この土地より東へ東へ、ずっと東へと向かった先に東京と言う街が存在するらしい。整備された道路、色取り取りの照明溢れる活気ある街……。
だが。そんな街に行く金も無ければ道のりなぞ知りはしないのが実情だった。
『白騎士事件』……過去を回想する大人達がそう呼んでいた事件があった。大多数のミサイルが日本へと向かって降り注ぎ『白騎士』インフィニット・ストラトスと言う存在が全て迎撃したと言う事件。
可笑しな話だ、そんな真似をして得する人間なぞ限られている、回想する大人達は憤りと憎しみが混ざった感情でそう言っていた。四方八方から迫るミサイルをたった1人で全て捌き切れるかと言われると無茶だ。
当然、討ち漏らしが出て来る……その結果、西日本に大多数のミサイルが降り注ぎ各地に被害が出たのだ。建物は崩れ落ち、道路は陥没、橋は落ちて孤立した諸島、山は崩れて山火事となったりと散々な光景だと言う。
その後、復興が進もうとしたがある日を境にその復興作業が全て頓挫した。全ては『IS』、女尊男卑主義の思考の蔓延によって捨てられたからだ。大多数のミサイル被害に遭った西日本は、女尊男卑に汚染された政府は復興作業其の物が税金の無駄と称して復興作業の全てが打ち切られてしまう。頼みの綱であった政府の復興作業が停止し復興物資も作業車両も撤収、撤廃された為に徐々に頽廃と化して行った。
この場所に残るは荒廃し廃墟と化した街並み、廃棄物によって汚染された湖や河川、打ち捨てられた物資、崩落した公共施設、存在意義を失った交通機関、女尊男卑によって家庭を失った寡や捨てられた男達。爆風、倒壊、事故、事件により孤児となった子供達。その様な光景が西日本の各所で溢れ返って行った。
そんな環境を嘲笑うかの様に曇天が広がり続けて寒い世界へと変貌している。浮浪者が壊れた街中を徘徊している、女尊男卑によって煽りを受けた者達が逃げ去るかの様に西日本へと集まった結果、この場所は正に終末を迎えた場所となっていた。
何処も彼処も一口分の食糧を求めて殴り合い、殺し合いの喧嘩が起こる吹き溜まりの様な光景が非常によく見られた。軽犯罪なぞ当たり前、幼くして捨てられ、早くに両親を亡くした孤児が生きる為に窃盗を犯す事なんて良くある事だ。
毎日、何処かで罵声と悲鳴、そして怒号や怨嗟、絶望が響いている。食べる為、生きる為に皆、必死なのだ……破落戸等も生きる事に必死だった。明日は我が身、己の身は己で守らなくてはならない。力の弱く身寄りが居ない孤児達は寄り添い合い力を合わせて今日も生きて行かざるを得なかった。マンホールの下や倒壊寸前の建物や地下鉄に住み着いて『家』として今日も生きている、いつの日か『平穏』に暮らせる日を僅かばかりの頃を思い起こしながら。
『女尊男卑』、その言葉がこの日本の惨状を物語るに最も簡単な言葉だった。インフィニット・ストラトス、通称『IS』の存在、そしてその理由で女尊男卑と化した世界。
助長し横暴を効かせた女性達により世の男性は肩身の狭い生活を強いられ或いは謀殺される事が多々発生する様になり、国土が半分未満になった事で今まで賄われていた国家予算たる税金が大幅な増税(男性限定で)が行われた挙句、西日本の喪失により減った生産性を賄おうとする政策も行った。
日本は元より世界からは加工貿易が主要貿易の1つであった。だが、女性達はその作業を嫌っていた。女性が嫌う作業に『農作業』、『畜産作業』、そして『工場作業』を上げていたのだ。その為、『世界最強のISは使いたいが原材料の加工からパーツ作りを蒸し暑くて汗臭い場所でしたくない』と宣った。其処で女尊男卑の本尊にして政府と癒着関係である女性権利団体は政府を通して人員確保の為にある『法令』を出したのである。
『離婚令』、即ち既婚者を強引に別れさせる法令であった。卑しい男性と仲良くするとは女尊男卑の国として言語道断‼︎ と見做して脅迫同然に離婚(しかも慰謝料として多額のお金を男性側に払わさせた)させた挙句、いちゃもんを付けて退職に追い込み元いた場所から追い出し更には『離縁令』なる法も施行した『兄弟姉妹』の概念を『姉妹』だけにすると言う余りにも無茶苦茶な政策、つまる所『兄』や『弟』の概念を取り除き戸籍さえも奪い取ると言う事、家庭から追い出され浮浪児と化してしまう。当然、女尊男卑の環境下で誰1人として助けはしない……助けた場合は『女尊男卑じゃない‼︎』として助けた人物も処罰の対象となってしまう。
この為、女尊男卑と化した日本にとって何処の企業も日本政府の制裁を恐れ男性を雇用し辛くなっていた(体力的、伝統的に男性しか採りたがらない企業も一定多数存在していた)。その為、幾つかの一般企業にも女尊男卑の煽りを受けて滅茶苦茶な事になっていたり倒産してしまうケースも見受けられていた。
そんな情勢の中で男性を雇用出来る場所が愛知県の工場都市の各工場であった。だが表向きにはIS企業とは関わりがないとして募集を掛けているが実際は前述の通りISのパーツ絡みであり上層部は女尊男卑側の企業が噛んでいた。男性を親の仇の如く見做す女尊男卑及び女性権利団体の息が掛かる日本政府は次々と男性にとって住み辛い日本社会を構築して行く。具体的には給与面にも影響を与えていた。
この女尊男卑たる日本に於いて一般的に女性の平均月収は30万〜38万に対して愛知県の各工場の工場作業員の平均月収は9〜11万と大差を付けられていた。尚、基本的に月収は15万程でギリギリ生活出来るレベルだと言われている事からかなり苦しい生活を強いられる事になる。
然も労働基準法も歪められ良識なぞあったモノでは無く女性は基本休憩は2時間に対して男性は15分程度、女性は残業代は出るが男性はサービス残業上等な状態であった。男性の基本労働時間は13時間である(女性は5時間)。
時給だった場合、時給は凡そ360〜495円である。日本に住む他に元手が無い男性の殆どが現在の日本政府の政策により職を失い雇用してくれる所は低賃金も良い所であった。
そうまでして女性権利団体は男性を足蹴にし扱き下ろしたいのか? きっとそれは本人達の肚の内にあるだろう。
北海道、東北地方では日本政府の法令により失業者が大量に出してしまった挙句、林業や農家も大半を潰してしまった。若い働き手を失ってしまい倒産に追い込まれる企業も増えてしまい、土地の管理が行き届かなくなった。其処に目を付けた一部の女性は其処に女性の為のレジャーパークを作ろうと画策し環境破壊を招くに至る。
関東地方では首都たる東京都が存在するが故に大多数の女性達が『女尊男卑』の恩恵を求めて移住し過密化した。が、今度は郊外に移転すると言うドーナツ化現象が発生する。
中部地方では『愛知県』近辺に追い出した男性達を押し込む形の『監獄』と化していた。更には農家等も廃業に追い込み此処でも役に立ちそうにないアミューズメントパークを建設しようと画策していた。
そんな東日本が環境である為に東日本にいる男性達が取れる手段は2つ、海外に出国するか西日本へ亡命するかの2択であった。勤労者の人口流出は止まる事は知らないだろう。
対する西日本も環境は悲惨な事になっていた。
近畿地方は『ミサイル落下』の影響で急速な荒廃化し退廃化の一途を辿っていた。然もその内の1発が科学研究所に落下した為に有毒なガスが発生し大多数の死者を出すに至り、今日でも有毒なガスが大阪府から和歌山、奈良県を中心に立ち込めており侵入すらままならない箇所となっており、潜行自体が自殺行為とまで言われている。三重県、京都府、滋賀県は今の所は無事ではあるが偏西風の影響を考慮すると時間の問題だろう。
中国地方は曇天の影響で温度が急速に低下、万年雪が降り積もる極寒の環境に変貌。凍りつく街並み、灼ける様な低温火傷が散見される極寒たる環境と化していた。更に雨や霙、霰、雹が降り頻り水没した箇所が多くなっていた。
四国地方は最早、地獄と称するべき環境と化していた落下したミサイルの内、『核ミサイル』が紛れて込んでいた事から四国は嘗ての『原爆後』の惨状と化してしまい高濃度の放射能が滞留する死の島と化した。対放射線スーツが無ければ外に出る事さえも叶わない環境である。
九州地方では被害が少なかったと言われるとそうでも無かった。ミサイルの地殻の破壊により活火山が次々と活性化、噴火し溶岩が溢れ出しマグマの河が彼方此方で形成され歩くだけでも危険な状態と化した。
近畿地方では『猛毒ガス』、中部地方では『紅蓮地獄』、四国地方では『放射能汚染』、九州地方では『溶岩地帯』たる異常極まりない世界に変貌を遂げてしまっていた。
そして挙げ句の果てに追い打ちを掛けるかの様な事案が発生した。西日本各地で奇怪な姿をした存在が散見して現れる様になったのである。それは愚鈍たる人類に牙を剥く様から『天罰の様だ』との事で『メネシス』と呼ばれた。大人達は対処しようとするも環境や女尊男卑による摩耗により次々と落命が相次いだ。
何れ迫り来る『環境』による恐怖、そして奇怪な姿をした存在に更なる混乱に陥った西日本、そんな環境下でどうにかしようとした残された人々が結束し『生き残る』事を目標に掲げて活動を開始。4地方の各所に拠点を構え『メネシス』や外部から迫る『女性権利団体』や『女尊男卑』の連中に対して対抗し始めた。
自分達で西日本に辛うじて横流しや流されて来た『IS』のデータやを解析し、改造及び開発に漕ぎ着けたり、食糧確保や『メネシス』討伐に乗り出したり(時には悪食の如く喰らったり)して西日本にて相応の勢力と化して行った。
そんな中、『メネシス』の様な能力をその身に宿してしまった子供達が出現し始めていた。出現理由、要因は不明だが非常に高い身体能力を持っている……大人達はこの狂った環境や『メネシス』の影響で生まれた一種の進化と捉えるも受け入れがたい内容でもあるのは又、事実であった。
そして、『白騎士事件』から凡そ10年の年月が経過した……。