東方深理壊~The Girl To Deny Life~ 作:hinanan
風が吹きわたり、水は澄みわたる。
森がざわめき、地は命を芽吹かせる。
人は皆助け合って生き、そして……
妖怪が自分を曲げず、堂々と存在する。
ここは幻想郷。
私たちの住む人の世より忘れられたものが行き着く場所。
よきも悪いも、いい意味でも悪い意味でも、妄執も忘我も全てを受け入れるそれはそれは残酷な世界。
いや、人の世から弾かれたものが隔離される場所といった方が正しいのか。
あるいは紅き夜を支配する強大なる女王。
あるいは人のみならず妖からも信仰を得てしまった外法の僧。
あるいは追っ手を全て虐殺してのけた月の姫とその従者。
あるいはただ在るだけで強者たる美しい花の妖。
あるいは、何をも言わずとも名を出すだけで恐れられた絶大なる力か。
いずれにせよそこに集うは上も下も一筋縄ではいかぬものたちだ。
当然だろう、『早く忘却したい』そう思われたモノ達が闊歩する小さな世界で、それでも死なずに生きているモノ達なのだ。仮令、下等な妖怪一匹であってもこの世界にいない者が簡単に相手取れないはず。出来るのであれば、それはこの世界と同じ――すなわち『化け物』だ。
その世界に住む巫女の一人はこの状況を憂えた。人にして、その小さき世の管理者である『化け物』の一人は憂えた。強大なるモノたちの牙を多少削ぐための世界であるのに……『外』に出て否定されて消え去ってしまわないための世界であるのに、その効力が徐々に弱まりつつあることに。考えた巫女はある一つのルールであり、法を定めた。
それは『弾幕ごっこ』というただの強者にとっては実にふぬけたルール。そして遊びあきた圧倒的な強者と、虐げられてきた弱者にとって楽しくそして都合の良いルール。
ただの強者たちは怒り狂ったがそれだけであった。この世界を治める二人の管理者に己の自慢の牙を、爪を振るうことが出来ないから。圧倒的な強者である二人の化け物に敵わないから。
圧倒的な強者はただ笑った、牙を剥き凄惨に。退屈であった日々にて自分達が対等に多数なものたちと争える事実に。
弱者は、穏やかに微笑む。望んでいた安寧の日々が手に入れられることに。強者と驕っている者へと反撃の弓矢を打ち込める機会に。
かくして法は定まった。
知らぬはこれよりこの地に立ち入れるものだけである。
しかして世はたいして変わらなかった。
確かに強者と弱者の関係性は変わり、圧倒的強者もまたその座に常に座れなくなった。
しかし、巫女が憂えた状況は大して変わらなかったのである。確かにただの強者たちは実質的な力を蓄えなくなった。だが、そのかわりに知恵を蓄えるようになったのだ。弱者の特権であったはずのそれを。
だが、巫女はその状況に何も憂えなかった。元より、知恵だけでどうにかなるのであればこの化け物は化け物と呼ばれていない。それに巫女が憂えたのは弱者にとっての位置ではなく、自分に届きうる力の排除だ。巫女の目的は達成された。
さて、ここで一つの質問だ。
この世界に自ら入るとなれば、この世界の情報をある程度……パワーバランスぐらいは把握していなければならない。到着して即退場など誰でもごめん被りたいのだから。
ではその上で。
正常な思考回路を持つものでこの世界に入りたがるものなどいるのだろうか。強者が実質的にではないにせよ着々と力を増していき、弱者ですら油断できない相手で、それらすべてを上回る圧倒的な怪物がいる……そんな悪夢のような世界へと。
答えは、否。
そのような人物がいるとするならばそれは死にたがりか狂人だけ。
だから正常なものなら、いない……の筈だった。
管理者の一人――巫女がかつて憂えた状況は改善した。
だが、巫女はひとつ思い違いをしていた。
巫女の策は確かに功を奏したが、その状況を完璧に抑えられるものではない。
勿論、その危険も承知はしていたはず。
だがそれでも、どこかで手遅れになる前に対処できると踏んでいたのだろう。
それは危険な思い違いだった。全く知らない新たな要因が加わればそんな策など簡単に壊れてしまうというのに。
巫女の慢心は最悪を引き起こす。
誰よりも巫女自身へと牙を剥き。
『それ』はもうすぐそこに。
とりあえずでけた(達成感)
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