東方深理壊~The Girl To Deny Life~ 作:hinanan
今回は特に思惑はありません。……後で下心が出そうですけど。
私の名前は博麗霊夢。この幻想郷において管理者として振る舞うものの一人よ。
突然で悪いけど、少し私の独り言に付き合ってもらうわ。別に大したことじゃない、ただの自己紹介みたいなもの。面倒だって思ったら適当に聞き流してくれてもいいから。
さて、まずは前提として。
私はこの幻想郷でかなり強い部類に入る。
流石にどっかのバカのように最強とまでは言わないけど、上位者と当たっても臆さずに挑めるぐらいには自分の力に自信がある、と言えば伝わるかしら。
勿論、人間である以上限界はある。強いっていったって空腹にはそんなこと関係ないし、そもそも正面から当たれば勝てるかどうか怪しいやつだって何人いるか……。
それでも、私が管理者の一人としていられるのは二つ理由がある。
まず一つ、管理者の一人は人間と妖怪のバランスを保つ意味も込めて人間でなければならないこと。
二つ、その中でも最もその役に適性があるということ。
その二点に私は見事はまったと言うわけ。適性についてすべて語るつもりは無いけど一部だけ出すとすれば、『出来ないことは出来ないのに、できることはできる』。そんな分かりやすさと、人の身の範囲でという制限はあるものの出来ることの広さ。そしてそれが今代の『博麗』に求められたことでもある。
しかし、どれだけ適性があろうと私はそれを伸ばすつもりはない。本人にその気がないもの、これじゃあ伸びるものも伸びないわね。そもそも私にとっては努力なんて無駄って認識しかないし。
だから、私は天才と呼ばれるが決してそんなものなんかじゃない。むしろそんな称号はつけられるだけ迷惑なものとさえ思っている。
最初にいった通り、確かに他より強いがそれだけなのだ。まぁ、それだけであるのに修行を怠けているのもまた私の実態じゃあるけどね。
能力はあるが、経験が足りない。
それが私の総合的に見た判断じゃないかしら。
後に、ある女の子にこの話をしてみると
『強くてにゅーげーむをしているみたいですね。それも前のでーたは無しで』
と言っていた。意味はわからなかったけど、要は<成長が見込めないのにその遊戯を続けている状態>と言うことらしい。
補足気味に苦笑いしながら付け加えられた言葉になるほど、と思った。
まさにぴったりと当てはまっている気がする。特に成長が見込めない、と言うのが精神や経験的な部分も含められているのなら。
もうひとつ、あの子から何か言われたのだけど、そっちは忘れてしまった。前の言葉に深く頷きすぎて聞き逃していたんだろうけど、大事な言葉だった気もするから不思議だ。
一体なんだったか……でもまぁ、思い出したくなったら思い出すでしょう。
そんな努力を放棄している私だからなのか。初めて出会ったときにあの子に怒りを覚えたのは、或いは必然だったのだろう。……まぁ、異変の最中で気が立っていたって言うのも否定しないけど。
努力する必要がない、あるがままに自分を受け入れる姿に。
あるがままに『自分』を消してしまっていた危うい精神に。
私の勝手な理想を押し付けて――植え付けしまったのもまた確定事項だったのだろうと思う。
*――〜――〜――〜――〜――〜――〜――*
「はぁ〜〜……」
吹く北風と一緒に溜め息を乗せてみるけど、気分は全然よくならない。むしろ、気怠さが増しただけかもしれない。気を紛らわすために始めた境内の掃除も、寒さで気が滅入っただけだった。
幻想郷に変化が訪れたと感じた日から、既に二日目の朝になっていた。
なんにも変化がないまま。
結局あの後、待っていた文は戻って来ないし、異変は起こらないし、紫とも連絡が取れないしで、なんだか色々と不完全燃焼ぎみでモヤモヤと過ごしていた。別に紫が心配なわけじゃ、ない。倒しても死ななそうだし、そもそも倒せなさそうだもの。でも、そんなやつから一切の接触が無くなった、なんてなったら気味が悪いでしょう?だからあいつを案じているとかじゃないからね。……誰に弁解しているのかしら。
それに奇妙なのはこちらの事情だけじゃない。
今日で二日経ったことになるけど、新しく入ってきた奴らの動きが一切わからない……と言うか、なんの動きも無いのだ。姿形すらも見えないというのがその不信感を更に募らせる原因となっている。何も無さすぎて、ともすればそれがあったことを疑ってしまうぐらいに。
変化と言えば、流れつく外来品が増えたぐらい。だけどそんな事なんて波のようなもの、多いときもあれば逆に少ないときだってある。全く関係がないとは言わないけど、ただの副次効果でしょうね。
さて、どう出ましょうか。一応、胡散臭い妖怪のどっちかが連絡してくると思って待機していたけど、これ以上ここでじっとしていても意味はなさそう。でも、闇雲に動いて裏で何かされているのも長丁場になりそうで嫌だし……。むしろ、嬉々としてそう行動されそうな予感もするのよね。うーん、せめて二人いれば……
「おーい、霊ー夢―!
異変だぜ―!!」
「でかしたわ、魔理沙。
良いときに来てくれたわね」
本当に丁度いいわね、タイミングがよすぎて疑いたくなるぐらい。
空から降りてきたこの人間こそ『普通の魔法使い』こと霧雨魔理沙。
簡単に言えば私の悪友というか、ライバルというか……って大して簡単に説明できないわね。まあいいか、どうせ私の感覚の問題だし。
さて、魔法使いと言えば三角のとがった帽子とローブを想像すると思うけど実はこいつにそれは当てはまらない。いや、半分は当たってるのかな。白いリボンをつけた黒い三角帽子に、魔女というよりも家政婦さんの着ているような服をこれもまた白黒でまとめたもの。ご丁寧に、何故かエプロンまでついている。癖っ毛な長い金髪は、こいつの元気さを表してるようね。意思が強そうだけど、明るく煌めく目も性格を知るのにいい指針となるでしょう。
なんというか、こいつほど見た目が中身を表しているやつも珍しいわよね。
すると、じろーっと見つていたのが悪かったのか何故か魔理沙が慌て始める。
「何かあったのか……って、違う違う、何かあったのはこっちの方なんだよ!
とにかく。お前のは行きながら聞かせてもらうから、今は急いで準備してくれ!!」
「急いでって……例の奴らならまだ動きがないから大丈夫よ。ほんとに危険なら紫から藍か橙が伝言しに来ると思うし」
「は? 例の奴ら、ってなんのことだ?というかもしかしてお前、今何が起きているか知らないのか!?
って、ああそうじゃない。とにかく早く人里の方に来てくれよ!」
今何が起きてるかですって?……て、ちょっとちゃんと説明してから――あぁ、行っちゃった。
私の制止の声もむなしく魔理沙は飛んでいってしまった。伸ばした手が少しバカっぽく見える。
はぁ、仕方ないわね。取り敢えず魔理沙の言っていた通り人里までいってみましょうか。そこまでいけばアイツともう一回合流できるわけだし。それにホントに異変が始まっているなら、途中で妖怪とか妖精とか消し飛ばせば丁度いい練習台になるでしょ。
方針が決まったので、準備をするためにホウキを納屋へと放り込む。別に魔理沙に期待を外されたからではないけど、投げ込むとき微妙に力がこもってしまったのは別のはなし。
/^(我、お払い棒也)
人里の入り口に降りると、魔理沙が気づいて走ってくる。
微妙に不満げというか、機嫌悪そうな顔してる。普段なら、面倒だから事情だけ聞いて離れるんだけど……そうもいかないのよね。
「遅すぎるぜ霊夢、あんなに急いでくれって言ったのに」
「あんたが私の準備を待ってくれなかったからでしょうが。おまけにろくすっぽ説明もせずに行ったからこっちは頭が疑問符でいっぱいよ!」
「? お前ならもう知ってると思ってたんだけどな。
まぁでも、飛んできたってことはもう分かってるだろ?」
「……ええ、大体はね」
確かに上空から見るとそれは一目瞭然。
ここ人里の近くには、私たちもよく入り浸っている店で『香霖堂』っていう変な店があるんだけど、ソコに長蛇の列ができていたの。
あそこは変なものばかり置いてあるし、そもそも店主が商売に向いてない性格だから、普段は人が寄り付かない。悪く言えばガラガラ、よく言えば静かで落ち着いてるから私たちもソコにいくことが多いのだけど、今朝は全く真逆だった。
これの示すところはただ一つ。つまり――
「そう、香霖堂が繁盛する異変だぜ」
「私の珍しいボケのターンをとらないでくれる?」
「冗談はさておき」
「聞けよ」
「この前の『あれ』は勿論知ってるよな」
「……ああ、この前のでかいのでしょ?
さっきもいった通り、何にも動きはないわよ。あの規模が動くなら私が気づかないはずないでしょう」
と言うか『あれ』で伝わっちゃう辺り、本当に衝撃的だったのね。今の話で通りすぎてく人間も何人か反応していたし、早めに解決しないと不安に思う人も出るかも知れないわ。
でも、わざわざここで言うってことはその事ではないわね。香霖堂の盛況ぶりといいもしかして……
今にも説明してやろうと、目を輝かせた魔理沙の口を遮り予想を口に出す。
「もしかして外来品のこと?」
途端に唇を尖らせ、面白くなさそうな顔をする魔理沙。どうやら当たってたみたいね。ふふん、魔理沙が私の上をいこうなんてまだまだ早いのよ。その顔はかわいいと思うけど。
でも、理由はどうあれ説明を遮ったのは悪かったわね。詳しいことも知らないし……それに可愛い顔も見れたし。折角だから、ちゃんと聞いてみましょうかね。
「なんだよ、やっぱり知ってるじゃないか」
「ただの勘よ、もしくは予想ともいうわね。だから、あんまり詳しくないの。
よければ説明してくれるかしら、頼れる魔法使いさん?」
「えぇー?お前に言われても何か裏があるんじゃないかって思うんだけど……ま、いいや。仕方ないから説明してしんぜよう」
「ありがたき幸せー」
割りとちょろいのよね、こいつ。口じゃ仕方なさを装っているけど、さっきまでとはうって変わって機嫌が良さそうになってるのがよく分かる。軽口もその現れね。
しかし、承諾してくれたはずの彼女はなかなか喋り出そうとしない。なんでさっきからしきりにまわりを見渡して……ああ、そう言うことね。
「魔理沙」
「もう少し待ってくれ、今話すのはちょっと」
「いつものとこにいくわよ。……最近食べてないし」
「ん?……って、そうか。了解だぜ」
確かにこんな場所で話してたら、どこぞの鴉どころか誰にネタにされるか分かったものじゃないわ。警戒して当然ね。
一旦、異変の話は置いといて、さっさと向かいましょうか。
そうして、私たちは足早にいつもの場所――お気に入りの甘味処へと歩き出すのだった。話をするためか、それとも甘味目当てかはどちらも声に出さなかったけど。
Now Lording /^ (少女祈祷中) /^
「……って、ことなんだ」
と、そこまで一気に喋り終えると、彼女は団子を口に放り込んだ。ホント幸せそうに食べるわねー。
口に入っていた分を飲み込み、今度は私が口を開く。
「取り敢えず、要点まとめてみましょうか」
魔理沙がこし餡の団子をモグモグしているので、指を一本立て彼女の注意を団子からこちらへ寄せる。
「まず一つ」
視界の端を見慣れない物体が横切っていくのを横目に、最初の一つを口に出す。
「外の世界の品が異常に入ってきていること」
魔理沙が団子を飲み込みつつ軽く頷く。
いつもより多いのは知っていたけど、まさか香霖堂があんなになるぐらいだったなんてね。魔理沙の言によれば一つの家庭に十個ぐらい配れそうなほど、らしい。道行く人も一人一つぐらいは幻想郷で見ない……なんというか異質なものを持っていたし。始まりは他の二つと同じように、そして予想通り『あれ』が起こった頃かららしい。
さっき横切っていった謎の物体(円くて銀色で平べったかった)も多分その一種だろう。
続けてもう一本指を立て、そのまま通りの外へと指し向ける。
店のまん前、当然往来なのだがそんなことも気にせず二人の男性がつかみ合っているのが見えた。
だけど、これはまだ甘い方だ、少なくとも今日見た限りでは。
「二つ目。何故か里の人たちが凄く苛立ちやすくなっていること」
しゃべると同時に殴りあいはじめたので、そちらに小さくした陰陽玉を投げて後頭部にぶつけた。魔理沙が引きつった顔してたけど黙殺。大した霊力も込めてないししばらくしたら起きるでしょ、起きたら凄く痛むと思うけどね。
実はこれが初めてでなく、今の人たちのようないざこざは、この店に向かう短い道のりの中でも少なくとも五回以上は見ている。その内一件は刃物まで取り出していたので、急いで蹴り飛ばしたけどね。
偶然で済ませるには少し多い回数。それに、甘味を食べていても、どこかピリピリとした雰囲気が店の中に漂っているのも感じる。
「そして三つ目。お金と品物が入れ替わる」
指を立てつつ、警戒の意味も込め周りを見渡す。特に何も見つからなかったが、一応意識は配っておいた方が良さそうね。
何故警戒するかと言えば実はこれが一番厄介だからだ。何せ、他二つとの関係性が分からない。ま、実際警戒する必要がなさそうな気もするのだけど、これまでの相手とは少しばかり毛色が違う相手だ。警戒しすぎってことはないでしょう。
さて、この三つ目の詳細だがいつの間にかお金とものが入れ替わっていると言うもの。ただ無くなるのは品物で、代わりにおいてあるのがお金だと言う。しかも、値段ちょっきりにおいていってくれているらしい。実害は今のところ無いみたいだけど、店主さんも気味悪がっているから優先して退治するつもり。
無くなるのは主に食材。ただ最初だけ他の店からもなくなっていたみたい。
さて、とりあえずこれで全部のはずだけどまだ何か隠していそうねこいつ。団子を食べてるからってのもあるだろうけど、一言も口を利かなかったのはおしゃべり好きの魔理沙にしては珍しい。そして、そう言うときは大抵重要そうなにかを隠していることも知っている。問い詰めてやれば吐くかしらね、吐くといっても団子がぎりぎり位で。
と、そこそこ外道なことを考えていると、当の魔理沙が口を開いた。
「……なぁ、今回のお前なんかおかしくないか?」
「突然口を開いたと思ったらなに、失礼なやつね。少なくともいつものあんたよりか自分を信用してるからそんなにおかしくないわ」
「ちょっとはおかしいってことじゃないか。それに私は自分を信用してるんじゃなくて私の積み上げたものを信じてるんだよ」
そういうと、近くに来た店員さんに追加で羊羮とお茶を頼み、残っていたお茶をのみほし口を湿らせた。
「何時のお前なら勘にしたがって動くじゃないか。
私からモノを聞いたりしないでさ。そう言えばお前の方の事情も聞いてやるって言ってたな、ほら何があったか話してくれよ」
「……別になにもないわよ、あんたに話すことはね」
そう言って、来た羊羮を切り分ける。
「そんなこと言わずにさ」
いつの間にか往来の男たちはいなくなっており外の様子は元通りになっていた。
「私ら友達だろ?」
羊羮を切り終えると、一切れを口に放り込み、変わらずに美味しい味だと嬉しく思いつつ味わう。
さすがここの羊羮ね、甘さもそこまでしつこくないし上品な舌触り。この値段で――
「なんで話してくれないんだよ〜」
ああもう、うっさい!!
わざとゆっくり羊羮食べて無視してるのに、少しも堪えていないってどういうことよ。
ただ、こういうときの魔理沙がしつこいことを私は知っている。多分、周りのやつを心配しすぎる遺伝子でも入ってるんでしょうね。ただ単に興味があるだけかも知れないけど。それは常時であれば好ましく思うのだろうけど、今は少し鬱陶しい。
……でも、こういうときに根負けするのは大体私だ。ずっと昔からそうだった。
「……はぁ、仕方ないわね。大した理由じゃないわよ?」
「別に気にしないぜ。全く最初から素直に話せばいいのにさ〜」
「うるさいわね。で、理由なんだけど……今回のやつがいつもと毛色が違うのは知っているわよね」
「出てきてすぐに行動をおこさないとか、か?」
「そう、他にもあるけどそれが一番ね。
だから、何時もより警戒しておいた方がいいんじゃないかって。
あと、この前のアレから紫の消息が分からないのよ。結界は持続しているんだけど……」
「ん? それって結構一大事じゃないか!!
もしかして、結界が弱まっているからこんなことになっているのか?」
「あんた、よくそこに気づいたわね。その通りよ、ただ、弱まっているって言っても、まだ幻想郷に影響するほどじゃないわ。だから、物品だけで済んでいるとも言える」
「このままだとそれだけじゃすまない、って聞こえるけど」
「さあて、ね」
こうしている間にも、非常にゆっくりとだけど結界が緩んでいる。
放置していたら、バランスが完全に人間に傾くだろう。そして、それを防ぐように力のあるやつらが動き出せばそれこそ破滅の一途をたどるのみ。
でも、恐らく今のところ心配はいらないはずだ。アイツはそういうところのセイフティを付けないほど、甘い頭脳はしていない。アイツの辞書に『自信』はあっても、『慢心』の文字はないから。自分が負けると思っていなくても、失敗したときの手なんてそれこそ幻想郷の住人以上に用意してあるでしょうね。
「とはいえ、ね」
「ああ、早く解決するに越したことはない、か」
決意と同時に最後のようかんを口にほうばる。見れば、魔理沙も最後の一切れだったらしい。お茶も飲み干して立ち上がると、魔理沙が右の拳をつき出してきた。
ふふ、面白い、私によりによってその勝負で挑むだなんて。ちょうどいいわ、前回の雪辱、今ここではらしてあげましょうか。
思いを込め、魔理沙を迎え撃つようにこちらも拳を彼女に向ける。
勝負は一瞬で終わる。その前段階にどれだけ自分の実力を拳に込められるか、そして少しばかりの神の祝福をどちらが受けられるかでこの勝負は決められると言っても過言ではない。私は充分に溜め終わった、私の勝利は確定している。
相手も気合い十分。いよいよ始まる、刹那の交錯が。
「さぁ、覚悟はいいかしら?」
「泣きを入れるのはお前の方だぜ、霊夢」
啖呵を切りあい、相手の目を不敵ににらみ返してやる。
合図は自分達でかける。
せーのっ
「「じゃんけん、ぽんっ!!」」
私はチョキ。対して魔理沙の手は
「くっそー、負けたー!!」
本人の明るい性格と同様にパッと開いていた。
残念だったわね、魔理沙。私はじゃんけんでただの一度も負けたことは無いの。相手が悪かったと思って諦めなさいな。
渋々店員さんのところまで二人分の代金を払いにいく魔理沙を横目に、私は意気揚々と外へ出る。見上げた空は清々しい程の青空だ。まるで、今の私の心みたいに。と、ちょっぴりゲスみたいなことを考えていると、魔理沙も出てきた。
「払ってきたぜ。で、結局どうするんだ?」
「ああ、明日から本格的に調べることにしたわ」
「明日? 急がなきゃならないんじゃないのか」
「急がば回れって言うじゃない。それに明日で三日目、動くとしたら明日な気がするのよね」
「根拠は?」
そう聞いてきた魔理沙にブイサインとウインク付きで、言葉を返す。
「もちろん――勘よ」
「……だよなぁ」
魔理沙があきれた表情で私を見るが、こればっかりは仕方ない。私の行動の切っ掛けは大体が勘だからね。それに確かに警戒しなきゃいけない相手だけど、動かないわけにはいかないでしょう。そのタイミングを決めるのには私の勘がピッタリだし。勘に頼りすぎはよくないけど、そればっかり気にしすぎていたら動くのが遅くなっちゃうからね。
まだ微妙に納得していなさそうだけど、無視して話を続ける。
「さて、そうと決まれば早く明日の準備しておかなきゃね。
主に宴会の準備を。料理は……早苗に頼もうかしらね」
「気が早すぎるんじゃないか?
そう言うのを捕らぬ……ええと確か狐の皮算用っていうんだぜ」
「それって、狸じゃなかったっけ?」
「マミゾウから教えてもらったんだ。外の世界じゃこっちの言い回しの方が一般的らしいぜ」
「ふーん……まぁ、あんたが来なくても宴会は滞りないから別にいいわよ。
今回は外から色々入ってきてるから珍しい食べ物あると思ったんだけどなぁ」
「おいおい、誰も『いかない』何て言ってないだろ。
私はもう少し情報を集めるとするぜ」
「任せたわ、鴉天狗並みにかき集めてきなさい」
「はいはい、仰せのままに」
人里を歩きつつ、どうでもいいような会話を交わす。
気ままに魔理沙と話し合うのは割りと楽しい。何年も一緒にいるため、お互いの気性を良くわかりあっているから。ああ言えば、こう返してくれる。会話はポンポン弾みあっという間に人里の出口までついてしまう。
「じゃ、私はここで」
「ええ、また明日ね」
別れは短く、行動は早く。挨拶を交わした直後、私たちすぐに別々に飛んでいく。
やっぱりあいつ、今回の異変解決を狙ってるわね。外から色々入ってきているもの、収蒐家のあいつとしては堪らないはず。いつもなら私と情報交換なんてしないで勝手に動いてるのに、今回はしているのも慎重に動くためでしょうね。まぁ、収蒐癖をこじらせて私に向かってこないだけまだいいか。その理由だって首謀者ならいいの持ってるはず、ってだけだろうけど。
邪魔するなら首謀者共々ぼこぼこにのしてやるけどね。
そんなことを考えながら、私は神社までの道(空だけど)を行くのだった。
あと一歩のところで、考えが届かずに。
□□□/^□□□
人里――
二人の少女が飛び去っていった後、その後ろ姿を見つめているもう一人の少女がいた。その少女は二日前鴉天狗と話していた少女であった。
少女は里の道の真ん中に立っていたが、誰も彼女に目をくれない。しかし少女のまわりは不自然なほど人が寄り付いていなかった。
「恐ろしいですね……」
思わず漏れた、というようなその言葉にはその言葉の軽さとは裏腹な重さがこもっている。何故なら
「たまたま近くにいたとはいえ、姿を隠した私の言葉に反応するなんて」
巫女が店から出てきたあと、彼女は丁度そこにいた。
と、言うより丁度その時に歩きながら
『遂に明日ですね〜』
なんて呟きながら歩いていたのだ。
巫女には聞こえていなかったはずなのだが、その超人的な第六感にでも引っ掛かってしまったらしい。
しかし、予想もしない方法で自分の考えが読まれたというのに彼女の表情に焦りという感情はなかった。むしろ、相手に十分と不適な笑みを浮かべ上空を、飛び去った方を見据える。
「ですが、この勝負。やはり勝つのは私たちみたいですね」
私にあなた以上の油断はない。
そう呟きながら、少女は人混みへと消えていく。彼女らとは別の方向へと。
/^(少女就寝→起床)
私の安らかな眠りは唐突に、そして乱暴に破られた。
突然の轟音に慌てて飛び起きると、私の枕から二十センチぐらいの位置に突き刺さっていたのだ――新聞が。
「くぉの……あやぁーーー!!!!」
殺す気かッッ!?
絶叫と共に吹っ飛んだ障子を横にぶん投げる。あんのバカ天狗ぅ!!
外へ走り出すと、今もっとも会いたいヤツが空に見つけた。
「おはようございます、霊夢さん♪」
手まで振ってるんだけど、どう料理してほしいのかしらねぇ……!
「あや、あんたいい性格してるじゃないの」
「いえいえ、今の霊夢さんよりはしてませんよ」
「降りてきなさいっていったら」
「そんな地獄の一歩手前みたいなところに降りるわけないじゃないですか〜、あっはっは」
冷や汗をだらだらと流している文。
どうやら、ようやく状況がわかったみたいね。でも、もう遅いのよ。
文の逃げようとする動作に合わせて術を発動させる。
すると、愛らしい焦った顔が目の前に。混乱に変わるまでに、その腕をがっしりとつかみにっこりと笑いかけてあげる。
「え、ちょ、え!?」
「さぁ、文。あんたの罪を数えなさい」
「ちょちょっとまってくださいそんな物騒な針はしまって話し合いましょうそうです私が調子乗ってました今度からは馬乗りになって起こしてからにしますごほうび付きで嬉しいと思いませんかもちろんそれもネタに使わせてうしろのめりぃさん!!!?」
/^(少女制裁中)/^
今度やったら、目刺しにしてやりましょう。
ぽいっと動かなくなった天狗を放り出し、私は朝食の準備を始める。
あ、そうだせっかくだしあいつの持ってきた新聞も読んであげましょうか。異変の手がかりが乗ってるかもしれないし。
しかし、さして期待せずに手に取った新聞に思わず目をむく。
何故ならソコにはこうのっていたから。
『博麗の巫女、本日より異変解決を開始。
外来品は多く確保し、隠蔽しなければ巫女に処分されてしまう可能性大』
目を疑う。そして、もう一度見直してから、ポツリと言葉がこぼれる。
「やられた……」
嫌な一日になりそうだ。
そんな私の呟きは、強くなってきた風に吹き散らされてしまうのだった。
お待たせしました!
次回からよーやくようやく異変解決パートです。
ええ、ここまで長かったですよね……毎度なぞに増えてく文字数とか、唐突に入れられる質問とか……。
あ、今回も問題を出すんでした。
はい今回は……
『新聞に書かれていたことから博麗霊夢はどのようなことを予想したのか』
ヒントは……魔理沙の収蒐癖に似たものを持つ者が首謀者側によるなら、です。
ではまた次回で~!