ツワブキ親子やエーテル親子を見比べる。何となく委縮しているように感じたのは、きっと気のせいではない。ここにいる親子は取締役代表とその御曹司/御令嬢だ。人によっては、「自分は非常に場違いである」と感じるのはよくある話である。

 しかし、ヒスイは小さくかぶりを振ると、真っ直ぐにショウマやナトセを見返した。肩書で物を見るのをやめたのだろう。彼の目線や眼差しは、御曹司のショウマや御令嬢のナトセを見ていない。今ここにいる、ただのショウマとただのナトセをはっきりと捉えていた。

 

 

「ナトセさんのお友達と聞きましたけど、とても素敵な方なんですね」

 

「うん!」

 

 

 流石はナトセの友人である。そのことを素直に賞賛すれば、ナトセは我がことのように胸を張った。

 

 途端にヒスイは照れ臭そうに視線を彷徨わせる。……異性から褒められることに慣れていないのかもしれない。

 咳払いしたヒスイは、この空気から逃れようとするが如く声を上げる。

 

 

「ほら、早く行こう。レックスさんに《奉納の巡業》の同行者が決まったことを伝えるんだろ?」

 

 

 ヒスイの言葉を聞き、ショウマは思わず声を上げた。

 

 

「《奉納の巡業》……? ナトセさん()、それに挑戦するんですか?」

 

()? ()ってことは、ショウマくんも?」

 

「はい。レックスさんに勧められて」

 

 

 ショウマは自分が《奉納の巡業》に挑戦することになった経緯をかいつまんで説明する。少女に狼藉を働こうとしたレクイエム団を撃退し、その場にリーフェウスとレックスが居合わせたこと。それがきっかけで、レックスから《奉納の巡業》への挑戦を勧められたこと。

 それを聞いたナトセも、自分が《奉納の巡業》に挑戦することになった経緯を教えてくれた。ナトセの場合、パッションシティ郊外で暴れていたポケモンを大人しくさせ、保護に貢献したところにレックスがやって来たらしい。彼はナトセの手腕を褒め、巡業への挑戦を勧めてきたそうだ。

 

 自国の風習――アローラの《島巡り》との類似点と相違点を加味した上で、ナトセは《奉納の巡業》への挑戦を決めたらしい。

 

 

「じゃあ、私とショウマくんはライバルだね!」

 

「そうですね。お手柔らかにお願いします」

 

 

 眩しく笑うナトセの言葉に頷き返しながら、ふと、ショウマはヒスイの発言を思い出す。

 同行者、とは何だろう。ショウマの視線に気づいたヒスイは、一瞬目を丸くする。

 こちらが何も知らないことを察したのか、快く説明してくれた。

 

 

「コムニア地方の出身者じゃない人間が《奉納の巡業》に参加する場合、同行者ってのが必要なんだ。同行者になる人間にも厳しい条件があってな。『コムニア地方の出身者であることを証明できる』人間であり、且つ、『《奉納の巡業》を達成している』人間じゃなきゃなれないんだよ」

 

 

 ヒスイはそう言いながら、自分のトレーナーカードを指示す。彼のトレーナーカードの中央には、《奉納の巡業》を達成したことを示す透かし模様が刻まれていた。紡錘型の枠に、木の実を実らせた大樹と2つの翼が描かれている。右翼が白で左翼が青。デザインからして、神聖な雰囲気が漂ってきた。

 

 ヒスイ曰く、「外部から巡業に参加する人間は、同行者探しを()()()()()()()()()()()()()」という。外部挑戦希望者はその壁を乗り越えられず断念することが多いようだ。

 この時点で挑戦者をふるいにかけるあたり、《奉納の巡業》のハードルの高さが伺える。本来なら委縮するのが正しいのかもしれないが、ショウマは思わず口元を緩ませた。

 

 ドキドキする。ワクワクする。背中を駆け巡る衝動は、自分に待ち受けるであろう未知の旅路に対する期待だ。

 今なら、コムニア地方へ向かうショウマを見送った母の眼差しに込められた意味が分かる気がした。

 『男の子は旅に出るもの』――細められたヘイゼルの瞳は、何処までも優しかったことを覚えている。

 

 

「手続きが終わらなきゃ、同行者を探しに行けないからな。そこは気を付けろよ」

 

「分かりました。情報ありがとうございます、ヒスイさん。……あと、レックスさんはちょっと忙しいようです。今、僕の手続きの真っ最中なので……」

 

 

 情報を惜しむことなく提供してくれたヒスイに礼を述べつつ、ショウマも情報を差し出した。申し訳ないと頭を下げれば、ナトセたちは満面の笑みを浮かべて首を振った。彼女たちも、各々の方法で時間を潰すことにしたらしい。その方法を思案し始めていた。

 「『ホーリーグレイル』でスイーツを食べようか?」「あそこの店は凄いよな。男でも入店して菓子食べてるヤツ、結構多かったし。入りやすいんだな」――ナトセとヒスイが話し込む姿を、グラジオやダイゴと一緒に見守っていたときである。エレベーターの到着音が鳴り響き、扉が開いた。

 

 

「ショウマさん!」

 

「よう、弟子99号」

 

「――サクラさん? それに、リーフェウス先生も、どうしてここに?」

 

 

 エレベーターから降りてきたのは、サクラとリーフェウスだった。彼女の足元には、メロディとピアノが寄り添っている。エテルナの姿が無いのは、サクラの鞄の中にいるためだろうか?

 

 ショウマの問いかけに対し、サクラは自分の鞄から1枚のカードを差し出す。――それは、『自分がポケモントレーナーである』ことを示すトレーナーカードだった。

 出身不明者がポケモントレーナーになるためには、後見人が必要である。後ろに佇んで目を細めるリーフェウスの様子からして、サクラの後見人として名乗り出たのは彼らしい。

 強い決意を宿した青の双瞼に、思わずショウマは釘付けになった。どこまでも綺麗な瞳は、水の石や目覚め石、もしくは氷の石の輝きと非常によく似通っている。

 

 ポケモントレーナーになると決心した理由と、彼女の眼差しに宿る意思は密接に関わっているのだろう。

 そう思った途端、ショウマの疑問は口をついて飛び出していた。

 

 

「どうして、ポケモントレーナーになろうと思ったんですか?」

 

「『自分が何者なのかを探しに行く』というのも理由の1つです。……でも、それ以上に『やりたいこと』があって……」

 

「『やりたいこと』?」

 

 

 鸚鵡返しにしたショウマを見て、サクラは頷き返した。

 

 

「助けてくれたあのポケモンに会って、『ありがとう』って言いたいんです。……番号じゃなくて、本当の名前を呼んで、感謝の言葉を伝えたい」

 

 

 サクラの言うポケモンは、レクイエム団の施設で出会ったポケモンのことを指しているのだろう。実物がどんなものかは知らないが、サクラ曰く、「青くて大きな体躯の、4枚羽を持つ、孔雀のような外見」だったらしい。レクイエム団はそのポケモンのことを『K-665』と呼んでいたという。

 『K-665』はレクイエム団が便宜上として使っていたものだ。だからきっと、そのポケモンにだって本名があったはず。件のポケモンは行方知れずだが、サクラを逃がすために暴れたと考えると、逃げ切れたか敵の手に墜ちたかは五分五分と言ったところか。

 

 ……もしかしたらサクラは、“そのポケモンが困っているなら、自分の手で助けたい”と考えているのかもしれない。

 

 何も言わないショウマの反応に対し、サクラは何を思ったのだろう。

 彼女は不安を振り払うかのように眦を釣り上げ、訴える。

 

 

「ポケモントレーナーになる理由として、これではダメでしょうか!?」

 

「いいんじゃないか?」

 

 

 サクラの話を聞いていたヒスイが、間髪入れずにサクラの言葉を肯定した。「詳しい事情は知らないが」と前置きし、ヒスイは言葉を続ける。

 

 

「俺は、その理由でポケモントレーナーになるのはアリだと思う。助けてくれた相手にお礼を言いたいなんて、充分な理由じゃないか。……俺なんか、困っているポケモンを放っておけないから、積極的に関わるんだ。その気持ち、何となくわかるな」

 

「それで旅費を使いきっちゃって行き倒れるんだもの。ヒスイくんのことを“究極のお節介焼き”や“天下無双のポケモン馬鹿”って呼んだ親戚の人は的確だなあって」

 

「……ナトセ。お前は“人の振り見て我が振り直せ”という言葉を知っているか?」

 

 

 ヒスイの言葉を引き継いだナトセが、どこか眩しいものを見るような眼差しで彼を見上げた。そんな娘の姿に何を思ったのか、グラジオはじとっとした目で娘を見つめる。彼の眼差しは、母の無茶を目の当たりにしたダイゴの眼差しと非常に似通っていた。

 彼も、父と非常によく似た方面のトラブルに直面してきたのだろう。疲れと苦労が滲み出ている。更に悲しいことに、ナトセはグラジオの苦労や疲労など気づいていないようだ。父親の言葉に対し、きょとんとした顔で首を傾げている。

 

 グラジオはこれ見よがしにため息をつくと、「もういい。何でもない」と首を振った。ついに匙を投げてしまったようだ。

 虚ろな眼差しは、一体何を見ているのだろうか。それを察することは、第三者であるショウマ達には適わない。

 肩を竦めたグラジオを尻目に、ナトセとヒスイは優しい眼差しでサクラを見つめていた。サクラの意志を肯定し、尊重していた。

 

 ショウマも改めてサクラの方へ向き直り、頷き返す。

 

 

「僕も、とても素敵な理由だと思いますよ」

 

「……はい!」

 

 

 サクラはぱああと表情を輝かせた。主の感情を察したのか、メロディとピアノも嬉しそうに笑う。サクラはショウマの方に向き直り、ぺこりと頭を下げた。

 

 

「それじゃあショウマさん、()()()()()()()()()()()()()!」

 

「はい。こちらこそ――」

 

 

 そこまで言って、ふと、ショウマは気づく。言葉を止めて首を傾げれば、サクラの笑みは一瞬で萎んでしまった。

 混乱するショウマに助け舟を出したのは、腕を組んで黙っていたリーフェウスである。

 

 

「サクラはレクイエム団に襲われてた“ワケ有り”だ。信頼できる人間は、あの場に居合わせて彼女を助け出したお前くらいなものだろうよ」

 

「先生……」

 

「これはサクラ本人の希望だぞ。――俺は、自分の弟子に対して“困っている人間を放置する”ような教育をした覚えはないが」

 

 

 深緑の双瞼がこちらを射抜く。返答を間違えば、即座に息の根を止められてしまいそうだ。

 

 びりびりとした殺気に、ナトセたちが反射で身構える。ダイゴとグラジオも、黄昏ていた表情を一気に硬くした。サクラの足元にいたメロディとピアノも後に隠れる。

 ショウマも半歩後ずさりしたが、すぐに彼の眼差しを見返す。ほんの一瞬、深緑が揺らめいた。だが、すぐにゆるりと目を細める。――ショウマの意志は、ちゃんと伝わったらしい。

 困惑するサクラの方に向き直り、ショウマは微笑み返す。迷うことなく手を差し出せば、サクラはパッと表情を明るくした。萎れた花が生気を取り戻したかのようだ。

 

 

「では、改めまして、こちらこそよろしくお願いします」

 

「はい! これからよろしくお願いします!」

 

 

 2人は笑みを浮かべて、握手を交わす。

 繋いだ手の温かさに、結ばれた縁の始まりに、どうしようもなく胸が高鳴った。

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