ゼロの使い魔S   作:りおんざーど

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風の妖精

 さて、“竜騎士”達が生還してから3日が過ぎた今日、ルネと才人達は天幕の中でどんちゃん騒ぎを続けて居た。

 ルネ達第二“竜騎士中隊”の面々は、あの酒盛り以来、ルイズの天幕に入り浸って居るのだ。護衛と云うのは建前で、他に理由が有ったのだ。

「奇跡の生還に乾杯!」

 才人が、酔いで濁った目で本日17回目の「乾杯」を口にした。

「かんぱい! かんぱいだ!」

 酔いでヘロヘロに成った声で、“竜騎士”達が其の唱和に加わる。で以て波々とコップに注いだワインを開ける。

「生きてるって良いな! こう遣って酒が呑めるんだから!」

 そう言って手慰みに“杖”を振り、旋風でワインを掻き回して呑んで居るのは、ルネの副官役だった少年、赤毛のアッシュ・ペンドルトンで在った。貧乏“貴族”の三男坊で在る彼は、兎に角節制を尽くした呑み方をするのだ。ワインを水で薄めてガブガブと遣るので在った。だから偶にこう 遣って“魔法”で杯を掻き回して居るので在る。

 目立つ双子の“竜騎士”は、ジルベールとセブランで在る。柔らかい白い金髪、少女の様に可愛らしい顔付きの2人は、没落“貴族”の出で在った。ニコニコ為乍ら御互いの杯に酒を注ぎ合って居る。

 ルイズとシオン、そして俺を除く全員がヘベレケに酔っ払ってしまって居る。否……1人何遣ら悩んだ様な顔で、ジッと考え事をして居る少年が居た。無口なフェルナンで在った。才人が酒を勧めると、首を横に振った。心悩ます何かを抱えて居るのだ。

 其処に小太りのルネが、頭陀袋一杯に何かを抱えて戻って来た。

「第二“竜騎士中隊”長! ルネ・ラコステ! 只今帰還致しました!」

「御苦労。大儀で在る」

 と座の真ん中に座った才人が踏ん反り返って言えば、何が可笑しいのかフェルナンを除く“竜騎士”達は爆笑をする。

 天幕の隅っこで膝を抱えて座って居るルイズ、そして其の隣に座って居るシオンは、そんな光景を苦々し気に見詰めて居るのだ。

 彼等は、まるで自分の部屋気取りで在る。護衛と云うのは建前で、どう遣ら酒盛りを為る為に此処に来て居るので在ろう事は明白で在る。此処で在れば上官の目も届か無い。好き放題出来ると云う訳だ。

 ルイズは、(其りゃ、死地から生還したんだから、酒盛りも少し成ら目を瞑って上げる。でもね……毎日じゃ成いの! 毎日! 而も朝から晩迄! 其の上、此奴等ってばホントに部屋を綺麗に使うって事が出来無いのね!)、キリキリと唇を噛み、ギリギリと歯軋りを為る。

 酒瓶や鶏の骨や、食べ滓などが散らかり、辺りは惨状を呈して居るのだ。

 ルイズが文句を、シオンが窘める言葉を口に為れば、彼等は「理解りましたぁ!」と威勢の良い言葉を返すのだが、其れだけで在るのだ。誰も片付けをしようと為無い。シオンとルイズ、そして俺が掃除を為るのだが、其れ選りも早くゴミが増え、日に日に溜まって行く始末だ。序にルイズの苛々も溜まって行くので在った。

 そして何選りルイズが赦せ無いで居る事は例に依って才人に関する事で在る。ルイズの代わりに文句を言うのかと想えば、先頭に立って馬鹿騒ぎを繰り広げ、遂々(とうとう)今ではリーダー格で在る。ルイズは、(馬鹿の将軍様ね。似合いだわ)、と溜息を吐いた。

「戦果を報告せ~~~~~よ~~~~~」

 とすっかり将軍気取りの才人が言うと、ルネがガサゴソと頭陀袋を開ける。

「ハムに干し肉にソーセージ……そして酒だ!」

 倉庫から失敬して来ただろう御馳走に、一部を除いた皆が歓声を上げる。

「貴官に勲章を授与す~~~~る~~~~~」

 然し勲章などは当然無い。

 誰かが困った才人に何かを手渡した。白くてピラピラとした布っ切れで在った。

「な、何だ之?」

 其の正体に気付いたルイズは慌てて立ち上がる。

「ちょっとぉ!? 其れ私の下着じゃ成いのよ! 何考えてるのよ!」

 才人に「其処に落ちてた」と手渡したアッシュが言えば、「こ、此処に、た、たた、沢山在るぞ?」とジルベールとセブランが、ルイズのチェストを開けて、フルフル震え乍ら叫んだ。

 フェルナンを除く“竜騎士”達が、「最高の勲章だ!」、とゲラゲラと笑い転げる。

「最低ッ! あんた達ホント最低ッ!」

 顔を真っ赤にしたルイズはチェストを開けたジルベールとゼブランの頭を酒瓶で殴り付け、笑い転げて居るルネに鶏の骨を投げ付け、酔った“竜騎士”達を其々一人残らず蹴り飛ばした。

 最後にオロオロして居る才人の股間を蹴り上げ、馬乗りに成って首を絞め上げる、

「あんた迄一緒に成って何騒いでるのよッ! “使い魔”の癖にッ! “使い魔”の分際でッ! い、い、犬の分際でッ! 犬がッ! ワンコロの分際でッ!」

 分際でッ、と言う度にルイズの声が裏返る。良い加減、頭に来たらしい。

「そう言や、君は彼女の“使い魔”で、君も彼女の“使い魔”だったね」

 とルネ達がマジマジと才人や俺の顔を見詰め、再び笑い出す。

「ヒトが“使い魔”だ何て、変な話だな!」

 ルネ達は、ボンッ! と手を打った、

 するとバッサバサと彼等の“使い魔”が天幕に飛び込んで来た。“風系統”の“メイジ”が多い為、羽の着いた生き物が多い。梟、鷹、大蝙蝠……“グリフォン”や“ヒポグリフ”の子供など、“幻獣”の姿も見える。

「“使い魔”ってのはこう言うのを言うんだよ! あっはっは!」

「好きで此奴にした訳じゃ無いもん! 此の馬鹿が勝手に来ちゃっただけだもん!」

 “竜騎士”達の言葉にルイズは顔を真っ赤にさせて否定する。

「まあ、“サモン・サーヴァント”ってのは、相手を選べ無いからな!」

 ルネが笑い乍ら、ルイズに近付いて言った。

「でも君、ミス・ヴァリエール。良かったなあ、僕も恋人を呼び寄せれば良かった。“使い魔”と恋人が同じ何て、“メイジ”の理想じゃ成いか!」

 “竜騎士”達は爆笑した。

「恋人何かじゃ無いもん! あんた達って馬鹿成のね! 何にも理解って無いんだわ!」

 為るとアッシュはニヤニヤと笑みを浮かべた。

「だって、此の前、此処で、なあ?」

「素肌にマントで撓垂れ掛かってた。何してだんだよ!?」

 ルイズは首迄真っ赤に成ってしまった。

「下品! 最低! 男の子ってホントにそう言う事しか頭に無いんだから!」

 遂々(とうとう)ルイズは毛布を頭から引っ冠って仕舞った。

「男性を代表して申し訳無く想うよ。すまない、ルイズ」

 俺の言葉にルイズは反応を返さず、皆が宥めてもすかしても出て来無い。完全に拗ねてしまった様で在る。

「ヤバイ。怒っちゃったかな?」

 ルネ達が心配そうに呟いた。其れから一斉に才人の反応を窺う。

 其の時才人は……(俺達ホントに出来て無えし。今はうーむ、どう言う関係何だろう? “使い魔”と主人、と言う関係から進展して居そうな気が為るけど……ホントに進展してるんだろうか? 小舟の上でデキそうに成ったけど、“あれは無かった事にしろ”、とルイズに言われて仕舞って居るし。一体自分の事を、ルイズはどう想って居るんだろう?)、と顔に皺を浮かべて悩んで居た。

「悪気は無いんだよ、君から良く謝って置いて呉れよ」

 才人は、複雑な想いで「あ、ああ」と首肯いた。

 ルネ達は、顔を見合わせる。

 ルネが「下品って言われちゃった」と言うと、「しょうが無いよ。僕達、“貴族”と言っても下級も良いとこだからなあ」とアッシュがこう言う。

「爵位何かだーれも持って無いもんな! ラ・ヴァリエールの御嬢さんと比べたら、下品と言われても仕方無い! あっはっは」

 とジルベールとゼブランが顔を見合わせて笑い合う。

「否、爵位とかじゃ無くて、其の態度や言動が問題で、下品だと言われたと想うのだがね」

 俺の言葉を気に為る事も無く、“竜騎士”達は笑い合う。

 才人は、「成る程。」、と想った。そして、(“魔法学院”に通う子弟は、“貴族”の中でも御坊っちゃんや御嬢ちゃん成のだ。ルイズは勿論、シオンもそうだ。ギーシュやモンモランシーだって御金は無い様では在ったが、家柄は相当なモノ何だろう。ギーシュの親父何か元帥らしいし。元帥って軍隊で1番偉いんだろ? ルイズと此奴等の温度には、例えが悪いが、私立の名門校と落ち零れの公立学校みたいな違いが在るらしい。ああ、だから俺は此奴等に親近感を覚えたのかあ)、と妙な納得をする才人で在った。

 そして、才人は再逢をした晩のルネが口にした「下級“貴族”が出世為るには、戦場で手柄を上げるしか無い」と云った話を想い出し、同時にルネ達を不憫に想って仕舞い、少しばかり酔いが覚めて仕舞う。

「はぁ、確かに酒盛りも楽しいけど、早く手柄を上げたいな!」

 とルネが言う。

「そうとも! “竜騎士中隊”は翼を失っても役に立つって所を、偉いさん達に見せ付けて遣りたいよ!」

 あっはっは、と笑うジルベールとゼブラン。

「ああ、何時に成ったら、“ロンディニウム”の“アルビオン”軍を遣っ付けに行くんだ? もう上陸して10日が経ったぞ!」

 アッシュが詰まら無さそうに言った。

 彼が言った通りで在る。連合軍は、上陸から10日が過ぎても尚進軍する気配が無いのだ。どう遣ら攻めて来るで在ろう“アルビオン”軍を、此の“ロサイス”近辺で迎え討つ積りだったらしいのだが……“アルビオン”軍は全く攻め寄せて来る様子が無いので在った。

 其の時……“竜騎士”達の願いが通じたのか、天幕に1人の少年兵が遣って来た。

「りゅ、“竜騎士大隊本部”からの伝令です」

 13~14歳位の少年で在った。柄の悪い年上の“貴族”達が、昼間っから酒を呑んで管を巻いて居るのを見て、怯えた表情を浮かべて居る。

「大隊本部? “竜”を失った“竜騎士”に、ギンヌメール様が何の用何だ?」

 とルネが皮肉を込めた調子で言った。

「理解りません。自分は唯の伝令でして……」

「ああ、すまないな君。見ての通り此の馬鹿共は酒に酔い潰されて居る。彼等の代わりに謝罪をするよ。そして、君はこんな風には決して成ら無い様に気を付けろ。酒は飲んでも呑まれるな、だ」

 俺の言葉に、少年兵は首肯く。

 ジルベールが「何らかの任務を下さるんじゃ成いのか?」と呟くと、皆真顔に成って一斉に身成を整え始めた。

 

 

 

 然し……“竜騎士”達にとって残念な事に、手柄を立てられる様なチャンスでは無かった。押っ取り刀で駆け付けたルネ達で在るのだが、天幕の中で欠伸をして居るギンヌメール伯爵を見て、自分達の予想が外れた事を知った。

「報告書を作成為るのを忘れて居ってな。今一度、生還の時の話をして呉れ」

 俺とシオン、才人とルイズの4人また遣って来て居た。

 一応、護衛されて居る、身分で在る為、離れる訳にも行か無いのだ。

 ルネ達は、何とも遣る気の無い口調で報告を開始した。内容は殆ど此の前のモノと変わら無い。

 撃墜されて、ボロボロに成って……1週間後、気付いたら全員が“ウィンドドラゴン”の背に乗って居た。其れだけだ。

 確かに、皆からすると不思議な話で在ろう。其れは、“魔法”を使用した戦争が行われる“ハルケギニア”で在るからこそとでも云う事も出来る。“魔法”などと云うモノが在るからこそ、想いも寄ら無い摩訶不思議な事が多々起こるので在る。其れ故、構い続けて居る訳にも行か無いだろう。

 唯一、シオンとルイズはジッとそんな話を聴いて居た。興味が湧いて来た様子を見せる。

 さて、之で御終いか、と云う時……1人の少年が、モジモジとし始めた。

 大人しいフェルナンで在った。彼は、少しばかり想い詰めたかの様な表情を浮かべ言葉を口にした。

「あ、あの……」

「どうしたフェルナン、トイレに行きたいのか?」

 アッシュが茶々を入れ、ドッと座が沸く。

「ち、違うよ! 報告さ! 誂う無よ!」

 何時もは大人しいフェルナンが、真顔で捲し立てるので、皆黙りこくる。

「あ、あの……こないだはちょっと夢か現か判断が付か無くて話しても良いモノかと迷いましたが……でも、冷静に成って考えてみるとやっぱり、でも其の……」

 ギンヌメールは、「どうした? 報告は簡潔に述べろ」、と促す。

「は、はいっ! 報告します! 墜落した際に、自分は“竜”の背中から投げ出されて……暫く地面に横たわって居たんです。動こうにも、身体はどうにも動か無くって……気が遠く成りました。嗚呼、之で死ぬんだなって。でも、其の時です。見たんです」

 ギンヌメールは気が無さそうに促した。

「何をだ?」

 少年――フェルナンは、言い難そうにモゴモゴと呟いた。

「妖精です」

「何の妖精だ? 水か? ふん、あれは“精霊”か」

「違います! あんなプヨプヨしたもんじゃ在りません! もっと綺麗な……そうです! 風の妖精!」

「風の妖精など、存在し無いぞ。“精霊”と違って妖精は、全て伝説の生き物だ」

「何だか判りません! でも、妖精としか……」

「何な姿だったんだ?」

「とても綺麗な……女性です。綺麗な金髪で……身体中がキラキラ光ってました。あれは絶対妖精です! 古代の妖精だよ!」

 そんなフェルナンに、此の場の殆どが嘲笑を浴びせる。

「其れって御前、其処のエルディ嬢の事を想い出して居たとかじゃ成いのか?」

 其の時で在る。

「僕の金髪と、彼女の金髪、そして其の妖精の其れと、何れが美しかったのかな?」

 透き通る様な声が響いた。男が女か、一瞬判断が付き兼ねる程の美声で在る。

 長身で金髪の少年が、天幕に入って来たのだ。

 俺とシオンを除き、才人とルイズを始め皆が其の美少年に目が吸い寄せられた様子を見せる。

 が、直ぐに第二“竜騎士中隊”の面々は露骨に嫌な表情を浮かべた。

「御前の金髪って言って欲しいのか? “ロマリア”人」

「良い加減僕の名前を覚えて置いて呉れ。ジュリオ・チェーザレだ」

 名前からも判るが、男だ。

 ジュリオと名乗った美丈夫な“竜騎士”は、優雅な仕草でギンヌメールに一礼すると、報告した。

「第三“竜騎士中隊”、哨戒飛行拠り戻りました」

 ギンヌメールは微笑んで首肯いた。

「第一中隊に引き継いだか?」

「はい」

「では安め」

「畏まりました」

 騎士とは想い難い、柔らかい仕草でジュリオは一礼をする。

 其れから彼は、天幕の中をグルリと見渡した。

 才人は、以前、ワルドに逢った時と同じ様な生理的嫌悪感を覚えた。

 ジュリオは、兎に角まあ、驚く位の美形で在る。ギーシュも色男では在るのだが、格が違うと云えてしまう。まるで女か? と見紛うばかりの、細長い色気を含んだ唇、ピンと立って瞼に影を落として居る長い睫毛など……中性的で在りらも、確りと男性らしさも併せ持って居る。

 ジュリオは、子鹿の革の白い手袋に包まれた細い指で物憂気に髪を巻き乍ら、天幕の中を見回す。

 才人は、そんなジュリオの髪を掻き上げた其の仕草で、と或るモノを目撃し、驚く、

 ジュリオと名乗る其の少年、左眼はルイズの様な鳶色で在ったのだが……髪に隠れて居た右眼は透き通る様な碧眼で在るのだ。詰まり、左右の瞳の色が違う――オッドアイだ。

 光の加減かと想ったのだろう、才人はジッとジュリオを見詰め、ジュリオはそんな才人に対して微笑む。

「瞳の色が違うのが珍しいのかい?」

 才人は、「い、否……」、と思わず顔を赤らめ、(何だよ、相手男だぞ)、と自分に言い聞かせる。

「そん何見詰められたら照れるじゃ成いか」

 などと言いつつ、ジュリオの表情には照れた様子は何処にも見受けられ無い。見るとニヤニヤと微笑んで居るのだ。どう遣ら才人の反応を愉しんで居る様子だ。

「虹彩の異常らしくてね。君が噂の“使い魔”のサイトーン君だね?」

「才人だ」

 と名乗れば相手は大仰な身振りで、手を振って仰け反った後に、優雅に一例をした。

「すまない! 大変失礼をしたよ! 僕は“ロマリア”の神官、ジュリオ・チェーザレだ。以後御見知り置きを…そして、君が、セイヴァー君だね」

「ああ、そうだ。宜しく、ジュリオ・チェーザレ殿」

「ジュリオで構わ無いよ。人間が“使い魔”だ何て、珍しいからね。君達に1度逢いたいと想って居たんだよ……おや、貴女達は」

 ルイズとシオンに気付いた様子を見せ、ジュリオはクールな仮面を脱ぎ捨て、特大の笑みを浮かべた。大輪の花が咲いたかの様な、そんな無邪気さを感じさせる、そんな巣の笑みで在った。

「桃色のブロンドの髪、貴女がミス・ヴァリエール? そして、僕と同じ金髪の貴女がミス・エルディ? 噂通りだね! 何て美しい!」

 ルイズがポカンと口を開け、シオンは微笑む。

 そんな2人に対して、ジュリオは先ずは行き成りルイズの其の手を取って口吻をした。

 才人は、(手前、誰の手に口吻てんの? 悪いけど、其れ俺の。俺の、御主人様)、と云った風に震えた。が、(まあまあ。あのルイズが行き成り手に口吻されて、黙って居る訳が無いじゃ成いか。蹴りが飛び、終いには血が飛ぶに違い無い)。と自分を宥めるかの様に深呼吸をし、ワクワクした様子で見詰めて居る。

 が、当然何も起き無い。

 其の代わりに、「良け無い人ね」と、チラッと斜め前に視線を落として頬を染めた仕草が彩る、はにかみを含む言葉が、ルイズの口から飛んだ。

 才人は、ワルドの一件を想い出し、彼の額から冷や汗が流れた。何気にルイズが美形に弱い事を想い出し、才人は胃液を吐きそうに成ったのだ。

 そして、ジュリオは、次いでシオンの手の甲へと、口吻する。

「申し訳無い! 僕は“ロマリア”拠り新た成る美を発見しに参戦したのです! 貴女達の様に美しい方々に出逢う為に、僕は存在して居るのです! マーヴェラス!」

 そうして、ジュリオは、ギーシュに輪を掛けたかの様な気障な言い回しで、口を開く。

 ジュリオと、気障ったらしい言動を取られて怒ら無いルイズに腹が立って居るのだろう、才人の肩が震えて居るのが見える。

「神官が女性に触れて良いのか? 之だから“ロマリア”人って奴は……」

 才人の代わりに、アッシュが苦い顔を浮かべて言った。

 天幕に姿を現した時から判って居た事だが、どう遣らジュリオは、第二中隊の面々から余り好かれて居無い様だ。

「参戦為る為に、一時的な還俗の許可を“教皇”依り戴いて居てね」

「詭弁だな」

「方便と言って呉れ給え。坊さんと特権さ。でもまあ、君達の言う事も尤もだ。ミス、失礼をした。未だ僧籍に身を置く身故、女性に触れる事が赦されぬ身」

 ジュリオは戯けた調子で後ろに跳び退き、其れから悪戯っぽい微笑みを浮かべて、シオンとルイズに一礼をする。

「然し……神は此の地を遍く照らす偉大成る存在だが、偶に目を瞑ると言う慈悲深さも持ち合わせて居ります。再び御目に掛かれる、其の時を愉しみにして居ります」

 ジュリオの其れはとても気障ったらしいのだが……そんな仕草が板に付いて居ると云えるだろう。ギーシュもまた色男で気障では在るが、クネクネとして居り且つ間が抜けて居る。然し、ジュリオからはそう云った隙などは無いと想わせて来る。ワルドが何処と無く冷たさを感じさせるのに比べ、此のジュリオからは妙な人懐っこさが在った。

 才人は本能からか、(此奴、マジでモテる。其れも半端無しに)、と理解した様子を見せる。

 其れからジュリオは真顔に成った。

 其の変わり身の早さが出来る男だと云った感じで在り、之また才人は憎らしさを覚え、ハンカチを噛み締めたい気分に駆けさせる。

「話が逸れたね。君は、妖精を見たと言ったね?」

 フェルナンが首肯く。

「う、うん」

「君達が撃墜されたのは、何の辺りだい?」

 ジュリオはテーブルに広げられた“アルビオン大陸”の地図を指指して尋ねた。

 ルネが答えた。

「確か……“大陸”に入って1時間程飛んだ辺り……」

 ルネが、地図の一角を指指す。

 ジュリオは興味深そうな顔で首肯いた。

「ふむ、“サウスゴータ”の辺りだな」

「“サウスゴータ”……此処“アルビオン”の交通の要衝だね」

 ルネが示した場所、そしてジュリオの言葉に、シオンが反応した。

 其の時、ギンヌメールがコホンと、咳をした。

「暇成ら“竜”の世話でもして来い」

 ジュリオは両手を広げると、「“竜”の世話を為無くても良い君達が羨ましいよ」と、厭味を言い残して天幕を出て行った。

 “竜”を失ってしまって居る“第二中隊”の面々は、むきー! とジュリオの背中を憎々し気に見送った。

 

 

 

 

 

「あの気障野郎は誰何だ?」

 “竜騎士大隊本部”から出た直後、才人が尋ねると、ルネは露骨に顔を顰めて答えた。

「“ロマリア”から来た神官だよ。坊さんの癖に、“竜騎士”の真似事何かしくさって……いけ好か無い奴だ」

「“ロマリア”?」

 才人がキョトンとして、尋ねた。

「君は“ロマリア”を知ら無いのか?」

 驚いた顔で、才人は尋ね返されて仕舞う。才人は首を横に振った。此方の世界――“ハルケギニア”に人間では無い才人は、国や地方の事など何も知ら無いのだ。だからと云って、「異世界から来ました」、などと言ったら面倒な事に成るのは明白で在り、之迄使って来た言い訳を口にした。

「俺とセイヴァーは、其の、東方……“ロバ・アル・カリイエ”から遣って来たんだ」

「へえ!? あの“エルフ”共と年がら年中遣り合って居る土地から来たのか!」

 何時かは、否、誤魔化しの説明をする度に、「“エルフ”達の住まう地を通って遣って来たのか!」、と驚かれる。

 才人は、(どう遣ら此の世界では、“エルフ”と云うのは恐ろしい、好戦的な種族で在る様だ。其の上人間とかなり仲が悪いらしい)、と解釈し理解した。

「“ロマリア”ってのは、“ハルケギニア”の寺院を束ねる“宗教庁”が在る国だよ。まあ何だ、或る意味“貴族”以上に威張ってる神官達が沢山居る国さ」

「“ロマリア”の神官共と来たら、神に仕える身分だからって、調子に乗って遣がるんだ」

「神官も“魔法”を使えるの?」

 才人の質問に、まさか! と否定の声が飛ぶ。

「“貴族”の家に生まれて、出家した神官成ら其りゃ“メイジ”の血を引いてるから“魔法”が使えるけど……平民の出成ら、当然“魔法”は使え無い」

 そんな説明へと補足でも為るかの様に、「ジュリオは其の平民の出だよ」、と付け加えられる。

 此処“ハルケギニア”での“魔法”。其れを使用出来るのは、“貴族”の血を引く者だけで在るとされて居るが、厳密には違うだろう。元を辿れれば――。

「何でそんな奴が、“竜”何かに乗ってるんだ? 御負けに中隊長とか言ってたぞ」

「彼奴、平民の癖に“竜”に乗るのが異常に上手いんだ」

 才人の言葉に、誰かが悔しそうな口調で呟き、第二中隊の面々が首肯き乍ら、俺へと視線を向けて来る。

「“メイジ”でも無い癖に、“竜の声が聞こ得る”、とか言ってんだぜ。ホントかどうか知らんが」

「そんな訳でギンヌメール伯爵に気に入られ、第三中隊の隊長に収まり遣がったんだ。幾ら第三中隊が外人部隊だからって、破格の出世だよ! 神官が“騎士中隊”の隊長だ何て、“竜騎士隊”は他の隊の笑い者じゃ成いか!」

 そんな風に天幕から出た所で話し込んで居る俺達は、“杖”を持った将校に追い立てられる羽目に合った。

「こらこら! こんな所で集まって話し込むな! 邪魔だ! 邪魔!」

 俺達は顔を見合わせた。

「ミス・ヴァリエールの天幕に戻ろう。今じゃ、彼処が僕達の巣と言う訳さ」

 其処でルイズの事を想い出したのだろう、才人は彼女の方へと振り向く。

 ルイズは1人突っ立って、何と無く、ぼや~~~っと、夢見がちな様子を見せて居り、シオンがルイズの顔の直ぐ前で手を振り、様子を窺って居る。

 才人は、(何でルイズ、あんな顔してんの?)、と不審に想った。其処で想い出す。(う!? 若しかして、あのジュリオか? ハンサム“竜騎士”か? 否神官何だから“竜神官”? ええい、呼び方何かどうでも良い! 兎に角先何か、顔を赤らめ遣がって……)、とメラメラと嫉妬し始めた。(手に接吻された位で、あんな顔し遣がって! 何てぇ女だ。浮気者! 浮気者!)、と別に未だ恋人でも無いのに、才人は心の中で悪態を吐く。(“何が良け無い人ね”だ。ちょっと褒められた位であんな顔し遣がって! 俺何か、好きって告白したじゃ成えかよ。差が付いてんなぁ……どうしてだろ?)、と才人が想った瞬間……頭の中で閃くモノが有った事に気付く。

 為ると先程、ルネ達と宴会して居る時に脳裏を過った(ルイズと自分は今、どう言う関係何だろう?)、と云う疑問が、才人の中で解決してしまった。

 以前ルイズの実感で、「好き」と告白したのだが、才人はルイズから「忠誠の表れね」と解釈され、そう言われたのだ。(其れって……考えてみ? 否もう戦争が始まって慌ただしくって、皆死んだと想ってて哀しくて考える余裕も無かったが……良く良く考えてみ? 其れって、若しかして振られてんじゃ成えのか? 何か自分に都合良く“一種の受け入れ”とか想ってたけど……良く良く考えてみ? 受け入れられて無えよ其れ。“忠誠の表れ”って何だよ? 意味理解ん無えよ。詰まり……振られたんだ俺)、と頭をハンマーで殴られたかの様な感覚を、才人は覚えた。

 そして、才人は、ガクッ! と膝を突き、首を横に振った。

 そんな才人を見て、ルネがオロオロとし始めた。

「お、おい……サイト?」

 然しこう成ってしまった才人にはもう他人の言葉は、自身の世界に入り込んで仕舞って居るが為に暫くの間届か無い。

 才人の頭の中で、絶望の次に浮かんで来たのは怒りで在った。可愛さ余って難さ百倍のあれで在る。(嗚呼、御前が行きたい言うから戦争迄参加して遣ってんのに、此の女俺を振った。あんだけ助けたり何だり、兎に角命懸けで頑張ったのに振った。フ、フ、振り遣がった。キシャウ! フフフフフフ、振り遣がった!)、などと考え、ゴゴゴゴゴゴゴゴ、とルイズに対する怒りが激しく渦巻いた。其れはもう火山から噴出する溶岩流の様に、男のセンチメンタルが逆流をするのだ。

 才人の頭の中で、平賀私立裁判成るモノが開廷され、(被告、女王直属女官、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。裁判長、俺。はんけーつ、有罪! ギルティ! 情状酌量の余地無―し! 裁判長の言葉。普通男が此処迄したら、御世辞でも“私も好きだよ。じゃあ友達から始めよっ”位言うのが社会のルールで在ります)、と2秒で判決が下される。

 才人は、(そ! れ! が! “忠誠の表れね”って何? “一箇所だけ好きなとこ触って良いわよ”って何? 其れってまるで御主人様に御手を許されたワン公じゃ成えか。俺犬か? 犬じゃ成えか? あ、犬か。でも未だ犬言うか? もう犬は流石に良いんじゃ無いのか?)、と考え始め、次に此の前の天幕の中でのルイズの格好を想い出す。(ルネ達が死んだと想って哀しくて、鈍よりしてて気に留める余地さえ無かったが、素肌にマント1枚だったですよ。こ、此の女は馬鹿にしてからに、振られた男が何な気持ちが判らんのか? あったま来た。平賀裁判長は男と女のラブゲーム法第3条に基づき、被告に以下を求刑為る。求刑、無視。もう喋ん無い)、と考え、ルイズを無視して歩き出して仕舞った。

 何処迄行っても、やはり似た者同士で在る。

 

 

 

 さて、“竜騎士大隊本部”の天幕を出てからも、何と無く先程の話の美少年――ジュリオの事が気に成って、心此処に有らずの状態のルイズで在った。

 何と無く、ルイズは其れ等が気に成って居るので在る。

 ジュリオを見て居ると、ルイズは自身の中で妙な胸騒ぎが起きるのを感じるのだった。(ハッと為る程の美少年だから?)、と考える。其れも在るだろう。ルイズは年頃の女の子で在り、其れはもう美少年は嫌いでは無い。だが、其れだけで恋人を選ぶ程、単純でも無い。だが、取り敢えず彼女の心の中には1人の少年が住んで居る、本人の談ではかも知れ無いので、取り敢えず“顔が良い”だけの理由で他の男の子が住み始めて仕舞う事は先ず在り得無いので在った。住人が、大家を徹底的に怒らせる何かをした場合は其の限りでは無いのだが。

 ルイズは其の胸騒ぎが、本能の部分が訴え掛けて来て居る何かで在る事を悟った。

 そして、そんな本能の胸騒ぎはもう1つ。第二“竜騎士中隊”の1人で在るフェルナンが目撃したと云う妖精の事で在る。夢と笑い飛ばして仕舞う事は簡単な事で在るのだが……彼等は現実に1週間分の記憶を失って居るのだった。「生きて帰って来たのだから理由など良いじゃ成いか」、と殆どが余り気にして居無い様子を見せる中、ルイズには其れが不満だったのだ。(之だからガサツな軍人って嫌ぁね)、などと想うのだが、一々細かい事を気にして居ては戦場では生き残れ無いのもまた事実。

 そんな胸騒ぎの正体についてを考えて居る内に……ルイズは我に返った。

 才人が、ルイズを無視して歩き去ろうとして居る事に気付いた。

 才人は、“竜騎士”の少年達と、態とらしい位に笑い転げて、ルイズを放ったらかしにしてまた酒を呑む相談などをして居る。

 ルイズは、(私を放っと居て笑い話? また酒盛りの相談? 何よ何よ。良い加減に為成さいよ)、と想い、「ねえ待ち為さいよ」、と声を掛ける。

 のだが、才人は振り向か無い。

 ルイズは、(聞こ得無いの?)、と想って、今度は怒鳴った。

「サイト! 待ち為さい! ちゃんとあんた御主人様を天幕迄エスコートし為きゃ駄目でしょお~~~~~!」

 だが、其れでも無視されて仕舞う。

 ルイズは、(へ? 何で!? 何でよ!?)、と困惑する。

 才人は振り向く事さえし無いのだ。距離は其れ程離れて居無い、聞こ得て居るにも関わらずだ。

 ルイズの中に、沸々と才人に対する怒りが湧き上がる。気に成る相手(ルイズ自身は今現在絶対に認め無いが)の其の様な行動に、桃色のブロンド少女は簡単に癇癪を起こし、爆発して仕舞う。

 そんなルイズを、気が短い、などと責めては行け無いだろう。人間恋をすると、些細な事で喜んだり、傷付いたり、怒ったり、悲しんだり為る存在で在るのだから。

 ルイズは自分の恋心を認め無い為、自然矛先は100%才人の人格に向けられて仕舞う。(こんな風に私を怒らせる彼奴最低)、と云う具合に、だ。

 ルイズは、(ねえ!? こないだ私何れだけあんたの事心配して上げたと想ってんのぉ~~~~!? 其れ成のに無視する訳ぇ~~~~~~~!? あんた“好き”って言った癖に無視とか為る訳ぇ~~~~~!?)、と拳を握り締めて、小石を蹴飛ばし、地団駄を踏むのだった。

 

 

 

 ジタバタと暴れて居るルイズに気付いたルネが、才人に耳打ちをした。

「彼女は、君の主人何だろう? 何か怒って成いか? 放ったらかしで良いのかい?」

 才人はルイズの方を見、(“使い魔”に無視されて癇癪か。理解り易い奴め。どうせ此方は“使い魔”ですよ。はいはい。ああそうだよな、何せ“貴族”様だから“使い魔”には恋出来無えよな)、と泣きそうに成り乍らそう考え、想った。

 才人は、「フラレマシター!」と絶叫して、男泣きして、ルネ達に慰めて貰いたい気持ちに駆られる。が、涙を堪えた。(ルイズは何、子供成ので在る。我儘“貴族”っ娘成ので在る。優しく為成くては行け成い)、と想い、拳を握って、グッと夜空を見上げた。

 2つの月面が怪しく輝いて……夢の様に想わせる。

 才人は、(嗚呼、御月さん御星様、俺の此の醜い嫉妬を洗って呉れ。そう俺は男じゃ成えか。振られたからって、怒りに任せて無視とか……やっぱり良く無え)、と其処迄考え、引き攣った笑みを浮かべた。(俺は男男オトコ)、と自分に言い聞かせてプルプルと震え乍ら。思いっ切り冷や汗を垂らし乍ら。で以て随分と譲歩した積りで、「……ほら、ルイズ行くぞ」、と声を掛けた。

 為ると、ルイズは外方を向いた。

「御送りさせて下さい、でしょお」

 ルイズは腕を組んで頬を膨らませ、横などを向いて居るのだ。

 才人は、(な、何だ此奴!? 最低だ。振った男に此処迄冷たく為る何て、何てぇ、女だ)、と想って仕舞う。

 普段で在れば、ルイズの此の位の態度に対して、才人は少し不満を示すだけで済むのだが。唯……今回は才人の中に、ルイズに対する違和感などが有った。(ルイズはこん何頑張ってる俺をどう想ってるんだろうか?)、などと云う疑問や違和感だ。だからこそ、澄ましたルイズの態度に対して、過剰に反応して仕舞う。

 才人はクルリと振り向いて、スタスタと歩き始めた。

「させて下さい? 巫山戯んな。一生其処に居ろ」

 シオンとルネ達は心配そうに才人とルイズを見て居たが……ルネ達は結局才人を追い掛けた。

 

 

 

 後に残されたルイズは、怒りに身を震わせた。

 才人達が去って行った方向に向かって大声で怒鳴る。

「何で放っとくのよ!? 迎えに来為さい!」

 そして暫く俺達は待つのだが、然し……戻って来無い。

 ルイズは、(な、なな、何て自分勝手や奴何だろう)、と心底頭に来た様子を見せる。そして、(今の私、戦場で不安成のに……手柄を上げ為きゃ行け成いのに……あんたってば協力する気有るの?)、と其の身体で表現をする。

 才人の方は、全くそんな事には気が回ら無いで居る様子で在った。

 ジワッ、とルイズの目に涙が浮かんだ。(こ、こないだ何か、欲望に任せて奪おうとしたわ。別に、まあ、其れは良いの。良く無いけど、良いの。赦して上げるの。男の子はそう云う事が好き何だから仕方無いの。私は好きじゃ無いけど、ほんとに好きじゃ無いけど、ああ、ちょっと成ら)、と考え、そしてブルンブルンとルイズは首を横に勢い良く振った。(好奇心って嫌ぁね。駄目。やっぱり駄目。正直言うと、まあ、“好き”って言うん成ら仕方ないか、とか想いました。でもねえ、何が“好き”よ? 嘘ばっかりじゃ成い。好きだったら、どうしてそんな風に冷たく為るの? 意味が理解ん無い。おまけに、メイドにも手を出してるじゃ成い。絶対他の娘にも同じ事言ってるわ。馬鹿。きっとメイドだけじゃ無いのよ! ふんだ! 良く其れで私に“好き”だ何て言えたわね。赦せ無い。嘘吐き。嫌い。嫌いよ)、と想い、「もう良い」、と小さく呟いて、唇を噛んだ。

 

 

 

 

 

 才人とルイズの心がまたもや擦れ違い、ルイズの天幕の中で皆が寝る中、俺は天幕の外に居た。

 隣には、未だ寝て居無いシオンも立って居る。

「セイヴァー……あの、ジュリオって言う人の事だけど」

「ああ、御前も気にして居たのか」

 大隊本部の天幕内に入って来た“ロマリア”の神官且つ第三“竜騎士中隊”隊長、ジュリオ・チェーザレ。

 彼の事を、ルイズ同様にシオンもまた気に成って居たのだ。

 だが、其の、気に成る、と云う意味合いは違うのだが。

「そうだな。彼も“虚無の使い魔”、“ヴィンダールヴ”……そして、“サーヴァント”、“クラス”は“ライダー”だ」

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