ゼロの使い魔S   作:りおんざーど

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スレイプニィルの舞踏会

 “トリスタニア”上空3,000“メイル”……1騎の“竜騎士”が夜間哨戒飛行を行っていた。

 戦時ではないとはいえ、常に1騎か2騎かの“竜騎士”は空に上がっているのだ。空賊や、空を飛ぶ“幻獣”が、いつなんどき首都を襲わぬとも限らないのだから。

 この日、空に上がって居たのは、今や“英雄”と謳われて居る少年と青年と嘗て共に戦った、“首都警護竜騎士連隊第一部隊”所属のルネで在った。

 “アルビオン”で失ってしまった“竜”に変わり、新しく白鱗の“風竜”を手に入れたルネはユックリと“トリスタニア”の上空を旋回して居た。

 寒そうに、ルネは革コートのボアの着いた襟の中に顔を埋める。

「空は凍えるぜ……ったく、戦争は終わったっていうのに、“竜騎士隊”の人使いの荒さと来たら相変わらずだよ! 近衛の副隊長に収まったあのサイトや“アルビオン”の客将になったセイヴァーとはえらい違いだな! まぁ、110,000を止めたって話だから、其の出世とかも致し方ない、かぁ……」

 新しく相棒と成った“竜”が、そんなルネのボヤキに応えるかの様に、きゅい、と鳴いた。

「リュストー、別に御前の所為じゃないよ。“竜騎士”は空を飛ぶのが仕事だからね」

 優しくリュストーの頭を、ルネは撫でてやる。

 すると、リュストーは嬉しそうに目を細めるのだった。

 然し次の瞬間……リュストーは目を大きく見開く。僅かな光をも見逃すまいと、その瞳孔が猫の様に開いたので在る。

「どうした? リュストー」

 ワルルルルルルル……。

 低い唸り声が、“ウィンドドラゴン”の口から漏れる。

 その目の先を、ルネは追う。

 夜目の利く“竜”とは違い、ヒトで在るルネの目は、其処に在るモノを中々発見する事が出来なかった。

「何だ? あれは……」

 月明かりに照らされた、雲の隙間に其れは在った。

 巨大な1枚の羽……其の全幅は有に100“メイル”以上は在るだろう事が一目で判る。

 そんなモノが、ユッタリと空を飛んで居るので在る。而も……シュンシュンシュンシュンシュン……と聞いた事の無い妙な音を立てているのだ。

 ルネはゴクリと唾を呑み込んだ。

 巨大な悪魔が翼を広げて居るかの様な、そんなシエルエットに対し、ルネは恐怖を覚えた。

「伝説の悪魔が蘇った訳じゃないだろうな……おい、リュストー、もっと近寄って呉れ」

 然し、リュストーは命令に従わ無い。それどころか、踵を返そうとする始末で在る。

「おいリュストー!? どうした!? 彼奴が何者なのか突き止めるんだ!」

 ルネが必死な様子で叱咤をしたのだが、きゅい、と一声鳴くと、リュストーは降下して対象から離れて行ってしまう。

 未だ幼いリュストーは、どうやら巨大なそれに怯えてしまったのである。

「“アルビオン”で死んじまったヴィルガンが懐かしいぜ! 彼奴なら怯えずに、命令しなくても突っ込んで呉れただろうさ!」

 ルネは悔し気にそう叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の午後……場所は変わって“トリステイン魔法学院”。

「“スレイプニィルの舞踏会”?」

 昼食の席で、才人は眼の前に腰掛けたマリコルヌに尋ねた。

 才人は最近、ルイズの隣ではなく、こうやって“水精霊騎士隊(オンディーヌ)”所属の連中と固まって食事を摂る事が多くなったのだ。

「そうだよ、今度、新学期が始まるだろ? まあ君は知らんかもしれないが」

 新学期と言われても、才人はピンと来なかった。未だ、此方の月の感覚に慣れて居ないためである。然し、何となくではあるのだが、最近はポカポカとして来たために、(春なんじゃないか)という気が薄ぼんやりとはしていた。

 先立って何か式が在って、沢山の“貴族”の子弟が入って来たという事を、才人は想い出す。

 何時の間にやら、3年生の姿は見えず、彼等は卒業して、入れ替わりに新入生が入って来たのであった。

 才人は、(成る程。あれは入学式だったか!)、と膝を打つ。

「新学期で、どうして舞踏会何なんかやるんだよ?」

 隣に座ったギーシュが、才人に説明をした。

「そりゃ、歓迎に決まってるじゃないか。新しく入って来た“貴族”の少女達は、社交界が初めてと云う娘も少なくない。そんな娘達に、僕が手取り足取り、大人の社交を教えるのさ! 嗚呼大人の社交! あ、少年もいるけどね」

 要は新入生歓迎会という事になるだろう。

 ふーん、と首肯き乍ら、才人は焼いた肉を頬張った。

 今更ではあるのだが、よく見ると、皆食器の使い方がそれ程上品ではないといえるだろう。ガッチャガッチャと皿とフォークを当てて派手な音を立ており、ズズズと音を立ててスープを呑み込み、平気で零してしまって居るのだ。

 ルイズを始めとした女の子達はそれなりに大人し目な食べ方をしているのだが。ギーシュ達少年の食べ方は酷いといえるだろう。

『何だ、そんなに気になるのか?』

『まあ、そうだな。あんだけ煩いマナーって、きっと俺等の世界でも最近出来たんだろーなー』

『其りゃそうさ。マナーを始め、今日に至るまでの作法とかは、先人が培って来たモノだからな』

「でだな、ただの舞踏会じゃないんだよ!」

 念話で会話をして居ると、ギーシュがワインをガバッと呑み干して、捲し立てる。

 マリコルヌもグイグイと呑んでいる。

 兎に角昼であろうとも、彼等は呑み捲くるのである。

 才人は、此の世界の“貴族”にしては行儀良い方で、炭酸水にレモンを絞ったモノを呑んで居る。

 俺はというと、“バビロニアの宝物庫”にあった酒を失敬し、呑んでいるのだが。

 ギーシュやマリコルヌを始めとした彼等は「“貴族”、“貴族”」と言う割には下品だといえ、才人は(自分はせめて上品に行こう)と妙な決心をした様子を見せる。

「何処がどう、ただの、じゃないんだよ?」

「仮装するのさ」

 得意気にギーシュが言った。

「仮装? そんなの別に普通だろ。何処が凄いんだよ?」

 才人がそう言うと、マリコルヌがフフンと小馬鹿にした笑みを浮かべた。

 然し次の瞬間……後ろの席の会話が才人の耳に入って来た。

「知ってるかい? 最近、“トリスタニア”の上空に現れた怪鳥の話」

「ああ。“竜騎士隊”に務める兄貴も噂してたが……ホントなのか?」

 会話を交わして居るのは、同じクラスの少年2人で在る。

 才人はそちらに耳を欹てた。

 そんな才人に気付か無い様子で、マリコルヌが説明を続ける。

「良いかい? “魔法学院”の仮装舞踏会が、ただの仮装をする訳ないじゃないか。“魔法”を使って仮装するんだよ。“真実の鏡”を使ってね。其の人が1番憧れている者……なってみたいモノに化ける事が出来るんだ」

 次にギーシュが得意気に言い放つ。

「理想の自分って言うのかね。まぁ、僕は自分が理想だけどな! 何てったって、僕は世界一美しいからな! あっはっは! 嗚呼! 何人僕の姿になるんだろう!? 嗚呼! ああああ! あ!」

 嗚呼、と喚き乍ら、ギーシュは自分をギュッと抱き締める。

 然しもう、才人はマリコルヌとギーシュの御喋りを聞いていない。すっかり後ろの席の会話に夢中になってしまっていた。

「……何でも、幅は500“メイル”はあったって言うぜ」

「“フネ”じゃないのか?」

「そんな形の“フネ”があるもんか」

「だとしたら“竜”さ。でっかい奴。伝説の巨大竜だよ」

「いや、“竜”類とは羽の形が全く違ったそうだ。どっちかと言うと鳥の様な形をしてたって……羽を広げた怪物の様だって。そんな話だよ」

 才人はつい席を立ってしまい、話に聞き入った。

「その話、詳しく聴かせて呉れないか?」

 彼等は、最近宮中で噂になって居るその話を、才人へと話した。

 “竜騎士”が夜間飛行中に、巨大な影を見た事。

 奇妙な音を立てて居た、などなど……。

「結局、それって何だったんだ?」

「判らない。その“竜騎士”の“竜”が怯えたとかで……いや、怯えたのは“竜騎士”本人かも知れんが……近付いて観察する前に逃げ出してしまったそうだ。報告を受けた一個“竜騎士”中隊が空に昇がった時には、もう霞の様に“トリスタニア”上空からは消えていたらしい」

「何だそりゃ」

「なぁ……雲か何かを、見間違えたんじゃないかって言われてるけどな」

「ふーん……」

 才人は何だか胸騒ぎを感じた。そして、此の前の“ミョズニトニルン”で在り“キャスター”である女性の事を想い出す。

 “汎ゆる魔道具を操れる”、才人と同じ“虚無の使い魔”……“魔術師”の“サーヴァント”。

 “竜”でも“フネ”でもないとするのであれば……それは何か、“魔道具”の一種か、それとも“宝具”で在る可能性が在るのだ。

 詳しい姿を見た者はいない様だという事もあり、何とも言えないだろうが……兎に角油断は出来る筈もない。

 “アルビオン”で出会った、敵意を抱いて居る連中は、フーケやワルドや“レコン・キスタ”などとは違って、才人達にとってどうにも正体が掴めない。特定の国なのか、何かの集団なのか……それすらも判らない、不気味な連中といえるのだから。

 アンリエッタは「調査する」とは言ったのだが……新たな情報は得られていないのだろう、今の所何も言って来ないので在る。

 才人は頭を捻り乍ら席の戻った。

 マリコルヌがそんな才人を見咎め、不満そうに言った。

「おい、人の話はちゃんと聴けよ! 途中で席を立つなんて失礼極まりない!」

「んあ? ああ、御免。で、仮装がどうしたって?」

「もう良い!」

「御免御免。そう怒るなよ。御前達も気にならないか? “トリスタニア”の上空に現れた謎の巨大な影!」

「見間違いじゃないのかね。夜の哨戒飛行なんて、誤認の連続だよ。裸の御姫様が飛んでた、何て情報なら、僕達が調査に乗り出しても良いが」

 ギーシュが小馬鹿にした調子で言った。

 そんな御喋りを続けていると、眼鏡を掛けた1人の少年が口を開いた。

「なあ君達。舞踏会も謎の影も良いが、もっと騎士隊の事を考えて呉れよ」

 才人はギーシュの横に腰掛け、其の少年を見詰めた。

 其の少年は、レイナールという名前の、隣のクラスの男子だ。“アルビオン戦役”では、輜重隊を指揮していたらしい。退却時の混乱にめげる事無く、部隊を纏め上げたなどといった事から、表彰されて居た。

「僕達が宮中で何と呼ばれて居るか知ってるかい? 学生の騎士ごっこだぜ? 陛下の酔狂ぶりにも困ったモノだって噂になってるようだ。宮中に務める僕の伯父君がそんな噂を聞いて来たらしい」

 其の場の全員が、ムッとした表情を浮かべた。

「何、僕達は其れ成りの武勲を上げたかも知れんが、近衛隊と言うのはやはり破格の出世に違いないよ。昔の偉大なる武人達と比べられて、子供の御遊びなんて言われてしまうのは仕方無い。でも、僕達は其れに甘んじる謂われもない。だからこそギーシュ、サイト、君達にはもっと真面目に考えて欲しいのさ」

 ギーシュと才人は、うむむ、と顔を見合わせた。

「君の考えは正しいかも知れんが、で、どうすりゃ良いんだ?」

「もっと陣容を強力にしたい。今の所、シュヴァリエはサイトだけじゃ成いか」

「と言ってもシュヴァリエなんて中々貰える称号じゃないし……」

 ギーシュがそう言うと、レイナールはニッコリと笑った。

「1人知ってるぜ」

 

 

 

 昼休み、一同が遣って来たのは図書館で在った。

 殆ど人の居無い図書館の端っこの方に、其の少女は居た。

 小柄な身体を屈め、一生懸命に本を読んで居る。

 青髪の少女、タバサで在った。

「あれ? 何時の間に帰って来たんだ?」

 ギーシュが呟く。

 彼女は、キュルケと一緒に“ゲルマニア”に向かった筈で在るのだが。

「2~3日前に帰って来たみたいだよ」

「影が薄いからな。うむむ……」

 ギーシュが悩んだように言った。

「しっかし、彼女を僕達の仲間に入れるのか? 女の子じゃないか」

「でも、確か彼女はシュヴァリエだぜ。此の際、性別に構ってられないだろう。“水精霊騎士隊(オンディーヌ)”の入隊条件は“魔法学院”の生徒に限る。其れだけだぜ。女性が駄目だって決まりが在る訳じゃない」

「別に公式文書に成ってる訳じゃないぞ。偶々そうなっただけだ。女の子が誰も入りたがらなかったから……」

 とギーシュが言う。

 才人も、「俺は生徒じゃないんだけど」、と言った。

「良いじゃないか。だったら“魔法学院”で暮らす者と変えても宜しい。今決めた。そう決めた。僕が決めた」

 レイナールは傲慢に言い放った。大人しそうな顔などに似合わず、結構強引な性格をしているのだ。

 どうやら彼は騎士隊の実務を担う積りで在るのか、隊長と副隊長を説得にかかる。

「良いかい? 君達はどうにも経営とか評判とかに興味がないみたいだがね、騎士隊存続には、何より此の2つが不可欠だ。僕なりに騎士隊が宮廷で馬鹿にされないよう、考えている積りなんだ。代案が有るなら聴かせて欲しい」

 そう言われては、才人とギーシュはぐうの音も出ないだろう。

「じゃ、勧誘して来る」

 レイナールが歩き出したので、才人がそれを止めた。

「待てよ」

「何だよ!? 文句が有るってのか!?」

「無いよ。一応、俺とギーシュで行くよ。なぁギーシュ」

「うん? あ、ああ」

 ギーシュを連れて、本を読むタバサの隣に、才人は座った。

「よ、よぉ……」

 此の青髪の少女が、才人は少しばかり苦手で在った。何せ、彼女と来たら余り喋ら無い、反応も余り返さない、まさに暖簾に腕押しといった風情成ので在るから。

 才人が隣に腰掛けても、タバサは視線を少し動かすだけであり、直ぐに本へと戻り、無反応といっても良いだろう様子を見せる。

「御前、キュルケと一緒に“ゲルマニア”へ行ってたんだってな。そういや、その、コルベール先生の遺体と一緒に……あれからどうなったんだ?」

 タバサは答え無い。

「キュルケは未だ、あっちにいるのか?」

 其処でタバサは首肯いた。然し、どうにも話す積りはない様子だ。

「そうか……何時になったら帰って来るんだ?」

「判らない」

 兎に角余り話したくない事情が有る様子を見せるタバサ。

 才人は、其れ以上訊くのを諦めた。

「そんな事より、君に頼みが有るんだ」

 ギーシュが2人の会話に割って入る。

「是非共、僕達の騎士隊に入って呉れないかね?」

「…………」

 タバサは全く本から顔を動かそうとしない。

「えっとだな……俺達、実は騎士隊を作ったんだけどさ。御前の力を借りたいんだ」

 次いで才人がそう言ったのだが、やはりタバサは無反応といった様子。

「君はシュヴァリエ何だろ? 是非共その力を、僕達“水精霊騎士隊(オンディーヌ)”のために使って呉れないかね?」

「私は“ガリア”人」

 其れが答えと言わんばかりで在る。

「“ガリア”人だって問題あるもんか。何なら客員騎士という身分だって構わない」

 何時の間にか後ろに立って居たレイナールが、そう言った。

「年金の額を増やすよう交渉してみるし……」

 タバサは首を横に振った。額に掛かる青髪が揺れる。

 才人は、いつか“アルビオン”で見た夢を想い出した。あの時、此の冷たい横顔に胸を高鳴らせた事を想い出し、少し照れた様子を見せる。

 タバサも相当な美少女で在る。唯……冷たい空気が幾重にもタバサの表情を覆い、そういった美点に気付かせ難くしているのだ。

 其の顔を見て居ると……才人は、(何か出来る事はないだろうか?)となどと想った。

 才人は真面目な声で、タバサに言った。

「俺、御前と同じシュバリエになったんだよ」

「シュヴァリエ?」

 タバサは其処で初めて顔を上げた。

「ああ。そんでさ、何か人の役に立ちたいって。そんな風に想うんだよね。ただの平民より、シュバリエみたいに肩書着いてる方が何か出来るかもしれない。上手く出来るかどうか、そんな事判らないけど、でも今、俺、それに一生懸命何だ。御前、強いだろ? 何つうの? その……」

 恥ずかしそうに才人は言った。

「その力を、社会のために役立ててみませんかって。そういう」

 するとタバサは本を閉じて立ち上がった。

「おお、やって呉れるのかい?」

 ギーシュが歓喜の声を上げた。

 然し……。

「騎士ごっこに興味はない」

 短く言い残し、タバサは歩き去った。

「ぐぬぬぬ、何だねあのちびっ娘は! こっちが下手に出れば調子に乗りやがって!」

 ギーシュが悔しそうに地団駄を踏んだ。

「ま、しょうが無えだろ。あいつだって何かと用事が有るんだろ」

 と、才人が熱り立つギーシュを諌めた。

 

 

 

 タバサは自分の部屋に帰って来ると、ベッドの上に1羽の鴉がいる事に気付いた。

 “ガリア王家”からの密書を運んで来た、伝書鴉だろう。

 届ける鳥は決まっておらず、梟の時も在れば、鳩の場合も在る。

 然し今日の鴉は、密書を持っていない。

 タバサが首を傾げると、ボンッ! と音がして、左右に割れた。

 よく見ると……それは精巧に出来た鴉の模型で在ったのだ。恐らくは“魔法人形(ガーゴイル)”の一種なのであろう。

 左右に割れた鴉の模型の内部には空洞が在り、其処に手紙が入っていた。

 タバサは其れを取り上げ、目を通す。

 タバサの眉間が僅かに寄った。

 其の夜……“ウィンドドラゴン”(化)で在るシルフィードに乗ってタバサが訪れたのは、“ガリア王国”ではなく、“トリスタニア”で在った。

 ポツポツと灯りが灯る街の上空で、タバサはシルフィードから飛び降りる。“呪文”を唱え、“レピテーション”で身体を浮かせ、ユックリと降り立つ。

 其処は、いかがわしい酒場や賭博場が並ぶ“チクトンネ街”で在った。

 通り行く酔っ払いや派手な夜の女達は、空から落りて来たタバサを見て、一瞬怯みはしたが……年端もいかぬ子供と気付き、苦笑を浮かべた。(“貴族”とは言え、相手は子供だ)と云った風に、気が大きくなっている酔っ払いの口からは、誂いの言葉が飛び出た。

「どうしたい嬢ちゃん? 此処いらは子供が歩く場所じゃねえぜ?」

「おやおや! 迷子になったのかい? 父上の所に連れてったら、礼金を弾んで呉れるかい?」

 タバサは頬に当たる微風であるかの様に、そう云った誂いの言葉を無視して、指定された酒場へと向かう。

 其処は“チクトンネ街”でも、割と上品な造りをしている酒場で在った。“貴族”や、騎士風の出で立ちをした者も多い。

 カウンターに座ると、店の主人が胡散臭そうにタバサを見詰めた。

「“貴族”の娘さんが来る御店じゃありませんよ。御屋敷では今頃大騒ぎでしょう。御帰りになった方が宜しいですぜ」

 それでもタバサは動か無い。

 首を横に振ると、主人はタバサに顔を近付けた。

「ねえ御嬢さん。どんだけ“魔法”が出来るか知らねえが、この店にはよからぬ事を企む連中だって来るんだ。面倒事に巻き込まれねえ内に……」

 そう店主が脅した時、深いフードを冠った女性がタバサの隣に腰掛けた。

「遅れて御免なさい。ああ、連れですの」

 台詞の後ろ半分は、主人に向けたモノで在った。

 女の雰囲気に、首を突っ込まねえ方が良いな、と勘付いた主人は奥へと引っ込んだ。

 深いローブの女はタバサに目配せをした。

「始めまして。“北花壇騎士”タバサ殿」

 タバサは軽く首肯いた後、口を開いた。

「どうして?」

 “どうしてガリアでは無く、トリステインで任務を授けるのだ?”、と、そういう疑問であった。

「この国が、今度の任務の舞台だからよ」

「…………」

 女は冠ったフードをズラした。

 切れ長の目、サラサラした黒髪の間には、“ルーン文字”が踊って居る。

 “神の頭脳”こと、“ミョズニトニルン”。そして、此度の“聖杯戦争”にて“キャスター”の“クラス”の力を授かった女性で在る。

「貴女と私の主人はね、こういう風に考えているの。“世界に4匹しかいない竜同士を戦わせてみたいんだけど……どうして良いのか判らない。で、竜を捕まえる事にした”って訳」

「…………」

「“竜”には、強力な護衛がついている。だから、貴女に其の護衛を退治して欲しいのよ。その隙に、私が“竜”を盗むって訳」

「護衛を退治?」

「貴女もよく知って居る人物よ」

 “ミョズニトニルン”は、タバサに1枚の紙を見せた。

 其処に書かれた名前と似顔絵を見て、タバサの目が見開かれた。

「この任務を成功させたら……大きな報酬があるわ。貴女の母親……毒を呷って心を病んだのよね。その、心を取り戻せる薬よ」

 タバサは唇を噛んで震えた。それから“ミョズニトニルン”へと視線を移す。その目には、明らかな敵意が含まれている事が判る。

「あら? 天下の“北花壇騎士”様が、知り合いだからって私情を挟むの? 理解ってるの? 貴女、自分の母親の心を取り戻せるチャンスなのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 其れから1週間後の“虚無の曜日”。

 愈々本日は“スレイプニィルの舞踏会”で在る。

 本来なら休みの日である今日、“魔法学院”の生徒達は朝からソワソワとしていた。朝食の席でも、「御前は一体誰に成るんだ?」、「当ててみろよ!」、などといったそんな会話が彼方此方で交わされて居た。

 ギーシュは足を組み、得意げに言った。

「僕は何に化けようかな! でも、華麗な僕は、其の儘侭姿が1番だと想うんだ。とう想う? サイト」

「はいはい」

 ギーシュの自惚れを、才人は聞き流す。

 俺と才人の眼の前ではマリコルヌが自分の身体を抱き締め、「どうしよう。此の侭じゃ僕、美少女に化けちゃいそうだよ」と言ってのける。

「化ければ良いじゃねえか」

「嗚呼どうしよう。それって一種の犯罪じゃないのかい?」

「一種の犯罪どころか、死刑だと想うよ」

「嗚呼……あ、死刑だ何てそんな……嗚呼」

 マリコルヌは身を抱き締めて震える。

 このの小太りの少年が、美少女の格好とやらをした姿を其の侭素直に想像したのだろう、才人は朝食を吐き出しそうになった様子を見せる。

 “魔法”で化けるという事を聞いて居らず、知らない才人は、(然し……仮装位でそんなに盛り上がるなんて、こいつらは平和だな。ちょっと変装したくらいで、そんなに変われる訳ないじゃないか)と感想を抱いた。

 少し考えれば、“魔法学院”の仮装舞踏会がなのだから、ただの仮装では無いと云う事が判りそうなモノでは在るのだが……舞踏会には殆ど興味が無い才人は、其処まで考えが巡らなかったので在る。

 

 

 

 才人が朝食を終えて部屋に帰ると、シエスタが掃除をしていた。

「御帰りなさい。サイトさん」

「うん。只今」

 シエスタはニコニコと楽しそうに掃除をしている。

「今日は“スレイプニィルの舞踏会”ですね」

 才人が「シエスタも行くの?」と尋ねると、シエスタは恥ずかしそうに首肯いた。

「はい……給仕の手が足りないので……」

「そっか」

 才人が(俺はどうするかな? やっぱり行くか?)と考えて居ると、シエスタが才人の眼を覗き込んだ。

「あのっ!」

「は、はい」

「私、最近こういう本を読みまして」

 スッとシエスタは、1冊の本を差し出した。

「何これ?」

 才人は、(シエスタも本なんか読むんだな)といった感想を抱いた。

「ああ、サイトさんはこっちの字が読めないんでしたっけ」

 シエスタは、顔を赤らめてその物語を説明し始めた。

「これではですね、“メイドの午後”と言う御話でして」

「うん」

「とある若いメイドさんが、“貴族”の御屋敷に仕える御話なんです。で、其処の御屋敷の旦那様がこれまた無体でして」

「うん」

「夜な夜な、メイドに、宜しくない事を強要するんです」

「宜しくない事って?」

 シエスタは才人のミイにゴニョゴニョと呟いた。

 鼻の奥が、ツーンと痛くなるのを感じ、鼻血が噴出する5秒前といった風で在ったのだが、才人はこれをどうにか堪えた。

「……何読んでんのさ」

「そ、そう言う御話なんです! 同室だった娘が読めって! 読めって言うもんですから!」

 シエスタは顔を真っ赤にして、ブンブンと腕を振った。

 才人は、(シエスタ達メイドは、暇な時そういうの読んでんのか……そう言や俺の世界でも少女誌って過激だったもんなぁ)と変な納得の仕方をした。

「で?」

「否、私、この御話に出て来るような無体な旦那様にされるのは嫌ですけど……サイトさんだったら良いかなって」

「はい?」

 才人は思わず訊き返した。

 シエスタは顔を真っ赤にして、両手で覆った。

「な、何てっ! 冗談ですっ!」

「だ、だよね……」

 才人が笑うと、シエスタは上目遣いに才人を見詰めた。その目が好奇心からだろう、爛々と光っている。

「でも……ちょっとやってみません?」

「え?」

「試しです試し」

 才人が呆然と立って居ると、シエスタはとととと、と駆け寄り、バサッと何かを落とす仕草をした。

「ガッチャーン! いけない、旦那様のカップをってしまったわ!」

「…………」

「サイトさんの番です」

 と、シエスタは真顔で言った。

「何をしろと?」

 才人の側に駆け寄り、ボソボソとシエスタは呟く。

 瞬間、才人は鼻血を噴いてしまった。

「シエシエ?」

「し、叱って下さい! サイトさんに叱って頂けるなら、私本望だわ! こ、こんな感じですっ!」

 シエスタは、きゃん! と喚いて態とらしく倒れ、才人を見上げた。顔はもう、林檎の様子に真っ赤で在る。

 また、シエスタから物凄い苛めてオーラとでもいえる様なモノが発せられ、飛び散り、才人を圧迫するのであった。

 それからシエスタはスカートの裾を軽く持ち上げ、斜め下を向いた。

「だ、旦那様の御好きなように、御仕置きして下さいませ……」

 才人の頭の中は、(巫山戯た事言ってんじゃ無えよ。このメイドってばホントどう仕様もねえなこの野郎)と云った考えで一杯になり、「カハ、カハック、この、こんの……こんのッ!」と訳の判らぬ声が口から漏れた。

 足が、ルイズが乗馬鞭を仕舞っている棚へと勝手に才人を運んでしまう。頭に血が上り切り、もうどうにも抗えないといった様子で在る。

 丁度其の時、バタンと良いタイミングでドアが開き、ルイズが入って来た。

 倒れてスカートを握り締め、今か今かと旦那様の折檻を待ち受けるシエスタと、棚から無知を取り出そうとして居る才人を見付け、ルイズはクルクルと器用に回転し乍ら、才人の股間に蹴りを叩き込んだ。

「良い加減にしようね。あんた達」

「します」

 股間を押さえて倒れた才人はルイズに顔を踏まれた侭、言った。

「メイド。“使い魔”。聴きなさい」

「はい」

 と、同時に才人とシエスタが返事をした。

「次はないからね。兎に角、そんな“使い魔”に、主人として命令があります」

「な、何だよ……?」

「今日は“スレイプニィルの舞踏会”よ。知ってるわね?」

「うん」

「何な舞踏会か知ってる?」

「えっと……仮面舞踏会だっけ?」

「そうよ。理想の仮面を冠った舞踏会よ。そ、そそ、其処であんた、私を絶対見付ける事」

「はい~~~?」

 才人は、(一体、それにどういう意味が有るんだ?)と疑問を抱いた。

 シエスタがギロッとルイズを睨んだ。

 其れに気付いた才人は、(ははーん、どうやら何か2人して企んで居る様だな。女は平和だな……戦争が終わったら、早速舞踏会やら御仕置きに夢中だよ。もっとこう、社会に貢献する事に一生懸命になるとか、そういう方向に考えが向かないんだろうか?)と想った。

「御前等さ……」

 才人は溜息混じりに言った。ルイズの足を退けて、立ち上がる。パンパンと服の汚れた部分を冷静に叩く。

「はぁ? 何よ?」

「はい?」

「取り敢えず2人共。其処に座りなさい」

「何よ?」

「良いから」

 2人は顔を見合わせると、仕方無くといった様子でベッドへと腰掛けた。

 そんな2人に、才人は勿体ぶった調子で言い放つ。

「君達は、もっと世のため、と言うモノをだね、考えないと行けないよ」

 ルイズは呆れた。

 才人は、行き成り世直し的なモノに目覚めてしまっているのだ。

 ルイズは、(多分、コルベール先生の死が原因かしらね。あの先生、そういった事を研究してたみたいだし……その遺志を受け継ごうとか、其処まで考えて居るのかもしれないわね。だからあんなに騎士隊に夢中になってたのね)と解釈をした。

 然しルイズに言わせるのであれば、それは才人の仕事ではないのだ。

 ルイズから見た、才人のするべき仕事は……取り敢えず元いた世界――“地球”に戻る方法を見付ける事だ。其れをした上で初めて、此方の世界――“ハルケギニア”の事を真面目に考えれば良いのだ。残るのかどうなのか……などを、だ。後は、行ったり来たりする方法を探す、などもだが。

「騎士隊で世直し? ばっかじゃないの?」

 ルイズに呆れ顔で言われ、才人はムッとした。

「何だと!? “ばっかじゃ成いの”ってどういう事だよ!?」

「あんたにはあんたのやるべき事が有るでしょー!」

「御前を守る事か? だからそれはそれできちんとやるって言ってるじゃねえか」

「違うわよ!」

 ルイズは怒鳴った。

「な、何だよ……?」

「帰る方法を見付ける事でしょ。帰って、家族を安心させなさいよ」

 うぐ……と才人は答えに詰まってしまう。

「今のあんた見てるとね、何か不自然なの。こっちの世界の事は、こっちの世界の人間に任せときなさいよ」

「で、でも……」

「騎士隊の仕事ってのは、結局戦争なの。あと、姫様を守る事。それは確かに大事な仕事だけど……あんたの仕事じゃないわ。どうして夢中になってるの?」

 ルイズにそう言われ……才人は俯いてしまった。

 才人の思いは2つ程あり、ルイズを守るという確かなモノでもありはしたのだが、もう1つの方はそれでも漠然としたモノであったのだ。

 兎に角才人は、何かやってみたくなっていたのである。

 今までのほほんと暮らして来た分……自分に出来る事を精一杯やってみたくなったのである。

 だが、それをルイズに説明するのは難しい事であった。

 ルイズは溜息を吐いた。

「兎に角……今回の舞踏会、あんたちゃんと出席しなさいよね。あと、さっき言った事を忘れないで」

「う、うん」

 ルイズは声以上無いと云った程に、顔を赤らめた。茹だって死ぬのではといった程に、赤い。

「そ、そしたら」

「そしたら?」

「その……こないだの“アルビオン”での夜の続き、して上げる」

 シエスタの目が思い切り吊り上がる。

「またそういう釣り方するなんて!?」

 ルイズは怒った様に顔を背け、部屋を出て行った。

 残された才人は、其の侭の姿勢で倒れ……間欠泉の様に鼻血を噴いた。

 シエスタが、「サイトさんしっかりぃ!」、と喚いて、介抱を始めた。

 

 

 

 

 

 

 夕方になり、宝物庫から“真実の鏡”が、2階のダンスホールの入り口まで引き出された。

 “魔法”の鏡の周りには黒いカーテンが引かれ、誰が今、姿を変えて居るのか判らぬようになっている。

 カーテンの隣にはシュヴルーズが立っている。何の積りであるのか、蝶の形をしたマスクを冠っている。

「夜の貴婦人が、貴方達を幻想の世界へと案内しますよ」

 シュヴルーズは、ノリノリで並んだ生徒達を誘導していた。

 ルイズも列に並び……自分が何に変身するのかを考えていた。

 何と無くでは在るが、ルイズにはその姿は想像出来ていた。

 ルイズは、(サイトは、その姿になった私を見付けて呉れるかしら?)と不安に想い、それから「判るわよね」と独り言ちた。

 ルイズの番に成り、ルイズはカーテンを潜る。

 其処には1枚の大きな鏡が在った。

 レリーフさえ象られていない、シンプルな枠に収まった、2“メイル”位の高さの姿見で在る。

 上から1枚の布が掛けられていた。

 カーテンの外から、シュヴルーズの声が聞こえてくる。

「良いですか? 理想の姿を想い浮かべるのです。誤魔化しても仕方がありませんよ? この鏡は心の深い部分迄覗き込み……貴女をその姿にしてしまうのです。心の準備が出来たら、その布を御取りなさい」

 ルイズは深呼吸をすると、「はい」と答え……掛けられた布を持ち上げた。

 美しい、虹色に光る鏡面が現れる。

 其処に映ったルイズの姿が……鏡から溢れる虹色の光に覆い尽くされて行った。

 溢れる光で、視界が途切れ……不意に光は消え、元の薄暗い空間へと戻る。

 然し、鏡の中にルイズはもういない。

 其の姿は、百神の優しそうな23~24の女性と変わって居た。

 其処に現れたのは……ルイズの2番目の姉、カトレアで在った。

 ルイズが理想としたのは、カトレアで在ったのだ。

 誰よりも優しい、姉の姿に成り……ルイズはソッと胸に手を置いた。

 

 

 

 ホールに向かうと、其処は様々な人々で溢れて居た。

 伝説の勇者、偉人、宮中の有名人……割と年配の紳士淑女が見えるのは、生徒達の両親だろう。クラスメイトその侭の姿もまた見えはするが、本人ではないのだろう。

 アンリエッタなどの姿も数人程見えたために、ルイズは思わず苦笑した。

 この日ばかりは、誰が誰だか判ら無いだろう。

 特定の相手とダンスを踊りたい場合は……自分が誰に化けるのか、前以て知らせておくのである。

「サイトは私が判るかしら?」

 ルイズは呟いた。そして、(判るわよね)と想った。

 何せ、カトレアの姿をしているのだ。

 そうこうしていると、ホールに1人の男性が現れた。

 誰も見た事の無い、異国風の男性。この“ハルケギニア”で語り継がれて居無い、全く未知の風貌をした男性で在る。

 だが何故か、此の場の――ホールに居る皆は、その男性に視線が釘付けにされてしまう。

 肉体と一体化した黄金の鎧に、胸元に埋め込まれた赤い宝石。白髪痩躯で、鋭い目付きの美男子。

 其処で、開始の挨拶をするためだろ、オスマンが姿を現した。

「えー、諸君。改めて挨拶じゃ。本日は、新入生との親睦を深めるための舞踏会じゃが、匿名性を帯びて居る。其れは、家柄、地位、国籍、爵位に囚われず、此の学園では皆平等じゃと云う事を、強く印象付けるためじゃ。でなければ、一緒に机を並べて学ぶ事は不可能じゃからな」

 オスマンはコホン、と咳をした。

「相手が誰か知りたかったら、此方から丁寧に名乗るのじゃ。姿や相手の身分に囚われず、堂々と名乗るのじゃ。其れが“貴族”を“貴族”たらしめる礼節の一歩だからじゃ」

 集まった生徒達は一斉に首肯いた。

「諸君等が驚くといけないと想って黙っておったが……何と本日はアンリエッタ女王陛下、シオン女王陛下、“アルビオン”客将セイヴァーが入らしておる」

 会場がどよめく。

 新入生たちは、俺やシオンがこの“魔法学院”で過ごして居る事を知ら無かったため、驚いた様子を見せる。

「而も……この舞踏会の趣旨に則り、きちんと化けておられる。誰が両陛下なのか、当ててみるのも一興じゃぞ?」

 生徒達はソワソワとし始めた。

 アンリエッタと話せる機会など、そうそうあるものではないのだ。これを機にお目通り願おうと、何人かは既に気が気でない様子を見せている。

 ルイズもまた驚いた。そして、(おいでになるら、知らせて呉れれば良いのに……)、と少しばかり不満に思った。

「さて……では今回の趣旨じゃ。良いか、君達は理想の姿に化けて居る。その理想の姿に近付ける様、その理想に負けぬ様、新しい学年で学んで欲しい。立派な“貴族”足れ。以上じゃ」

 拍手が湧いた。

 オスマンは真面目な顔で退出し、次に鏡で化けて入って来た。

 際どい格好をした若い女の女性の姿で在り、ポーズを取って呟く。

「オスマンじゃ」

 先程の演説に感心していた生徒達は、水を打ったかの様に静まり返ってしまう。

 既に、オスマンの人と成りを理解して居る在校生は、呆れた様子で見詰めた。

 教師達が無言でオスマンの両腕を掴み、外に引っ張って行った。

「で、では舞踏会を楽しみ給え!」

 ジタバタと暴れ乍ら、オスマンが外に連れ出された。

 音楽が奏でられ始め……舞踏会が始まった。

 ルイズは辺りをキョロキョロと見回す。

 が、才人らしき人物は居無い。

 ルイズは、(もうちょっとしたら来るのかしら?)と思い乍ら、壁を背にしてルイズは溜息を吐いた。

 

 

 

 皆、と云う訳では無いが、何人かが俺へと近付いて来る。そして、皆決まって一礼をし、自己紹介をするのだった。

「“サーヴァント、ランサー。真名、カルナ。宜しく頼む”」

 皆挙って、俺へと詰め寄って来る。

 そんな中、俺はどうすれば“カルナ()”に似せる事が出来るのか頭を巡らせる乍ら、口を開き呟く

「“嫌いでは無いだが、コミュニケーションと云うモノは苦手だ。人は言葉で理解り合えるのだろうか”……」

 其処で、1つの疑問が投げ掛けられた。

「“好ましいモノ…か。友情、努力、和解……何れも素晴らしいモノだ。そう想わないか?”」

 

 

 

 才人が会場に着いた頃には……浮揚も闌と云った時分であった。

 馬の世話をしていたために遅れてしまったのである。

 才人は、(生き物を飼うのは大変だー)、と実感していた。

 おまけに慣れない仕事というモノは、当然時間が掛かってしまう。

 カーテンで覆われていたために、入り口に置かれていた鏡に気付く事なく……才人はホールに入って行った。という選りも、才人は、そんな鏡で化ける舞踏会だという事など知らなかったのだ。

 入り口に控えて居た衛兵が見咎めようとしたのだが、才人のマントに気付いたのだろう、慌てて敬礼をする。

 中は薄暗く……余り良く顔が見えない。

 才人は、少し前の「こないだの“アルビオン”での夜の続き、して上げる」といったルイズの言葉を想い出した。

 才人は、(そんな事言うなんて、是非共叱ってやらなくちゃ……く、くそ)と完全に煮えきった頭でキョロキョロとルイズを捜した。

 然し、見付からない。

 才人は、(仮装舞踏会だから、仮面でも冠ってるのかな……)と思ったのだが誰も冠って居ない事に気付く。其れどころか、見知らぬ人の姿が多く、生徒達の姿が余り見当たらない事にも気付いた。

 其れ相応の立場だろう人達が、其処彼処で踊ったり、談笑したりしている。

 才人はやっとの事で、壁際に佇むルイズ(?)を見付けた。

 喜び勇んで駆け寄ると、彼女は顔を上げて才人を見詰める。

 其の顔が赤みを増して行くのが、傍目でも判った。

 約束が約束なだけに、才人もまた顔を赤らめた。

「直ぐに見付けられたじゃねえか。良いのかよ、あんな約束して……?」

 ルイズ(?)はモジモジとして居たが、「……約束?」、と問い返した。

「何だよ、もう忘れたのかよ?」

「いえ、御免なさい。で、貴男は?」

「“貴男は?”って俺に決まってんだろ?」

「サイトさん?」

「そうだよ」

 するとルイズ(?)は増々顔を赤らめるので在った。

 才人は、(何だよ此奴……混乱してるのか?)と思った。

 だが、才人に、そんな風に恥じらうルイズは激しく可愛い、と想わせた。

「で……さっきの話、ホントなのかよ?」

「さっきの話?」

「恍けるな! 言ったじゃねえか」

「……どのような約束なんですか?」

 才人は、(何だその馬鹿丁寧な喋り方……巫山戯てるのか?)と苛々とした。

 楽隊が激しい曲を奏で出した。

「五月蝿いな……外行こうぜ」

 才人はルイズ(?)の手を握ると……ベランダへと引っ張って行った。

「……あ」

 ルイズ(?)は驚いた様な声を上げたが……従順に従った。

 ベランダに着いた所で、才人はルイズ(?)へと言った。

「御前な、言っとくけど、冗談であんな事言うなよ。本気にするじゃねえか」

「……ご、御免ないさい」

 謝ってしまうルイズ(?)は、何だかととても可愛らしく……才人は少し意地悪をしたくなってしまった。

「ちゃんと謝らないと、こ、此処でしちゃうからな」

 ルイズ(?)が黙って俯いて居るので、才人はその顎を持ち上げた。

「……あ」

 ルイズ(?)は才人を見詰め……目を瞑った。

 そんな仕草を前に、才人はドキッとした。思わず吸い寄せられる様にして……その唇に、才人は自身のそれを重ねてしまう。

 ギュッと抱き締めると、ルイズ(?)は才人へと身体を預けた

 其の侭……壁際迄才人は押されてしまった。

 ベランダには他に人影はないから未だ大丈夫だと云えるものの、こういった所を誰かに見られてしまうと不味い事になってしまうだろう。

 才人はソッとルイズ(?)を離そうとした。

「んっ……!」

 然し、ルイズ(?)は矢鱈と積極的で在り、グイグイと身体を押し付ける。

「……ルイズ」

 才人は、(若しかしてルイズは……ずっと寂しかっただけなのかもしれないな……)と想った。そう想うと、ルイズへの“愛”しさが次から次へと生まれて来て、才人を包んだ、

 才人は気付くと、ルイズ(?)の控え目な胸に手を置いてしまっていた。

 だが、この前の様に、ルイズは全く嫌がる素振りを見せない。

 才人は、(“あれは御褒美よ!” なんて言われて、ちょっと傷付いたけど……やっぱり御褒美なんかじゃ無くってルイズは俺に……)と想った。

「ルイズ」

 そして、才人は強くルイズ(?)を抱き締めた。

 熱い吐息がルイズ(?)の口から漏れて……才人は我を忘れた。

 

 

 

 其の頃……ホールの入り口に立つ衛士が妖しい人影を見咎めた。

 深いローブを冠った女性で在る。

 フードの隙間からは長い黒髪が覗いているのが見える。

 生徒にも教師にも見え無い。

「何方ですかな?」

「本日の舞踏会に出席するために、“王宮”から派遣されたんですのよ」

「“王宮”? さて……」

 衛士は出席者が書かれた目録を繰り始めた。

「恐れ乍ら御名を頂きたく……」

 そう訊ねると、女性はスッと懐から小さな鐘を取り出した。

「それは……“眠りの鐘”? どうして……?」

 そう衛士が呟いた瞬間……鐘が小さく鳴らされた。

 キーン……と透き通る音が小さく響く。

 衛士は、急速な睡魔に襲われてしまう。(寝たらいかん、叱られる……)とそう思い乍らも、強烈な眠気には抗う事が出来ない。

 壁に凭れ、ズルズルと床に崩れ落ち……衛士は寝息を立て始めた。

「王宮と言っても……“トリステイン”ではないけどね」

 衛士が眠った事を書くにすると……フードの女性はカーテンを潜った。そして、眼の前の“真実の鏡”を見詰め、笑みを浮かべる。

 布を持ち上げ……“真実の鏡”にソッと触れる。

 すると……鏡が光り出した。

 同時に、フードの奥の女性の額もまた光り出す。

「顔が判らないんじゃ、仕事のしようがないからね」

 額に古代の“ルーン”を光らせた女……“ミョズニトニルン”はそう呟いた。

 

 

 

『シオン、敵だ』

『“ミョズニトニルン”?』

『ああ、そうだ』

 周囲の“魔力”の流れが変化した事を感じ取り、俺はシオンへと念話で報告をする。

 “ミョズニトニルン”だろう存在が侵入し、宝物庫から“眠りの鐘”を強奪し、使用。そして、“真実の鏡”を使用した事が判る。

 “陣地作成”で工房化しているため、敵意や害意を持って侵入して来た存在がいると、俺は自然とそれを知る事が出来る。また、そう云った存在の力を削ぐ事が出来る効果も在る。

 のだが、“ミョズニトニルン”クラスになれば、余り意味をなさないだろう。

 というよりも、“ミョズニトニルン”は“汎ゆる魔道具を扱う事が出来る”ので在り、その力は“知識と知恵”、そして“魔道具”に左右される。それ故だ。況してや、“ミョズニトニルン”で在るシェフィールドは“キャスタークラス”の“サーヴァント”でもある。“魔術”や“魔法”の扱いに長けた“魔術師クラス”の“サーヴァント”であれば、容易く穴を突いて来るだろう。

 

 

 

 才人はルイズ(?)の唇を吸った。

 んぐ……むぐ……と夢中になっていると……ルイズ(?)は背伸びをして両腕を才人の首に絡ませる。

 いつになく積極的なルイズ(?)である。

 そんなにも俺の事が……と、才人の中で更に“愛”しさが募る。

 思わず、才人の手は伸び……ルイズの薄い胸に……。

「……え?」

 才人の動きがピタリと止まった。

 胸は、薄くない。

 というよりも……大きいといえるだろう。

 膨よかで柔らかく、温かい塊が才人の掌の下、自在に形を変えているのであった。

 それを握る度に……ルイズ(?)の吐息が熱く、高まって行く。

「御前、いつの間にこんなに……?」

 才人は目を開いて、息を呑んだ。

 眼の前にいたのは……。

「姫様……?」

 アンリエッタ其の人で在った。

 才人は、(一体いつの間に入れ替わったんだろう? と言うか、今まで抱き締めていたのは姫様?)と混乱する。

 ホールから、生徒達が騒ぐ声が聞こ得て来た。

「うわ!? “魔法”が解けた!」

「未だ舞踏会は終わってないぞ!」

 此処で漸く才人は理解した。

 この舞踏会は、何らかの“魔法”で自分とは違う人物に仮装する舞踏会であるという事を。

 アンリエッタは、それでルイズに化けていたのだという事を。

「でも、どうしてルイズに……?」

 才人が尋ねると、アンリエッタは恥ずかしそうに顔を伏せる。

「今日は理想の相手に化ける舞踏会です」

「理想の相手?」

「じゃあ、ルイズが?」

「はい。私、あの娘が羨ましかったのです……己の心が欲する理想の侭に振る舞うあの娘が……何者にも汚されていない、真っ白な心が……私の持っていない美徳を、全て兼ね備えているあの娘が羨ましかったのです……」

「…………」

「何者にも揺るがされる事無い、己の正義を貫けるあの娘が羨ましい。私に、あの娘の10分の1もの勇気が有れば、私は過ちを犯さなかったでしょうね」

「過ちって……姫様は……別に過ちは犯してないじゃないですか。どんな過ちを犯したっていうんですか?」

 アンリエッタはどうやらかなり参ってしまっている様子であった。

 どうにか慰めてやりたくなって、才人はそんな言葉を口にしていた。

「いえ……私は己の復讐のために戦争を行いました。そのために、何人死んだというのでしょう」

「仕方無いじゃないですか。戦争だったんだ」

「何人も死にました」

 才人は想い出した。

 遠征軍は、その殆どが“貴族”か、傭兵だといえるだろう。市民を連れて行った訳ではない。

「こう言っちゃ何ですが……嫌々行った人はいないでしょう? 皆、自分で望んで行ったんだ。御金や、名誉の為に。姫様が気にする事じゃないですよ」

 才人は、(非道い言い方かもしれない。もしかしたら、死者に鞭打つ言葉かもしれない。色々と事情は有るだろうしな。でも兵の殆どは傭兵だし、士官の殆どは、名誉と叫ぶ“貴族”だったのも確かだろ)と想い乍らも、思った通りの事を口にした。

 アンリエッタは黙りこくった。

 才人は話題を変えようと、ルイズの事を口にした。

「今日はどうしたんですか? ルイズとシオンに逢いに来たんですか? 俺も捜してるんです。一体、何処に行ったのか……」

 アンリエッタは首を横に振った。

「貴男に逢いに来たのです」

「……え?」

「何故だか理解りませぬ。唯……貴男の名前を聞くと、貴男の顔を見ると……どうしてか、心が震えるのです。初めは……」

 アンリエッタは顔を上げた。

 其の目は潤んでいる。

「覚えてらっしゃいますか? あの出来事を……いつぞや、“トリスタニア”の安宿で過ごした晩の事を……」

 才人は首肯いた。

 あの時……成り行きとはい、アンリエッタと2度程唇を合わせたのだ。

「あの晩から……貴男の事を想い出すと、胸がチクリと痛みました。そのうちにその痛みは、ドンドンと大きくなって行きました。いつしか、私は気付いたのです。その痛みに、安らぎを見出している事に……心の中に何かが渦巻いて居て……それをどう扱ったら良いのか判らないのです」

「…………」

「多忙と心労の中、貴男の温もりだけが、私を癒やして呉れたのです。其の名前を、戦死者名簿の中に見出した時……私がどんなに哀しかった事か。そして……貴男がセイヴァーさんと共に110,000を止めて呉れたと知った時、どれ程私が救われたか。貴男は御存知ないでしょうね」

 アンリエッタみたいに高貴な人に、ストレートに心情を打つけられてしまい、才人は当惑してしまった。そして、いつか感じた(此の人は弱い)と云う想いが心の中で膨れ上がる事を自覚する。

 弱いからこそ、アンリエッタは輝きを放って居るのだ。

 ルイズとはまるで別種の魅力で在ると云えるだろう。

 その魅力に押し潰されてしまいそうだったために、才人は顔を背け……ソッと押しやろうとした。

「こんな所人に見られたら……大変ですよ。俺も姫様もただじゃ済まない」

 するとアンリエッタは、逆に才人をグイッと押して、カーテンの間に入り込み、自分達の姿を隠した。

「姫様」

「理解っています。でも……ただの一時、安らぎを得たいと思う事は、悪い事なのですか? 私にはそれ程の時間も許されないのですか?」

「…………」

「暫し……ほんの少し……安らげる時間が欲しいだけなのです。出来れば、貴男の側で……それを得たいだけなのです」

 年相応の少女の様にアンリエッタは顔を歪め、涙を零す。

 気丈な振る舞いを決して崩さ無い女王の、少女としてのそんな心からの涙は才人の心を打った。

 そして……眼の前でそんな涙を流すアンリエッタを、今だけは誰よりも美しく才人には見えた。

 ルイズよりも、アンリエッタの事が才人からは美しく見えてしまったのだ。

 アンリエッタは再び顔を上げ、ユックリと才人に顔を近付ける、

 才人は其の唇を拒む事が出来ず……重ね合わせた。

 御互いの唇の形を探るかの様なキスで在った。

 才人はアンリエッタに体重を預けられる侭に……壁に沿って座り込む。

 アンリエッタは熱い息を吐き乍ら、才人から唇を離し、見詰める。

「姫様……」

 次にアンリエッタは、才人の首に口吻た。

 才人の中で稲妻にでも打たれたかの様な電流が駆け抜け、思わずアンリエッタを抱き締めてしまった。

 当にその瞬間……。

 カーテンの隙間に、才人は桃色の髪を見付けた。

 その髪の下には鳶色の瞳。

「ルイズ……」

 才人の顔から血の気が引いた。

 アンリエッタも思わず振り返る。

 ルイズはカーテンの陰の2人を震え乍ら見詰めて居たのだが、そのうちに涙を零した。そして、顔を両手で覆うと、其処から駆け出して行く。

 追い掛けて、カーテンから飛び出したその瞬間……才人は他の生徒に打つかってしまう。

「痛いじゃないか!」

「すまん! 急ぐんだ!」

 然し……舞踏会の人混みに紛れて、ルイズの姿が見え無い。

 会場は、「誰が一体“真実の鏡”の“魔法”効果を解いたのだ?」とちょっとした騒ぎになってしまっていた。

 次いでアンリエッタが、蒼白な面持ちでカーテンの陰から出て来る。

 直ぐに生徒達が、「陛下!」、と叫んで周りを取り囲んでしまう。

 才人はアンリエッタに「ルイズを捜しに行きます」と目で伝えると、その場から駆け出して行った。

 

 

 

 本塔から飛び出し、ルイズは夜の“学院”を直疾走る。

 深い驚きと悲しみが、(サイトと姫様が? とうして?)と云った疑問が、ルイズを混乱させていた。

 ルイズは一部始終を目撃して居たので在る。

 カーテンの隙間から、才人とアンリエッタの顔を見付け、近寄ると……。

 その先の事を想い出そうとすると、自然とルイズの目から涙が溢れた。

 2人は熱っぽく……まるで恋人の様に語らい、其れから……まるで昔からの恋人がするかの様に唇を合わせたのであった。

「ずっと昔から、そう言う関係だったんだわ。2人で、ずっと私を騙していたんだわ」

 あれだけ信頼して居たアンリエッタに裏切られてしまい……ルイズはもう何も信じる事が出来なかった。そして同時に、(成る程。だから……姫様はサイトをシュヴァリエに、騎士隊隊長にしたがったのね。自分の恋人として繋ぎ止めるために)とも想った。今のルイズは、そう解釈し、受け止める事しか出来なかった。

 いつかの“トリスタニア”の任務……あの時才人はアンリエッタと唇を合わせたと言っていた。ルイズは、怒ったものの……任務の性格上仕方が無いと想って居たからこそ、それ以上咎める事も責める事もなかった。

 だが……。

(多分、あの時から、2人は関係を続けていたのね)

 何度もルイズは叫んだ。

「非道いわ! 非道いわ! 非道いわ!」

 ずっと裏切られていた、とルイズは想った。

(何が“御前の事が好きだよ”よ。嘘じゃない!)

 ルイズが赦せないのは……ずっと信じていた事、自分に対する約束とか、一緒に過ごした時間や、甘いキスなど……それ等全てが嘘になってしまったと想える事だ。

 自分の中に大事に仕舞っておく積りであったのだが、それ等の胸をときめかせる筈の想い出が……ルイズにとって全て嘘になってしまった事で在った。

 而も選りに選って其の相手は……ルイズが誰よりも敬愛して居たアンリエッタで在る。

 ルイズにはもう堪えられ無かった。

(兎に角此処にはもう居たくない)

 “魔法学院”の門を潜り……外へと飛び出す。

 何時もで在れば衛兵が居る門の守衛所で在るが、何者かが“真実の鏡”の“魔法”を解除してしまった事で騒ぎに成った舞踏会の会場へと詰め掛けてしまい、留守で在った。

 誰にも見咎めれる事もなく、街道へと通じる緩やかな坂道を下り、ルイズは疾走った。

(此処に居たくない。遠くに行きたい。誰も自分の知ら無い世界に行きたい)

 そんな感情がルイズの此処を支配して居た。

 暫く疾走り……息を切らせてルイズは跪く。

 地面に仰向けに横たわり、顔を押さえ……ルイズは泣いた。

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