東方深理壊~The Girl To Deny Life~ 作:hinanan
え、サブタイトルですか?
……『バカとテストと召喚獸』って面白いですよね。まぁ、三年生は場合によっては保護者が召喚獣と成ることもありますのでご注意くださいね。
でわでわ本編です。
目の前には先ほどの鴉天狗さんがいらっしゃいます。彼女は、こちらの心を覗きこむように瞳を合わせ、
「これから行いますは、簡単な質問の応酬ですよ」
と口火を切りました。
そのまま続けて言葉を重ねられます。
「無回答、意味の無い回答はこちらで勝手に解釈いたします。あなた方がこの幻想郷で生きにくい事になっても私は関知しません、とだけ言っておきましょう。
ただし、答えたくない、答えられない、という回答はありとします」
「宜しいのですか?極論、私が会話中ずっとそうしているかもしれませんよ」
「ふふっ、天狗相手にそれを選ぶほど、貴女も頭の回転が遅いわけじゃあ、ないでしょうに。
いえ、だからこそ条件の変更で私の方も縛ろうとしたんですかね?」
「……まぁ、そんなところで」
はいそんなわけで、正直、鴉天狗さんの言葉の真偽が分からないため、動きづらいのが実情です。
どうも、皆さま方。ただいま、狡猾にて老練な鴉天狗さんにいいようにもてあそばれそうな私ですよ。とは言え、普通に勝負するのでなく、ここから始まるのは質疑応答を互いに行う情報の収集合戦ですが。というか、普通に戦うならあっという間もなくやられてしまいますよ。天狗is怖いですよ。
さて、現実逃避で、見えない観客に愛想を振りまくのもこれぐらいにしておきまして、現実の認識を始めましょうか。
あの不気味な笑顔のあと、固まった私に少し申し訳なく思ったのか、急におどけた調子で話始めた鴉天狗さん。
彼女が言うには、言葉だけでなく他のお礼もしたい、とのこと。折角なので、この土地の情報について聞くことにしたのですが……。
説明口調疲れましたね、帰ってよいでしょうか。え、ダメなのですか?仕方ないですねぇ、あと少しだけですよ。
まぁ、それならついでにってことで、あちらからの質問にも答えることにしたのです。もうこの時点でお礼の意味がないです。完全に此方の動きを読んでいましたね〜。
はい、そう言うわけで現実逃避終わりです。
現実逃避はさっき終わったのでは無いのか、と聞きますか?
でも、現実の認識も現実逃避の一種でしょう。一旦、第三者視点で見る必要がありますから。見ているものこそ現実ですが、見るための立ち位置的なものは完全に部外者のそれなのですよね。
さて、では今度こそ現実へ戻りましょうか。
「質問は私からでいいですよね?」
「はい、お先にどうぞ。私は貴女の奇行を見て自分の行動を直しますので」
「ここまで心に刺さる慣用句のアレンジと、使い方を聞いたこと無いんですけど」
「えへへぇ、照れちゃいますねー」
「誰も誉めて、無いです。
というか、真顔でやるの止めていただけません?」
「そんなに真顔が不思議なのですか」
「不気味ではありますね」
何て失礼な。
なんて、ふざけるのもこの辺りが限界ですね。こちらもそろそろ覚悟が出来てきましたし。
ここからの方針として最善は、あちらからの質問を上手いことかわしつつ、あちらがつい答えてしまうように誘導する。言葉に出すだけなら簡単ですが、いざ実行に移すとなると……それも私よりも頭の回転が早い人にするとなると、成功率を見ない方がうまくいくのでは、ってぐらいの難問ですよね。ちなみにうまくいくのは後処理とメンタル面のみです。
「……はぁ。じゃあ、始めますよ?」
「ええ、こっちはいつでもいいのに、なぜ早くしないのですか?」
「…………」
「どうかいたしましたか」
「いいえ、なんでも」
はて、なんだったのでしょうか今の間は。
「こ、今度こそいきますよ」
「ええ、なので先程からいつでもいいといっているでは有りませんか」
「はい、もう貴女がそういう人格で話し方だって言うのは分かりましたので大丈夫です。大丈夫ったら大丈夫ですよ……!」
「大丈夫そうに見えないのですが。診療所へいきますか?」
大丈夫、大丈夫と呟き続ける鴉天狗さんに向かって声をかけます。彼女、端から見れば相当危ない人ですよ。全く誰がこのような美女をこんなにも無惨なふうにしてしまったのでしょうか。
私がこの世の無情に心を痛めていると、鴉が同情するように私の上を飛び回り、くぁくぁと呼び掛けるのでした。
……というか、普通に鳴き声がうるさいですね。こちらは真面目に話しているのですよ、はたき落としてあげましょうか。
あ、どうやら立ち直ったみたいですね。
「……大丈夫、ええ、ホントに大丈夫ですってば。
よし……早くしないと私の忍耐がヤバそうなのでもう質問しますよ、します。
それではえーと、まず……ずばり貴女方の目的は?」
未だ若干目が危険ですが、質問じたいはなかなか思い切ったところを突いてきますね。うまく答えないと全部予想されちゃい……ん、いやここは正直に答える必要もありませんね。
「黙秘で」
答えると色々予想されてしまうのは、多少のリスクがあっても答えないのが無難です。ふふふ、とっさの判断にしてはまあまあ良いのでは?
……っと、あれ?鴉天狗さんが何だかブツブツと……
「取り敢えず『方』で反応しないと言うことは複数人は確定、それと知られてしまっては意味がない異変……というより強行に実施するパワー、又は人数が足りないと言うことで……」
……ほぇ?
ん、どういう事でしょう。
だって、あり得ません。あり得ないはずなのです。いくら私個人での判断とはいえ、情報を流さないように黙秘したというのに、違う部分からだだ漏れしてしまっている、ということなんて。まるでお風呂の栓を入れ忘れてお湯を入れたときみたいです。
とても賢いとは聞いていましたけど……それ以上、と言うわけですか。今よりも更に警戒度を挙げないと、あっという間に丸裸にされちゃいますね。
「あぁ、すみません。思い浮かんだことは直ぐにメモを取る質なんですよ。
お待たせしましたが質問を続けますね」
「……えぇ、どこからでもどうぞ」
ここからが正念場と言うわけですか。良いでしょう、受けてたちますよ。私の全身全霊を持って彼女を……撹乱いたしましょう。
「んん、何だか今物凄くこのやり取りから逃げ出したくなったのですが……」
「? どうかいたしましたか」
「あ、いえそれでは続けますね。
首謀者は貴女ですか?」
「私がそんな面倒そうなことをするわけがないじゃないですか。
見てわかりませんか」
「では、あなた方はこれから何をする予定なのですか」
「サプライズパーティーです。いかにも頭の出来が知れそうですよね。
こんなことについて聞きたいなんて暇なのですか。」
「……ええと、それではこの土地の誰かと関係はありましたか」
「今ここで出会った貴女ですね」
「つまり他にいないと?」
「いえ、他にもいますが?」
「……他にはどなたと知り合いなのですか?」
「はて、そんな他の人に迷惑になりそうな情報言える訳じゃないですか」
「ほう、迷惑になりそうな事をすると言うことですか」
「そうですね。まぁ、この土地に入ってきて迷惑になりそうな事を起こさなかった者の方が珍しいと思いますけどねぇ」
「どうして、そういちいちこちらを煽るような言い方をするんですか!?」
はて、いつの間にか鴉天狗さんが涙目に。それに顔も赤くなってきていますし、どうしたのでしょうか。
あと、最後のは質問扱いで良いのですかね。でも、大して変なことはいっていないはずなのですが……。まぁ、答えておいてあげましょう。
「えと、確かそう聞こえると言うことはあなたの方でそう聞こえてしまうような原因を作っているかららしいですよ?」
「あや、確かにそういわれてしまえば、心当たりが――」
「はい、なので悔い改めてくださいね。
大丈夫です、謝ってちゃんと誠意を見せていただければ許してあげますから」
「この感情は間違いなくあなたのせいです」
? 更に顔が赤くなったのですが。
……はっ。分かりましたよ。感情という言葉といい、顔が赤くなることといい、もしかして恋ですね!?
でもどうしましょう、私、同性の趣味は無いのですが……。そうだ、確かこう言うときは鈍感系主人公の真似をすればいいはずです。相手の感情に気づかないふりをして面倒そう……もとい、今は必要でないものを受け流せば話を円滑に進められますよね。
ふむ、ならばこうすれば話が戻るはずです。
「え、なぜそんな思考に至るんですか?
そんなことがあるはずないじゃないですか。勘違いも甚だしいですよ、まったく」
「ええ、ハイそうですね!! 全部私が悪いんですよね!?
そんな性格だと気づいてなお、質問を続けた私が全て悪いんですよ、どうもすいませんねぇ!!?」
「いえいえ、分かってもらえればよいのですよ。
まぁ、もう少し早くしてくれればよかったとは思いますけどねぇ」
「〜〜……〜〜……っ!!?」
ふむ、あちらの事情も慮って、質問に指針が戻るようにして差し上げましたのに逆ギレするなんて、酷いお人ですね。あ、人じゃないのでした。それに地団駄まで踏むなんて、余程の事なのでしょうね。
ま、今は気の迷いからキレられておりますが、後で私に感謝することになるでしょうね。
「……っ、じゃあ、こちらからの質問はこれで最後とさせていただきます。
色々と限界なので」
「ええどうぞ、ご自由に。
私のターンも残っていますのでこれで終わりとはいきませんけどね」
「では、最後です」
と、そこで息を整えるかのように一拍おきます。……恐らく質問の内容は決まってます、最初から。最初から、『最後に』聞くのが確定していたハズです。
そして、こちらもおそらくですが、私の予想と大して変わらない内容です。この幻想郷で『異変』とやらを起こした際にはたらく、いわば免疫機構。すなわち――
「博麗の巫女」
もう一度、今度は私の頭に染み込ませるよう、彼女は言葉を区切りました。
そうして、質問を始めたときと同じく瞳と瞳を合わせ、続けます。
「この言葉をどの程度まで知っていますか」
この念の入れよう、只の質問として流すのは得策では無いですか。
ですが、これで私の方も情報の収集は終わってくれますね。てっきり、収集と依頼で二枚もカードを切らされてしまう、と踏んでいましたが、親切な方なのが幸いしました。
とは言え。
相手が怒りを覚える精神状態だったとはいえ。
鴉天狗さん対面ですものね。私が思っているより多くのモノが持っていかれていると思います。我ながら、最初からなんとも面倒な対戦相手を選んでしまったものです。
さて、それではこの質問、どう答えたものでしょう。
まぁ、私の頭ですし大して効果は効果を出せない物しか思い付きませんね。仕方ないです、ここは普通にいきましょうか。
そこまで考え、私も鴉天狗さんのきれいな瞳を覗き返すようにして答えます。
「この土地の人間と同じくらいには」
と。
「ふむ、成る程……あやや、ありがとうございました」
ペコリと頭を下げる姿は、何とも見た目相応の少女らしさがありました。
しかし、先ほどのやり取りを忘れてはいけません。あの大妖怪程では無いにせよ、けして侮ってはいけないほどの明晰な頭脳を持っていることも。私にとっては中途半端な力を持つものよりも、それは大きな意味を持っています。
「さて、それではこちらもお礼をしなきゃいけませんね。
どうぞ気ままに聞いて下さいな、何でも答えて差し上げましょう」
おどけたように、もしくは鴉のように両手を広げる彼女は、やはりどこまでも注意が必要な相手だとつくづくそう思います。多分、私からの質問でもこちらの情報を剥がせる自信があるからの、その態度なのでしょうね。これほど面白い情報タンクも、この土地では珍しいと聞きますし。
でも。
だからこそ信用できる。
では、老獪にて狡知に長けた鴉天狗さんにどれ程通用するかは分かりませんが、私なりの勝負を申し込みましょう。
その為にも少しばかり前哨戦と洒落こみますかね。
「それなのですが、少し条件を変えてもよろしいですか?」
「はい? 条件を変える……?」
「と言っても、大層なことを頼むわけではありません。
それに、先ほどのやり取りで、私の知りたいことは全て教えていただきましたので……貴女が聞いたこと以上を察したように」
私が言葉を紡ぐと、彼女は少し表情を変えました。どうやら、少しはこちらのことを認めていただけたようですね。
さて、ここからが正念場ですね。
どれだけこの方を『こちら側』に引き込めるか、しかも相手の方から、とまで言いませんがそれなりに対等になるような同盟が望ましいです。
まったく、私はあの方と一緒にいれればそれでいいのに……とは言え、あの方に全てを捧げると決めたのも私ですし、泣き言を言っても仕方ありませんか。少しぐらい、多くを望む癖を直していただければ、いいだけなのですがねぇ……。
「あの〜、それで条件と言うのは?」
「あ、申し訳ありません。少しばかり、このあとのことについて考えておりました。では条件はですね」
こうして、私のこの土地での初めての『戦争』が幕を開けるのでした。
「力を借りたいのは、貴女にとっては簡単なことです。
そう、少しばかりあることを拡散していただければ……」
空は相変わらず曇り空ですが、どうやら雨が降らない程度にはなりそうな天気となっていました。
――――少女依頼中――――
「ではこれでお願いしましたよ」
「任せておいてください。寧ろ報酬のお釣りで家が買えそうな程のものを貰ってますからね。期待しておいてください」
先ほどとは打って変わり、彼女は興奮に翼をはためかせつつ、私に言も強くそう言いました。
まあそうもなりますよね。私が迂闊にも色々落としてしまいましたし。しかし、それでもこの方相手になら大成功、いえ成功ぐらいを修められたので前哨戦としてはかなりの戦果と言えるのではないでしょうか。半分ほどですがこちら側についているはずですし。
そんな風に私は安心していました。まぁ、それなりの成功を納めたのであればどんな人間でもそういう風になってしまうのは避けられませんよ。
だからでしょう、彼女の発言が私の心に楔のようにを打ち付けられたのは。
「そうでした、お釣りがわりと言っては何ですがね。
貴女にちょっとしたことをお伝えしときましょう」
「はぁ、そこまで自分を押し売りされても……だから売れ残ってしまうのでは?」
「たった今、お釣を渡したくなくなりました」
なんなのでしょう、渡すといったり渡さないといったり。情緒不安定なのでしょうか。
私が不思議に思っていると、彼女ははぁ、とため息をつくとなにかを諦めるようにゆるゆると頭を振りました。
しかし、そこから頭をあげた彼女の目には何一つの幻想も含まれていませんでした。
そこには先ほどまで、決して出していなかった『妖怪』が滲み出ていました。
「警告しておきましょう、名も知らない……そしてこれから知られるであろう巫女さん。
どうぞ、博麗の巫女には精一杯の注意を払っておくことですよ。
そして、軽く見ないことです。
さて、本当は負けてから知ることを教えてあげたのです。お釣としては充分ですよね?
では私はこれにて。また三日後に。」
それだけ言うと彼女は文字通り、目で追えぬ速度でその場から消えました。
彼女の残した言葉は、警告と言っていましたが、
「ただの予言……いえ確定事項、まるで予定ですね」
事実、先ほどの彼女の言ったことのように、その存在を甘く見た人はそれこそこの土地に入った者と同じくらいいたのでしょうね。
ですが
「その程度の警告で止められるほど、私は『私』でありませんよ。
それに私がその巫女さんの例外と成るのなら、それはとても面白いことではありませんか?」
そう、私は虚空に向かって問います。
いなくなったはずの誰かへ向けて。
そして、自分自身を鼓舞するために。
神社の中へと入る前に私はもう一度、後ろを振り返りました。
そこはもう普通の景色ではありません、少なくとも私にとっては。
世界のどこよりもそれはそれは残酷に、そして美しく私の目に映り込むのでした。
ふと、上を仰ぐと灰と青の混在した視界に一枚の黒い羽が舞っているのでした。
まるで、私のように。
さて、突然ですが問題です!
鴉天狗さんが聞きたかったこと、および『私』が聞きたかったこととは何でしょうか。
全部で三つずつ出るといい感じです。
因みになぜこんなことをするのかと言うと……活動報告の方で!
ではまた次回~~!!