駄作品劇場・残骸   作:夢現図書館

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第6話

IS、通称インフィニット・ストラトスが誕生してはや30年。女尊男卑が生まれ女性権利団体が誕生して世界は混迷の一途を辿って行く。ISが誕生してから15年後、それは起きた、起きてしまった。

 

膨張する女尊男卑の悪意、膨らむ不満。それは男女間の価値観の相違から起きた亀裂。虐げられてきた男性陣によって結成されたレジスタンスによる大規模な反女尊男卑の戦線がゲリラ的に展開されて行った。第三次世界大戦、通称『男女戦争』が勃発したのだ。

 

物資的、戦力差、制空権、凡ゆる意味で不利な男性軍。ISや各種兵器を投入した大火力による女性軍による攻勢により男性軍は次第に追い込まれて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「畜生、俺の相棒が殺られた‼︎ 畜生ッ‼︎」

 

「第2部隊は全滅した‼︎ 此の儘だとマズいぞ‼︎」

 

「援軍は⁉︎ 援軍はまだかよ⁉︎」

 

腐臭が汚臭が、辺り一帯を充満して居る。大半の家屋は倒れて灼けており火炎と黒煙が吹き荒れ火の粉が宙を舞う。瓦礫と共に多数の人間の屍が散乱し今も悲鳴と嗚咽、悲嘆が響き渡って居る。それを掻き消す様に哄笑と嘲笑も響き渡って居る。

 

「…………残り、4人……か……‼︎」

 

劣勢に立たされているレジスタンス男性軍の小隊。周囲は戦火に囲まれ危急存亡の状態となっていた。既に同じ部隊の構成員の8割が死亡しており生存者はたったの4人。相手は量産型ISが8機に加えて専用機と呼ばれる機体が1。どう考えても絶望的な状況と判断せざるを得ない。

 

「……クソッ‼︎ 女尊男卑の犬共め‼︎」

 

「本部からの連絡はどうした⁉︎」

 

「ダメだ。連絡が繋がらない、もしかしたら……‼︎」

 

「言うな‼︎ それだけは……やめてくれ……‼︎ 仮にそうなってしまえば、俺達は終わりだ……‼︎」

 

囂々と喧しく部隊の生存者が言い争っている。これでは連携もあったモノでは無い。

 

「……死ぬまで戦うんじゃないのかよ」

 

その時、沈黙を保っていた生存者の4名の内、最年少の少年が口を開いた。

 

「暁音‼︎ 早まるんじゃねぇ、死ぬ気か⁉︎」

 

「……俺は世界がどうなろうが勝敗がどうなろうが俺自身が死のうが殺されようが連中がくたばればそれで良いんだよ」

 

暁音、と呼ばれた少年は手に持っていたアサルトライフルを肩に担ぎ残りの弾薬を全て装填。弾薬等を入れていたがもう何も入っておらず空になったポーチを投げ捨てる。

 

「……お前……‼︎」

 

「逃げるならご自由に。ああ、こんな世界……逃げる所なんて無いか」

 

ついでに言えばこの世に安全、安息の場所なんて存在しない。とも心の中に留めた。

 

「…………後詰の、レジスタンスと共闘している亡国機業だっけか? 其奴らも本隊も連絡が付かない、孤立無援の状態。ならば出来る事は何だろうな?」

 

「……そうだな。どんな世界だろうと、生きて行かねばならん」

 

部隊の隊長格の男はそう答える。それは暁音の言葉に同意したと言う事である。通信も繋がらない事から何かあったか連絡手段自体に不調が現れた可能性があった。

 

「ッ‼︎ 見つかったぞ‼︎」

 

その時、近くの場所で砲弾が着弾し炸裂音と共に振動が伝わる。その言葉と音により危機的状況が悪化したと言う事である。

 

「……クソ、見つかったか……‼︎」

 

最もISにはハイパーセンサーが存在し場所なんてバレているに等しいのだが。

 

「……な、アレは亡国機業の部隊⁉︎ やった、援軍が来たぞ‼︎」

 

「……待て、何故あの位置に……まさか……ま、待て‼︎ 出るな‼︎」

 

自分達の背後に現れた男性軍のレジスタンスと共闘の契約を交わした古くから存在する組織、亡国機業の戦車やISの混成部隊を見た1人の隊員は援軍が来たと喜び合流しようと飛び出した。配置、このタイミング、そして先程の砲撃から考えられた最悪の展開を予見した隊長格は静止するが。

 

「おーい‼︎」

 

その人物の救援の声は無慈悲な砲撃によって掻き消された。戦車の砲弾が男性の身体を吹き飛ばし血潮が周辺に飛び散り駆け出した足だけが残され其処から上は爆発により消しとばされた。

 

「そ、そんな……まさか、嘘だと言ってくれ‼︎」

 

「…………‼︎」

 

「やはり、亡国機業に裏切られたんだ‼︎ いや違う、初めから裏切る算段だったんだ‼︎」

 

この状況から隊長格は共闘のつもりが亡国機業は初めから裏切る算段を立てていた事を理解した。本隊、本部とも連絡が付かないのは恐らく亡国機業に潰されたからである。

 

「……裏切りか、正に前門の女性連中、後門の亡国機業、か」

 

絶体絶命の危機的状況に暁音は最悪とも言いたげな表情を浮かべていた。

 

「……くそ、お前ら撤退だ‼︎ 何としてでも生き延びろ‼︎ レジスタンスがどれ程、生き延びているかは分からない。だが、生きていれば必ず合流出来る‼︎ 全員、バラバラに逃げるぞ、固まって移動していれば連中の思う壺だ」

 

「その方が、良い……か‼︎」

 

「良いな? 判断は一瞬だ。弁論も反論も聞かん。兎に角、逃げろ‼︎ 暁音、お前も早く逃げろ‼︎ お前は復讐を果たすんだろ? こんな所で死ぬんじゃねぇ‼︎」

 

「……言われなくても‼︎」

 

暁音も自身の判断で『退却』し再起を図る事を決めた。継戦は難しい、一度、落ち延びて再び戦場へと舞い戻る事を決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「……チッ、何処までも戦火は広がっていやがるな」

 

硝煙が立ち込め業火は止まず燃え盛る廃都。見えるは焼け焦げた死体の数々、燃え尽きて白骨化した死体も多数、見られる。つまりこの街は何週間も前から火災に見えていると言う事になる。

 

「……ッ‼︎」

 

火災に紛れ気配を感じ取る。この状況で気配となれば自ずと答えは出ているようなモノと言えた。

 

「……見〜つっけたぁ〜」

 

「……最悪だ。こんな時に鉢合わせしちまうとは」

 

前方から女性軍の別働隊とエンカウントしてしまった。しかも考えられる限り、最悪な部類に入る奴と鉢合わせである。

 

「……アンタ、1人? まぁ、良いや……全員、殺すから特に問題無いし」

 

見える限りISは10機は見えるその1番前は凶悪なフォルムを有する機体、専用機と呼ばれる機体に搭乗している少女を含めた11機のISの部隊。明らかに勝ち目は無いと言って良い。その少女は特に危険と言われていた。

 

「……しかも、『人形』を誂えて来るとは」

 

『人形』、レジスタンスである男性軍が苦戦する大きな要因である戦術兵器。それは運用する女性軍からは『人形』と呼ばれている少女の形をしたナニカ。圧倒的な力で戦場を粉砕し次々とレジスタンス側の抵抗を嘲笑ったのだ。共通する事は全員が同じ髪色を有しておりまた同じ瞳の色を有していると言う事。それは自然に生まれる人間の髪と眼の配色とは余りにも違う為に判別は容易、だからと言って有利になる訳では無い。

 

「……お仕事はお仕事だしぃ⁉︎ それじゃ」

 

「……チッ‼︎」

 

「ちょっきん‼︎」

 

暁音がアサルトライフルを構えるのと『人形』が接近してその武器を振るうのはほぼ同時だった。

 

「…………ッ‼︎」

 

一瞬だった。飛び散る鮮血。壊れた武器。何が起きたのか暁音には全く分からなかった。

 

「……あ、がッ……⁉︎」

 

「もう終わりか〜……つまんないな〜」

 

激痛と沸騰するかの様な熱さが全身を走り抜ける。身体を斜めに斬られたのは分かる。倒れた理由もそれだと朦朧とする中で考えたが違った。両手足諸々、切断されていた。文字通りの達磨状態と言えた。

 

「あ……ば、………の………え」

 

言葉にならない叫び。レジスタンスの一兵卒程度の自分じゃ『人形』に敵う筈が無かった。正に無力、正に絶望。正に、無駄の一言だった。

 

「何言っているか、分かんないなぁ。まぁ、良いや。どうせ、放って置いても死ぬし。残念でした、アンタの命は此処で終わりだよ」

 

そして倒れた暁音が最後に見えたのは肩に血塗れになった大きな鋏を担ぎつつ嘲笑うかの様な眼を湛えた『人形』の貌、だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『熱い、怖い、痛い……ここは……何処……?』

 

『あはは、燃えちゃえ、全部、全部全部……パパもママもみんなみんな燃えちゃえ、あはははは、あはははははは……‼︎』

 

『死にたい、死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい……満足』

 

『殺してやる、殺してやるぞ‼︎ お前達、全員……全部、何もかも壊してやる‼︎』

 

「…………」

 

何だ、これは?

 

彼方此方から声が聞こえて来る。コレは一体? いや、何処なんだ、此処は?

 

「…………俺は」

 

ダレナンダ? オレハナニモノデダレナンダ?

 

「…………」

 

壊れた街並みに道路、紫色の大空と巨大な星の光が照らすその空間にて??は佇んでいた。周囲には青白い蝶が飛んでおり何処からともなく声が聞こえて来る。いやこの場には『蝶』しか存在していない。

 

『残酷な事を言うが君はもう助からない。だから残りの人生は自分の好きに使いなさい』

 

『あはは、楽しかったなぁ、最後に一杯、一杯……遊べて』

 

『お前達の所為だ。お前達の所為だ、お前達の所為だよ』

 

『さようなら、先生……』

 

『未来ではまた、3人姉妹でいよう』

 

『最期に孫の顔を見れて良かったよ。うん、元気で育っておくれ』

 

『ありがとう………おつうちゃん』

 

『生き残れよ、オレは先に……』

 

『何時迄も2人で……』

 

『ありがとう、殺してくれて……永遠に恨むわ。織斑 千冬』

 

彼方此方から声が響き渡る。コレは一体、ナニを指し示しているのだろう?

 

「…………」

 

唐突に見えた光景。それは焼け果てた世界の光景。それが一瞬だけフラッシュバックしたかの様な気がした。

 

「…………オレハシンダノカ?……違う、違う‼︎ 俺は、俺はこんな所でくたばる理由は無いんだよ‼︎」

 

「俺は暁音。連中を殺すまで、死ぬ訳には行かねぇんだよ‼︎」

 

その時、光が溢れて其処に1人の少年が姿を現わす。

 

「……何が起きた? いや、つか……此処は何なんだ?」

 

記憶が曖昧だ。何がどうなった? たしか……何が起きたんだ?

 

「……頭が痛ぇ。此処が何処なのかもサッパリだ。と言うかコレは現実なのか?」

 

頭を押さえつつも周囲を見渡す。何処からどう考えても現実に存在しているとは思えない世界が広がっている。道路や街の建造物がバラバラに砕けて空に浮かんでいるのだから。

 

『うあ……ああ……死ん……い、あ』

 

「……動いているのは蝶位か。しかし蝶ってあんなに光るモノだったか?」

 

周辺には蝶が漂っている。そのどれもが光っておりコレまた現実にあり得そうな生命体とは言い難い。

 

「…………考えても仕方が無い。幻覚の上に幻聴……ん?」

 

『死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね‼︎‼︎ 刻んでやる、殺してやる、ズタズタに切り裂いて死ね……‼︎ アハハ……‼︎』

 

当初は幻聴かと考えていた。しかし声の響く方向は、周辺を飛び交う蝶。

 

「まさか……蝶が口々に喋っているとでも言うのか?」

 

『……寝たい、寝かせて、お願いだから……もう……』

 

注意深く近くの蝶を観察する。確かに蝶の胴体から声が聞こえて来る。

 

「……良く分からない世界に喋っている蝶。マジで意味が分からなくなって来たな。此処は何処なのか俺は死んだのか生きているのか、それとも夢を見ているのか……」

 

分からない事だらけでありどうするべきかも分からないと言って良い。ならば調べるに限る、知らなければ知る事から始めるべきである。

 

「なぁ、ちょっと聞きたい事が……」

 

『悲劇、悲劇が欲しいの……もっと、もっと悲劇を……‼︎』

 

「意思疎通は……無理そうだ」

 

此方側の言葉は通じていない? いや、届いていないのか……向こう側は自分の言葉を垂れ流しにしているだけなのか?

 

「……訳の分からない世界に1人、放り出される、か。来た理由さえも分からんな……」

 

兎も角、移動するとしようか。此処に留まっても何も始まらないのだからな。

 

暁音は石畳の道路を歩いて移動する。横側から差し込む光。こんな光景、現実ではそうお目にかかる事は無いのだが感傷に浸れる余裕も無い。

 

「……ッ‼︎」

 

その時、後方で鈍い音が響いた。後方へと振り向くと異形と呼ぶべき存在が其処に鎮座していた。

 

『オォォォォォォォリィィィィムゥゥゥラァァァァ‼︎‼︎ ☆+%5¥*々‼︎‼︎』

 

「な、何だありゃあ⁉︎」

 

黄金の髪か翼かと思うモノが左右に靡くその数、6枚。胴体は青と白のタイル状の紋様で覆われその素顔は素顔と呼ぶには悍ましい赤い眼光が三つでそれ以外は黒い影。そして頭上に真紅の天輪が存在していた。簡単に言って仕舞えばバケモノだ。

 

「幻覚に加えて理解不能なバケモノまで現れるのかよ。性質の悪い夢だな……‼︎」

 

『オマエヲユルサナイ、ユルサナイ‼︎ オリムライチカァァ‼︎‼︎』

 

その異形を中心に風が吹き荒れ始める。

 

「…………兵士とはままならん。得物が無くては戦えんとは」

 

逃げ切れる。とは考えにくい。武器も無ければ対抗できる手段も無いに等しい。こんな事ならば空手の類でも学んでおけば、いやそれはあんなバケモノ相手に通じるかどうかは甚だ疑問とも言えたかも知れない。

 

「……ぐっ、引き寄せ⁉︎」

 

異形を渦巻く風は更に激しくなり周辺の街の一部が弾けて引き寄せられる。それは暴風で飛ばされると言うよりも『落下』すると言って良い。それ程までに垂直に引き寄せらて行く。

 

『アァァァァァァァァァァァァァァ‼︎‼︎』

 

「……ヤバい……‼︎」

 

暁音自身も落下には耐えられる筈も無く異形の方角へと落ちて行く。そして異形とのすれ違い様にその異形はその髪か翼を振り回し落下して来たモノを纏めて切り裂き吹き飛ばす。

 

「ガッ、くっ……そ……ガッ……‼︎」

 

胴体を切断されたかの様な斬撃を受けて吹き飛ばされた暁音は石畳の上を転がり停止し咳き込む。

 

「……訳が分……ないまま、終わっ……るか」

 

「……こんな所で、死ね……か‼︎ ならば、戦って死んだ………が、しだ……‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『汝の名は? 汝は何を求める?』

 

また、声が……今度は聞こえるのでは無く響き渡るかの様な声だ。その問いかけは自然に答えた。

 

「俺は、暁音。俺は……復讐を果たす……その為に生きている。此処で終わる訳には行かないんだよ‼︎」

 

『主人・暁音。我は守護者・アンナエウス。汝の心を映し出せし鏡なり。理念は剣、心は鎧なり。復讐を冀いし悲哀に満ちた者よ』

 

『我がチカラの一片、この祝福、受け取り前に進むが良い』

 

その時、声と共に世界が弾けた。

 

 

 

 

 

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