駄作品劇場・残骸   作:夢現図書館

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第10話

——チャットルーム1

 

 

ピタゴラス『おい、貴様。今、何処にいる?』

 

グラーフ『モノレールの車内だよ、知ってて聞いているんじゃ無いのか?』

 

ピタゴラス『ああ、その通りだ。随分と馬鹿な真似をしたな?』

 

グラーフ『おたくの教えの賜物だよ』

 

ピタゴラス『責任転嫁をするな。貴様の自業自得だ』

 

ヘンペル『ニュース見たけど、随分な荒れ模様ね……余程の事なのね、今更だけど』

 

グラーフ『他人事の様に言うんじゃねぇよ』

 

ヘンペル『後ろから刺され……あ、5本もメスを潰されるんじゃ殺せそうに無いわね』

 

ピタゴラス『あの追試馬鹿と背比べのレベルだな。頑丈さではな……一度、解剖されて来い』

 

グラーフ『言いたい放題言いやがって、拗ねるぞ』

 

ピタゴラス『なら、地面に埋まる程の問題集を叩きつけてやろう』

 

グラーフ『鬼‼︎ この鬼教師‼︎ お前、鬼の生まれ変わりか⁉︎ 埋まる程って、殺す気かッ⁉︎』

 

ピタゴラス『何、象に蹴られようがビルから飛び降りようが生き残る貴様の事だ。問題あるまい?』

 

グラーフ『大ありだ‼︎ どんな超人だ、俺は‼︎』

 

ヘンペル『ログ見たけどモノレールって東京からの?』

 

グラーフ『まぁ、そうだな』

 

萌芽『駅、見た』

 

グラーフ『え? 嘘、マジ⁉︎ 見てたのか⁉︎ と言うか居たのか⁉︎』

 

ピタゴラス『LINEとかに新規以外で入室予告とか無いからな……何時、入って来たのか分からん』

 

萌芽『うん。空気、重かった』

 

ヘンペル『そりゃ……今頃になって新規のIS男性操縦者とか現れたらねぇ……』

 

グラーフ『ガァァァァァァァァ‼︎⁉︎ 態々文字にして打つんじゃねぇよ‼︎』

 

ヘンペル『あら、ごめんなさい?』

 

グラーフ『謝る気ZEROだな、テメェ‼︎』

 

ピタゴラス『喧嘩は他所でやれ、馬鹿共』

 

萌芽『?』

 

ピタゴラス『んで、やって行けそうなのか? IS学園とやらで』

 

グラーフ『出来るならばあの馬鹿と代わりたい。と言うか代われ』

 

ピタゴラス『残念ながらその確率は0%だ。あの馬鹿にISの適性は無い。見た目はアレなのに惜しい限りだ』

 

ヘンペル『それ『厄介者は彼処で派手に散れ』と言っている様なモノじゃないかしら?』

 

ピタゴラス『Excellent.その通りだ、寧ろアレをどう始末すれば良いか分からんレベルだ。どう言う構造になっているんだ、あの馬鹿者は』

 

ヘンペル『本人に聞いて頂戴……』

 

ピタゴラス『聞くだけ時間の無駄だ。ナンセンスだからな』

 

グラーフ『殺しても死なんだろ。アイツは』

 

萌芽『丈夫、うん……羨ましい』

 

ヘンペル『いや、確かにその通りだけど、意味が間違っていると言うか……』

 

ピタゴラス『気合等は認めてやる。そう言う意味では奴はPerfectだ。他は認可出来ん程に酷いがな』

 

グラーフ『はぁ、そんな事よりも先行き最悪だな』

 

ピタゴラス『ほう、貴様とあろう者が不安材料と見做す案件があるか』

 

グラーフ『ありまくりだ。久方振りに日本へ帰って来た途端にこのザマだ。お陰で後の仕事が全部パーだ。巫山戯るなよ、慰謝料を請求してやる』

 

萌芽『お帰り、長かったね』

 

ヘンペル『その言い方だと熟練夫婦みたいな……いえ、何でも無いわ。と言うか、アンタの事だから何かしら手を打ってんじゃないのかしら?』

 

グラーフ『想定外過ぎる案件かつ突発的だったからな、30%しか回収出来てねぇ……』

 

ピタゴラス『それは死活問題だな』

 

グラーフ『後に回せる件は回して早急に対応せねばならん事はさっさと片付けた。まぁ、性急過ぎる真似だったが……状況が状況だったからな』

 

萌芽『大変……だから落ち込んでいた』

 

グラーフ『そう言う事を感じ取れるお前さんも中々、異常だと思うな』

 

ピタゴラス『非常識の塊が言える言葉か』

 

ヘンペル『良く片付いたわね。偶然の賜物かしら?』

 

グラーフ『タイミング良く固まってくれていたからな。楽な仕事だったよ……そういやあの水色髪を見かけたな』

 

萌芽『そう言えば、貴方の事で、愚痴ってた』

 

ヘンペル『どんな挨拶をしたのよ……』

 

ピタゴラス『非常識馬鹿の考える事は常識の裏だ。どうせ碌な挨拶ではあるまい?』

 

グラーフ『まぁな……が、仕事がし難くなるのは難点だな……どうしたモノか』

 

ヘンペル『IS学園は基本的に外出届を出しても出難いのよね……あーだこーだ言うからね』

 

グラーフ『そういや、お前はIS学園とかに行っていたっけな?』

 

ヘンペル『ええ。IS関連の設備等を医療関連に利用出来ないかと言う考えで来ているわ』

 

ピタゴラス『流石、新規部署を開拓する逸材だ。論点も違うな。努努、怠るなよ』

 

ヘンペル『そのつもりよ。地図とかの画像、送ろうか? ついでに基礎程度なら教えてあげれるわよ。と言うかアンタの場合、基礎以外は要らないわよね』

 

グラーフ『良いのか?』

 

ヘンペル『アンタが変な所で馬鹿やって私まで同類と思われたくないのよ。どうせ、交友関係とかバレてそうだし……』

 

グラーフ『……プライバシーの欠片もモラルも無いのか?』

 

ピタゴラス『Schadenfreudeか……全く以って嘆かわしい限りだな』

 

グラーフ『……んで、地図見たが……広いな』

 

ヘンペル『迷うと災難よ? 島丸々が学園の敷地だもの』

 

グラーフ『何処まで金を掛けているのか、呆れてしまうな……おっと、そろそろ島が見えて来たし駅に着きそうだ』

 

ピタゴラス『そうか。精々、死なない様に足掻くんだな』

 

萌芽『死ぬ? 学園なのに?』

 

ヘンペル『逆に死体が増えてしまいそうね』

 

グラーフ『言いたい放題言うんじゃねぇよ⁉︎ 若葉以外、ロクな事を言わねぇな本当に‼︎』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LINEのページを閉じてスマホの電源を落として仕舞い込む。モノレールの窓側から奇怪な建物が立ち並ぶ島が見えて来る。アレが例のIS学園のある島、か。

 

「おい。さっきまで何をしていた?」

 

「スマホで何を弄ろうが俺の勝手だろう? ボーデヴィッヒ」

 

「え、えーと……あはは……」

 

このモノレールの客席は両向かい席となっている。さりとて別に珍しいモノでは無いのだがこの席だけ空気が重かった。故に現実逃避も兼ねて彼はスマホのLINEアプリで知人達とやり取りをしていた。目の前の向かい席に座っているのは金銀のコンビ……いやコンビと言うよりも偶々居合わせたと言った方が正しい。

銀色の髪、眼帯、キツい眼差しの少女と言うよりも軍人と言う雰囲気が漂うドイツ人のラウラ・ボーデヴィッヒ。金色の髪に男と言うよりも少女として差し支えない容姿の男性操縦者だと言うフランス人のシャルル・デュノア。

 

奇しくもこの2人はIS学園に編入転校の日取りが合致しての偶然な形で居合わせた。この様な状態で席に座っているのも本当に偶然だった。

しかし、彼にとって今注視すべきなのは同じ男性操縦者だとかと言うシャルルでは無くラウラの方だった。

 

「確かにそうだが……」

 

「ならお互い関係は無い筈だ。居合わせているのも偶然だろう? 第1、お前が俺をどの様に見ようが勝手だしお前が何者かさえも至極どうでも良い……お前の感覚が他人と同じとは断じてあり得んからな。勝手に期待して勝手に失望する。その様な真似は愚者のする事だ」

 

「ふん。確かにその通りだろうな……見た目だけで判断するのは御門違いと言うモノか? 見た目で決まると言うモノもあるだろう」

 

「否定はしねぇがテメェは力あれば事足りると言いたげな眼だな」

 

「ち、ちょっと2人とも……‼︎」

 

緊迫の空気が更に張り詰める。金髪のシャルルは空気が凍り付くのを見かねて仲裁に入ろうとするも両者からの鋭い眼光に晒されて萎縮してしまった。

 

「全く、ドイツから日本に来てみればとんだ面倒事に巻き込まれたもんだ。お陰で3ヶ月先の予定が全部パーだ」

 

「何……?」

 

「日本行って北アメリカ行って、そんで南アメリカにも行く予定が狂っちまった。最悪だよ」

 

「見た所。私と対して変わらない年齢だが、そこまで多忙なのか?」

 

「多忙、超多忙。知人連中からも『死ぬぞ、馬鹿』とヤンヤン行って来る位にな」

 

「……死ぬのは最終的に己が悪い。その為体が原因でな」

 

「ほう? 気が合いそうだな」

 

「奇遇だな。貴様の口減らずは気に入らんがな」

 

「うわぁ……」

 

2人の張り詰めた空気で意気投合しそうに見えたがやっぱり仲悪くなりそうとシャルルは慄いて見ている。誰かに助けを求めたいが生憎、この場には自分達しかいない。

 

「そも貴様はドイツから日本に、と言ったな?」

 

「あ? 愛国心とかそう言うのはこれっぽっちも無ぇぜ? 一応、血統は日本人だがドイツ生まれなだけだ」

 

「ふん。気になっていたがそう言う事か……」

 

「言いたい事があるなら言えよ。ま、言い難い事ならば別に聞きやしねぇし後から聞こうと言う興味も無ぇ」

 

「そうか。ならば聞くとしようか。貴様、我が黒兎隊に来ないか? 黒兎隊とは我がドイツのIS部隊だ。まだ外見上でしか判断出来んが、貴様……何かしら嗜んでいるだろう?」

 

「ノッケから見た目で判断するんじゃねぇよ。黒兎隊とか聞いた事ねぇし興味も無ぇ」

 

「そうか……」

 

シャルルは『早くこの空間から逃げたい』と考えている矢先、モノレールが終着点であるプラットホームへと停車した。

 

「やれやれ、漸く着いたか……意外と時間が掛かるモノだな」

 

「日本人の癖にその言葉があるか? 神鷹 瑞穂」

 

「日本にゃ、精々1ヶ月位しか滞在する気は無かったからな。その辺の空気は慣れて無ぇんだよ……ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

「この2人、いつまで啀み合うんだろ……」

 

銀色の髪の少女と灰色髪の少年の子供の様な口喧嘩を見ながらシャルルは呆れながら溜息を吐いた。

 

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