森の海。そう表現するに丁度良い森にて微かに揺らぎが木霊する。
ユーラシア大陸某所にその森林地帯が広がっていた。何処の国の領土でも無いその森林地帯は近隣住民達は迂闊に立ち入ろうとしない。かつて、この森林地帯が出来る以前とある王国が存在した……。その王国には科学と並ぶ技術が伝わっていたと言われる。
それは科学と対極と為す『魔術』の研究が行われていた。その王国は確かに『魔術』の存在を認知していたのだ。そして王国には魔術を行使せする『魔女』と言う者達が存在していた。
『魔女』、15〜16世紀頃では『魔女狩り』と呼ばれるヨーロッパで広く流布した概念の中にあった。数多くの魔術、魔法を使ったとされた『魔女』は悉く処刑されその姿を消して行った。
周辺国家との関係はその奇異性から鎖国同然の様な立ち位置となっていたが魔術の存在故に忌避されながらも独立した国家として存続していた。
だが、ある事故でその王国は滅亡した。一夜にして大多数の住民が悉く塵へと還った。王族も須く骸となり塵芥と化した。
滅亡の原因、遠因の全てが不明、ある説では魔術実験の失敗による事故……ある説では戦火による滅亡、ある説ではとある魔女による内乱、ある説では魔術により発した異形の存在。ある説では『悪魔』が関与していた……。
しかし滅亡した今、その真相を知る者は存在していないだろう。何せ、既に300年以上もの昔に起きた出来事なのだから……。
王国が滅亡した後、王国跡地は長い長い時を隔て深い森林が形成されて行った。街が存在した場所は廃墟となり王城は墟城となり数多の植物に覆われて行った。亡国となり生き延びた人間達の殆どは身分を偽りこの跡地から新天地を求めて旅立って行った。だが、その行末は知る由も無い。元々は『魔女』の魔術が肯定された国。その国出身とも発覚すれば異端審問故に死するが必定であった。
周辺国家は滅亡した王国跡地を割譲しようと考えた。しかし、そんな思惑に対して思わぬ悲劇が齎された。皇国は『魔術』を学問、技術として認知していた国家。その跡地では『異常』と言う他無い光景が広がっていた。
強大で未知なる生命体、異常気象、そして……滅亡し亡国と化しても生き延びて魔術を行使する魔女。
それらの要素が絡み合い周辺国家は割譲する事は極めて危険と判断し立ち入る事を遂に諦めた。森に不用意に立ち入った者は誰1人として戻って来る事は無かったからだ。
幸い、皇国跡地からは侵攻して来る事は全くと言って良い程に無かった。唯一、人間と姿は酷似している魔女からも何もリアクションを行なって来る事もほぼ無かった。知られていないだけで密かに交流は存在していたかも知れないが表向きには交流は無かった。
その為、王国跡地は誰からも支配されずその森林を広げて行った。緑が生い茂り街を飲み込み人々の営みを飲み込み過去へと変えて行った。延々と広がる樹海、生命の宝庫とも呼べる大地が其処に広がっていた。
そして、いつしか王国跡地の森林地帯はこう呼ばれる様になった……『魔女の森』、或いは『嘆きの森』、と……。