東方深理壊~The Girl To Deny Life~ 作:hinanan
『電波女と青春男』って面白いですよね!絵がかわいいし。
それはさておき。
前回、答え合わせをやっていないことにようやく気づいたので、活動報告の方でやります。
もうしわけありませんでした!!
それでは本編です。
「と言うわけで、今から特攻をかますわ」
「話が前に進みすぎなんだよなぁ……」
「私たちには、何より時間が足りないのよ。こんなところで立ち止まってなんていられない……っ!」
「そういうお前は普通に朝食を食べているわけだが」
「それはそれ、これはこれ。腹が減っては戦はできないのよ」
「特攻ってことはそれが最後の晩餐にならなきゃいいな。飛んで特攻するとか爆破落ちしか待ってないんじゃないか?」
「やめなさい」
命を最後まできっちり国のために使った大和の特攻隊を悪く言わないの。あの人たちは信念を最後まで貫き通した真の英傑よ、使う上が無能だっただけでね。……あら、この話題は色々不味いわね。
朝食の最中に魔理沙が来たので適当にあしらいつつ、急いで食べ進める。ちなみに朝食は、麦飯+トロロと焼き魚にお味噌汁。たまに麦とろご飯食べたくなるのよね。……美容にもいいらしいし。
それにしても、魔理沙がこんな朝早く来るなんて久しぶりだ。
今は日が上ってから、一刻か二刻ぐらいの時間帯。普通なら、どこの家庭も今ぐらいに起き出して私と同じようにご飯を食べ始める。まぁ、さっき急いで逃げていった鴉天狗は新聞を配るときだけ、その時間帯より早く姿を見せるけど。
それはそれとして、魔理沙が来た理由は察しがついている。
「で、結局どうするんだ?」
麦飯を口に運んでいると、唐突に魔理沙が聞いてきた。
どうするって言うのは、間違いなく新聞のことだろう。でも、聞かれたところでいつもと答えは変わらないのよね。
ゴクンと飲み下し、普通の調子で言う。
「もちろん、立ちふさがるなら潰す」
私の声に一切の覇気も迫力もない。だけど、それがただの軽口の筈がない。
何故なら、それは私にとっては息をするのと同じぐらいごく自然なことだから。邪魔なら、弱かろうが強かろうが区別はない、等しく叩くのみ。
だって、私は幻想郷一無慈悲のある巫女だもの。
魔理沙が呆れたように頭を振るけど、これまたいつものことだ。
「じゃあ、基本はいつも通りな訳だ。
というか、私も私で新聞の見出しを見て急いできたから、正確にわかんないだよな。
今、どういう状況なんだよ?」
「相変わらず結果を急ぐやつね、ちゃんと全部見てから来なさいよ」
ご飯食べてるのに説明しなきゃならないじゃない。
しかし小言を言ったところで魔理沙はそっぽを向いて、片手を私の焼き魚に……ってこら!
ベチィっ。
伸びてきた手を平手で思いっきり叩いてそらすと、何だか痛そうな音がなった。若干、涙目でこっちを見てきているけど、顔を背けて無視。ふんっ、人のご飯に許可なく手を出すからそうなるの、因果応報よ!
結局、話は時間がないにも関わらず朝食後になった。お茶を出しつつ説明を始めようと口に出す。
「いっても、見出しだけでも見てきたんなら少しはわかるでしょ?」
「情報戦が好きだってことはな。あの鴉天狗まで焚き付けてよくやるぜ」
「目的を完遂させるまで、身内同士で争わせて消耗させるのが目的か……嫌らしいわね」
「ああ、消耗したところを最初のうちにバシッと叩こうって魂胆だな。あのスキマ妖怪ほどじゃないが、面倒な手だぜ」
「うん……うん?」
「え」
「え」
「…………。」
「…………。」
あれ、なんか認識にずれがある気が……。
私は、首謀者側の目的が終わるまで私たちの相手をしたくないから、地域のものたちに任せようとしてるんだって思っていたんだけど。
しかし、魔理沙の想像、いや推測は私のそんな考えのもっと上をいっていた。
「今日から本腰を入れて私たちを叩くからこんな記事を出させたんだろ?
私たちが消耗して目の前に来たのを倒して安全に異変を完遂させようとしてるんだよ」
「そんな……いやあり得ない、あり得ない。だって、私たちまだ首謀者がどこにいるのかさえわかってないのよ?
それなのにたどり着くことなんて」
「多分、もうきっちり姿を現しているんじゃないか。それに昨日の時点でどの辺にいるのか、それなりに検討はつけられるぞ」
「え、は」
「どの方角かまではさすがにわからんが、人里の近くにいるのは確かだな。
それに人間が混じっているはずだ。食材がいるのは人間だけだろうし、道具も合わせて買ってるんだから間違いない。全く関係ない外来人って線も無くはないが、姿が見えないってんならそれは薄いぜ。首謀者のように隠れる必要はないはずだからな」
「……」
さすがというか、なんというか。
ごく普通のような顔をして語る彼女を前に、私は目を白黒させることしかできない。驚きと未知の連続すぎる。とはいえ、言っていることは言われればなるほどと納得出来るものだ……それに気づくのが難しいのだけど。
そういえばこんなやつなのよね、こいつって。観察眼が他の人の何倍も優れてるし、普段の技とかで隠れてるけど意外に常識はあるし。
天才的な閃きがあるわけではないんだけど、得たものをつみあげるのはこいつの得意分野でもある。とはいえ、このままじゃなんだか癪だ。でもちょうどいい反論もないし、話を変えることぐらいしかできない。
「と、とにかく」
コホン。
と、動揺を悟られないよう極力努めながら話を前に進ませようとする。
「そこまでわかってるんだからさっさと行って倒しちゃいましょ」
「そーだな、どっちにしろ早くしないと来ちゃうからな」
「は? 来るって何がよ」
「何が、って忘れたのか。新聞見てるやつの中で反応しそうな輩だよ」
河童とかな。そう言葉をくくって呆れたようにこちらを見る魔理沙。いや、さっきまで覚えてたんだって。ちょっと出てこなかっただけだから。止めなさい、そんな目で見ないで!
区切りの空咳が完全に空振りした瞬間だった。
「……さあて準備も終わったし、頑張ってみようかしら!」
「ごまかしても無かったことにはならないからな」
こうして。
ぐだぐだのまんま今回の異変解決が始まるのだった。
……割りといつも通りでもあるけど。
―――――― /^ 少女祈祷中――――――
空というものはいつでも私に色々なものをプレゼントしてくれる。
飛ぶ鳥のその自由さへの憧れ、刻一刻と変わる景色の雄大さ、はたまた何も用事がない午後を楽しく変えてくれる友人を連れてきてくれたり。
もちろん、良いことばかりであるはずがなく、時には私にとって好ましくないモノだって中には含まれる。出掛け先に意思をくじくかのような雷雨や、自分の感情を嘲笑うかのように変化する天候なんか、誰にでも経験が有るんじゃないか、と思う。
だが、私はそれらを一度も無意味なモノだと認識したことはない。何故ならどの経験だって好き嫌いの程度こそあれ、教訓や気持ち、一時の出会いを私に与えてくれるから。それらはどんなときでも私に必要なモノであったから。
だから、空がつれてきたこの小さな来襲者も何かしらの意味を持っているに違いない。
そんなことを思いつつ、私は人里に向かう空の道の途中で止まる。人里まで一直線に飛んでいた私たちの目の前に突然、立ち塞がる(飛び塞がる?)ように奴が来たからだ。
ソコにいたのは――
「やい、れーむとマリサ!ここを通りたきゃ、さいきょーなあたいと勝負しにゃ…ぬ、にゃ…しろー!!」
相も変わらず能天気な氷の妖精であった。登場台詞を噛んでもそのままやるとは恐れ入るわ。
しかし、その登場を受けて私と魔理沙は思わずお互いの顔を見合わせてしまう。正直、私としてはこの場面でこいつに、というかほとんどの奴に会いたく無いんだけど。急いでるから、手加減できそうに無いし。
面倒そうな視線を送ってみると、意味が伝わったのか苛立たしそうに背中の氷柱みたいな羽をバタバタとしはじめる。
「なによ、するのかしないのかハッキリしろーっ」
「はいはい、相手してあげるからそうかっかしないの」
「そうだぜ、チルノ。あんまり怒ってると溶けるかもしれないぜ」
「え、そうなの? じゃあ、怒るのやめる!」
そういうと、彼女はそれでも落ち着かなそうではあるもののとりあえず口を閉ざした。
この見るからにおb……教養が足りなそうなこいつはチルノ。水色…いや氷の色をした短髪に子供っぽい顔と体躯。寒色系のワンピースが大変にあっているけど、背中の氷柱が6本集まったような羽のせいで普通の子供には見えない。その正体は氷の妖精(ちなみに近くに寄るといつもは寒くなるのだけど、今回はあんまり気にならなかった)であり、毎度毎度異変が起こる度にお祭りのような雰囲気にのせられて私たちに突っかかってくる面倒な奴でもある。
面倒な理由は他にもあって、それはこいつが強いからというものだ。幻想郷全土で見ればこいつより強い奴なんていくらでもいる。だが、『妖精』というくくりで見ればこいつはそのなかでもかなり上位の実力を持っているのだ……頭はあんまり変わんないけど。まぁ、そんなわけで他の妖精とは異なり、倒すのに一撃と言うわけにいかずそれなりに時間を取られるため、時間が惜しい今のような状況じゃ面倒な相手なのだ。加えて私のは火力で押しきると言うより、時間をかけても仕留める、もしくは手数で攻めるタイプだから余計にそう感じる。
そんな風に、私はすっかり一人で戦う算段を立てていたが、よく考えてみれば私は一人でここに来ているのではない。
私がどうやったら早く目の前の奴をどかすことができるか、と考えていると魔理沙が横からこしょこしょと話しかけてきた。
「(なあ、霊夢)」
「(なによ、私は今私のために考えてるの。邪魔しないで)」
「(いや、早く通りたいなら私がやった方が速いぜ)」
そういうと、彼女は懐から爆弾みたいなのを出してもてあそび始める。
これは自信があるときのこいつの癖だ。たまに失敗することもあるから、過剰に信頼はできないけど……なにかあるというのなら、任せてもいいかもしれない。
「(だろうけど、それは私よりも火力が少し高いからでしょ)」
「(いやいや。まぁお前が任せてくれるってんなら、すぐにでもお披露目してやる)」
「(ふぅん、じゃ、頼んだわよ)」
取り敢えず魔理沙の邪魔にならないよう後ろに下がる。さて、お手並み拝見といきましょうか。
私が見ていると、魔理沙は懐から瓶のようなものを取りだし、なにげにずっと待っていてくれたチルノに親しげに話しかけにいった。
「おーい、チルノ」
「なんだ、さいきょーのあたいになにか用か」
「お前が先に呼び止めたんだろ。ほら、お前のいった通りに勝負してやるぞ」
「本当か!?」
「ああ、ただし私のなぞなぞに答えられたら、だぜ」
「望むところだ!」
と、そこで魔理沙はさっき取り出したものを見えやすいように掲げた。
「じゃあ、今からこの瓶を下に向けて投げるぞ。その瓶を探してきて、中に入っているなぞなぞを解けたら約束通り勝負する。
自信がなければやめてもいいぜ?」
チラチラとそれを振りつつ、反応を見るように言葉を止める。こっちからじゃ見えないけど、さぞ挑発的笑っているんでしょうね。
その証拠に、チルノはますます羽を激しく動かして叫ぶように返してくる。
「もちろん、やるに決まってる!なんたって、あたいはさいきょーだからな!!」
「よくいった、お前の勇気には感服するぜ。それじゃ――取ってこい!!」
あーあ、あんなに遠くに投げちゃって……。チルノも必死になって取りに行ってるじゃない。それに――
「ねえ、魔理沙」
「ん? ほら通せんぼはなくなったんだから早くいこうぜ」
「あんた、あいつがどんな簡単ななぞなぞも解けないの知っててやったでしょう」
「チョットナニイッテルカワカラナイ」
「……いや、おかげで通れるようになったからとやかく言わないけどね」
でも、なんだかいたたまれない。特に横を通りすぎるときに楽しそうな横顔見た身としては加えて。それに、こんな姑息な手をとっておいて笑顔で親指をたてるってどうなのよ。
私がやればできるだけ早く退かすように手加減なしでボコボコにしていたとは思うけども、これはなんか……違う。この方法は私よりも結構鬼畜と言うかなんと言うか……。
「とりあえず、道は空いたんだしさっさといこうぜ!」
「そうね、細かいことはいっか」
しかし、こいつといるときの私は、時と場合によって細かいことはあんまり気にしなくなるのだった。何故なら先人はこう言ったからだ、『それはそれ、これはこれ。』と。
それに、どうやら気にしてられる状況でもなくなったみたい。
自分自身の勘に従って、魔理沙の服をひっつかみながら後ろへ思いっきり下がる。すると、さっきまで私たちがいた空間に幾本ものレーザーが通っていった。
『え!?』
驚く魔理沙の服を放しつつ、声が聞こえた方に退治用の針をお返しにと投げ放つ。針は空中で『なにかに刺さったように』止まり、下に落ちていった。そのまま見ていると、さっきまでいなかったはずの青い服に緑の帽子を被った奴が必死に針を抜こうとしている姿が出てきた。
うん、確定ね。とりあえず、下に落ちていった奴が上がってこれないようにお札を投げてとどめを刺しつつ、辺りを見渡す。
「ほら、他にもいるんでしょ、出てきなさいよ。
じゃないと、天狗に頼んで人里にあんたらの悪行をばらまいてやるわよ」
「わー、待った待った! それだけは勘弁してくれよー!!」
威圧の意味も込めて言葉を投げ掛けると、案の定そこら辺からわらわらとさっきのと同じ格好の奴が出るわ出るわ。
全部でざっと、二十人ほどもいる。それに先頭にいる奴は私の知り合いじゃないの。まったく、異変の最中に邪魔しないでほしいわ。
でも、姿を出したのなら好都合。さっそくとっちめてやる――
「おい、霊夢」
「なによ、折角出てきてくれたんだから全員張ったおすわよ」
「さっきといってることが真逆だぞ。……じゃなくて、何でこいつらがいるって分かったんだよ?」
「あ、そうそう、私も今不思議に思ってたんだ。何で私たちの攻撃をよけれたのさ、盟友」
「処罰待ちは黙ってなさい」
「あ、はい」
全く、さっさと済ませて突破しようと思ったのに。しかし、面倒でも説明しないとなんだかどっちも納得してくれなさそうだ。
まったく、仕方ないわね。
「あのさ、さっきチルノと会ったじゃない」
「ああ、そして華麗にかわしたんだぜ」
「あれを華麗と言い切るあんたの心意気って。盗人より酷いわね」
「チルノの心だけ盗んだから怪盗以上ではあるな」
「……はぁ、とにかく会ったわね。その時に不思議なことがあったのよ」
「不思議なこと?」
「あいつの近くっていっつも寒いじゃない。でも、今日はあんまり気にしなくなかった?」
「ああ、そう言えば……」
「春の妖精とか地獄の烏とかがいるわけじゃないのに、寒さが緩和されてるってことは、誰か見えない奴が暖かくなるようなのでも使ってるのかな、って思ったの。で、それができそうなのっていったら」
「まぁ、コイツら河童しかいないよな。でも、コイツらの攻撃はなんで避けれたんだ?
さっきの説明だけじゃ分からないぜ」
「ん、チルノと一緒に襲ってこないで姿を隠したままなら、戦闘後の気が抜けた頃に来るかなって気を張ってたのよ。
ま、結局勘に頼ったから結構ギリギリだったけど」
というか、ここまでの予想がほとんど勘なのよね。攻撃を避けるちょっと前ぐらいに、突然思い付いたやつだし。
でも、そんな適当な予想でも大体は合っていたようでよかったわ。あの河童たちの目をまん丸く見開いた表情がその証拠ね。
まぁ、河童って私たち人間より優れた技術を持っているくせに、なぜか人間のことが大好きっていう変な種族だから黙ってても出てきていたとは思うけど。
「やっぱ、すごいな霊夢!」
「ハイハイそんなこと言う前に――」
「いやぁ、さすがは盟友だね!
盟友たちのなかでも頭ひとつ飛び抜けているよ」
「見えすいたお世辞も要らないわ。それに、あんたたちもそんなおしゃべりに興じている暇はないんじゃないの、にとり」
さっきからちょくちょく話に加わってくるこいつは河童のなかでも変わり者であり、私たちの知り合いでもある河城にとりという河童だ。変わり者って言葉はコイツらのなかじゃ、尊敬の意味も込めて使われているみたいで、事実纏め役として動くことも多い。水色の髪を二つに束ねた(外じゃあツインテールって言うんだっけ)髪型と背中に大きなリュックを背負っているのが特徴だ。それとこいつには他の河童よりも致命的な、性格的な特徴があって……。
私の問いかけに、しかし彼女はニヤリと笑って首を横に振った。
「いやいや、ここで少しでも長く会話をしてれば、異変の首謀者のために時間が稼げるだろ?
そうすれば、私たち河童も技術革新待ったなしって訳!」
「へぇ、じゃあ今倒すわね」
「しまった!?」
おバカが目を見開いている間に針を投げてみるが避けられた。ちぇ、勘のいいやつ。
「あっぶな!……というか盟友、不意打ちなんて酷いじゃないか!」
「幻想郷じゃ珍しくもなんともないわ、美しければいいのよ」
「不意打ちのどこが美しいんだよ」
「少なくとも汚くはない、きれいな花火が上がるわ。
と言うわけで、さっさと散りなさい」
「理不尽すぎないかい!?」
「じゃあ、さっき私たちを理不尽にも不意打ちしようとしていたあんたらと同じってわけね。それって悪いことなの?」
「うぐ……聞き方がずるい」
「妖怪相手じゃこんなものよ」
悔しげな顔で睨んでくるにとりをいなしていると、魔理沙がまぁまぁと宥めるように入ってくる。
「そこまでにしとけよ、霊夢。
それより出てきたってことは勝負するってことでいいんだよな?」
その言葉にこくこくと頷く河童たち。こういうのはそつがないわね、私も真似してみようかしら……って、よく考えたら社交性身に付けたところで妖怪にしか発揮されない。神社に人間がますます寄らなくなりそうとまで思い至りガックリと肩を落とす。
「どうしたんだ、霊夢?」
「何でもないわ」
「何か悩みがあるなら私たちにいってくれよ。盟友のためなら力を貸すよ!」
「……そう、ありがとうね」
まさに、あんたら妖怪が寄ってくるおかげで私が落ち込んでる、とはどうしても言えなかった。本気で心配してそうな目をしている相手に、そんなこと言えるやつがいるならそれはよっぽどの外道じゃないの。
「はぁ、大丈夫よ。心配要らないわ」
「本当かい、何かあったらいってくれよ」
「ええ、本当に大丈夫よ……あんたら全員を落とす気が有るぐらいには」
「ひゅい!? 完璧に藪蛇だった!?」
「あっはっは、霊夢も元気になったことだしそろそろ始めようぜ!」
「ええ、殲滅してあげるわ」
「ちょっと盟友!? なんか一人物騒だから止めてほしいんだけど!!」
ふふ、おかしなことをいうわね。そんなの私が聞く耳を持つと思う?
私の前に立ちふさがる妖怪は無条件でみんな退治の対象よ。
にとりの言葉と同時にお札を周囲にばらまき、一瞬あとに河童たちへと飛ばす。魔理沙も一度上空に上がると、流れ星のように星形の弾を次々と河童たちへと落としていく。
しかしわかってはいたけど、河童たちもそこそこの熟練者だ。流石に当たらずヒラヒラと全弾避けられた。
両方とも一度距離を取り仕切り直す。
「なまってはいないみたいだな、にとり」
「勿論、盟友たちと楽しく遊べる競技だもん。鈍ってて充分に遊べなきゃ、面白くないでしょ?」
「うんうん、いい心がけだぜ」
魔理沙とにとりの軽口に同調して、周りの河童たちも一気に騒がしくなる。
空気が賑わっていく感覚……これぞ、異変よね。
さっきのは挨拶がわりだけど、ここからは本番だ。全力で倒させてもらうわ……できるだけ時間をかけないでね。
本番の印に、にとりも懐からカードを取り出す。
「さてさて、長く遊びたいけど盟友たちにはサービスして二枚で終わらせてあげるよ」
「その二枚で終わらせてやるって言いたいんでしょ」
「さっさと終わらせて開発に戻りたいって目に書いてあるぜ」
「ばれたなら仕方ないね。仕方ないから、とっておきのスペルカードにしてあげるよ!」
スペルカード。
それはこの幻想郷における弾幕ごっこという遊びの花形だ。
弾幕ごっこは、互いに弾幕という弾を飛ばしあって戦い、相手を落とすのを勝敗とした遊び。あくまで遊びだから殺しはしないし、それに遊びゆえにルール通りに戦えば普通じゃ勝てそうにない相手にも勝つことができる。恐らく私が考えた幻想郷のルールの中でも一番のできだと自負できる遊びだ。
そして、この遊びは美しさが求められる。つまり、絶対に相手が避けられない攻撃はしてはダメだし、遊びにおいてフェアな精神が必要不可欠だ。
さて、そこで先ほどのスペルカードに戻る。これこそが私の考えたこの遊びの真骨頂……なんて自分でいうと恥ずかしいが、この遊びを楽しくするための重要なファクターだ。
簡単にいってしまえば、『この遊び限定の技』。個人個人が考えた美しさの結晶がこれだ。ま、実際に見てもらえばわかると思うけど……と現実に意識を戻す。
魔理沙もあっちも膠着状態。どっちかが動けば、状況はすぐさまに急変するんだろうけど、しかしその一瞬が遠い。先に動けばそれだけ不利になるが、すぐにでも相手を倒したい、そんな思いが透けて見える。
と、ついにしびれを切らし一人が攻撃を仕掛けてきた。それに乗じ他のやつらも一斉に弾幕を張り始めた。どうやら、我慢比べはこっちの勝ちみたいね。
でも――
「ふっ」
相手の弾幕をかすり――グレイズし――ながら、考えることはひとつ。
数の差で不利なのに後の先を取ったところで意味が無いのよね。
隙を見せた河童に霊撃の札を叩き込み、バク転するように薄緑のレーザーを背中ギリギリで避ける。クルリと回る視界に大きく映る水の弾に体を反らすと、軌道上に重ねるように針を放った。
「……っ!?」
しかし、その効果を見る前に背後に気配を感じ全力で下へ。視線をあげると同士討ちする奴らが見えた。
でも、ここまでやったのに河童たちの数は最初と大して変わらない。その証拠に私のことを追って更に他の河童たちが戦意旺盛にも突っ込んでくる。
適当にヒラヒラと避けながら、魔理沙の方を見るとあっちもあっちでずいぶんと忙しそうだ。レーザーで空間を薙ぎ払って近付けないようにしているけど、それを避けた河童たちからの反撃も多い。今は優勢に見えるがその眼は真剣そのもの。極度の集中力で観察して相手の攻撃を捌いているんだろう。
かくいう私も余裕そうにみえるけど、徐々に体力が奪われていっている。
マズいのは分かっている。このままじゃじり貧だ、近いうちに落とされてしまう。しかし、範囲で吹き飛ばしてやろうにもそんな隙が見当たらない。
河童というやつらは我が強いから、チーム戦とか苦手だと思ったのに……どうやら、他人の作業は邪魔しないというポリシーがあるみたい。同士討ちとかは意図して誘発しないと全然ならない。スペルを放つ時間さえない。
ただ、混線になったからかにとりの方も見てるだけ全然スペルカードを使ってこない。だから、早くこの河童たちを落としてにとりをおぉっと!!?
突然上から落ちてきたレーザーの束を紙一重でかわす。お返しは大量の霊撃札で。何人かの河童が落ちていくのを見ながら冷や汗をふく
危なかった……そろそろ考え事しながらは難しいかしら。
もう一度だけ、魔理沙を見るとあっちも同じ状況だ。さっきから何回も相手の弾がかすっていて、ますますまずい……って
どうしたのかしら、こっちを見つめて。何かを狙ってる――いや、そう言うことね。
魔理沙に目だけで了解と送り、一瞬後結界で周りの河童を吹き飛ばす。大したダメージはないけどこれで……。
それと同時に魔理沙もレーザーで道を空け、一気にこっちへ突っ込んできた。
当然、魔理沙の請け負っていた河童たちもこっちになだれ込んできて、一気に倍に。
「どうしたの盟友たち。
もしかしてまだスペルも使ってないのに降参かな?」
「バカいえ、そんな簡単に諦めるわけないだろ」
「残念だけど妖怪が巫女に勝てる通りなんて有りはしないわよ」
「ふうん、そこまで大口を叩くなら何か策があるんだろうね」
でも、とにとりはニヤリと笑い片手を上げる。
「この数に二人ぽっちの策が通じるとでも思うのかい。
大人しく河童の波に飲み込まれちゃえよ!!」
上げた手をバッと下ろしたのを合図に他の河童たちが再度突っ込んでくる。さっきまでと違うのは、混ざってその数が増えているということと。
私たちが彼女たちの特性を思い出したってことだ。
増えた河童たちは元々私を相手していたやつらなのか、魔理沙の相手だったのか区別はつかない。あっちも区別はなしに全員で弾を放ったり突撃したりしてくる。だけど、それでいい。
最初の弾を同時に避け、アイコンタクトを取る。
そして
「さぁ、おにさんこちら、ってな」
「はい、手のなる方へ、なんてね」
魔理沙と全く逆方向に全力で飛んだ。
私は右、アイツは左に。すると河童の群れも綺麗に二分される――ハズもなく、予想通りに争い始めた。主に右にいくやつと左にいくやつで。
どんぴしゃだわ。さっきは目標がひとつ、つまり私をもしくは魔理沙を落とすってことしか無かったけど、今度は二つに増やしたから見事に互いで邪魔しあってる。それに、人数を増やしたお陰で全体の競争心も強くなったみたいね。
たまにこちらにも飛んでくるけど、ろくに狙いもつけられてないから避けるのなんてたやすいたやすい。
少し離れていると、にとりが目を白黒させているのもよく見えるわね。
「いやぁ、自分で考えた策だけどここまで綺麗にハマるなんてな」
「私もビックリしたわよ。まぁ、一人じゃこうはいかなかったわね」
「本当だな。さて、それじゃあ今のうちに」
「ええ、一気に決めちゃいましょうか」
互いにカードをとりだし、スペルカードの準備をする。
「おい、みんなそんなことしてる場合じゃな……ひゅい!?
ちょ、ほんとにヤバイって離れて――」
一人離れていたにとりがこっちに気づいたけど、残念ながらもう遅い。
私たちはにとりににこぉっと笑いかけ、すべての力を下へと向ける。
魔理沙は充分に魔力がたまった八卦炉の砲口を。
私は山のように巨大化した陰陽玉を。
「「スペル宣言」」
自分のなかに溜まった力に促されるように言葉を紡ぐ。
恋符【マスタースパーク】
宝具【陰陽飛鳥井】
「吹き飛べ!」
「潰れなさい」
言葉が早いかそれともそれが早いか。
魔理沙の構えた八卦炉からは荒々しい虹色の光の奔流が柱のように突き進む。
私は巨大化し神々しい光を放つ陰陽玉を蹴り、その質量を隕石のように落とす。
気づいたやつは何人かいたけど意味はない。
すべてを飲み込み、私たちの弾幕はただ進んでいく。
それが収まったとき残っているものは何もなかった。
木々もなく地面も面白いようにえぐれている。
その様を見下ろしてから、私たちは顔を見合わせて同時に声を出す。
「「私は知らないから!!」」
あはは、はは、ははは、ま、魔理沙の顔真っ青で面白ーい。
や、やましいこと、なな、ないならそんな顔しなくてもいいのにー。
なんて、そらとぼけてみても自分の頬に面白くない汗がだらだらと出ているのはよくわかっている。
ならば、ここは……。
「「私たちはなにも見てない」」
うふふ、当事者がとぼければ真実は闇のなかに――
「ちょっと、盟友!
なんてことしてくれたのさー!!」
「「たおせぇぇぇぇぇ!!!」」
「上等だよっ!!!」
私たちの平穏はまだ手に入らないらしい
―――――――
「え、私がいくんですか?
知り合いなんじゃぁ……わ、分かりました。いきますいきますからそんなにしがみつかないでください!
……はい、はい。大丈夫ですよ、そんなに心配しなくても行きますってば。
……私の知り合いも居るみたいですし。
お夕飯までには帰ってきますから、しっかり見守っていてくださいね。ふふ、ありがとうございます。
では!」
異変はまだまだ収まらない。
誰かの望みが叶うまで。
読了ありがとうございます!
頑張ってはみたのですが文字数を抑えることはできませんでした。
文字数には勝てなかったよ……。
ええと、弾幕描写もまだまだ浅くはありますが頑張っていこうと思います。
次回の対戦相手は、今回の河童さんと口ずさんでいた歌に出てくる人です。
予想してみてくださいね♪
歌の方のヒントは……異変の首謀者っぽい人が幻想郷に来たときに……?
はい、それではまた次回お会いしましょう
さよなら、さよならさよなら!