駄作品劇場・残骸   作:夢現図書館

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第19話

 

『緊急警報。艦体損傷が80%を超過しました。各種機能が75%ダウン。継戦及び航行は危険です。また、主砲損傷により砲撃不可です』

 

『緊急警報。量子トンネルの維持限界にまで残り3分です。内部滞在中の人員、及び艦体は直ちに退去して下さい。量子トンネルが崩壊すると内部滞在中の人員、及び艦体は永久に虚数空間外に排出されます』

 

 艦橋に響き渡る緊急事態を告げる人工音声による警告。アラートと共に緊急事態を示す赤いランプが艦橋内に明滅している。

 

「…………そうだな。虚数空間に放り出されれば2度と表世界には愚か裏世界にも戻れはしないだろう。機体損傷大破レベル甚大、継戦は愚か次元航海も危うい一か八かの賭けだ……その賭けの上乗せの量子トンネルも残り3分以内で抜け切れるか」

 

 表示される被害が甚大である数値が示された空間ウィンドウを見ているのはたった1人。いいや、他の人員は誰1人として存在していない。たった1人だけしか乗って居ない。

 

『緊急警報。量子トンネル内に侵食波反応を感知。第四種侵食体と推測‼︎ その他第二種侵食体複数がアンカレッジに向けて高速接近中‼︎ 現行艦体状態での継戦は危険です。直ちに現在座標から離脱を推奨します‼︎』

 

「やれやれ。潰し漏れが徒党を組んで追ってきたか。よっぽど据えかねたか。低速状態で迎え撃つは自殺行為だな」

 

 機体損傷が著しく航行速度も従来の速度より遥かに低速な上に態勢安定もままならない。その癖、侵食体の軍勢のオマケ付き。

 

「…………」

 

——全く。賭け事は個人的には余り好きでは無いんだが、師匠の悪癖が移ったか?

 

「エタニウムドライブのエネルギーチャージ量は?」

 

『現在、エネルギー量は水準と比較し現在23%の状態』

 

「……残存エネルギーを必要量以外、全てエタニウムドライブに回せ。緊急ダイブを試みる。……座標は適当で構わない」

 

 艦橋、艦長席に座る人物は自殺行為に等しい選択を選んだ。無論、リスクは承知の上であった。と言うか他に手が思いつかないと言うのが現実でもあった。そもそも座標抜きのランダムダイブなんて真似は本当に自殺に等しい真似である。

 

『警告。エタニウムドライブの座標が大きく外れる可能性。及び高位侵食体と遭遇する可能性。そして機体損傷度からドライブ時、耐久限度を超過し機体が耐え切れない可能性が極めて高くなります』

 

「此の儘では虚数空間に放り出されてズタズタになるか高位侵食体に潰されるかの2択だ。なら、賭けに出た方がマシだ。それに勝負や作戦に失敗しても、賭けに負けは無いってな‼︎」

 

『命令受付完了。残存エネルギーをエタニウムドライブのチャージに移行。エタニウムドライブ、実行』

 

 艦橋其の物が地震の様に大きく揺れた。それこそ大型艦船の主砲をモロに浴びた様な衝撃がこの艦体自体を襲う。

 

——コイツはマジでヤバいな。裏世界中で更に別の裏世界にダイブと言う真似なんて流石に余程の大バカじゃないとしねぇだろうな。

 

 数分、数十分か分からない激しい揺れ。船酔いしそうな目が回る様な震動が収まる。

 

『エタニウムドライブ完了。当該時点の座標は不明です。侵食波反応は観測されません』

 

 その人工音声と共にダイブが成功したと確信を持った。一先ず賭けに勝った、と言える。

 

「……取り敢えず突破は出来たか。さて、座標は適当だったからな。それに艦体自体が酷いダメージな上にエタニウムも乏しくなった」

 

 しかし、当面の問題は山積みであった。素直に表世界に浮上と行きたかったが周辺は次元の乱れが激しくままならなかったと言う事情もあった。裏世界での長時間の滞在は非常に危険だ。

 

『アンカレッジ。航海不可能の状態です。不時着を推奨します』

 

「ああ、頼む。しかし、コレは随分と綺麗な光景だな」

 

 艦橋から見える外の風景。適当な座標でダイブした。自身の知る裏世界の光景とは似ても似つかない光景が広がって居た。青い海、澄み切った蒼穹。遠くには街が広がっているのが見えた。

 

——視力が3.0なのが幸いしたな。明らかに遺跡群じゃない現行の都市だ。然も裏世界で海を見る羽目になるとは、いいや、此処は本当に裏世界なのか? もしや、適当な座標と指示したがよもや、運良く表世界に戻って来れたのかも知れないな。

 

『報告。眼下に島を確認。大陸付近と連絡橋を介してアクセス可能と思われます』

 

「街のど真ん中に不時着すると面倒極まり無い。島付近の人気のない場所か砂浜付近に不時着せよ」

 

『命令受付完了。眼下に最寄りの島に不時着する為、降下します。尚、エネルギー量が枯渇寸前の為に艦底部が接触する恐れがあります。衝撃に注意して下さい』

 

「第四種侵食体の攻撃を喰らうよりは遥かに可愛い衝撃だろう?」

 

——さて、少なくともグラウンド・ゼロは見えないから地方都市か何かか? ともあれ、今後の見通しを再認識しないとな。やれやれ、先輩の眦が鋭くなりそうだ。

 

 

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