東方深理壊~The Girl To Deny Life~ 作:hinanan
ついでにいうと、次回――いえ、さすがにここまでにしておきましょう。
とにかく、まだ異変が始まりませんのでまったりしていってくださいねー(何かを履き違えている人間の図)
かじかんだ指に風が吹いていくのを感じ、予想外れの世界に不安と期待を寄せる……ってところですかねぇ?
覚えていた歌詞をそらんじながら玄関の戸を開きます。
カラカラ、という軽い音と共に見えてくるのは見事な自然。あっちを向いても木、こっちを向いても樹木。おまけに能天気そうな鳥の声まで聞こえてきます。勿論都会っ子な私は、こんな田舎の光景なんて修学旅行ぐらいでしか見たことは……あ、そう言えば行ってなかったんでした、旅行。お仕事で妖怪退治に行ったときぐらいですかねぇ……?
ともかく、どうやら転移自体は成功したようで。あれだけのエネルギーを使って家の近所とかでしたら、ホントに泣いてましたよ。
ホッと一息つきますが、もうひとつ問題が。ここが目的地なのかどうか確認するすべがないんですよね。
まぁ、ここの管理者さんのお陰でここまで堂々と入れたのです。本当に着いているなら直ぐに誰か来ますよね。それまで、少しぐらいこの自然を堪能させてもらいましょうか。
と言うか本当にどこを見ても木しか無いですねぇ……。
数分そこらを回って思った感想です。折角の非日常なのにこんなことしか出てこないなんて悲しくなっちゃいますよ。いや、確かに景観の良さ、そして環境の良さは認めましょう。木漏れ日が差し込んでいて、何もなければお昼寝したいぐらいにはよい場所、気候なのです。
でも……森か林っぽいので仕方ないのですが、木があると言うか、木しかないというか。
……さなちゃんもこんな感じで『ここ』に来たのでしょうかね。そう考えると少し感慨深くも有りますか。
む、というかさなちゃんで思い出しましたよ。そう言えば、神社隠しておかないといけないのでした。まだここを他の人に見せるわけにはいけませんし、あの人、人のミスにはうるさいですし。自分は存在自体がミスってるような配置されてるくせに……。
ま、流石にまだ誰か来るとは思いませんが、早めに隠しておく事に越したk
「特ダネですっ!!」
「ひゃ、『遮断』っ!!」
「おs 'バゴムッ!' ふぎゃっっ」
どさっ。
……。
…………。
え、いやなにその…………え?
安心してくださりやがれませ、混乱してるのは私でした?
ええっと、と、取り敢えず状況を整理してみましょう。私としてもいきなりすぎてなにがなんだか……。
森のなかで静かに思考にふける美少女
↓
↓
唐突に降ってくる声と何か
↓
↓
咄嗟に防御術式を唱える
↓
↓
何か落ちてる←今ここ
……はい、整理しても全然ですね。美少女のところで首を捻った方には、私のことだと説明しておきましょう。まぁ、自分自身でそう評するのは嫌なのですが、性格自体は完璧な美人なのであながち間違いでも無いのですよ。
相変わらず混乱した頭で目の前を見ると、ソコには先程の声の主と思われる女性が……――ええっと、こう表現するのには少し抵抗を感じるのですが――落ちていました。ええ本当に、同じ女性として使うのは忍びない表現ではありますが、ベシャって感じで落ちていたのです。そう、目をぐるぐるさせ、背中につけた何かを力なく動かしながら……って。
この人羽がはえてません? 何か真っ黒いのがパタパタしているのですが。ちょうど鴉みたいなのが背中から。
真っ黒い羽……ここが海外でしたら堕天使、もしくは悪魔が化けた天使辺りと判断して起き上がる前にフルボッコにするのですが、ここは日本。加えて、この人?の衣装が山伏の着るような装束。まず人間、と言うより通常の生き物では有りません。恐らく妖怪かそこら……。
ええ、思い当たる妖怪は一つ有ります。でも、私が伝承のなかで見たそれは、名前の通り、鴉の頭とかついていたのですけどねぇ……。あれでしょう、往年は可愛い、という要素も取り入れないと生きていけないのでしょうね、妖怪であるのに哀れなことです。
そう、妖怪と言うか、私の思い当たる妖怪――鴉天狗と認めたくない理由がそれなのです。つまり、可愛すぎるのです。
ショートカットでボーイッシュに纏められた黒髪。まさに鴉の濡れ羽色と言うのが正しいような綺麗な髪です。それでいて眠りにつくその顔は少女のあどけなさを宿していて、髪型との見事なギャップを産み出しています。肢体は、スラッとしていて健康美を感じさせるものでしたが、スレンダーと思わせつつ引っ込む所は引っ込み、「大きければいい」なんて言う下らない幻想をうち壊すほどに完璧なバランスを持っていました。大きくもなくまた、薄くもなく……ええ、同じ女性として嫉妬ちゃって少しその恩恵にあやかろうとしても許されるぐらいには。
あ、もう一個認めたくない理由がありました。
見えない壁にぶつかって気絶するって……。
私の知る鴉天狗はもっと頭が良さそうなイメージだったのですが……。
おっと、こんなのを見てる暇は無いのでした。
早く『これ』を隠さなきゃ、この人みたいなのが何人も出てきてはたまったものではありません。それこそ、あの人に怒られてしまいます。怒るだけなら良いですけども、捨てられなんてした時には…………。
とにかくこれ以上失敗はできません。ここからは完璧にこなさなければ。
〜〜〜少女作業中〜〜〜
「ふぃ〜……」
つい、口から溜めていた息が出ます。
細かい作業だったのと、それで最後だったのが合わさって安心してしまいまして。全く、科学の力もなく光学迷彩《メタ・オプチカルカモ》と同じことをしろ、なんて面倒なことを申し付けてくれやがりまして……今日の夕飯は激辛のフルコースですね。わたしはその目の前でカボチャの煮付けでも頂きましょう。
本当に……まだ透明マントを出された方が楽でしたのに。
ま、これで言われていた作業も終わりましたし、取り敢えず情報収集に行きましょうか。と言っても、先ずはこの森からでるのが先ですかねぇ。飛んでいけたら楽なのですが……鶴仙人なんて現代にはそうそういませんし、舞空なんてできっこありません。普通なら歩くのにちょうどいい天気なんですけども。
吸い込まれそうなほど蒼くすみわたった空を見上げていると、悩みとかも纏めて吸いとってくれそうな気がしました。
「うう、ん……」
あ、そう言えばこの方がいたのでした。
作業が終わった解放感からすっかり忘れていましたよ。
うーん、ほっといても死んだりはしない気がしますけど……でも流石にこの状況でほっとくのも人として、ねぇ?とはいえ、だからと言って構うのもめんどうなんですよね。でもこの人が目を覚ますまでここで待ってい ると言うのも気が長い話ですし。
「……はぁ、仕方ありませんか」
諸々考えると、やっぱりこの状況を維持することが一番面倒なんですよね〜。そのなかでも面倒な派生は、彼女がこの状態で誰かに見つかることです。そうなってしまっては、仲間とかが居るのなら、団体さんがご来訪される予定を自分から作り上げることになりますもの。
さて。
「もしもーし」トントン
「ん……う……」
ダメみたいですねぇ。もう一回、今度は強めに試してみますか。
「起きてくださいよ〜」ユッサユッサ
「んん……?」
あ、あと一押しな感じですね! よーし、耳元に寄って……
「貴女が持っているものを全部燃やしますよ、あいうえお順と作者順、どちらがいいですか?
あ、いっそランダムに抜き取って燃やしましょうか。」
「私の原稿がっ!!?」 ガバァッ!!
こうかは ばつぐん だ!!▼
私が魔法のワードを呟くと彼女は急いで起きてくれました。いやぁ、流石うちの駄神を起こすときにも効力発揮するだけあって物凄い効果ですねっ。ちなみにうちで使う時は『もの』を『マンガ』に変えております。皆さま方もくれぐれもこれを使われる側にならないように気を付けましょうね♪
なんてふざけたことを考えているうちに彼女も復帰したようで。ただ、流石に状況が把握しきれないのか仕切りに頭を振っています。
「え、あれ……?
何が起きたの…………?」
「おはようございます」
「うわはぁ!?」
影に隠れるような位置からいきなり挨拶をしてみると実にいい反応、まるで芸人さんのそれのようなリアクションが返ってきました。
実に楽しいお方ですね。ですが、あまりかまってもいられません。いくら隠したとはいえ、鴉天狗相手ではいつばれるかわかったものじゃ有りませんし。
「やっと起きたのですね。
随分と遅いです、私がどれだけ待っていたと思うのですか?」
「何で私は寝起きで見たことも無い子から責められているのでしょう……?
えっと、取り敢えずごめんなさい?」
「はて、謝られても……私は貴女から特に被害受けていませんし」
「じゃあ最初の文言は何だったのかと聞きたいのですが」
まったく、よくわからない鴉天狗さんですねぇ。意味の無い謝罪は人をイライラさせるだけですよ?そんなことも知らないのですか。
「人をイライラさせる選手権があれば貴女よりも、すごい人はいないと思いますよ?
ではなくて。
ええっと、まずはお礼ですね。せっかく助けていただいたのにお礼も出来ないようじゃ、鴉天狗の名を汚してしまいます」
「いえ、お気になさらず。名前なんてどうでもいいので」
「ここまで素直にお礼を言いたくなくなる物言いも珍しいと思います。
というか、それでは此方としても悪いです。」
む、やけに食らいついてきますね。私は早く場所をうつしたいのですが……。
「仕方ないですね、聞いててあげますから手短にお願いします。
移動しながら話しますか?」
「……いえ、この場で結構です」
あれ? 今の間は一体……?
私の疑問はさておかれ、小鳥が空を横切り話は続きます。
それにしてもさっきの間に、一瞬凄い顔しましたけど大丈夫でしょうか。
「では」
彼女はコホン、と仕切り直すように咳払いをすると薄っぺらい笑みをその口許に貼り付け、こう言葉を紡ぎます。
「改めまして、お礼を申し上げます。
私の種族が分かっているだろうにも関わらず。
先程の状態を良しとせずに。
かつ、私への情報提供のために。
助けてくださって、本当にありがとうございます。
ええ、例え『そこ』に『何か』しらの理由が『あって』もそれで感謝しなくなるなんてことはございませんよ。
あぁ、それと。
私たちは親切な方の情報には、口が固くなりますのでご安心を♪」
そういって締め括ると頭を一度下げ、先程と同じ笑みを浮かべこちらに向き直ります。
その笑みは、まるで猛獣が牙を構えるときにも似ていました。
空にはいつの間にか暗雲が立ち込め、私の頬には一足早く雨粒がポツリと落ちていくのでした。
はい、今回はここまでですっ。前回と比較すると物凄く文字量が変化していて驚いた方もいらっしゃるかと思いますが。
話ごとに文字量が乱高下致しますので気にしていたらまけだゾ☆
……うう、わすれてください