ゼロの使い魔S   作:りおんざーど

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6,000年の真実

 “ラド(9)”の月の“第一(フレイヤ)”の週、“第七曜日(オセル)”。

 “アーハンブラ”を出立した“聖地回復連合軍”は、“エルフ”の本拠地である“砂漠(サハラ)”へと進軍した。

 これまでの移動に比べ、その進軍速度は遅々としたモノであった。なにしろ、“ハルケギニア”の歴史上、かつてないほどの大軍での進軍なのである。

 街道の整備されていない砂漠では、補給線の構築も当然ままならず、灼熱の太陽の照り付ける日中の行軍は、兵士達の体力を容赦なく奪って行く。

 だが、そんな過酷な状況でも、士気の落ちる様子がほとんどないのは、これが“ハルケギニア”の内戦ではなく、神の導きといえる“聖戦”であるからに他ならなかった。

「歩みを止めてはなりません! “ハルケギニア”の未来のために、今こそ、心を1つにして、進軍するのです。前へ、前へ!」

 “ユニコーン”の背に跨り、純白の戦装束に身を包んだアンリエッタは、自ら軍の先頭に立ち、“軍杖”を掲げて兵士を鼓舞していた。

 アンリエッタが前線で指揮を執るとなれば、国内の“貴族”達も後方で踏ん反り返っている訳にはいかない。我先にと前へ出て、王室への忠誠をアピールするのである。

「近頃は、女王の風格が身に着いてきたようですな」

 宰相のマザリーニが、アンリエッタの隣に馬を並べて言った。

「それは皮肉ですか、枢機卿?」

「とんでも御座いません、私はただ、陛下の御成長を喜んでいるのですよ」

「勘違いなさらないで。私は、あくまで平和的解決を望んでいるのです」

 アンリエッタはピシャリと言った。

「もう2度と、あのような愚かな戦争はせぬと、“始祖”に誓ったのですから」

「もちろん、教皇もそのおつもりでしょう。この“聖地回復連合軍”も、“虚無”の“担い手”も、あくまで和平交渉のための重しなのですから」

「だと良いのですが……」

 馬上のアンリエッタは、密かに嘆息した。結局、“アーハンブラ”での会談では、ヴィットーリオの真意を汲み取ることができなかったのである。

 ヴィットーリオが“聖地”に関して、なにか大きな隠し事をしているということに対して、アンリエッタには確かな確信があった。しかし、現実的な問題として、“ハルケギニア”に“大陸隆起”という危機が迫っていることは、厳然たる事実なのである。例え“聖地”あるという“魔法装置”の話が虚偽であろうとも、一国の女王であるアンリエッタとしては、それに乗るしかないのであった。

 しかし、あくまで、ヴィットーリオが“エルフ”との“聖戦”を断交するつもりなのだとすれば、アンリエッタは単独で“エルフ”達と交渉する覚悟でいた。かつて、アニエスのみを伴って、あの“ガリア”王ジョゼフとの交渉に赴いたように……。

 こうして“聖戦”に積極的なように振る舞っているのも、アンリエッタができる“ロマリア”に対する細やかな偽装であった。もっとも、あのヴィットーリオは、見破っているのだが……。

 雲1つない青空を見上げ、ふと、大切な親友達のことがアンリエッタの頭に過った。

 アンリエッタは、(ルイズ、シオン、私は、貴女達が羨ましい。ルイズ、貴女は“愛”する恋人を追って、自由に飛んで行くことができる。私には、幼い頃から、そんな貴女にどれほど憧れ、羨んでいたことか。シオン、貴女は信じる道を真っ直ぐ進むことができる強さを持っているわ。私のようにクヨクヨすることなんてない。見せない。ルイズに対して想っていたのと同じように、貴女のことも羨ましい……もし、“トリステイン”の王女として生まれてこなかったら……あるいは……私もルイズのように、心のままに振る舞えたのかしら? シオンのように信じて真っ直ぐに進めたかしら? いいえ、私には、ただ勇気がないのだわ。なにもかも捨てて、心のままに“愛”する人の所へ飛んで行く……確かな未来を見据え、それに向けて着実に進んで行くだけの覚悟と行動力……そんな眩いばかりの勇気と行動力は、2人の魅力であり、私には真似のできないモノ。きっと、あの娘達の、ルイズのそんなところにも彼等は惹かれたのね……)と溜息を吐いた。

 見かねたマザリーニが、小声で囁く。

「女王陛下、兵の前ですぞ」

「理解って居おりますわ、枢機卿」

 アンリエッタが馬上で佇まいを正した、その時である。

 “トリステイン”軍のはるか前方より、1騎の騎馬が、砂煙を立てて疾走って来た。

 騎馬を駆っているのは、“銃士隊”隊長のアニエスである。

「女王陛下、急ぎの報告です!」

「アニエス、何事ですか?」

 アンリエッタは威厳を損なわぬよう、落ち着き払った様子で問うた。

「斥候に出ていた“竜騎士隊”の報告です。我が軍の前方に、巨大な“フネ”を発見したと」

「まさか、もう“エルフ”の艦隊が?」

 アンリエッタの表情が強張った。

「判りません。ただ、斥候の報告によれば、“フネ”は1隻であると……」

「1隻?」

 アンリエッタは額に手を翳し、良く晴れた空を見上げた。

 しばらくすると……遥か遠方に、豆粒のような船影が現れる。

 “フネ”は黒い煙を噴き上げながら、段々と高度を落として行く。近付くに連れ、それが、今にも墜落しそうなほどにボロボロの“フネ”であることが判る。

 その船影に、アンリエッタもアニエスも、見覚えがあった。

「陛下、まさかあれは!?」

「ルイズ、シオン……ルイズとシオンだわ、直ぐに全軍を止めて!」

 

 

 

 

 

「勝手なことをして申し訳ありません、姫様。処分は謹んで御受けいたします」

 ルイズは百合紋章のマントを脱ぐと、アンリエッタの前で跪いた。

 砂漠の真ん中に、急遽、設営された“王族”用の天幕内である。

 その天幕の中に、“ハルケギニア”各国の首脳が集まり、椅子に座ってルイズとシオンを取り囲んでいる。

 アンリエッタに、“ゲルマニア”皇帝アルブレヒト・デューラー3世、“ガリア”新女王となったばかりのジョゼット、そして、教皇ヴィットーリオとその傍らに付き従うジュリオ、“アルビオン”の代表として軍を率いていたホーキンス……彼女等は、“エルフ”の首都へと乗り込んだルイズとシオンの報告を聴くために集まったのである。

「アンリエッタ女王。ルイズ・フランソワーズ達は、私が無理矢理連れて行ったのです。これは外交問題になりますので、後程……」

「今は咎めません。いいえ、そもそも咎めるつもりも追求するつもりなども全くありません。貴方方は威力偵察を行ってくれたのですから。ルイズ、シオン……貴女達が無事で良かったわ」

 アンリエッタが先にルイズの、次いでシオンの背中に、順番に手を回し、3人は固い抱擁を交わし合った。

 それから、ルイズとシオンは一同の前で救出作戦の顛末を語った。

 “エルフ”の艦隊と交戦し、それを“虚無”で壊滅させたこと……本拠地である“カスバ”に突入したものの、結局、才人とティファニア達はおらず、既に脱出した後であったことを。

 ただし、テュリュークとビダーシャルのことは、まだ伏せて、だが。

「では、サイト殿とミス・ウエストウッド、セイヴァー殿の行方は、まだ判らないと」

 アンリエッタが尋ねると、ルイズは消沈した表情で、はい、と首肯いた。

「海路となると、捜索は難しそうですな」

 アルブレヒト3世が、指先で髭を摘みながら言った。

「“ロマリア”の軍艦を3隻、捜索に向かわせましょう」

「“トリステイン”も、専門の“竜騎士隊”を派遣しますわ」

「セイヴァーは、“アルビオン”の客将、そして私の“使い魔”です。我々“アルビオン”艦隊も、軍艦を1隻と“竜騎士隊”を派遣します」

 ヴィットーリオの言葉に、アンリエッタとシオンが素早く反応した。

 アンリエッタの鋭い眼差しに、(今度こそ、捜索の主導権を“ロマリア”に握られる訳にはいかない……)という決意が表れていた。

 ルイズは顔を上げると、ヴィットーリオに向き直った。そして、口を開く。

「教皇聖下、“聖地回復連合軍”を組織したということは、聖下は、“エルフ”と戦争をするおつもりなのでしょうか?」

「いいえ、そうではありません、ミス・ヴァリエール」

 ヴィットーリオは穏やかな表情の儘、首を横に振った。

「我々の目的は、あくまで“聖地”に眠る“魔法装置”です。それを手に入れることさえできれば、“エルフ”と争う必要はありません」

「では、戦争をつもりはないと?」

 ルイズは慎重に尋ねた。

「少なくとも、戦争を回避する努力は惜しまぬつもりです。しかし、それは相手次第ということになるでしょう」

「その言葉を聴いて安心しました」

 ルイズの言葉と同時に、シオンと2人笑顔を浮かべた。

「ミス・ヴァリエール、ミス・エルディ、それはどういう意味ですか?」

「聖下に、御目に掛からせたい者がいるのです」

「ほう?」

 ヴィットーリオは興味深そうに呟いた。

「コルベール先生」

 と、ルイズは天幕の外を振り向き、声を掛ける。

 すると、緊張した表情のコルベールに案内されるようにして、フード姿の人物が2人、天幕の中へと入って来た。

「ルイズ、この方達は?」

 アンリエッタが困惑顔で尋ねる。

「無礼であろう。顔を見せぬか」

 アルブレヒト3世が、不機嫌そうな声で言った。

「やれやれ、いかにも“蛮人”らしい、不遜な物言いじゃのう……いいや、我々も同じ、大して変わらんか……」

「なんだと?」

 2人は冠っていたフードを跳ね上げた。

 その瞬間、天幕の中が騒然と成った。

 露になったのは、輝くような金髪と、湖面のように澄んだ碧眼。そして、樹木の様な、流線型の長い耳……。

「エ、“エルフ”……!」

 豪胆さで知られるアルブレヒト3世も、これには、口をあんぐりと開けて固まってしまった。

 最も早く動いたのは、教皇の傍らに控えるジュリオで在る。素早く剣を抜き、ヴィットーリオを守ろうとする。

「ジュリオ、大丈夫です。この方々からは敵意を感じられません」

 ヴィットーリオは穏やかな声で、ジュリオを制した。それから、ルイズとシオンの方に向き直る。

「ミス・ヴァリエール、ミス・エルディ、貴方方は“エルフ”を捕虜にしたのですか?」

 2人は首を横に振った。

「捕虜ではありません。客人です」

「客人だと?」

 アルブレヒト3世が、2人の“エルフ”を睨み付けながら言った。

 だが、そのような敵意など物ともせず、テュリュークはヴィットーリオの前に進み出た。

「そなたが、“ロマリア”の教皇殿か?」

「はい、私が“ロマリア”教皇、聖エイジス32世です、“エルフ”の客人よ」

 “エルフ”を前にしてなお、ヴィットーリオは穏やかな表情を崩さないでいる。しかし、その澄んだ瞳には、確かな興味が浮かんでいるのが判るだろう。

「御初に御目に掛かりますな、儂は“エルフ”の統領テュリュークと申す者」

「統領……」

「この方は、“エルフ評議会”の最高権力者だ」

 と、ビダーシャルが言った。

 天幕の中は再び騒然となった。

 アルブレヒト3世は低く唸り、ジョゼットは目を見開く。アンリエッタは口元を押さえ、驚きの声を押し殺した。

 そんな中、ヴィットーリオだけが、落ち着き払った態度を見せる。

「“エルフ”の統領殿が、何故、私の元に?」

「和平交渉のためじゃ」

 テュリュークは簡潔に言った。

「和平交渉……」

 ヴィットーリオは、なにかを考え込むように、ジッと沈黙した。

 代わりに口を開いたのは、アルブレヒト3世である。

「“エルフ”と交渉だと? 馬鹿馬鹿しい。それよも、折角ここまで御越し頂いたのだ。捕えて人質にすれば、“エルフ”共を黙らせることができるだろう」

「それは最も愚かな選択だと想うぞ、人間の王よ」

「なに?」

「儂は血統による王ではなく、あくまで“評議会”によって選ばれた統領でしかない。人間の人質になったとなれば、“評議会”はまた次の統領を選ぶ。それだけのことじゃ。その次の統領が、儂よりも穏健派であることは、先ずないじゃろう。そして人間の王よ。1つ言って置くが、おまえ達は決して“エルフ”には勝てぬ」

 アルブレヒト3世は一瞬言葉に詰まり、「ぐぬ」、と唸った。だが、直ぐにニヤリと笑う。

「それはどうかな? 我々には、“始祖ブリミル”から賜りし、“虚無”の力がある」

「なるほど、おまえ達の使う“悪魔の業(虚無)”は、確かに恐ろしい」

 テュリュークはアッサリと認めた。

「しかし、切り札があるのは、こちらとて同じこと。主戦論者の“エルフ”共は、おまえ達の軍隊に“火石”を使うつもりらしいぞ」

「なんだと!?」

「なんですって!?」

 恐るべきことを聞いたアンリエッタの顔が、真っ青になった。

 ルイズも之は初耳だったので、目を見開く。

 “火石”の恐ろしさは、この場にいる誰もが良く識っている。あのジョゼフの使った“火石”は、たった1つで、“ガリア”の“両用艦隊”を焼き尽くしたのだから。

 そんな中、シオンだけが静かにしていた。

「よくも……よくも私達を“蛮人”などと呼べたものね! 貴方達の方が、余程蛮人ではありませんか!」

 アンリエッタが想わず、怒りの声を発した。

「貴方方は、あの“火石”がどれほど恐ろしいものか、識っているでしょうに!?」

「正確には、識るようになった、のだ、“トリステイン”の姫君よ」

 ビダーシャルが言った。

「我々“エルフ”はこの数千年間、あのような恐ろしい“火石”の使い方など、決して想い付くことはできなかった。まさに悪魔の発想だ」

 痛烈な皮肉を返され、アンリエッタは返す言葉もなく押し黙ってしまった。

「そうね……どっちもどっち」

「そこの“アルビオン”の姫君の言う通りじゃ。なんにせよ、おまえ達が“悪魔の業”を使い、“エルフ”が“火石”を使えば、双方共に多大な犠牲が出るじゃろう。そうなれば、この“サハラ”は荒れ果て、2度と住むことのできぬ土地になってしまう……“エルフ”の長として、儂はそれを喰い止めたいと想っておる。故に、こうして危険を冒してまで、交渉をしに来たのじゃよ」

「なるほど、貴男の御考えは理解りました、“エルフ”の統領殿。無駄な血を流したくないというのは、私も同じ考えです」

 ヴィットーリオは深く首肯いた。

「聖下、では……」

 ルイズがハッと顔を上げる。

「教皇殿、まさか、本気で“エルフ”と和平を結ぶおつもりか?」

 アルブレヒト3世が、抗議するように口を挟んだ。その顔には、(今更“ゲルマニア”本国の諸侯達をどう説得すれば良いのだ?)という不満がありありと表れている。

 アンリエッタはそんなアルブレヒト3世を鋭く睨んだ。

「ですが、和平には1つ、条件があります」

 と、ヴィットーリオは言った。

「ふむ、条件とは?」

「貴方方の“聖地”を、一時的にせよ、明け渡して貰わねばなりません。それが叶わぬとなれば、我々はどのような犠牲を払ってでも、“聖戦”を続けるでしょう」

「“エルフ”が6,000年の間守り続けて来た、“悪魔(シャイターン)の門”を、明け渡せと?」

「そう、それだけが、必要不可欠な条件です」

「…………」

 テュリュークは、この若き教皇の目を、ジッと見据えた。

 緊張が天幕を包む。

 ルイズは息を殺し、テュリュークの次の言葉を待った。

 そして、無限にも想える時間が流れた後……。

「1つ、御訊ねしてお宜しいかな?」

 テュリュークは漸く、口を開いた。

「どうぞ」

「そちらにいる“アルビオン”の女王も言っておったが、おまえ達の目的は、“エルフ”の住まう、この“砂漠(サハラ)”ではないのだな?」

 ヴィットーリオは即座に首肯いた。

「我々の目的はあくまで……“聖地”の向こうにあるモノです」

 テュリュークは、なにかを考え込むように、長い顎髭に手を当てた。

 ルイズとアンリエッタは、密かに顔を見合わせ、それからシオンへと目を向ける。

 シオンは、目を閉じ、静かにことの成り行きを見守る様子を見せる。

 この場にいるシオン以外の皆は、(“聖地”の向こうにあるモノ……それは、これまでの教皇の言葉を信じるならば、“ハルケギニア”の“大陸隆起”を止めるための、“魔法装置”のことだろう)と考えた。

 が、ルイズとアンリエッタは、なにか、引っ掛かるモノがあることに気付く。

「それは、どういう意味かのう?」

 すると、ヴィットーリオは立ち上がり、テュリュークに手を差し出した。

「貴方方に、是非御見せしたいモノがあるのです」

 

 

 

 さて、天幕の中で、“ハルケギニア”の命運を握る重大な話し合いが行われている、ちょうどその頃……ギーシュとマリコルヌは、砂丘に半ば突っ込むようにして不時着した“オストラント号”の前で、仲間達との想い掛けない再逢を果たしていた。

 才人とティファニア達が“エルフ”の国に攫われたと聞き、“聖地回復連合軍”に志願して参加した、“水精霊騎士隊(オンディーヌ)”の隊員達である。

「全く、心配掛けやがって!」

「僕達にも一言も言わずに行く何て、あんまりじゃないか!」

「すまなかったね……なるべく迷惑を掛けたくなかったんだ」

 仲間達に小突かれ、ギーシュは頭を下げた。

 だが、誰も本気で怒っている者はいない。皆、本当に、純粋に心配していたのである。

 ギーシュは、(仲間って良いもんだなあ……)と涙ぐんだ。

「ほら、こいつも寂しがってたぜ」

 レイナールが、ヴェルダンデを抱えてやって来た。

 救出作戦には連れて行くには余りに危険過ぎると想い、シルフィード以外のそれぞれの“使い魔”達は“学院”に残して来たのである。

「おお、ヴェルダンデ、ごめんよよ……」

 再逢の喜びに、ギーシュは感極まって、ヴェルダンデを抱き締めた。

 ヴェルダンデは、モグモグと甘えるように、ギーシュの顔に鼻の頭を擦り付ける。

「ああ、クヴァーシル、元気にしてたかい?」

 マリコルヌの“使い魔”の梟であるクヴァーシルも、嬉しそうに主人であるマリコルヌの周りを飛び回る。

「モンモンの奴、おまえのことを心配して泣いてたんだぜ? 最後までずっと、俺達と一緒に着いて来るって利かなかったんだから」

 ギムリが言った。

「嗚呼、モンモランシー……」

 ギーシュは恋人の名前を呟き、また涙を溢れさせた。

 実際、“トリステイン”を出立してから、それほど日々が経過している訳ではない。

 が、“学院”を後にして“フネ”に乗り込んだのが、ギーシュにとっては、まるで年々も昔のことのように想えて来るのである。

 同時に、(サイトもティファニア嬢も、セイヴァーも、もっと心細いだろうな)とギーシュは想った。それから、ヴェッルダンデの毛布に顔を押し付けて、涙を拭った。

「ところで、才人達は無事だったのか?」

 と、ギムリが尋ねた。

 途端、ギーシュとマリコルヌの顔が曇った。

「…………」

 仲間達は察して、無言になった。

「待て待て、死んだ訳じゃないぞ」

 ギーシュは慌てて言った。

「あの“エルフ”っ娘と、セイヴァーと、無事に脱出したってさ」

「そうかぁ……良かった」

 マリコルヌの言葉に、一同は皆はほっと安堵の表情を浮かべる。

「まあ、俺達の副隊長殿は、簡単に死ぬような奴じゃないよな」

「そうとも、なんてたって、たったセイヴァーと一緒に2人だけで110,000の軍勢を止めた男だぜ」

 そんな軽口を叩きながら、うんうんと首肯き合う。

 すると、レイナールが眼鏡を押し上げて、うむむ、と唸った。

「無事なのは良かったが……それ、ちょっと不味くないか?」

「なにが不味いんだね?」

 と、ギーシュ。

「だって、今、サイトはティファニアとセイヴァーと3人だけってことだろう?」

「そうだね」

「詰まり、なにか間違いがあるかもしれない、ってことさ」

 レイナールの言葉に、一同は、なるほど、と強く首肯いた。

「いや、サイトはあれで一途な男だよ」

 ギーシュは親友の名誉のあめに言った。

 実際、才人はルイズ一筋である。それは間違いなどない。

 だが、そこでマリコルヌが口を挟んだ。

「もちろん、普段のサイトなら、そうだろうさ。でも、3人で、命賭けの逃避行をしてるんだぜ? 前にも言ったが、そんな極限状態ってのは、それはもう、男女の仲を物凄く深めちまうもんなのさ。セイヴァーはセイヴァーで、面白がって放置するだろうし。それに、おっぱいちゃんのあのおっぱいだ。実際、サイトは好い奴だが、かなりおっぱいに弱いところがあるのは否めない」

「うむむ……」

 と、ギーシュは、(確かに、我が身を振り返っても、想い当たる節もないではない……と言うか、あり過ぎる。おちろん、僕にとって、モンモランシーが一番の恋人であることに変わりはない。だが、時と場合とシチュエーションによっては、それはそれ、って気持ちになってしまうことだって、それはまあ、ある。それに、サイトが幾らルイズ一筋なのだとしても、ティファニア嬢の方はどうだろう? 案外、彼女の方が、サイトに恋心を抱き、距離を縮めに行く可能性だって、あるんじゃないだろうか……?)と想い、唸った。

 ギーシュがツラツラとそのようなことを考えていると、船体の4分の1ほどが砂に埋まった“オストラント号”のハッチから、作業着姿のエレオノールが出て来た。彼女は、“水蒸気機関”の修理をしていたのである。

 エレオノールは、マリコルヌを目敏く見付けると、鋭い声で叫んだ。

「ちょっと子豚。なにをしているの!? こっちを手伝いなさい!」

「は、はい、今直ぐに! 豚めが、この豚めが参ります!」

 マリコルヌは嬉しそうに叫ぶと、船の方へ真っ直ぐに走って行く。

 その様子を見て、レイナールは染み染みと呟いた。

「あいつ、なんか幸せそうだなあ」

 

 

 

「ミス・ヴァリエール、“エルフ”との和平交渉、成功すると良いですね」

「だと良いんだけど……そう簡単にはいかないみたいよ」

 紅茶を淹れながら話し掛けて来るシエスタに、ルイズは気のない返事を返した。

 あの天幕での謁見の後……ルイズはキャンプに戻って来たのである。

 ヴィットーリオは、テュリュークとビダーシャル、そしてシオンを連れて、砂丘に停泊する教皇専用の御召艦“聖マルコー号”に向かったのである。“エルフ”達とシオンに見せるものは、“ロマリア”の最高機密に関係するということで、アンリエッタもルイズも同行を許されなかったのである。シオンは、“サーヴァント“が”サーヴァント“で在るという理由もあり、許可されたのであった。

 ルイズは、(セイヴァーとシオン、“ロマリア”の秘密主義は相変わらずよね)と紅茶のカップに口を付けながら、小さく溜息を吐いた。

「話し合い、難航しそうですか?」

「“エルフ”も一枚岩じゃないみたい。中には戦争したがってる“エルフ”もいるって」

「はぁ、“エルフ”の国も、“ハルケギニア”とあんまり変わりませんねえ」

 シエスタは砂漠の空を見上げて言った。

「ま、なんにせよ、もう私達にできることもないですし、今はサイトさんとミス・ウエストウッド、セイヴァーさんの無事を信じて待ちましょう」

「そうね……」

 風に煽られ、舞い上がる砂煙を眺めながら、(シエスタの言う通り、今はこうして、ただ待つ事しかできないんだわ。居場所さえ判れば、直ぐにでも、サイトの元に飛んで行きたいのに……)とルイズはもどかしく想った。

 それから、(今頃、サイトはどこにいて、なにをしているのかしら? 私のことを考えてくれてるかしら? それとも……)、と風に吹かれ見る見るうちに変わり行く砂漠の風景を見ているうち、なんだか、センチメンタルな気持ちになってしまったルイズの脳裏に、ふと、ある不安が過った。“アディール”で“エルフ”の艦隊と戦う前、マリコルヌの言ったことを想い出したのである。

 極限状態では、男女の仲は深まりやすい……。

 ルイズは、(あの時は、まあ、“また他愛のない馬鹿話をしているわ。男の子ってホント馬鹿ね、愚か者ね。サイトが今さら私以外の女の子に心惹かれるはずなんて、そんなことある訳ないじゃない”、って想ってたけど……良く良く考えてみれば、ティファニアほどの魅力的な女の子と、まあセイヴァーもいるけど、異国の地で2人……なのよ……全く、ありえない話、とは言い切れないかもしれないわ)と考えた。

 ルイズは、コホンと咳払いをして、シエスタの方をチラッと見た。

「メイド、あんたに、ちょっと訊きたいことがあるわ」

「なんですか?」

 キョトン、と首を傾げるシエスタ。

「やっぱり、セイヴァーもいるけど……2人切りの逃避行で、その、男女の距離が縮まったりするモノかしら?」

「あら、心配なんですか? ミス・ヴァリエール?」

 シエスタはからかうように言った。

「そ、そそ、そういう訳じゃないわ! あ、あくまで、そういうこともあるのかしら? っていう、学術的な興味よ。だって、あいつってば、あたしに夢中だもん」

「まあ、そうですね」

 意外にも、シエスタはアッサリと認めた。

「でも、どうでしょうね? セイヴァーさんもいますけど、ずっと2人切りで、ミス・ウエストウッドのあの胸をずっと見せられたら、サイトさんも、可怪しくなっちゃうんじゃないですか?」

 ルイズは、ハッとした。

 ティファニアの胸は、男からすると途轍もない魔力を秘めた、ある種の魔法兵器とでもいえる代物である。あれほどの胸を四六時中見せ付けられているとすれば、正常な思考や判断力が失われる可能性だってある、といえなくもないのだから。

「あ、うう……でも、でも……」

 ルイズは否定し切れずに、口籠ってしまう。

「ミス・ヴァリエールは、もし、サイトさんとミス・ウエストウッドが、そういうことになっていたら、どうなさるおつもりなんですか?」

「え……?」

 突然、そのようなことを訊かれ、ルイズは言葉に詰まった。

 才人が、ティファニアの胸を揉んだり、顔を埋めていたりしたら……。

 もちろん、ノーである。少し前のルイズであれば、蹴っ飛ばした上に“爆発(エクスプロージョン)”の1発でも放っていたであろう。

 だが……。

「べ、別に、胸を揉むくらいは、許して上げるわ」

 ルイズは余裕たっぷりに、桃色のブロンドの髪を掻き上げてみせた。ルイズは、(なにしろ、サイトとは互いに裸を見せ合い、気持ちを確かめ合っているもの。胸を揉むくらい、まあ許して上げるわ。それが余裕のある大人の女ってもんよ)と想った。

「ふーん、じゃあ、キスはどうですか?」

「キス……」

 ルイズは、「ううう……」と唸った。才人が、ティファニアとキスしている姿を想像して……(駄目、やっぱ駄目)とルイズは想った。正直なところ、して欲しくないのである。そこは譲れない一線だ。だが……。

「い、良いわよ……ゆ、許す……わ……」

「ええっ? 許しちゃうんですか!?」

「もちろん駄目よ。基本的には駄目だけど……い、1度だけなら、赦すわ」

 ルイズはなおも余裕を見せた。

 才人が他の女の子にフラフラしたとしても、もう怒ら無いと決めたためである。ルイズは、(サイトが無事に戻って来て来れるのなら、キスくらいは、赦して上げる。ただし、1回よ、1回だけ)と想った。

「じゃあ、舌も?」

「あんたなに言ってんの?」

「舌は駄目なんですか?」

「駄目に決まってるでしょ」

 ルイズはキッパリと言った。

「ケチ」

「あ、あんたね……」

 ルイズは声を震わせた。

「じゃあ、こんなのは……赦しちゃうんですか?」

 シエスタは、ルイズの耳元でゴニョゴニョと囁いた。

「挟む?」

 ルイズは怪訝そうな顔をした。意味が理解らなかったのである。(このメイドってば、一体なにを言ってるのかしら……? 砂漠の暑さで、頭がちょっと、やられちゃった?)、と想った。

「挟むんです。それでもって、洗うんです」

「洗う?」

 シエスタはまた、ルイズの耳元でゴニョゴニョと囁いた。

 ようやくその意味を理解したルイズは、たちまち真っ赤になった。

「ば、馬鹿っ、あんた、変態じゃ成いの!?」

「本で読んだんですよ。今度貸して差し上げましょうか?」

「え、遠慮するわ……て言うか、そ、そそ、そんなの、無理よ。できる訳ないわ。あたし、“貴族”なのよ? ラ・ヴァリエール公爵家の3女様なのよ!」

「まあ、ミス・ヴァリエールには出来ませんよね、物理的に」

 シエスタは勝ち誇ったように、ふよん、と胸を寄せた。

「な、なによ、そんなの、私にだって……」

 ルイズはクヌッと胸の谷間を作ろうとした。

「あは、ミス・ヴァリエール。それ、私がいつも使ってる洗濯板にソックリですわ」

 ニコッと笑うシエスタに、ルイズは“杖”を手にして殴り掛かった。

 

 

 

 テュリュークとビダーシャル、そしてシオンは、ヴィットーリオに案内され、教皇専用の御召艦“聖マルコー号”の中を歩いていた。

 “フネ”の中に設けられた礼拝堂に、ヴィットーリオの見せたいモノが在ると云うので在る。

「“鉄血団結党”ですか。貴方方も、一枚岩ではないという訳ですね」

「ああ、おまえ達と同じじゃのう」

「全く、返す言葉もありません」

 ヴィットーリオは苦笑しつつ言った。

「1つになれるのはいつも、共通の敵が存在する時、という訳ですね」

「ふむ?」

 ヴィットーリオのその言葉になにか含むモノを感じて、テュリュークは眉を顰め、シオンは俯いた。

 通路を奥へと進むと、2人の“聖堂騎士”に守られた、大きな扉がある。

 ヴィットーリオは“聖堂騎士”を下がらせると、扉の中央にある宝石に手を翳した。

 すると。宝石が白く輝き、鍵の開く音がした。

「どうぞ、中へ」

 ヴィットーリオに促され、2人の“エルフ”と1人の女王が、礼拝堂に足を踏み入れる。

 中を見回したビダーシャルは、意外そうに眉を顰めた。

 “ロマリア”の教皇が使うにしては、かなり簡素な造りをした礼拝堂であるためである。

 1つだけある小窓から、細い陽光が射し込んでいる。銀の燭台に、小さな祭壇、そこに置かれた小さな円鏡と、然程目を引くモノは無ない。

「それで、我々に見せたいモノとは?」

 ビダーシャルが尋ねた。

 すると、ヴィットーリオは祭壇の上に置かれた円鏡に手を触れた。

「これは“始祖の円鏡”。“始祖ブリミル”の遺せし秘宝の1つです」

「“始祖の秘宝”……“担い手”に“虚無(悪魔の業)”をもたらすという、“魔道具(マジック・アイテム)”か」

 ビダーシャルは、かつてジョゼフの手にあった“始祖の香炉”を見たことがあった。

 見た目にはなんの変哲もないその道具が、あの悪魔のような存在へと変わってしまった男に力を授けたのである。

「その通りです。しかし、この円鏡は“虚無”を授けるだけではなく……常に“始祖”と共にあり、その人生を記録し続けて来たモノなのです」

 ヴィットーリオが“虚無”の“ルーン”を唱えると、“始祖の円鏡”は淡い輝きを放ち始めた。

 対象物に込められた強い記憶を脳裏に映し出す、“虚無”の“呪文”……“記録(リコード)”である。

「貴方方は、“聖地”の本当の正体を御存知ですか?」

「なにも知らぬ、と言うのが正直なところじゃ。ただ、6,000年前にあの地に現れた“悪魔”……ブリミルとやらが“大災厄”を引き起こし、“エルフ”の半数が犠牲になったと伝え聞いておる。それ故に、我々はあの場所を“悪魔(シャイターン)の門》”と呼んでおるのじゃよ」

「ミス・エルディは、どうでしょう?」

 ヴィットーリオからの確認するかのような質問に、シオンは一拍置いた後、口を開いた。

「知っています。6,000年前になにがあったのか……あの場所がどういった場所で、どう使うことができるのか……」

「では、今ここに、6,000年の真実を御目に掛けましょう」

「なに?」

 その瞬間、テュリューク達の脳裏に、見知らぬ景色が映し出された。

 荒れ果てた大地と……そこに立つ、2人の男女。裾の長いローブを纏った小柄な金髪の若者と、スラリとした容姿の美しい“エルフ”である。

「これは……」

「“始祖ブリミル”と初代“ガンダールヴ”のサーシャ。貴方方“エルフ”が“英雄アヌビス”と呼ぶ存在です」

「“ガンダールヴ”が、“エルフ”の“英雄”、“アヌビス”……やはり、そうであったか」

 ビダーシャルが呟く。

 左手に輝く“ルーン”を持つ、“エルフ”の“英雄”。

 ビダーシャルは以前より、“ガンダールヴ”と“アヌビス”の関係性に着目し、個人的に研究していたのである。

「しかし、“ガンダールヴ”と“アヌビス”が同一の存在であるとすれば、矛盾が生じる。“エルフ”の伝承には、“アヌビスは悪魔を殺した”とあるが」

「いえ、その伝承は正しいのです」

「まさか、“悪魔の守り手(ガンダールヴ)”が、おまえ達の神を殺したと言うのか?」

 ビダーシャルの問い掛けに、ヴィットーリオとシオンはただ沈黙で答えた。

 脳裏に映し出された映像の中で、ブリミルとサーシャは共に戦っている。そして、その中に、シオンとヴィットーリオ、そしてビダーシャルの見知った顔も……だが、その頭には、大きな角があった。

 その相手は、“エルフ”でも、“オーク鬼”や“コボルド”などの“亜人”でもなく、“ヴァリヤーグ”と呼ばれる、ヒトに良く似た種族であった。だが、その時代のヒトとは違い、彼等“ヴァリヤーグ”達は、金属の武具で武装している。

 軈て、月日が経ち……ブリミルの軍勢は、次第に仲間を増やして行った。その中には、“ハルケギニア”のヒト達も、“エルフ”もいる。ブリミルが率いる軍勢は、やがて子をなして増え、至る所に街を造り始めた。“エルフ”達とヒト達は、上手く共存しているように見えた……。

 だが、次の瞬間、画面が変わった。

 広大な“砂漠(サハラ)”の風景、ブリミルがなにか“魔法”を唱えている。

 サーシャは其の足元で苦悶の表情を浮かべながら、うずくまっている。

 ブリミルとサーシャからかなり離れた場所に、シオンの“使い魔”である存在の別側面が……。

 “呪文”が完成した。

 ブリミルが“杖”を振り下ろすと、眩く白い閃光が満ち溢れ、砂漠に築かれた“エルフ”の都市が、一瞬で灰燼と化した。

 テュリュークとビダーシャルは、その恐ろしい光景を、食い入るように見詰めた。

 シオンは、静かに見守って居る。映し出される映像の中の3人を、優しく。

 ブリミルの顔には、なの表情も伺えなかった。ただ、その目には、底知れない、“虚無”が映り込んでいる。それほどの状態になるまでのなにかがあったことが窺い知れる。

 そのブリミルの胸に、サーシャがユックリと剣を突き立てる……。

 “始祖の円鏡”はそこで光を失い、同時に、脳裏に映し出された光景も消え去った。

「……之が、6,000年前の“大災厄”の真実という訳か」

 ビダーシャルが呆然として言った。

「なんという……なんという悲劇じゃ」

 テュリュークが掠れた声で呟く。

 同時に、ビダーシャルとテュリュークは、これを見せたヴィットーリオの意図を理解した。

 “ハルケギニア”の人間達が神と崇める“始祖ブリミル”が、どこからやって来たのか、本当はないと戦っていたのか、そして、その子孫である“ハルケギニア”の人間達にどんな使命を遺したのか……それを示唆したかったのであろう。

「これで、御理解頂けたでしょうか? 私達の真の目的が、貴方達の住まう“砂漠(サハラ)”などではないということが」

「なるほど。おまえ達の取り戻すべき“聖地”というのは、詰まり……」

「御察しの通りです、“エルフ”の統領殿」

 ヴィットーリオは、その先を敢えて口には為無かった。

 テュリュークは、ヴィットーリオの澄んだ湖面のような目を見据えた。

 一片の私欲もない、どこまでも純粋な信念を湛えた目である。ある意味で、“鉄血団結党”の党員達の燃えるような目よりも、危うい狂気を孕んだ目であるといえるだろう。

 テュリュークは、(決して信頼はできぬ。だが、その言葉を信用することができる)といかにも“エルフ”らしい、合理的な判断で、そう結論を導き出した。それから、シオンへと目を向ける。

 シオンもまた、テュリュークと向き直る。

 それからテュリュークは、この若き教皇に手を差し出した。

「良かろう。教皇殿の言葉が真実であるのなら、我々“エルフ”はおまえ達の“聖戦”に協力することも、やぶさかではない」

「おお」

 ヴィットーリオは、テュリュークの手を取った。

「感謝します。我々の“始祖”と、貴方方の“大い成る意思”に」

 そんな2人を、シオンは悲しげに見詰めていた。

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