駄作品劇場・残骸   作:夢現図書館

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第4話

 

瑕疵病《バグリス》

 

 

正式名称は『先天性侵蝕瑕疵化症候群』、『瑕疵化』とも。謎多き奇病にして発生から日が浅く、特効薬も明確な治療法は存在しない。

コンピューターの《バグ》を意味する《瑕疵》から名称が取られた。

侵されるとバグの様に身体の一部が黒と紫に侵蝕される様に変色し進行経過は汚染度と称される。軽度では両手両足、中度では胴体にも進行する他、着て居る衣服にも瑕疵化の侵蝕が発生する(原理は不明)。重度ともなると自身の遺伝子情報を含めて凡ゆる構成物に支障を来す。

発症原因は不明。

 

判明して居る事は発症率はかなり低く全員が10代の少年少女で少女の割合が高い事。

凡ゆる要素で瑕疵化は進むと言う事。それは外部衝撃で侵蝕が進行する。たかが擦り傷でも侵蝕は進み、食物の咀嚼でも進む、あろう事か身体を動かすだけでも侵蝕が進むと言う為、発症すれば生命としてまず生きる事は不可能と言う正に自分を殺させる病気だった事。

瑕疵化が進めば狂暴化しやすい事。

 

そして、その代償を払い高い身体能力と言った才能開花も見られるが瑕疵化の特性上、帰って逆効果となってしまっている為に殆ど意味が無い。

 

政府は余りにも不可解な奇病を世間に公開させるのは不必要な混乱、世論の悪化を招くとして発足させた瑕疵化研究所に発症した子供達を移送を急ぎ隔離し治療法を模索する事に決めた。

 

そして、時は現代……。

 

 

 

 

 

 

《瑕疵病》と呼ばれる奇病の研究の為に瑕疵化研究所と呼ばれる研究施設が設立された。余りにも不可解で未知の奇病の研究の為に凡ゆるプロフェショナルのメンバーが集い、その奇病の解明、治療法の確立に挑み、今も続けて居る。

瑕疵化……バグに侵され身体、精神、能力を狂わせ侵蝕、崩壊、組み替えてしまう、謎多き奇病。侵蝕が進めば進む程にその影響力が高くなり、限界点を超えた状態を《異常化》と呼称される状態へと変貌。この状態でも非常に危険で更に侵蝕が進み臨界点……最終限界点まで進めば……どうなるか分かりきって居る。

 

ある者は未知……例えるならば超能力に目覚め、

ある者は突如サヴァン症候群を併発、

ある者は遺伝子異常を発症、

ある者は人格が崩壊、

ある者は身体に似合わない力に覚醒、

ある者は人体に異常が現れた。

 

正に人体と言うコンピューターにバグが発生して通常ではあり得ない異常が現れる……それは人間の身体をには過ぎたグリッジである。

 

奇病ではあるが場合によっては特別な力を得てしまう。しかし、人間社会ではその様な制御出来ない力や再現性の無い概念は到底受け入れられない……。

それを抜きにしても凡ゆる外傷行為で自身を傷付け瑕疵化が進行する……それは人間としては死んで居るのと同じ事である。

 

凡ゆる手法が毒と化してしまう為……研究チームはある手段を用いる事に決めた。それは……未だに未知の分野である五感、精神をフルダイブさせるVRMMORPG、仮想現実空間の存在を医療用目的で転用すると言う企画を立ち上げた。現実では地獄……ならば仮想世界と雖も生きた意味を持たせようとした研究チームと医療チームの総意だった。

仮想世界のフルダイブ技術、身体の感覚と精神が遮断される。瑕疵病の子供達のメンタルケアも重要な案件とも言える(瑕疵化の影響で精神が荒れて非常に興奮しやすく外部の説得等が通じずに制御不能になる可能性がある)。

そして……最悪の結末を緩和する為のターミナルケア、終末期医療も兼ねて居た。

 

瑕疵化の者達が仮想世界での住人で生きて居る間、研究チームが治療法の確立を目指して居た……。

 

 

 

 

瑕疵化研究所の通路を二人の白衣を着た医療チームの女性が歩きながら話して居る。

 

「本日、1500より定期検査の予定です。各種、VR医療装置の異常は見られず準備は滞り無く進んで居ます」

 

「そう……羽々姫は?」

 

「分かって言ってます?今も仮想世界に精神をフルダイブしたままですよ」

 

「違うわ。その仮想世界で何をして居るのかと聞いて居るのよ」

 

「……相変わらずですよ。研究開発チームの創造した仮想世界《オデッセイ》にて高高度領域を飛び回って居ます」

 

瑕疵化研究所に属する研究開発を担当する研究者が開発したVRMMORPG《オデッセイ》は一般に公開される不特定多数のMMORPGでは無く、隔離されたVRMMO(医療目的である為)。

しかし精神ケアも含まれて居る為、その仮想世界ではかなりトチ狂った仮想空間と化して居る(元々がゲームだからと言えばそれまでだが)。

平原、古城、廃墟、大空、渓谷、神殿、宇宙と言った研究者や協力者達が集めて来た様々なデータやリリースされたゲームを元に再現された世界で彼らは絶えず広がり続ける《オデッセイ》にて仮想世界の住人として生きて居る。(偶にカウンセリング担当の医療チームの医師がダイブしてメンタルケアをして居る)冒険や戦闘、仮想世界で思い思いに生活して居た。

 

「今は……遺群嶺のエリアに居る見たいです」

 

「そう……彼処は設定では高高度に位置するから空を飛べるか滝登りしないととても辿り着けない場所ね」

 

二歩後ろを歩く女性が緑色に発光する空間ウィンドウを指で動かしながら瑕疵病に罹患して居る羽々姫の状況を報告する。前を歩く女性は半ば呆れながらも微笑んで居た。

瑕疵病の子供達は現実世界では動けない分(其れを差し引いても常に寝たきりの為に動ける程の体力が無い)、仮想世界では昼夜問わずに駆け回って居る。

 

「……それよりも瑕疵化が仮想世界にも影響を及ぼすとは……」

 

「元々、瑕疵と言う言葉はプログラム関連の用語よ。プログラムの塊でもあるVRの仮想世界に現れても何ら不思議では無い筈よ……いえ、瑕疵病は我々の予想を超えた存在、何が起こるか分からないわ……いえ……何が起こっても何ら不思議では無いわ。バグだもの……想定外な事は予想範囲内よ」

 

瑕疵、それは医療目的のVRMMORPGにも不明なバグが現れ始めて居た(然し乍らプログラムと言うのは何かしらバグは発生するモノである)。然し、瑕疵病の子供達はそれも又、仮想世界での刺激と称して楽しんで居る節があった。《オデッセイ》を管理、運営して居る研究チームの担当者達は瑕疵化の子供達がそのバグの影響で現れた障害を切り抜けて居る、其れを妨害する様な真似はして良いのか悩んだ挙句、本当に危険と判断した場合は管理者権限で《オデッセイ》から遠隔で強制ログアウトしVR医療機器の精神を留める(現実世界と仮想世界の間)場所に移してから修正する事で折り合いを付けた。

 

「あの子達に取って仮想世界が彼らの世界。掌の上だとしても、其処があの子達の生きて居る世界……例えシステムがバグによって運営者から手離されて一人歩きしても、きっと生きる為に足掻くわ。どう言う形であれ、それが生命よ……と言うか今、この瞬間に仮想世界が独りで歩き出しても一切、疑わないわ」

 

「そう、ですね……運営担当の人達は嘆くと思いますが……」

 

「その時はその時よ。じゃあ、あの子の部屋に行きましょうか……研究チームにマイク音声で仮想世界内の羽々姫に予め伝えて置いてくれる?」

 

「分かりました。先生」

 

先生と呼ばれた女性は背後を歩く同僚にそう伝えて廊下の分かれ道で別れて一足先に現実世界の羽々姫の肉体が安置されて居る医療部屋へと歩き出す。

廊下の突き当たりセキリュティに管理された部屋の扉に認証コードを入力して扉を開けて中へと入る。

 

視界に入るは部屋を隔てるガラス張り壁の奥の部屋。その部屋の中央に肉が削げ落ちて痩せこけた身体の少年、羽々姫が医療ベッドに横たわって居る。その両腕は黒紫に染まり二の腕にまで侵蝕し肌色と黒紫の境目はバグの様な模様に見える。身体の彼方此方に管が繋がっており二の腕に繋がるのは点滴の管である。

そして、頭部の上半分を覆うゴーグルの様な機械。その機器に天井や壁から無数のコードが繋がれて居る。

この研究所にて開発された医療用目的で開発された医療VRゴーグル。

 

「羽々姫には伝わって居る?」

 

『それが……どうやら寝て居る模様で……』

 

オデッセイ運営担当の職員が言い難そうに告げる。瑕疵化に罹患して居る子供は精神が荒れやすい

 

「……彼を起こしてくれる?」

 

 

 

 

VRMMORPG《オデッセイ》。

医療用目的で開発された仮想現実空間。RPGと銘打っては居るが目的も無くば理由も無い。仮初めの現実の空間、瑕疵化により現実では真面に行動出来ない子供達の最期を迎える迄、一生を過ごす幻想の世界。それがオデッセイ。

 

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