昨晩、ルイズ――ヴァネッサに対してああは言ったものの、ジョゼット自身、自信など無かった。(私だって……もし彼の“これからは君に逢いに来る”なんて言葉が嘘だったら……逃げ出してしまうかも)と、想いながらも、そのようなことを認めたくないため、自身に言い聞かせるようにしてルイズにも言ったのであった。ジョゼットにとって、あの“ロマリアの神官”――ジュリオは彼女の全てであるといえるのだから。
ジョゼットは、(自分は此の“セント・マルガリタ修道院”で、ずっと退屈な毎日を過ごす)モノとばかり想っていた。ジュリオに逢う迄は……。
ジュリオがこの修道院に来るようになってからは、灰色だった毎日は、ジョゼットからして鮮やかな色彩を伴い出したのである。そんなジュリオとの想い出は……それほど沢山という訳ではないのだが……ジョゼットにとっては掛け替えのない宝物であるといえるだろう。
ジョゼットは、(だから私は、あのヴァネッサの言葉に引っ掛かったんだわ。宝石のような、大切な想い出が、嘘になんかなる訳ない。何があったのかは知らないけれど、大事な気持ちや想い出は、絶対に嘘なんかにはならないわ)と考えながら、隣の席で朝食のパンを齧っているルイズを、横目でチラッと見詰めた。
ルイズは、何やら、想い詰めたような顔をしている。心ここにあらずといった風情だといえるだろう。
ジョゼットは、(昨日の話を、引き摺っているのかしら?)などとそのような疑問を抱いたが、直ぐに消えて行く。それから、(さてさて、そんなことより、“竜の御兄様”はいつになったら来るのかしら?)と考えた。
最後に逢ってから、もう3週間以上が過ぎているのである。
ジョゼットは、(宝石みたいな時間って、他の時間を石ころみたいにしちゃうんだわ)と考え、深い溜息を吐いた。それから、最後にジュリオが持って来た“指輪”を、ジョゼットは想い出した。淡いブラウンに光る大きな石の付いた、見事な“指輪”……。
ジュリオの「君のモノになれば良いと想うよ」といった言葉が、ジョゼットの脳裏に蘇る。あの時は、ジョゼットの指に“指輪”がキッチリ嵌まったことを確認すると、ジュリオは満足げに首肯き、いつもの街の噂話もせずに帰って行ったのであった。
あれから何の音沙汰もないのだが……ジュリオのその言葉は、ジョゼットの胸に熱い余韻を残した。(もし、“指輪”が私のモノになったら……ジュリオは私をどうするつもりなのかしら? 司祭の肩書でもくださるのかしら? それとも、何か素敵な……別のモノかしら?)と考えていた。
そのように考えていた時だっかからこそだろう、外から“竜”の羽音が聞こ得て来たその瞬間、ジョゼットの顔は一瞬で輝いた。いつもであれば澄ました様子で内心の胸の高鳴りを抑えながら待つのだが、今日はもう我慢ができなかったのである。
ジョゼットは朝食もソコソコにし、席を立つと、食堂を飛び出した。
青い鱗の“竜”が目に飛び込んだ時、ジョゼットは思わず泣き出しそうになった。
其の“竜”の上から、丈の長い白いコートを羽織ったジュリオが、トン、と飛び降りる。
迷わずに、ジョゼットはその胸に飛び込んだ。
「御兄様!」
「おやおや、まるで修道女とは想えないね! 御祈りをしながら、拗ねた声で文句を言われるとばかり想ったのに!」
そこでジョゼットは、ハッと気付き、ジュリオから離れる。
「そ、そうでしたわ。でもね、何だか我慢ができなかったの」
それからジョゼットは顔を上げ、期待に震えた目でジュリオを見上げた。
「今日はユックリ滞在できるの?」
ジュリオは残念そうに、首を横に振った。
すると、ジョゼットの顔に憂いが差す。
「どうしたんだい?」
「いえ……何でも。昨晩、新入りの娘と話していたことを想い出しただけ。やっぱり、御兄様は、ただ私達を憐れんでここに入らしてくださっているだけなのね」
ジュリオは笑った。
「そうだったとしたら、何が不味いんだい?」
「何も不味くなんかありませんわ。ただ、私が愚かだったというだけ」
ジョゼットの小さい胸は、もうそれだけで潰れてしまいそうになった。「恋じゃない」などと何度も自分に言い聞かせている癖に、いざ自分が失恋するところなど想像することができないのである。
ジョゼットは、(ヴァネッサのことを笑えないわね)と想い、首を振った。
「はいはい。人気者の助祭枢機卿様は御忙しくていらっしゃるのね。早くここでの用事を済ませになって、次の信者の所へ向かえば良いわ」
そう皮肉っぽくジョゼットが言うと、ジュリオは笑った。
「じゃあその用事を済ませよう。ジョゼット、君を迎えに来たんだ」
「はい?」
いきなりのジュリオの台詞に、ジョゼットは面喰らってしまった。
「色々と準備があったもんでね。訪問が延びたことは御詫びするよ」
驚くというより、ジョゼットは腹を立ててしまった。ジョゼットは、(冗談にもほどがあるわ。そりゃあ、“御兄様と一緒に、外の世界を見られたらどんなに素晴らしいだろう!”なんて想ってけど)と想った。それはジョゼットが、1番望んでいることであるのだから。だが同時に、叶わぬ夢であるということもまた理解していた。「貴女はここから出られない。出てはいけない」、とキツく教えられて来たのだから……。
「御兄様は、冗談の才能がないのね。笑わせるなら、もっと気の利いたことを言うべきだわ」
「嘘なんかじゃないよ。僕は、これでも“始祖”に仕える神官だぜ? 嘘なんか、1度も吐いたことはない」
ジョゼットは、目をパチクリとさせた。ジュリオの声と様子が、真剣その物であるためだ。
「本当……なの?」
「ああ。この通り、教皇聖下の御墨付を貰って来た。君は本日より、“ロマリア宗教庁”預かりになる」
普段とは違う、ジョゼットとジュリオの様子に修道院長や女子祭達が集まって来る。
「一体、何事でしょうか?」
不安げな顔の修道院長に、ジュリオは1枚の紙を見せた。
「こ、これは……!」
「親愛なる聖下よりの御手紙です」
「で、ですが……! 我々はこの国のやんごとない方々から、ここの管理を任されております! 預かった修道女を、彼等の許可なくここより出すことは……」
するとジュリオは、ニッコリと笑った。
「貴女方の主人は誰成のです? 尊き神と“始祖”ですか? それとも、この国の“貴族”達ですか?」
「そ、それは……」
「人の善い貴女方は、この国の“貴族”達に体良く利用されているだけではありませんか。彼等は神を恐れぬからこそ、このような、牢獄、を造り上げたのでしょう? 恐れ多いことです!」
すると、修道院長はジュリオの足元に平伏した。
「おおお……やはり、貴方方は全て御知りになっておられるのですね?」
怯えて蹲る修道院長の下に、ジュリオはしゃがみ込み、その肩に手を置いた。
「秘密というモノは、隠して置くことが難しいのです。何故ならきちんと耳を持っている人間は、この世に五万といるのですから。また、人の口に戸を立てることは、この世で1番難しいことなのです」
「私は、娘達の、出自、までは知りませぬ。従ってそれを御訊ねになることだけは御堪忍下さい……」
「御安心を。私達は貴女を裁判に掛けるためにやって来た訳ではないのですから」
ジュリオは修道院長の側に袋を置いた。
「我々を救う“聖女”の今までの養育費です」
そしてジュリオは、ポカンと口を開けているジョゼットに向き直る。
「じゃあ、行こうか」
「え? ええ!? えええええええええええ!?」
ジョゼットは、もう、何が何だか理解らなかった。この修道院から出ることができるという。それも、ジュリオと一緒に……。
ジョゼットからすると、夢を見ているようであった。(もしかして、何か特殊な“魔法”でも掛けられたのかしら?)、と疑ってしまうほどである。
「どうしたんだい?」
どこまでも優しい声で、ジュリオは言った。
「ど、どうしたも、こ、こうしたもありませんわ! そんな、いきないr……」
「そうだね、身1つって訳には行かないな。荷物を纏めておいで」
アッサリジュリオにそう言われ、(これは現実なんだ……本当に、御兄様は、ジュリオは私をここから連れ出してくれるというのね)とジョゼットは我に返った。
が、それでもまだ完全に信じ切ることができず、ジョゼットはもう1度確認することにした。
「本気なの?」
そうジョゼットが尋ねると、ジュリオはコクリと首肯いた。
「困ったな。どうすれば信じてくれるんだい?」
ジョゼットは、ジュリオを見詰めた。ジュリオが持つ左右色の違う“月目”が、妖しい魅力を放っている。その目を見ていると……ジョゼットは堪らない気持ちになってしまうのであった。それから、(これは現実なんだ)と今一度、今度こそ確信を持つことができた。
一旦、其¥それを現実だと認識したジョゼットの行動は素早かった。
ジョゼットは、遠巻きに自分を見詰めている修道女達の所へと駆け寄り、仲の良かった数人の元へと向かう。
呆然と自分を見詰める友人達の手を、ジョゼットは1人ずつ握って行った。
「今まで有難う。私、そういう訳で行くね」
「え? ええ? ど、どういうこと?」
友人達は、激しく混乱している様子を見せる。
ここから出て行く。
などという選択肢を、ほとんど真面目に考えて来ることなどなかった……できるはずもなかったのだから、無理もないであろう。
ジョゼット自身、良く理解っていないのだから。というよりもジョゼットは、ジュリオが何を目的として自分を連れて行くのかさえ知らないのである。
だが……それでもジョゼットに不安はなかった。ジュリオと一緒に行くことができる。ただそれだけで、ジョゼットはもうどうなっても良いと想えてしまっているのである。
修道院長の元へと駆け寄り、ジョゼットはその手を握った。
「御世話になりました。育てて頂いた御恩は忘れません」
疲れた顔で修道院長は、ジョゼットを見上げる。何か言いたそうに口を開いたのだが、直ぐに俯いた。
「……考えてみれば、私は“始祖”の御心を裏切っていたのかもしれませぬ。必要とはいえ、貴女のように若い娘をこんな所に閉じ込めておくなんて。でも、気を付けるのですよ。外の世界は、こことは違って厳しいのですから」
ジョゼットは首肯いた。そして、後も振り返ることもなくジュリオの元へと向かう。
「荷物は良いのかい?」
「ええ。持って行かねばならぬモノなど、何1つありませんから」
「成る程。考えてみれば、君はこれから全てを手に入れるのだから、それで良いのかもしれないね」
「大袈裟ですわ! ただ、御兄様が側にいてくださるなら、私はそれで……」
「約束するよ」
ジュリオはジョゼットを抱え上げると、“風竜”――アズーロの背に乗せた。そして、自分もヒョイッと跳び乗る。
「其れでは皆さん、“始祖”の御加護を!」
まるで役者であるかのような大仰な素振りでそれだけを言うと、ジュリオ達は一気に上昇して行った。
ジョゼットは、アズーロの背中から、15年以上も過ごして来た自分の家――“セント・マルガリタ修道院”がドンドン遠ざかって行く様を見下ろした。
岬の突端に、へばり付く様にして建物と畑が見える。
ジョゼットはそれ等を見て、(あれが、私の総てだったんだ)と想った。
「“どうして私を連れて行くの?” 何て尋ねないんだな」
ジュリオが笑みを浮かべて尋ねる。
ジョゼットは、その背にしがみ着いた。
「ええ。意味ないですから」
「気にならないのかい? もしかしたら、僕は君を騙しているのかもしれないよ?」
「御兄様が私を騙していようが、赴く先が地獄だろうが、構いませんわ。だって……この気持ちだけは本物ですから。どうしよう!? 何だか、心に羽が生えたみたい。ワクワクが止まりませんの。こんなの、生まれて初めてだわ」
「僕の言う通りにしてくれるかい? ジョゼット。そしたら、何でも言うことを利いて上げるよ」
優しげな声で、ジュリオは言った。
「そうするつもりですわ。だって、私、外の世界のことは何も知らないんだもの」
ジョゼットは、胸一杯に空気を吸い込んだ。
いつしか、“セント・マルガリタ修道院”は雲に隠れて見えなくなって行った。その代わりに視界に飛び込んで来たのは……広大な“ハルケギニア”の大地であった。
「凄い……外の世界って、本当に広いのね」
「君はこれを、ポケットに入れることになるんだぜ」
ジョゼットは笑い飛ばしたのだが、ジュリオは笑わない。
「……御兄様?」
「さあ、取り戻しに行こうじゃないか。君が手に入れるべき世界を」
ジョゼットを乗せて飛び去って行くアズーロを、(ジュリオ? ジュリオよね?)とルイズは食堂の窓から唖然として見詰めていた。
そう。間違いなくあの青年はジュリオである。あの“月目”……そして男にしておくには勿体ないとさえいるほどの美貌。おまけにあの“風竜”。間違える訳がないといえるであろう。
ジュリオが現れた時も驚いたのだが、いきなりジョゼットを連れて行ったことに対して、ルイズはもっと驚いた。(どうして?)、と疑問が浮かび上がる。
だが、直ぐにその理由に、ルイズは想い当たった。
昨晩、“始祖の祈祷書”に浮かび上がった言葉……。
――“虚無は血を継ぐ他者に覚醒めん”。
そして、恐らくは“貴族”、“王族”の隠し娘達が幽閉されているこの“セント・マルガリタ修道院”。
その2つが、ルイズの中で結び付き、答えへと導いた。
ルイズは、(あのジョゼットは、“虚無の担い手”なんだ。たぶん、この前死んだジョゼフの代わり……そうに違いないわ。このことを、直ぐに姫様に報せなくちゃ)と想った。
だが、心の中のもう1人のルイズが、(その必要はあるの? 私がここでひっそり暮らしていれば……“虚無の担い手”は揃わない。誰にも知られずに……セイヴァーとシオンは知っているだろうけど……2人以外に知られずに、ジッとここで朽ち果てれば、“聖戦”を行うことは覚束無くなるわ……)と言った。
だが、昨晩感じたように、その考えは一種の逃げである、ともルイズは想った。
傷付きたくないから、やらねばならぬことから逃げ出している、のだと。
ルイズは、(しょうがないとも想うわ。だって、あれだけ傷付いたんだもの。それに、もしかしたら、ここでジッとしている方が正解なのかもしれないし)と想ったが、同時に(一体、私はどうすれば善いの?)と考えた。
その問いには、誰も答えてはくれない。
かつてずっとそうして来たことと同様に、自分で決めるしかないのである。
ルイズが、(どっちが正解なのかしら?)と考えたが、ううん、と首を横に振った。それから、(自分はどうしたいの?)と考え直した。
本気でここで朽ち果てるつもりなのか。
だがそこで、(でも、もしそうなら、どうして“杖”と“始祖の祈祷書”、“礼装”を持って来たの?)という疑問がルイズの中で浮かび上がる。そして直ぐに、(きっと、心の底で、何かがしたい、と想ってるから、持って来たんじゃないの? 心が砕けるほどに傷付いても、どこかでまだ、私は私を信じているんじゃないの? 私には、私にしかできないことがある。そして、それを必要としている人達がいる)と想った。
ルイズは、ポケットの中から、“水のルビー”を取り出した。
青く透き通った美しい石……ずっと振り回されていた“虚無”の力……使い熟せないと半ば諦めていた力。
ルイズは、(でももし、使い熟せるようになったら、私には何が出来るのかしら?)と想ったが、考えることをやめた。次いで即座に、顔を上げると、呆然と地面に座り込んでいる修道院長の元へと駆け寄る。
「修道院長!」
「は、はい?」
「ここから出る方法を教えてください」
心をここに置き忘れたかのような声で、修道院長は言った。
「ありませぬ」
「次の船が来るのはいつですか?」
「3日後です。でも、乗り込むことはできません」
ルイズは(無理矢理乗り込むことはできるかもしれないけど、派手なドンパチになるわよね)と想い、唇を噛み締めた。
となると……。
ルイズは再び駆け出すと、ベッドの側の私物入れから”始祖の祈祷書”と”杖”を取り出す。次いで、もどかし気に、”水のルビー”と”礼装”を嵌める。
それから、決して外してはいけないという“聖具”を毟り取る。
色鮮やかな桃髪が舞う。
そんなルイズを見て、修道女達が悲鳴を上げた。
「ヴァ、ヴァネッサ……何を……?」
「私はヴァネッサじゃないわ。ホントはルイズって言うの。“ゼロのルイズ”。あんた達の大好きな“聖女”様よ。覚えておいてね、私、世界、を救っちゃう予定だから」
ルイズは岬の突端へと向かい、(さてさて、ここからどのくらい離れているのかしら? 3キロ“メイル”? いいえもっと? 10キロ“メイル”? 見当も着かないわ)と考えながら右端を見詰めた。
弓形に広がる、“ガリア”の海岸が見える。
「ほーんと、何が“虚無の担い手”よ。使い辛い“呪文”ばっかり覚えさせて! ねえ御先祖様! こんなのいいから“フライ”の1つでも書いときなさいよ!」
そう呟きながら、ルイズは“始祖の祈祷書”を見詰める。
そこには、昨日浮かび上がった“呪文”が書かれている。
“
ルイズは、(どのくらいの距離を飛べるかしら? もしかして、一気に“ロマリア”まで飛べたりしちゃうのかしら? それとも短いのかしら? 判らない。でも、迷ってる暇はない)と考えながら、“呪文”を唱えた。
「“ウリュ・ハガラース・ベオークン・イル”……」
そして“杖”を握り、ルイズは一気に解放する。
その瞬間、ルイズの身体は修道院から100“メイル”ほど離れた空中にあった。
ルイズの眼下には黒々と光る海……ルイズの身体は、重力に引かれ、当然落下する。
その途中で、再びルイズは“呪文”を唱える。
「“ウリュ・ハガラース”!」
それ以上唱えると海に落ちる、と考え、ルイズは遠い海岸目掛けて瞬間移動をした。
空中で振り返り、ルイズは叫んだ。
「何よ!? ほとんど進んでないじゃないの!」
“セント・マルガリタ修道院”からは、200“メイル”ほどしか離れていない。
それでも諦めずに、ルイズは“呪文”を唱えた。
このまま、“
ルイズは目を開くと、一心不乱に“呪文”を唱え続けた。
が、遂々“精神力”が尽き、海面へと激突しそうになる。
「――!」
ルイズは目を閉じ、着水などを覚悟した。
が、その瞬間は来ない。
代わりに、誰かに受け止められる感触を覚え、ルイズは恐る恐る目を開いた。
「アサ、シン……?」
「…………」
ルイズを受け止めたのは、実体化した“
「なんで、貴男が……? いえ、そういうことね……セイヴァーがいってたことって」
「然様」
「海岸まで私を運んでくれる?」
「無論、そのつもりですとも。しっかり掴まってください。ミス」
ハサンは、海面を蹴り上げ、一跳躍だけで500“メイル”を移動してみせた。