駄作品劇場・残骸   作:夢現図書館

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間違えて消した為の再投稿。


第8話

薄闇に染まる自室。カーテンの隙間から差し込む日光の光。そして静寂に包まれた部屋にて唐突に鳴り響く目覚まし時計のアラーム。俺、神ヶ霊 文離は布団から腕を伸ばしてアラームを止め、のそのそと布団から這い出る。

 

神ヶ霊 文離。

色々な意味で名前が珍しいを通り越して読めない名前の筆頭格だとか男なのに女っぽい名前とか知人に色々と文句を言われて居るがこんな名前なのだから仕方が無い。産まれた時に女と間違えたらしいが……正直もう二度とその話題に付き合いたくない。

ついでに言うなら名前に神の文字が入って居るだけな上に文をアヤとすれば神にも妖にも通じてしまうかも知れないが俺本人としては神様とか妖怪とかそんな類に関わって居ない、娯楽の類以外。

ガチで本格的に関わって居たら非日常に片足では無くて頭から突っ込んでどっぷり浸って居る事だろうよ(周りが原因で)。

 

眠気覚ましに洗面所で顔を洗いその鏡に映る自分自身の顔を見る。華奢な童顔とも言える中性的でツリ目な顔立ち、整って居ると言えば整って居る。コレで性別が女ならば、外面的には違和感が無かった事だろう……無論、そう言う方面に興味なぞ無いのだが。

 

「……生まれ持った顔に文句を言うのはお門違いだな」

 

名前だけならば確実に誤解される。名前や容姿の齟齬に付いては仕方が無い。文句を言われても知る事か。

寝間着から通って居る学校の制服に着替える。早めに朝食を摂ってからさっさと家を出る。早起きは三文の得とか言うが生憎ながら得を得た事が無い、日頃の行いが悪いのかも知れないな。因みに今年に引いた神籤は見事に大凶だった。

 

 

 

「よー、アヤ」

「何だ。見ての通り俺は寝る事に忙しいから邪魔するな」

 

午前の授業を乗り越え昼休み。昼は取らない主義で教室にて自分の席で机に突っ伏して惰眠を貪って居るとクラスメイトの知人の1人が俺に関わって来た。

後その呼び名は止めろ……女っぽい名前だから余計にそう思えるだろうが……アヤとは苗字から来ているんだろう、そのお陰で良く揶揄われる。名前の事を抜きにしたら別に不快感を露わにする相手でも不倶戴天の敵でも無いのだが今の時期は相手にしたく無い。

 

「寝る事に忙しいって事は暇って意味だろ? それよりもなぁ、知って居るか? 近くの神社にスッゲェ可愛い巫女のバイトさんが居るって話をよ」

 

此奴は良くも悪くも年頃の男子だ。恋愛もしたい年頃なのだろう……しかし、その話題には関わりたく無いのが本音だ。

 

「行かねぇからな。お前がフられる事は目に見えている」

 

この学校の近辺に神社がある規模は中規模程度で参拝客はそこそこの神社だ。学校内の一部の男子生徒にはその神社に可愛い巫女のアルバイトが居ると言う噂で持ち切り状態となって居る。モテない男子、彼女が欲しい男子諸君はそのバイトにお近づきになりたいのだろう(神社のバイトは基本、女性だからバイトに応募できない)。だから参拝客を装ってお近づきになり、あわよくば仲良くなってメアドとかゲットしたいんだろうよ、つーかお前の様な奴がメアドを手に入れる事とか出来ると思っているのか?

 

「フられる事前提なのかよ⁉︎」

 

「驚く事か? 巫女の類は恋愛は御法度だぞ」

 

巫女は大概が処女だと言う、理由は細かくは知らないがな、恐らく宗教的な理由だろう。彼処の神社もバイト募集時にそう言う御触れがあった気がする。

 

「と言うか、何でそんな事を知ってんだよ⁉︎ あ、まさか……」

 

「先に言って置くが俺にそんな気は無いぞ」

 

「そう言って押さえにかかる所が怪しいぞ、アヤ‼︎ お前も本当は気になるんだろ⁉︎」

 

ああ、もう五月蝿い。昼休みも終わってしまうだろ、寝る時間返せよこの野郎。

 

 

 

放課後になり生徒達は部活なり帰宅なりアルバイトなり遊びなりに向かうこの時間帯。俺もさっさと学校からアルバイト先へと向かう。最も、周りにはその事は話していない……内容が内容だからな、言えるかこんな事。

 

「おーい‼︎」

 

「……何だ?」

 

嫌な予感がする。そんな気配を感じ取れる……変な事を言い出しそうな気がしてならない。

 

「なぁ、昼休みに言った神社に行こうぜ‼︎」

 

活発そうに笑うが、そんなお前に無理無謀無意味無駄の四点セットを送ってやる。有り難く受け取れ。

 

「俺、今日はバイトだから無理だ。諦めろ、ついでに話しかけるのは成功してもメアド交換は無謀だしその人にとってお前の存在は無意味。トドメに時間の無駄だ」

 

「言い過ぎじゃね? 俺、泣くぞ。そりゃ盛大に泣いちゃうぞ⁉︎」

 

「何の脅しだ……」

 

失恋に泣くなら自分の布団の中でしてくれ。間違っても俺を巻き込まないでくれ。そして失敗する事前提の恋愛なんて止めてしまえ。

 

「つーか、何で一人で行かないんだよ」

 

「いや、その……さ……バイトとは巫女さんってさ、結構近寄り難いじゃん? 普通の飲食店のアルバイトの子見たいに気軽に話し掛け辛いじゃん?」

 

「ヘタレかお前は……」

 

「なにおう⁉︎ 普通のアタックとは訳が違うんだぞ⁉︎」

 

厳かな雰囲気に押されがちと言う事か。巫女さんと言うフィルターは意外と馬鹿にならないらしい……会いに行っても営業スマイルで弾かれるのがオチだろうな。

 

「……時間的にそろそろマズいから与太話は終わりにしてくれ」

 

返答を聞かずに俺はさっさとバイト先へと向かう。時間だけがズルズルと浪費されるのは勘弁して貰いたい。

 

 

 

アルバイト先。それは知人の言って居た霧坂神社である。正直言って何で此処に通って居るのか……慣れって本当に怖い、いや本当に。

 

「あら、今日は早かったのね。アヤちゃん」

 

「ちゃん付けは止めて下さいと何度も言って居るんですが……」

 

社務所の前でこの神社の宮司である妙齢の女性が居た。と言うか俺がこの神社で巫女としてバイトをする羽目になったのもこの人が原因だ。

 

「良いじゃない。減るものじゃ無いんだし」

 

「減ります‼︎ 主に俺の精神が‼︎」

 

「こんなに可愛い顔して居るんだし、勿体無いわ。貴方が社務所に居るから男女共にウケが良いのよ」

 

そう、名前もあるが大元は女よりの童顔が理由で女装させられる羽目に。

童顔な上に幼少から母親に女物を着せられ女の子扱いされていた(黒歴史)。何故かこの人がその葬り焼き捨てたい俺の過去を知っていた……その理由が母親とこの人がまさかの知人であると言うオチで度々、話題に上がって居たと言う。お陰様で勝手にアルバイトとして決められ女装巫女さんが誕生、然も退路なしと言うオマケ付き。

 

「せめて覡の方が良かった」

 

「あら、ウチは覡は求めて居ないから……間に合ってるのよね」

 

「だったら俺をクビにしろよ⁉︎」

 

「あ、貴方は巫女さんとしての需要があるから当分その必要は無いわ」

 

更に困った事にこの人の中では俺は男なのに女扱いされてしまって居ると言う事……本気で泣きたい、あのバカよりも俺の方が泣きたいわ。

 

「ほらほら、早く着替えて社務所に待機してて頂戴」

 

「……はぁ、分かりましたよ」

 

社務所の奥で用意されて居る巫女の服装に着替える。と言うか段々、手慣れてきて居る自分が怖い。畳貼りの部屋、置かれて居る鏡を見て憂鬱な溜息が出る。

 

「はぁ……俺、何処に向かっているんだろうか……」

 

鏡に映るは自分の姿。元々、中性的な顔立ちと白衣に緋袴と言う装いの所為で本格的な巫女さんの姿と言えた(生来のツリ目は若干緩和されて居る様にも見える)。自分で何を言ってるのやら……と言うかこの光景、来る度にやって居る気がする……そして溜息。

 

「……憂鬱だ」

 

あの知人が来て居なければ良いのだが……恐らくあの馬鹿の言う可愛い巫女さんとは俺の事だ。かと言って女装巫女だなんて言いたく無い。俺の精神が見事にぶっ壊れる。

 

「……はぁ、行くか」

 

今日も終わるまで受付に居よう。参拝客が来たら破魔矢や絵馬を渡せば良い。そう考えて社務所の受付で時間を過ごして居た。途中で弓による演舞を行うとか何とかで社務所から引っ張り出されてしまった。霧坂神社では神楽の他に弓を用いた吉凶の演舞も行われる。宮司に度々引っ張り出されてやらされる……その為、弓の扱いやら腕が上がって行く……いや其方は別に構わないのだがその時、物見が大量に来るから其方の方が面倒だ……はぁ……視線の集中砲火は勘弁して欲しい。

因みにあの馬鹿は来なかった。神社に来る時に回り道して居た所為かすれ違ったのかも知れないがそれはそれで良かったと言えた。

 

そうして今日を終えた。無事に終える事が出来た……。

 

「お疲れ様。やはり貴方が居ると参拝客が増えるわね〜。弓の演舞もお疲れ様、凛々しくて良かったわ。男子にも女子にもモテモテじゃないの?」

 

なんて恐ろしい事を言うんだこの人は。何処まで俺を追い詰めたいんだよ。

 

「……女子ならばまだしも野郎から好かれたくありませんよ。最も、そう言う恋愛事は興味無いんですけど」

 

「そう? 草食系男子なのね。童顔草食系男子って今時流行りなのかしら?」

 

「……何故、そう行き着くんですか」

 

宮司の相手も程々にして精神的に疲れる神社を後にした。

 

 

 

 

 

 ※————————————————※

 

 

 

「……あの、すみません」

 

「……」

 

町の大通り、アルバイト帰りの帰路に着く為に遊歩道を歩いて居ると唐突に声を掛けられた。後方から聞こえる事からすれ違い様か後方から近付いて来たのだろう……そして知らない声だ、こう言う類の相手は邪な思考をして居る事だ。相手をせずに歩き始める。

 

「あの‼︎」

 

「……」

 

無視だ。面倒だし対人関係構築は得意では無い。名前や童顔とかそう言う理由で他人と余り関わりたくないだけだ。

 

「貴方ですよ‼︎ 其処の童顔の男装の方‼︎」

 

今、何つったこの野郎‼︎ 思わず振り向いた。童顔はまだしも男装呼ばわりは我慢ならない。コレは一言、訂正させて置く必要がある。

 

「やっと、反応してくれましたね」

 

「……ッ」

 

其処には息を飲む様な人が居た。年齢的に俺の一つか二つ上……って所だろうか。周りの世界が遠く感じる、後続する他の生徒の連中も道行く社会人もこの目立つ少女を一瞬たりとも見て居ない、更に喧騒の音も何も聞こえない。まるで俺と目の前の少女の世界だけが切り取られたかの様に。

 

「あの……どうしました?」

 

無視する時点で警戒して居たが更に引き上げる。明らかに、普通の人間では無いかも知れない。認めたくは無いが恐らく、今……非現実的な状況に陥って居る、それが現実となって目の前に居る。

 

「あのー、まだ生きていますか?」

 

「死んでねぇよ、まだ」

 

「あ、やっと反応してくれ……って、何で反射的に離れようとするんですか?」

 

危険信号。頭の中にその警鐘が鳴って居る、見た目で判断するのは危険行為だ。目の前の少女は外面は良いが内面までは見通せはしない……娯楽のお陰で非現実的な状況にもある程度、冷静で居られる。この状況を作ったのはこの少女と判断して間違いない。

 

「異質な物に警戒を抱く。人間が備え持つ本能的な反応だと思うが? と言うかこんな平凡な街中でお前程の存在。目立たない筈が無い」

 

「……」

 

神社のアルバイトをして居る(強制的にだが)からか神格と言う宗教や幻想的な事にも見解はあるし冷静で居られる。仮説だが、目の前に居る存在は神格の類かも知れない。信じたくは無い、神様の概念は現実世界とは別種だと考えて居たから、それが崩された気がしたからだ。

 

「……周りの連中が見向きもしないと言う事は」

 

俺は徐に道行く人に手を伸ばす。スーツを着た男性の身体が透け通って触れなかった。

 

「……存在して居ない。そう言う事だろう」

 

「一瞬で見抜くなんて、鋭いんですね?」

 

そう言う態度だと何かしやがったのはコイツである確信した。勘弁してくれ、現実でも手一杯なのに其処に非現実な状況に引き込まないでくれ‼︎

 

「……んで、誰で如何言うつもりでこんな真似をした?」

 

「……いえ、一つだけ忠告をと思いまして」

 

「……はぁ?」

 

初対面の相手に忠告される謂れは無い。無い、のだが……嫌な予感しかしない。

 

「この道を通らないで下さい」

 

その言葉の直後、少女の姿が風景に透き通って行く消えて道行く人々の喧騒の音が耳に聞こえて来る。

 

「何だったんだ……今のは?」

 

白昼夢? それとも幻覚? 非現実的な光景から一気に現実へと引き戻され僅かばかり困惑した……立ったまま意識だけが飛んで居たのか?

 

「……」

 

考えても仕方無い……疲れて居るのかも知れない。それとも診療所とかに行くべきか? まぁ、兎も角さっさと帰って寝よう。明日になれば大概、如何でも良くなる。

 

そう、考えて居た。

 

しかし、それは今日までの話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『午後9時のニュースをお伝えします。本日午後7時頃、某県、高校一年生の男子生徒が自宅にて全身と頭を強く打った状態で発見されました。

同県警は殺人と事故の両方の可能性を見て捜査を進めて居ます』

 

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