駄作品劇場・残骸   作:夢現図書館

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第18話

 

 

 

『ああ、この刑務所には心底ヤバい奴が居るって話だよ。俺ら? 詐欺罪だよ。億単位で詐欺ってやったよ』

 

『少年法とかあるだろ? なのに、死刑囚と来た。あんな歳で何をやらかしたらそうなるのかねぇ? 女尊男卑のご時世であっても早々、聞かねえ話だと言うのによぉ。兄ぃちゃん、知らねぇかい?』

 

『実名公表クラスなのに、全くのニュースにすらなってない。そして死刑囚と言う尾鰭……死刑囚だから顔も見た事はねぇが、其処までヤバいなら名前位は聞くんだがな。全くの無名だってよ』

 

『その死刑囚の罪状? 稀代のトリックスター。現代の切り裂き魔。再来する肉屋の主人……罪状自体、錯綜してらぁ。一体、何をしたのかさっぱり分からんよ』

 

『1人殺せば殺人者、10人殺せば殺人鬼、じゃあ100人殺したら英雄か? 1,000人殺せば……何になるんだろうな?』

 

 収監されている囚人達から口々にそう告げられる。本名不明、罪状不明、正体が分からない死刑囚。ただ、少年法から逸脱している事から未成年であると言う事は判明している。

 

 未成年の死刑囚。世論は騒然となるだろう事は容易に想像出来るネタと言える。しかしながらここ数年、そんなニュースは全く聞いた事が無い。

 

「……いやはや、面白い話だったねぇ。看守さんもそうは思わないかい?」

 

 某所の拘置所の看守専用通路を歩くはホストの様な身形をした男性。その隣では所内の案内をしている看守が呆れた様な顔をしている。

 

「……笑い話ではありませんよ。所員に緘口令が敷かれているから囚人達に話を聞くなんて真似、普通はしませんよ?」

 

 男性の目的はこの拘置所に収監されている『未成年の死刑囚』。看守や所員達に話を聞こうとも緘口令が敷かれている為、適当に見繕って選んだ囚人達に話を聞けばバラバラな話を聞けた。

 

「餅は餅屋と言うじゃないか? プロファイリングをするなら、犯罪者に直接聞くのが手っ取り早い。いやぁ、本人に会うのが楽しみだねぇ」

 

 案内をしている看守は『変な人だ』と言う感情が脳裏に浮かぶ。今朝、突然現れたこの男は『未成年の死刑囚君と面会がしたい』と申し立てた。本来ならば予約をしなければ成立しないのだが、この男は本庁に先回りしてかその無茶を押し通してしまったのだ。

 

「……君はその死刑囚君を見た事があるのかい? 緘口令と言っても少しはあるんじゃない? 手ぶらで来てしまった以上は、ねぇ」

 

「いえ、無いです。未成年の死刑囚が居る。位です……所長くらいでしょう。知っているのは」

 

 他愛の無い会話を続けながら刑務所の奥へ奥へと進んで行く。一際、大きな鉄格子が行手を阻んだ。此処から先は死刑囚が巣食う独房である。

 

「あはは、猛獣を押し込めるにはピッタリの構えだねぇ。どんな死刑囚が潜んでいるんだい?」

 

 本当に『変な人だ』と、呆れる他に無い。刑務所で死刑囚と聞いて笑って居られる神経が信じられなかった。連続殺人や莫大な被害を齎した特級の犯罪者。更生の余地も無ければ遺族の怒りが治らない社会の塵だと言うのに。

 看守は鉄格子の扉を開けて奥の通路への道を開く。死刑囚の独房が連なる通路は清潔で白一色の光景が広がって居る。

 

「おや、地下に行くのかい?」

 

「……貴方の言う件の死刑囚は、1番奥ですよ。本庁の指示、だそうです」

 

「罪状も不明で未知数。その上、上場からの指令……ふむふむ、実にミステリーだ。いやはや、どんな怪物か実に楽しみで仕方が無いよ」

 

 男性はまるで子供が遠足を待ち遠しいと思う様な心境で額を抑えて笑う。余程、可笑しかった様である。

 

「私としては不気味で仕方ありませんよ。未成年なのに死刑囚。しかも一切、公開されず水面下で進められたのです」

 

「ふーん。と、なれば……余程、後ろめたい『理由』をその死刑囚君が持って居るのかな?」

 

「……聞きたくありませんよ、そんな考察」

 

 軈て最奥の独房の前に辿り着いた。余程の物だろうかと思えば先程まで見えた独房と大差無い。しかし、其処は伏魔殿とも形容出来るかも知れない。

 

「此処、だそうです」

 

「いやはや、案内ご苦労様です。後は私だけで大丈夫ですよ。流石に部外者が居ると本人も気が散るだろうし」

 

「しかし……」

 

「気にしなくて結構。万が一の時は、死体袋の1つがこの拘置所から出て行くだけさ。死刑囚が罪を重ねようとそれ以上の刑罰は無いからね」

 

「…………」

 

 笑い事の様に告げる男性の言葉に看守は到底、同意は出来ない。寧ろ、自分の命が失われるかも知れないと言うのに平然として居る。変な人、では無い。異常だと言い切れた。然も死刑が確定している以上、それ以上の刑罰と言えば即死刑と言えた。

 

「それじゃあ、ご開帳と行こうじゃないか‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

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