「なんで……? セイヴァーが2人?」
皆が呆然としている中、腕に身体を貫かれた俺と、腕で身体を貫いている俺は腕を抜き、向き合った。
「お疲れ様だ。“
「ああ、そうさせて貰おうか。後のことは頼んだ」
身体に大きな穴を空けた俺は目を閉じ、力を失い倒れる。それから、“霊核”は完全に壊れ、“受肉”していたはずの“エーテル”で編まれた肉体は、砕け散り、霧散した。
「なんだよ、おまえ……どういうことなんだよ!?」
才人が代表であるかのように訊いて来た。
「6,000年ぶり、だと言うべきだな。才人」
「6,000年ぶり、だって……?」
「俺はセイヴァーであって、おまめ達の知るセイヴァーではない。我は“ビースト”。“人間の獣性から生み出された、災害の獣”が1体」
「ビー、スト……?」
「いきなりではあるが、俺はこれから世界を滅ぼすつもりだ」
「な、なにを言ってるんだね? 君は……」
「言った筈だぞ? ギーシュ。俺は獣だ。“災害の獣”なんだよ……故に、おまえ達を殺す。世界を壊す。滅ぼす。より良くするために」
「矛盾してないか?」
「そうだな。まあ、俺は癌細胞みたいなものだからな。さて、問答は終わりだ。“杖”を構えるが良い」
「待ってく――ッ!?」
才人達がそれでも口を開き、俺を止めようとする。
そんな皆に、俺は“魔力放出”を行い、彼等を勢い良く吹き飛ばした。
そこに、影から1人の男が飛び出し、俺へと短刀を振りかざしてきた。
「――ぐふっ!?」
「すまないな、ハサン……俺はやはり、おまえのことを駒の1つとしてしか扱えないようだ」
そして、ハサンは今の俺が存在してはならない存在であるということに気付いたのであろう。
だが、当然ハサンの攻撃など俺に届くはずもなく、逆に俺の腕がハサンの身体を“霊核”ごと貫き、壊した。
「…………」
そこに、遠くから炎球や氷槍、風の刃などが俺に向かって飛んで来る。
だがそれ等は当然、俺に届く前に弾かれる。
「シオン!? 貴女、どうして!?」
「セイヴァーは、貴女の“サーヴァント”でしょ!? それをどうして!?」
ハサンを追いかけうように疾走って来たシオン達の中には、キュルケやタバサ、アンリエッタ達もいる。
そして、皆、俺とシオンとを交互に見やり、シオンへと問うた。
「決まってるわ。セイヴァーは死んだ。消滅したの。そして、前にいるのは、世界の敵……なら、やることは決まってるわ」
「待ってよ! セイヴァーなのよ!? それをどうして、貴女はそんな簡単に……シオン、貴女……」
ルイズがシオンへと詰め寄り、尋ねる。
だが、シオンのその様子から、ルイズはそれ以上言葉を続けることができなくなってしまった。
シオンの肩は大きく震え、唇を強く噛み、“杖”を血が出るほどに強く握り締めているのである。
どれほど悩み、苦しみ、そして今現在“代替者《もう1人の俺》”の側にいることもできず、別側面とはいえ同一存在に“杖”を向けることに対する覚悟などを感じ取ったのである。
そんなシオンに同調するように、イーヴァルディは剣を俺へと向けた。
「イーヴァルディ?」
「マスター、皆……彼は敵なんだ」
イーヴァルディは神とブリミルから授かったその力で、俺がどういった存在であるかを見抜いたようである。
彼は、俺へと悲し気に目を向けて来た。
「本当に良いんだな?」
「無論だとも……さあ、どうする?
イーヴァルディの確認に、俺は強く首肯き、皆を促す。
だが、皆、“杖”を握ることはない。まだ、信じられ無い、といった様子である。
ただ、俺を敵だと認識してくれているのは、シオンとイーヴァルディだけであった。
「呆れたものだ。おまえ達には世界を守る気がないのか? それとも、“
俺はそう言って、自身の姿の一部分だけを変える。
いや、“
俺の頭には一対の大きな角が、背には大きな翼……禍々しい爪などが生える。
「な、なんだよ……その姿……?」
文字通り悪魔の姿へと変じた俺を前に、皆先程のアヴェンジャーとの戦いのそれよりも大きく動揺した様子をみせる。
「これでどうだ? いや、それでも、か……ならば、仕方無い。ここにいる連合軍の兵達を皆殺しにしようか」
俺がそう言ったのと同時に、イーヴァルディは左手を輝かせ、剣を俺へと振り下ろした。
「――くっ!?」
俺は軽く右手を振るい、そんなイーヴァルディを軽く往なす。
「戦う気がないのなら、その場で人々が死ぬのをただただ見守ると良い」
「そんなことさせる訳、ないだろ」
「そうか……ならばどうする? 才人」
才人は立ち上がり、俺を睨み付けた。
「“武器”のないおまえに、なにができる?」
「なにもできないかもしれない。けどな……世界を滅ぼすとか訳の理解らないこと言ってる友達を殴ってでも正気に戻すことくらいはやってやるさ」
「そか。ならば」
俺はそう言って、1本の剣を才人へと放り渡した。
「こ、これは……?」
「それを持って、“
俺はそう言って、“魔力”を解放する。
「な、なんだ……!?」
立っていることだけで精一杯になるほど、地面が大きく揺れる。
「故に、おまえ達にはこれから足掻き、生き残って貰おう。そして先へ進み、俺の元へと向かって来るが良い」
俺がそう言い終えるのと同時に、才人達の視界は暗転した。
「ここは……?」
「セイヴァーは、どう成ったの?」
才人達は目を覚まし、互いに見詰め合い、周囲を見渡す。
「なんだよ、これ……建物かなにかの中か?」
「見たこともない様式の建物のようですが……?」
才人とルイズ、アンリエッタは周囲を見渡し、呟いた。
「こりゃおでれえた。凄え迷宮だな」
「デルフ、ここがどこだか判るか?」
「いや、俺にも判んねえ……6,000年も生きて来たけど、こんな場所見たことも聞いたこともねえや。多分だが、こりゃあ、セイヴァーの“宝具”だな。いや、あいつの“宝具”を利用して造られたなにかってとこか……」
「そっか……にしても、テファやタバサ、ギーシュ達は一体どこに行ったんだ?」
そこでようやく、この場に一緒にいるのが、ルイズとアンリエッタとシオンだけであるということに、才人は気付いた。
「分断された、ということでしょうか?」
アンリエッタは恐る恐るそう言って改めて周囲を見渡した。
「なんか頭が……」
ルイズはそう言って、自身の頭を押さえる。
才人もアンリエッタも、ルイズと同様に自身の身に起こった異常に気が付いた。
「なんだよ、この感覚? 立ち止まっているのに、ずっと疾走ってるような……無理矢理頭を揺さぶられてるような」
「もしかすると、この空間にそういった効果があるのかも――気を付けろ、相棒! 娘っ子2人! なにか近付いて来るぞ!」
デルフの言葉に、才人とルイズ、そしてアンリエッタは周囲を警戒する。
だが、あちこちから音が聞こえて来るかのような感覚を覚え、3人は混乱した。
それでも、なにかが近付いて来ていることだけは確かであり、才人はデルフリンガーを、ルイズとアンリエッタは“杖”を構え、互いに背を預けるように陣形を組み、待った。
「あれって……」
「ゾンビ……!」
ルイズとアンリエッタは悲鳴を上げ、抱き合った。
才人は2人を庇うように前に出て、デルフリンガーを構え直す。
そんな才人ではあるが、彼もまた恐怖を覚えていた。それでも、ルイズが、アンリエッタが後ろにいるということもあって、恐怖を覚えながらもそれを呑み込み、立っているのである。
ルイズとアンリエッタを守るため、才人は恐怖を勇気で抑え込んでみせているのである。
シオンは、ユックリと“杖”を構え、“ルーン”を唱える。
ゾンビは顔を覗かせ、才人達を確認するとその腐った身体で向かって来た。
数にして、20はいるであろう。
「相棒、相手はゾンビだ。斬ったところで大して変わらないかもしれねえ。腕や脚を斬り落とすことを考えるんだ。後は、頭と胴体を斬り離すとかな」
「ああ、理解ってる。ゲームで何度も相手してたからな……まあ、ゲームとは明らかに違うから、通じるか判らねえけど」
「な、なんなんだね!? これはああああああ!?」
「知らないよおおおおおお!」
ギーシュとマリコルヌを始め“
後ろからは、何体ものゾンビが追いかけるようにして続いており、ギーシュ達はそれから逃げているのである。
身体が腐っているにも関わらず、ゾンビは速く、今にもギーシュ達に追い付きそうである。
マリコルヌやレイナール、ギムリ達は、後ろから来るゾンビ達に向かって“魔法”で攻撃をし、どうにか逃げ切ることはできないかと頑張っている。
ギーシュは、そんな皆の周りに“
「サイト達と合流をしなくちゃならないのに」
展開された“
「これは……先程の見事な劇場と言い、見たこともない建物だが……」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ? ジャン。ここから逃げるか、サイトとルイズ達と合流しなくちゃ」
「ああ、理解ってい居るよ。ミス・ツェルプストー」
コルベールは、周囲を見渡し、大きな支柱を始め、この迷宮に圧倒されてしまっていた。
キュルケもまた同じく圧倒されてはいたが、コルベールよりも先に気を取り直し、現状と目的を再確認した。
「皆さんもそれで良いかしら?」
一緒にいる連合艦隊の兵士達は首肯いた。
「女王陛下は御無事だろうか?」
「早く合流しなくては」
この集団の中には、“エルフ”もおり、ビダーシャルとアリィー、そしてルクシャナもいた。
「これは一体……先程のもそうですが、彼等はなにをしたのでしょうか?」
「恐らく、“宝具”と呼ばれるものだろう……全く、文字通り“悪魔”になりはてたか」
アリィーの疑問に、ビダーシャルは短く答え、小さく呟いた。
「にしても、この可怪しな感覚。歩いているのに、全力で走っているみたいだわ」
ルクシャナは肩で息をしながら周囲を見渡し、言った。
「恐らく、この建物の所為でしょうな。サイト君とセイヴァー、彼等にはいつも驚かされてばかりじゃわい。これは来世の分も驚いているかもしれんのう」
オスマンは、髭を弄り、ルクシャナの言葉に笑いながら言った。
この場には、コルベールとキュルケ、ビダーシャルにアリィーとルクシャナ、オスマン、そして戦列艦などに搭乗していた兵達がいる。
そのため、ここが一番戦力が充実していると言えるだろ。
「……ふむ」
俺は、“
「中々に行動が早いな。流石、と褒めるべきか。だが、それでもやはり戸惑いは消せてはいない様子。無理もない、な……」
自然と俺の口角は上へと歪んだ。
「見せてくれよ。おまえ達の力を。実力を。可能性を……俺は見たいんだ。だから」
「はあはあはあはあはあ……」
才人は肩で息をしながら、ルイズとアンリエッタの護衛を務める。
シオンは、そんな才人のフォローをするように、才人が取り零し、向かって来たゾンビへと攻撃する。
「“エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ” ……“オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド”……“ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ”……“ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル”……“
ルイズは“杖”を振るい、“爆発”を起こす。
“虚無”は消えかかっているために、ルイズはその力を十分に発揮させることはできないでいた。
だがそれでもかなりの威力を誇り、周辺のゾンビ達は一瞬で爆散するか消滅をする。
「なんだよこれ……流石にキツ過ぎるぞ。長時間全力疾走り続けながら剣を振ってるみたいだ……110,000との軍勢と戦った時の方がマシだ」
「後で絶対、セイヴァーを殴ってやるわ。ええ、絶対に」
ゾンビは次から次へと湧いて出るかのように、才人とルイズ達がいる場所へと向かって来る。
「流石に、無限湧きってことはないよな? ない、はず……だよな?」
「それは……」
「ちょっと! 洒嫌なこと言わないでよ!」
そんな状況に、才人は少しばかり弱音を吐いてしまう。
そんな才人の言葉に、アンリエッタは顔を引き攣らせ、ルイズは怒鳴った。
「そうね……殴った方が良いかもしれないわ」
「シオン……?」
ルイズの言葉に同意したシオンに、皆目が向かった。
シオンは暴力的な事は好まない娘である。
そんな彼女が、ルイズの言葉に同意し、「殴った方が良い」と言ったのだから、ルイズとアンリエッタは大きく驚いた。
「いつもそう。半ば……中途半端に大きな力を持ってるから、それに囚われて振り回される。前世で良識や常識を中途半端に身に着けた所為で、それに縛られてる。それでいて、過去の経験から自責の念に囚われて……」
「良く見てるのね、貴女」
「ええ。これでもまだしっかりと彼のことを理解できた訳ではないわ。だってこれは、夢を通して見たもの……彼自身になって経験や体験をした訳ではないもの」
ルイズの言葉に、シオンは悲しげに首肯いた。
「私もそうなの。セイヴァーと同じ。だから、なんとなくではあるけど、少しだけ理解できる。だから」
「――おーい!」
そこに、ギーシュやマリコルヌを始めとする“水精霊騎士隊”の面々が現れ、合流を果たす。
そして、次いで、キュルケとコルベールやビダーシャル達もまた顔を出した。
「あら、ルイズ。こんなところにいたのね。皆、無事で良かったわ」
「あんたもね、キュルケ」
ルイズとキュルケは互いにそう言った後、ルイズは皆を見回した。
「ねえ、キュルケ。タバサとテファはどこかしら?」
「そうだ! 2人はどこなんだ!? 無事なのか!?」
ルイズの質問に、才人はこの場に2人がいないことに気付き、焦った。
「判らないわ。でも、きっと大丈夫よ」
そうキュルケが言った直後、皆が顔を出した方とは別の通路の方から、話し声が聞こえて来た。
その声に聞き覚えのあった、才人とルイズ、キュルケ達は顔を綻ばせる。
「やっぱり無事だったのね。良かったわ」
「タバサ、テファ。良く無事で」
キュルケと才人は2人に詰め寄り、無事を確認し、安堵した。
「ええ。タバサとイーヴァルディさんのおかげで、私はどうにか」
「私も大丈夫。イーヴァルディのおかげ」
ティファニアとタバサは、“霊体化”しているイーヴァルディに対して感謝した。
「私もいるのね、きゅい!」
シルフィード――イルククゥは、胸を反らせて言った。
「そうだね。でもまあ僕の場合は、生きてた頃に似たようなことが何度もあって、経験とかしてたからね」
そんなイルククゥの態度に対して笑いながら、イーヴァルディは“実体化”して、そう言った。
「にしても、ここまで巨大な迷宮を生み出すなんてね」
「迷宮?」
「うん。これは迷宮だよ。それもとびっきりのね」
イーヴァルディは、首を傾げたルイズ達に対して推測を言った。
「セイヴァーの“宝具”を利用して創ったんだろうね。たぶん、“座”に干渉してる。どこかの誰か、別の“英霊”が持つ“スキル”や“宝具”を参考にしてるんだと想う。たぶ、これまでのも全部……」
「そんなことができるのかよ!?」
「できる、んだろうね……“根源”との接続……そして、彼が“代替者”であるということ……詰まりは、なににでも、誰にもなれる、無限の可能性を持ってるってことでもあるからね」
イーヴァルディは苦い顔をして、才人の質問に答えた。
「あの、現状の確認は完了したので、そろそろ次にどうするのかを考えるべきでは?」
そんな彼等に、アンリエッタは恐る恐る手を挙げて提案をした。
「そうだな。姫様の言う通りだ。先ずは、ここからどう脱出するのか、だ」
才人はそう言って、頭を捻り、考える。
「迷宮ってことは、迷うようにできてるんだろう? 闇雲に駆け回っても、無駄に終わるんじゃないかね?」
ギーシュのその言葉に、他の面々は首肯いた。
「大量のゾンビだっている。それに、今もそうだけど、頭が無理矢理揺さぶられてるような感覚……可怪しくなりそうだよ」
マリコルヌの言葉に、皆同意し、重い空気が流れる。
「ねえ、なにか目印になるモノを置いて行きながら進むとかは?」
「ふむ……それも良いが、最悪、同じ所をグルグル回ることしかできないかもしれない。無駄に終わる可能性が高い」
「ならどうするのよ?」
キュルケの提案に、ビダーシャルは首を横に振った。
「ねえ、イーヴァルディ。あんた、生前にこんな迷宮に入ったことがあるのよね?」
「うん。まあ、ここまで巨大ではなかったけど」
ルイズの質問に、イーヴァルディは戸惑いながら首肯いた。
「なら、脱出方法とかなんかない?」
「単純に歩き回るだけだと無理だと想うから、風の流れや音の反響とかで把握する、とか?」
「そんなのできずはず……」
「いや、可能だ。出口まで一直線と言う訳にはいかないだろが、それでもなんらかの手掛かりを得ることくらいはできるだろう」
その場のほとんどの者がイーヴァルディの案を否定する中、ビダーシャルは首を縦に振った。
「ふむ。“風”の流れを利用する、か……“風系統”の“メイジ”であれば、可能であろうな」
オスマンもまた髭を弄りながら、イーヴァルディの案を肯定し、ビダーシャルに賛同の意を示した。
「なるほど。では、試してみますか。“メイジ”の皆さん、そして“エルフ”の皆さんもお願いしますね」
「お願いします」
代表とでもいえる2人がイーヴァルディの提案を肯定したこともあり、皆はその案を試してみることにした。
アンリエッタとシオンのその言葉に、この場の皆は首肯き、“メイジ”達は“杖”を構え、それぞれ“風系統”の“魔法”を使う。
“風”“風”と“風”と“風”と、“風”の“スクウェア・スペル”により、“風魔法”で生み出された
皆、発せられた音の高さや響き方に注意した。
「やはり難しいわね」
ルクシャナは耳をピンと立て、耳を澄ませるながら苦い顔をした。
「正面行き止まり、左側元の場所に戻ります」
「斜めに行くと上方階段、です……」
だが、何人かは音や反響の仕方などを聞き分けることができているようである。
聞き分けることができる者達は、互いに聞き取った音などについて摺合せを行い、間違いがないようにする。そして、それをアンリエッタやシオン、ビダーシャル達に言った。
そうして少しずつ少しずつではあるが、確実に前へと進んで行く。
「ここの行き先は、全て行き止まりです」
「では戻りましょうか」
着実に進んでいる、そしてここから脱出できる可能性が高くなったことで、皆の中に希望が湧いて来た。
「……音が……反射しない道があります!」
1人のその言葉に、皆から歓喜の声が上がった。
「出口、ですね!」
そう言って、アンリエッタとシオン達を先頭にして、皆前進を始める。
しばらく歩き続けていると、通路の先に光が見えて来た。
だが――。
「お待ちください! 出口になにかいます!」
1人の兵士がそう言ったことで、皆に緊張が奔る。
「もしかして、セイヴァーか……!?」
才人が言った。
才人のその言葉に、この場にいる皆の空気と足取りが一気に重くなった。
アヴェンジャーとのあの戦いなどが、脳裏に蘇ったのである。
「あれって、“ゴーレム”よね?」
待ち構えていたのは、“ゴーレム”であり、キュルケは拍子抜けしたといった様子で言った。
だが――。
「確かに、“ゴーレム”だとは想うけど……なにか、違う、ような?」
そこにいる“ゴーレム”は、ギーシュの言う通り、彼等が知る“ゴーレム”とは明らかに違った。
ただ判ることは、それが“ゴーレム”であるということだけである。
「相棒、気を付けろよ。あの“ゴーレム”はこれまでのとは明らかに違う」
「ああ、理解ってる。フーケのとも“ミョズニトニルン”のとも全く違う」
才人はそう言って、デルフリンガーを構える。
他の皆も其々“魔法”を使うため、“ルーン”を唱え始める。
「――放て!」
アンリエッタとシオンの号令で、“メイジ”達と“エルフ”達は“魔法”を放つ。
そして、才人はその直後に飛び出し、“ゴーレム”へと詰め寄った。
いくつもの“魔法”が“ゴーレム”へと命中し、爆発を起こす。
爆炎に紛れ、才人は“ゴーレム”へと瞬く間に接近し、跳躍。斬りかかった。
「か、かてえっ!」
デルフリンガーが弾かれ、才人はその反動で吹き飛ばされてしまう。
体勢を崩し吹き飛ぶ才人を、“ゴーレム”は殴り飛ばした。
「ごふっ!?」
「サイトッ!」
吹き飛ばされた才人を、“メイジ”が“風魔法”でクッションのようなモノを造り出し、優しく受け止める。
「わりぃ、助かった!」
才人は短く礼を言うと、デルフリンガーを構え直し、“ゴーレム”を睨む。
「全く、セイヴァーの野郎、なんでこんな……」
「恨み言は後!」
キュルケはそう言って、コルベールと共に炎球を飛ばす。
が、当然それは命中すれど“ゴーレム”の表面を焼くことすらもできな。
「行って!」
タバサが“氷の槍(ジャベリン)”を唱え、“ゴーレム”へと飛ばす。
氷の槍は、“ゴーレム”に打つかり砕け散った。
「ああ、もう! ルイズ! “爆発”でどうにかならないの!?」
「今からやるわよ! “エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ” ……“オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド”……“ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ”……“ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル”」
ルイズが“ルーン”を“詠唱”している間も、後ろの方から“攻撃魔法”が放たれ“ゴーレム”を牽制している。が、尽くが弾かれ、無駄に終わる。
「――“
ルイズが“杖”を“ゴーレム”へと向けて振り下ろす。
“ゴーレム”を中心にして、大きな爆発が起こった。
爆発が起きたことで、当然爆風が起こり、床や壁に罅が入り、破片がルイズ達の方へと飛んで来る。
視界を煙で遮られ、ルイズ達は咳き込みながら様子を窺った。
「駄目みたい……」
ルイズは消沈気味に言った。
「どうすれば……」
「私が、やってみる」
「テファ?」
ルイズの“爆発”を耐えてみせた“ゴーレム”を前に、皆頭を抱えた。
そんな中、ティファニアは“杖”を構え、意識を集中させる。
「“エオルー・スーヌ・イス・ヤルンサクサ”」
ティファニアは、ルイズの“
「“オス・ベオーグ・イング・ル・ラド”、“アンスール・ユル・ティール・カノ・ティール” ……“ギョーフ・イサ・ソーン・ベオークン・イル”!」
ティファニアは、真っ直ぐに“杖”を振り下ろす。
「――“
“杖”の先にいる“ゴーレム”が光を放つ。
だが、それでも“ゴーレム”に変化はない。
“分解”すらもできなかったのである。
「そんな……」
「これでも駄目なのかよ……」
切り札ともいえる“虚無”の力をもってしても、どうすることもできあにという現実に、この場にいる皆は半ば絶望しかけてしまった。
「相棒、嬢ちゃん達! 俺に“爆発”と“分解”をかけてみてくれ!」
「デルフ?」
デルフリンガーの提案に、ルイズとティファニア、そして才人は首を横に振った。
「なに言ってんだよ!? そんなことしたら、おまえが分解されちゃうだろうが!」
「今のおりゃあ、セイヴァーの野郎がくれた“武器”だぜ? 大丈夫だって」
「なにかの罠があるとか? 元のデルフリンガー同様に“魔法”を吸収できるとかじゃなくて、全く能力のない頑丈な剣でした、って落ちは……」
「…………」
デルフリンガーの根拠のない言葉に、ギーシュやマリコルヌが不安げに言った。
そんな2人の言葉に、才人は黙り、考え込む。
「……理解った。ルイズ、テファ、やってくれ」
「でも、サイト」
「大丈夫、だと想う」
才人の言葉に、ルイズとティファニアは不安そうに見詰め返す。
だが才人とデルフリンガーは、そう言った後、“ゴーレム”を警戒し、口を開かない。
才人とデルフリンガーの決意が強いことに気付き、ルイズとティファニアは互いに首肯き合った。
「“エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ” ……“オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド”……“ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ”……“ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル”」
「“エオルー・スーヌ・イス・ヤルンサクサ”……“オス・ベオーグ・イング・ル・ラド”……“アンスール・ユル・ティール・カノ・ティール” ……“ギョーフ・イサ・ソーン・ベオークン・イル”」
2人の“詠唱”が始まった。
その“ルーン”は嫋やかに朗々と響き渡る。
「――“
「――“
2人がデルフリンガーへとそれぞれ“魔法”をかける。
装飾が少ないながらも機能美のあるデルフリンガーは、青白く光り輝く。
「行くぞ、デルフ!」
「応よ! 相棒、想い切り、行け!」
才人は腕輪型の“礼装”で自身の身体能力を大幅に強化し、“ゴーレム”へと突っ込む。
強化された身体能力から生み出される脚力によって、呼吸や歩法などが噛み合ってなどいないにも関わらず、才人は“縮地”に等しい速度で“ゴーレム”へと詰め寄った。
そして――。
「喰らえっ!」
才人は想い切り、そして勢い良くデルフリンガーを振り下ろした。
デルフリンガーが打つかるのと同時に、“ゴーレム”の身体は爆発する。
爆発によって才人は、ルイズ達の元へと戻されるように大きく吹き飛ばされた。
“ゴーレム”は、身体が爆発し、粉々に砕け散る。そして、砕け散った欠片は音も無くバラバラと砕け散ち、目に見えぬ小さな粒へと分解された。
「や、やった……」
才人がそう言った後、後ろから歓声が湧いた。