ゼロの使い魔S   作:りおんざーど

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破壊の杖

 翌朝……。

 “トリステイン魔法学院”では、昨夜から蜂の巣を突いたかのような大騒ぎが続いていた。

 なにせ、秘宝の“破壊の杖”が盗まれたのだから当然であろう。それも、巨大な“ゴーレム”が、壁を破壊するといった大胆な方法で、だ。

 宝物庫には、“学院”中の教師たちが集まり、壁に空いた大きな穴を見て、口をあんぐりと開けてしまっている。

 壁には“土くれのフーケ”の犯行声明が刻まれていた。「“破壊の杖”、確かに領収致しました。“土くれのフーケ”」、と。

 それらを目にし、教師たちは口々に好き勝手なことを喚いていた。

「“土くれのフーケ”! “貴族”たちの財宝を荒らし捲くっているという盗賊か! “魔法学院”にまで手を出しおって! 随分と舐められたもんじゃないか」

「衛兵はいったいなにをしていたんだね?」

「衛兵など当てにならん! 所詮は“平民”ではないか! それより当直の“貴族”は誰だったんだね?」

 シュヴルーズは震え上がった。昨晩の当直は、彼女であったのだから。まさか、“魔法学院”を襲う盗賊がいるなどと夢にも思わず、当直をサボり、ぐうぐう自室で寝ていたのである。夜通し門の詰め所に待機していなければならないというのに、だ。

「ミセス・シュヴルーズ! 当直は貴女なのではりませんか!?」

 教師の1人が、早速彼女に対して追求をし始めた。オスマンが来る前に責任の所在を明らかにしておこうということだろう。

 それを受けて、シュヴルーズはボロボロと泣き出してしまった。

「も、申し訳ありません……」

「泣いたって、御宝は戻ってこないのですぞ! それとも貴女、“破壊の杖”の弁償でもできるのですかな!?」

「私、家を建てたばかりで……」

 追求される彼女は、よよよと床に崩れ落ちてしまう。

 そこへ、オスマンが到着した。

「これこれ、女性を虐めるものではない」

 彼女を問い詰めていた教師が、オスマンへと訴える。

「しかしですな! オールド・オスマン!  ミセス・シュヴルーズは当直なのに、ぐうぐう自室で寝ていたのですぞ! 責任は彼女にあります!」

 オスマンは長い口髭を擦りながら、口から唾を飛ばして興奮するその教師を見つめた。

「ミスター……なんだっけ?」

「ギトーです! お忘れですか!?」

「そうそう。ギトー君。そんな名前じゃったな。君は怒りっぽくていかん。さて、この中でまともに当直をしたことのある教師は何人おられるのかな?」

 オスマンは、確認と同時に辺りを見回した。

 教師たちはお互い、顔を見合わせると、恥ずかしそうに顔を伏せた。誰も名乗り出る者はいない。

 当然ギトーも名乗り出ない。そもそも、シュヴルーズは謝罪をするだけで「ぐうぐう自室で寝ていた」とは事実であろうと一言も口にしていないのである。そういった発想が出て来た時点で察することができるであろう。

「さて、これが現実じゃ。責任があるとするなら、我々全員じゃ。この中の誰もが……もちろん儂も含めてじゃが……まさかこの“魔法学院”が襲われるなど、夢にも思わなかった。なにせ、ここにいるのは、ほとんどが“メイジ”じゃからな。誰が好き好んで、虎穴に入るのかっちゅう訳じゃ。しかし、それは間違いじゃった」

 オールド・オスマンは、壁にぽっかり開いた穴を見つめた。

「この通り、賊は大胆にも忍び込み、“破壊の杖”を奪うって行きおった。詰まり、我々は油断していたのじゃ。責任があるとするなら、我ら全員にあると言わねばなるまい」

 シュヴルーズは、感激してオスマンに抱き着いた。

「おお、オールド・オスマン、貴男の慈悲の心に感謝いたします。私は貴男をこれから父と呼ぶことにいたします!」

 オスマンはそんな彼女の尻を撫でる。

「ええのじゃ。ええのよ。ミセス……」

「私のお尻で良かったら! そりゃもう! いくらでも! はい!」

 オスマンはコホンと咳をする。誰も突っ込みはしない、場を和ませるつもりで尻を撫でたのにも関わらず、だ。

 皆、一様に真剣な目で彼の言葉を待っている。

「で、犯行の現場を見ていたのは誰だね?」

 オスマンは尋ねる。

「この3人です」

 コルベールがサッと進み出て、後ろに控えさせていた3人を指さした。

 ルイズにキュルケにタバサの3人である。才人と俺も側にいたが、“使い魔”であるということもあって数には入っていない。

「ふむ……君たちか」

 オスマンは目を細め、興味深そうに才人を、そして俺を見つめて来る。

「詳しく説明したまえ」

 ルイズが進み出て、見たままを述べた。

「あの、大きな“ゴーレム”が現れて、ここの壁を壊したんです。肩に乗っていた黒い“メイジ”がこの宝物庫の中からなにかを……その“破壊の杖”だと思いますけど……盗み出した後、また“ゴーレム”の肩に乗りました。“ゴーレム”は 城壁を越えて歩きだして……最後には崩れて土になっちゃいました」

「それで?」

「後には、土しかありませんでした。肩に乗ってた黒いローブを着た“メイジ”は、影も形もなくなってました」

「ふむ……」

 オスマンは髭を撫でる。

「後を追うにも、手掛かりなしと言う訳か……」

 それから彼は、今気付いたというようにコルベールへと尋ねる。

「時に、ミス・ロングビルはどうしたね?」

「それがその……朝から姿が見えませんで」

「この非常時に、どこに行ったのじゃ」

「どこなんでしょう?」

 噂をすればなどとは良く言ったモノだろう。そんな風に噂をしていると、彼女が姿を現す。

「ミス・ロングビル! どこに行っていたんですか!? 大変ですぞ! 事件です!」

 興奮した調子で、コルベールが捲し立てる。しかし、彼女は落ち着き払った態度で、オスマンへと告げる。

「申し訳ありません。朝から、急いで調査をしておりましたの」

「調査?」

「そうですわ。今朝方、起きたら大騒ぎじゃありませんか。そして、宝物庫はこの通り。直ぐに壁のフーケのサインを見付けたので、これが国中の“貴族”を震え上がらせている大怪盗の仕業と知り、直ぐに調査をいたしました」

「仕事が早いの。ミス・ロングビル」

 コルベールが慌てた調子で促した。

「で、結果は?」

「はい。フーケの居所がわかりました」

「な、なんですと?」

 彼女の言葉に、コルベールが、素っ頓狂な声を上げた。

「誰に聞いたんじゃね? ミス・ロングビル」

「はい。近在の農民に聴き込んだところ、近くの森の廃屋に入って行った黒尽くめのローブの男を見たそうです。おそらく、彼はフーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと」

 その彼女の報告に、誰も疑問を抱くことはない。

 ルイズが叫ぶように同調する。

「黒尽くめのローブ? それはフーケです! 間違いありません!」

 オスマンは、目を細くして、ロングビルに尋ねた。

「そこは近いのかね?」

「はい、徒歩で半日。馬で4時間といったところでしょうか」

「直ぐに“王室”に報告しましょう! “王室衛士隊”に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」

 コルベールが叫ぶように提案する。

 だが、オスマンは首を横に振り、目を剥いて年寄りとは思えないほどの迫力を出して怒鳴る。

「馬鹿者! “王室”なんぞに報せている間にフーケは逃げてしまうわ! その上……身にかかる火の粉を己で払えぬようで、なにが“貴族”じゃ! “魔法学院”の宝が盗まれた! これは“魔法学院”の問題じゃ! 当然我らで解決する!」

 この答を待っていたといった風に、ロングビルは微笑んだ。

 オスマンは咳払いをすると、有志を募った。

「では、探索隊を編成する。我と思う者は、“杖”を掲げよ」

 だが、誰も“杖”を掲げない。ただ困ったように、顔を見合わせるだけだ。

「おらんのか? おや? どうした! フーケを捕まえて、名を上げようと思う“貴族”はおらんのか!?」

 ルイズとシオンは俯いていたが、それから彼女たちはほぼ同時のタイミングで“杖”を顔の前に掲げた。

「ミス・ヴァリエール!? ミス・エルディ!?」

 シュヴルーズが驚いた声を上げる。

「なにをしているのです! 貴女たちは生徒ではありませんか! ここは教師に任せて――」

「――誰も挙げないじゃないですか」

 ルイズはキッと唇を強く結んで言い放つ。

 唇を軽くへの字に曲げ、真剣な目をしている彼女たちはとても凛々しく、そしてとても美しい。

 シュヴルーズは、ルイズのそんな言葉を受けて俯いた。

 そんな彼女たちがそのように“杖”を掲げているのを見て、渋々といったふうにキュルケもまた“杖”を掲げる。

 コルベールもまた、驚いた声を上げる。

「ツェルプストー! 君も生徒じゃないか!」

 彼女はつまらなさそうに言った。

「ふん。ヴァリエールには負けられませんわ」

 キュルケが“杖”を掲げるのを見て、タバサもまた自身の“杖”を掲げる。

「タバサ。あんたは良いのよ。関係ないんだから」

 キュルケがそう言ったら、タバサは短く応えた。

「心配」

 キュルケは感動した面持ちで、タバサを見つめた。ルイズとシオンもまた唇を噛み締めて、お礼の言葉を口にする。

「ありがとう……タバサ……」

「ありがとう」

 そんな4人の様子を見て、オスマンは笑った。

「そうか、では、頼むとしようか」

「オールド・オスマン! 私は反対です! 生徒たちをそんな危険に晒す訳には!」

「では、君が行くかね、ミセス・シュヴルーズ?」

「い、いえ……私は体調が優れませんので……」

「彼女たちは、敵を見ている。その上、ミス・タバサは若くして“シュヴァリエ”の称号を持つ騎士だと聞いているが?」

 タバサは返事もせずに、ボケっと突っ立っている。

 教師たちは驚いたように彼女を見つめた。

「本当なの?」

 キュルケも驚いている。“王室”から与えられる爵位としては、最下級の“シュバヴァリエ”の称号ではあるが、タバサの年でそれを与えられるというのは驚きに値するモノだ。男爵や子爵の爵位であれば、領地を貰うことで手に入れることも可能である。が、“シュヴァリエ”だけは違う。純粋に業績に対して与えられる爵位……実力あるという証拠を持つ称号なのである。

 宝物庫の中がざわめいた。

 オスマンは、それからキュルケを見つめた。

「ミス・ツェルプストーは、“ゲルマニア”の優秀な軍事を数多く輩出した家系で、彼女自身炎の“魔法”も、かなり強力と聞いておるが?」

 キュルケは得意げに、髪を掻き上げた。

「ミス・エルディは、優秀な生徒であり、どの“魔法”も卒なくといった範疇に収まらず、“ラインクラス”から“トライアングルクラス”の力を発揮させることができると聞いておるが? まあいわゆるオールラウンダーというやつじゃな」

 オスマンの言葉に、シオンは照れているのか下を向いている。

 それから、ルイズが自分の番だとばかりに可愛らしく胸を張る。

 が、オスマンは困った表情を浮かべる。そして、コホンと咳をすると、目を逸らしながら言葉を選ぶように続けた。

「その……ミス・ヴァリエールは数々の優秀な“メイジ”を輩出したヴァリエール公爵家の息女で、その、うむ、将来有望な“メイジ”と聞いておるが? しかもその“使い魔”は!」

 それから才人を熱っぽい目で見詰めた。

「“平民”ながらあの元帥の息子である、ギーシュ・ド・グラモンと決闘して勝ったという噂だが」

 コルベールが興奮した調子で、後を引き取った。

「そうですぞ! なんせ、彼はガンダー――」

 オスマンは慌ててコルベールの口を押さえる。

「むぐ! はぁ! いえ、なんでもありません! はい!」

 教師たちはすっかり黙ってしまった。

 そして、オスマンは威厳のある声で言った。

「この4人に勝てるという者がいるのなら、前に一歩出たまえ」

 誰もいなかった。

 オスマンは、才人と俺を含む6人に向き直る。

「“魔法学院”は、諸君らの努力と“貴族”の義務に期待する」

 ルイズとタバサとキュルケとシオンは、真顔になって直立し「“杖”に賭けて!」と同時に唱和した。それからスカートの裾を摘み、恭しく礼をする。俺と才人は、それを“杖”の部分とスカートの一連の動きを除いた礼だけを真似て動く。

「では、馬車を用意しよう。それで向かうのじゃ。“魔法”は目的地に着くまで温存したまえ。ミス・ロングビル!」

「はい。オールド・オスマン」

「彼女たちを手伝ってやってくれ」

 ロングビルは頭を下げて応えた。

「元よりそのつもりですわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺たち6人はロングビルを案内役に、早速出発する。

 馬車とは言うが、屋根などない荷車のような馬車だ。襲われた時に、直ぐに外に飛び出せる方が良いだろうということで、このような馬車になったのである。

 ロングビルが御者を買って出た。

 キュルケが、黙々と手綱を握る彼女に話しかける。

「ミス・ロングビル……手綱なんて付き人にやらせれば良いじゃないですか?」

 ロングビルは、ニッコリと笑みを浮かべ返す。

「良いのです。私は、“貴族”の名を失くした者ですから」

 そんなロングビルの答に、キュルケはキョトンとして、質問を続ける。

「だって、貴女はオールド・オスマンの秘書なのでしょ?」

「ええ、でも、オスマン氏は“貴族”や“平民”だということに、あまりこだわらないお方です」

「差し支えなかったら、事情をお訊かせ願いたいわ」

 ロングビルは優しい微笑みを浮かべる。そんな表情から、言いたくないということを察することができる。

「良いじゃないの。教えてくださいな」

 キュルケは興味津々といった顔で、御者台に座ったロングビルに躙り寄る。「差し支えなかったら」などと言ってないと言わんばかりの様子である。

 そんなキュルケの肩を、ルイズが掴み止めに入る。

 キュルケは振り返ると、ルイズを睨み付けた。

「なによ、ヴァリエール?」

「よしなさいよ。昔のことを根掘り葉掘り訊くなんて」

 キュルケはふんと呟いて、荷台の柵に寄りかかって頭の後ろで腕を組んだ。

「暇だからお喋りしようと思っただけじゃないの」

「あんたのお国じゃどうか知りませんけど、訊かれたくないことを、無理矢理訊き出そうとするのは“トリステイン”じゃ恥ずべきことなのよ」

 キュルケはそれに答えず、脚を組んだ。そして、厭味な調子で言い放った。

「ったく……あんたが格好つけたおかげで、とばっちりよ。なにが悲しくて、泥棒退治なんか……」

 ルイズはキュルケをジロリと睨んだ。

「とばっちり? あんたが自分で志願したんじゃないの」

「あんたが1人じゃ、サイトとシオン、セイヴァーの3人が危険じゃないの。ねえ? “ゼロのルイズ”」

「どうしてよ?」

「いざ、あの大きな“ゴーレム”が現れたら、あんたはどうせ逃げ出して後ろから見てるだけでしょ? シオンとサイト、セイヴァーを戦わせて自分は高みの見物。そうでしょう?」

「誰が逃げるもんですか。わたしの“魔法”でなんとかして見せるわ」

「“魔法”? 誰が? 笑わせないで!」

 2人は再び火花を散らし始めた。

 対して、タバサは相変わらず本を読んでいる。

「喧嘩すんなよ! もう!」

 シオンと俺が苦笑を浮かべて見守る中、才人が間に入って執りをなした。

「ま、良いけどね。せいぜい、怪我しないことね」

 キュルケはそう言うと、手をヒラヒラと振って見せた。

 ルイズはぐっと唇を噛んでいる。

「じゃあダーリン。これ使ってね?」

 キュルケは色気たっぷりに流し目を才人に送ると、自分が買って来た名剣を手渡した。

「あ、ああ……」

 才人はそれを受け取った。

「勝負に勝ったのはあたし。文句はないわよね? “ゼロのルイズ”?」

 ルイズは、チラッと2人の様子を見たが、それだけでなにも言わなかった。

 

 

 

 馬車は深い森に入って行った。

 鬱蒼とした森が、5人の畏怖を煽っているだろう。昼間だというのに薄暗く、気味が悪いゆえか。

「ここから先は、徒歩で行きましょう」

 ロングビルがそう言って、全員が馬車から降りる。

 森を通る道から、小道が続いている。

「なんか、暗くて怖いわ……嫌だ……」

 ここぞとばかりに、キュルケが才人の腕に手を回す。

「あんまりくっつくなよ」

「だってー、すごくー、怖いんだものー」

 キュルケはすごく嘘臭い調子で言った。

 才人はルイズが気になっているのか、斜め後ろを振り向いた。対して、ルイズはフンっと顔を背けた。

 

 

 

 一行は開けた場所に出た。森の中の空き地といった風情である。おおよそ、“魔法学院”の中庭くらいの広さだ。真ん中に、確かに廃屋があるのが見える。元は木こり小屋だったのだろう、朽ち果てた炭焼き用らしき釜と、壁板が外れた物置が隣に並んでいるのが見えている。

 俺を含めた7人は小屋の中から見えないように、森の茂みへと身を隠し廃屋を見つめた。

「私の聞いた情報だと、あの中にいるという話です」

 ロングビルが廃屋を指さして言った。

 ヒトが住んでいる気配はまったくしない。

 才人たちは俺を交じえ、ユックリと相談をし始める。兎に角、あの中にいるのなら奇襲が1番だろうという結論に辿り着く。

 そして、奇襲をするにも色々と考える必要があるだろう。

 タバサは、チョコンと地面に正座すると、皆に自分の立てた作戦を説明するために、近くにあった枝を使って地面に絵を描き始めた。

 まず、偵察兼囮が小屋の側に赴き、中の様子を確認する。

 そして、中にフーケがいれば、これを挑発し、外に出す。

 小屋の中に、“ゴーレム”を作り出すほどの土はない。

 外に出ない限り、得意の“ゴーレム”は使えないのである。

 そして、フーケが外に出たところを、“魔法”で一気に攻撃する。土“ゴーレム”を作り出す暇を与えずに、集中砲火でフーケを沈めるのである。

「で、偵察兼囮は誰がやるの?」

 才人が尋ね、タバサが短く応える。

「すばしっこいの」

 皆が一斉に、才人と俺とを見詰める。

 そして、才人は溜息を吐いて言った。

「俺たちかよ。まあ、良いよ、俺がやる」

 才人はキュルケから貰った名剣を、鞘から抜いた。

 彼の左手が光り出す。それと同時に、彼の身体能力が上昇する。

 スッと一足跳びで小屋の側へと近付く。窓へと近付き、恐る恐る中を覗き込む才人。

 小屋の中は、一部屋しかない。部屋の真ん中に埃のつもったテーブル、そして転がっている椅子がある。崩れた暖炉もあり、テーブルの上には酒瓶が転がっている。

 そして、部屋の隅には、薪が積み上げられており、炭焼き小屋だという主張をしている。

 そして、薪の隣にはチェストがある。木で出来た大きい箱だ。

 中には人の気配はなく、どこにも人が隠れることができそうな場所は見当たらない。

 才人はしばらく考えた後、皆を呼ぶことにした。

 才人は頭の上で、腕を交差させた。誰もいなかった時の場合のサインである。

 隠れていた5人が恐る恐るといったふうに、俺は堂々と近寄る。

「誰もいないよ」

 才人は窓を指して言った。

 タバサがドアに向けて“杖”を振り、確認が終了したのだろう「罠はないみたい」と呟き、ドアを開け、中へと入る。

 キュルケと才人が後に続く。

 ルイズとシオン、俺は外で見張りをするために後に残った。

 ロングビルは「辺りを偵察して来ます」と言って、森の中へと消えた。

 俺はそれに対して見逃し、首肯く。

 

 

 

「なにもなければ良いんだけど……」

 シオンが呟き、ルイズが頷く。

 だが、それがフラグだったのか、いや起こるべくして起こるモノだ。

 少しばかり離れた場所の地面が膨れ上がり、ヒトの形を取り始める。

 そうして、見る見るうちにそれは土“ゴーレム”へと変化をした。

「きゃぁああああああ!?」

 

 

 

 小屋に入った才人たちは、フーケが残した手掛かりがないかを調べ始めた。

 そして、タバサがチェストの中から“破壊の杖”を見付け出した。

「“破壊の杖”……」

 タバサは無造作にそれを持ち上げると、皆へと見せる。

「呆気ないわね!」

 キュルケが叫ぶように感想を述べる。

 そして、才人はその“破壊の杖”を目にした瞬間に目を丸くし、俺はニヤリと笑みを浮かべる。

「お、おい。それ、本当に“破壊の杖”なのか?」

 才人は驚いて言った。

「そうよ。あたし、見たことあるもん。宝物庫を見学した時」

 キュルケが首肯く。

 才人が近寄り、“破壊の杖”をマジマジと見つめる。

 その時、外で見張りをしているルイズが悲鳴を上げた。

「きゃぁああああああ!?」

「どうした!? ルイズ!」

 一斉にドアのある方へと振り向いた時……。

 バコォーンと良い音を立てて、小屋の屋根が吹っ飛んだ。

 屋根がなくなったおかげで、空が良く見えるだろう。

 そして、青空をバックにして、フーケの巨大な土“ゴーレム”の姿を確認できるだろう。

「“ゴーレム”!」

 キュルケが叫ぶ。

 タバサが真っ先に反応し、動き出す。

 自身の身長より大きな“杖”を振り、“呪文”を唱えた。

 巨大な竜巻が舞い上がり、“ゴーレム”に打つかって行く。

 しかし、“ゴーレム”はビクともしない。

 次いでキュルケが胸に挿した“杖”を引き抜き、“呪文”を唱える。

 “杖”から炎が伸び、“ゴーレム”を火炎で包み込む。が、炎に包まれようが、“ゴーレム”はまったく意に介さない。

「無理よこんなの!」

 キュルケが弱音を吐き出し叫ぶ。

「退却」

 タバサが呟く。

 キュルケとタバサは一目散に逃げ出し始めた。

 才人はルイズの姿を探し、見付ける。

 ルイズは“ゴーレム”の背後に立っており、“ルーン呪文”を呟き、“杖”を振りかざす。“ゴーレム”の表面に当たりはするが、当然のように爆発を起こす。だが、それだけであり、“ゴーレム”には傷1つない。

 小屋の入り口に立っている才人は20“メイル”ほど離れたルイズに向かって怒鳴る。

「逃げろ! ルイズ! シオン! セイヴァー!」

 ルイズは唇を噛み締めて、叫ぶように応える。

「嫌よ! あいつを捕まえれば、誰ももう、わたしを“ゼロのルイズ”とは呼ばないでしょ!」

 シオンも“杖”を構える。

 2人とも、目が真剣だ。

 “ゴーレム”は近くに立っているルイズとシオンからの攻撃に対して迎撃をするか、逃げ出しているキュルケたちを追いかけるかどうか迷っているかのように首を傾げるといった動作を取る。

「あのな! “ゴーレム”の大きさを見ろ! あんな奴に勝てる訳ねえだろ!」

「やってみなくちゃ、わかんないじゃない!」

「無理だっつうの!」

 才人がそう言うと、ルイズはグッと彼を睨み付ける。

「あんた、言ったじゃない」

「え?」

「ギーシュにボコボコにされた時、何度も立ち上がって、言ったじゃない。下げたくない頭は、下げられないって!」

「そりゃ、言ったけど!」

「わたしだってそうよ。細やかだけど、プライドってもんがあるのよ。ここで逃げたら、“ゼロのルイズ”だから逃げたって言われるわ!」

「いいじゃねえかよ! 言わせとけよ!」

「わたしは“貴族”よ。“魔法”が使える者を、“貴族”と呼ぶんじゃないわ」

 ルイズは、俺へと一瞬だが目を向けてそう言った後、“杖”を握り締め直した。

 “ゴーレム”はやはり近くにいるこちらへの攻撃をするように命令を受けているのであろう。“ゴーレム”の巨大な足が、持ち上がり、俺たちを踏み潰そうとする。

 ルイズは“魔法”の“呪文”を“詠唱”し、“杖”を振る。シオンも同様に、“杖”を振るう。

 しかし、やはり“ゴーレム”にはまったく通用しない。

 “ファイアーボール”を唱えたのだろう。シオンの方からは火球が飛び出すが、ルイズの方からは出ない。

 “ゴーレム”の腕が小さく爆発、そして“ファイアーボール”が直撃するのが見えたが、それだけだ。

 “ゴーレム”はビクともしない。わずかばかりに、土が溢れるだけだ。が、それにより、“ゴーレム”は一時的に動きを止める。

 才人は剣を構えると同時に飛び出す。

 ルイズとシオン、そして俺の視界には、“ゴーレム”の足が広がっている。

 その時……烈風の如く疾走り込んだ才人が、ルイズの身体を抱き抱え、地面に転がる。俺もまた、シオンをお姫様抱っこして、才人とルイズの横へと移動する。

「死ぬ気か!? お前!」

 才人は思わず、ルイズの頬を叩く。バッシィーン、と乾いた音が響いた。

 ルイズは呆気に取られ、才人を見詰める。シオンもまた、彼と彼女を見詰める。

「“貴族”のプライドがどうした! 死んだら終わりじゃねえか! 馬鹿!」

 ルイズの目から、ポロポロと涙が溢れた。端正な顔立ちをグシャグシャに歪めて、幼子みたいに、だ。

「泣くなよ!」

「だって、悔しくて……わたし……いっつも馬鹿にされて……」

 眼の前で泣かれてしまい、才人は困った様子を見せる。

 だが当然、巨大“ゴーレム”はこちらを待つということはなく、その大きな拳を振り上げ、こちらに対して攻撃の体勢に入る。

「少しはしんみりさせろよ!」

 才人はルイズを抱え上げ、疾走り出した。

 だが――。

「セイヴァー……」

「なにかな? マスター」

「貴男の実力が知りたいわ。見せて」

「……了解した」

 シオンからの言葉に首肯いた。

「ルイズ」

「なによ?」

「その心意気、見事だと思う。その念いも、そして才人の言い分通り、命もまたそれと同じくらいに大事にしておくと良い」

 ルイズは俺の呼びかけに、涙を混じえながら応えた。

 俺は自身の考えを口にし、そして、俺は自身の“魔力”を少しばかり解放させる。

 “魔力放出”によって発生した風を受けて、30“メイル”ほどの巨大な土“ゴーレム”の身体が吹き飛び、尻餅を突く。

「――え?」

 ルイズと才人、キュルケとタバサの4人は驚きから大きく目を見開く。

 そして、驚愕から冷静さを取り戻したタバサに呼ばれたのだろう、“ウィンドドラゴン”(化)がルイズと才人、シオンと俺を救うためだろう飛んで来た。

 “ウィンドドラゴン”(化)に跨っているタバサが「乗って!」とタバサが叫び、才人は“ウィンドドラゴン”(化)の上にルイズを押し上げる。俺もまた、シオンを上に乗せる。

「貴男たちも早く」

 タバサが珍しく、焦った調子で俺と才人に言った。

 しかし才人と俺は、“ウインドドラゴン”(化)に乗らず、迫り来る土“ゴーレム”へと向き直る。

 “ウィンドドラゴン”(化)に跨ったルイズが「サイト!」と怒鳴る。

「早く行け!」

「こっちは大丈夫だ。撤退すると良い」

 タバサは無表情に俺たちを見つめていたが、追い付いて来た“ゴーレム”が拳を振り上げるのを見て、やむなくタバサは支持を出し、“ウィンドドラゴン”(化)を飛び上がらせる。

 ブンッ! と間一髪のところで、風圧と共に、才人がいた地面に“ゴーレム”の拳が減り込む。才人と俺は飛びさすって、拳から逃れる。

 “ゴーレム”が拳を持ち上げる。ズボッと地面からゴーレムの拳が抜けると、直径1“メイル”ほどの大穴ができていた。

 才人は小さく呟く。

「悔しいからって泣くなよ馬鹿。なんとかしてやりたくなるじゃねえかよ」

 巨大な土“ゴーレム”を、真っ向から睨み付ける。

「舐めやがって。たかが土っ塊じゃねえか」

 才人は剣をグッと握り締める。

「こちとら、“ゼロのルイズ”の“使い魔”だっつうの」

「では……始めようか」

 

 

 

「サイト!」

 ルイズは上昇する“ウィンドドラゴン”(化)の上から飛び降りようとする。が、タバサがその身体を抱き抱え、止めに入る。

「サイトを助けて!」

 ルイズは怒鳴る。が、タバサは首を横に振る。

「近寄れない」

 近寄ろうとすると、やたらと“ゴーレム”が拳を握り回すので、タバサは“使い魔”である“ウィンドドラゴン”(化)を近付けることができないのである。

「大丈夫だよ、ルイズ。大丈夫」

「シオン?」

 だが、隣にいるシオンもまたルイズを止めに入る。

 振り向くルイズに見えたのは、穏やかかつ自信満々な笑みを浮かべるシオンの姿だった。

 疑問を持ちながらも、地上を見下ろすルイズ。

 そこでは、剣を構える才人、そして俺が、“ゴーレム”に対峙しているのが見えた。

 

 

 

 “ゴーレム”の拳が唸りを上げて飛んで来て、拳は途中で鋼鉄の塊へと変化する。

 それを、才人は剣で受け止める。

 が、受け止めるのと同時にガキーンと鈍い音がして、剣が根本から折れてしまった。

 才人は呆然とした様子で、「なにが“ゲルマニア”の“錬金術師シュペー卿”が鍛えし業物だよ! セイヴァーの言った通り、鈍らじゃねえか!」と呟いた。

 “ゴーレム”の拳がまた唸る。

 それを俺が、“無毀なる湖光(アロンダイト)”を“投影”し、それを斬り払う。

 その“無毀なる湖光(アロンダイト)”は太陽の陽光を反射してキラリと白銀に光り輝き、俺はその剣で土“ゴーレム”の腕をバッサリと斬り捨てる。

「す、すげえ……」

 そんな俺の一連の動きと剣を目にし、才人は小さく感想を呟く。

「ぼーっとするな。まだ終わりじゃないぞ」

 俺のその言葉と同時に、斬り捨てられた土“ゴーレム”の残骸は伸び、元の居場所――土“ゴーレム”の斬り口へと戻り、引っ付く。

「ただの一刀ではこんなものか……」

 土“ゴーレム”は再び、拳を振りかざし攻撃を仕掛けて来る。

 俺と才人は後ろへと一退りし、俺は体勢を整えながら弓と“虹霓剣(カラドボルグ)”を“投影”し、“虹霓剣(カラドボルグ)”を矢である“偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)”へと変形させ、番え放つ。

「――“偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)”ッ!」

 捻じれた刀身を持つ一風変わった剣はその形を細く矢へと変化させ、土“ゴーレム”に向かう。

 土“ゴーレム”へと直撃すると、その巨大な身体には大きな穴が開く。

 だが、土“ゴーレム”はその傷も瞬時に再生させてみせた。

 

 

 

 “ウィンドドラゴン”(化)の背に跨り、上空から見下ろしているシオンとルイズ。

 今のシオンの目には、苦戦をする才人、苦戦どころか赤子扱いして遊んでいる俺の姿が見えている。そして、俺のステータス情報もまた見えている。

 今のシオンには、俺の、“サーヴァント”の代名詞や人生などを表すモノ――“人間の幻想を骨子に作り上げられた武装”など――“宝具”、使用した“スキル”、“ステータス”が見えているのである。

 “宝具”がEXランク、“幸運”がBランク、それを除いたステータスのパラメータ全てがEランク。“クラススキル”は、“代替者”、“対英雄”、“陣地作成”、“道具作成”。“保有スキル”は“転生者”、“専科総般”、“千里眼”、“特典”、“投影魔術”が見えているのだ。

 まだ他にも見えていない部分があるが、それらは全て真っ黒に塗り潰されたようになっている。“宝具”の内容と説明、各“スキル”の説明が確認できない状態である。

 そんな俺のステータスだが、Eランクの身体能力がどれほどのモノか。実際に見て見ると、自分たちとは違う――人間離れ、目で追うのがやっとといったレベルに、シオンは目を剥いて驚いた。

 ルイズは苦戦する才人を、ハラハラとしながら見つめている。それから、「なんとか自分が手伝える方法はないかしら?」と周囲を見渡した。

 その時、タバサが抱えている“破壊の杖”に気付く。

「タバサ! それを!」

 タバサは首肯いて、ルイズに“破壊の杖”を手渡す。

 杖にしては奇妙な形をしており、彼女たちはこんな“マジックアイテム”を見たことがなかった。

 ルイズは深呼吸をし、それから目を見開く。

「タバサ! わたしに“レビテーション”をお願い!」

 そう怒鳴って、ルイズは“ウィンドドラゴン”(化)の上から地面に身を躍らせ、タバサは慌てて彼女へと注文通りの“呪文”を唱え、かける。

 “レビテーション”の“呪文”で、地面にユックリと降り立つルイズは、才人と俺が戦っている巨大な“ゴーレム”目掛けて、“破壊の杖”を振った。

 しかし、当然のことだが何も起こらない。“破壊の杖”は沈黙したままである。

 ルイズは、「ホントに“魔法”の“杖”なの!? これ!?」と怒鳴った。

 

 

 

 才人はルイズが地面に降り立つのを見て舌打ちをし、俺はチラリと見るだけだ。

 しかし、才人は、ルイズが持っている“破壊の杖”に目を持って行かれた。

 どうやら、ルイズはそれの使い方がわからないらしく、モタモタとしてしまっている。

 才人はルイズ目掛けて駆け出した。

 アレであれば、“ゴーレム”を倒せるだろう。

「サイト!」

 駆け寄った才人にルイズが叫ぶ。

 才人はルイズの手から、“破壊の杖”を奪い取る。

「使い方が、わかんない!」

「これはな……こう使うんだ」

 才人は“破壊の杖”を掴むと、安全ピンを引き抜き、リアカバーを引き出し、インナーチューブをスライドさせる。

 それと同時に、彼の中で大きな疑問が頭を過る。(どうして俺はこんなモノを扱えるんだ?)といった疑問だ。

 が、すぐにそれを振り払い、チューブに立てられた照尺を立てる。

 そんな様子を、ルイズは唖然として見つめている。

 才人は“破壊の杖”を肩にかけると、フロントサイトを“ゴーレム”にほぼ直接照準で合わせる。が、標的が近すぎるために、もしかすると安全装置が働いて、命中しても爆発しないかもしれないだろう。

「後ろに立つな。噴射ガスが行く」

 ルイズへと怒鳴って退けさせ、彼女は慌てて身体を逸す。

「セイヴァー!」

「了解した」

 才人からの叫ぶかのような言葉に、俺は首肯き、彼らの元へと一跳躍し、合流する。

 “ゴーレム”が、ズシンスジンと地響きを立てて、俺たちへと迫りくる。

 才人が、安全装置を解き、トリガーを押した。

 シュポッと栓抜きのような音がして、白煙を引きながら羽を付けたロケット状のモノが“ゴーレム”に吸い込まれる。

 そして、狙い違わず“ゴーレム”に命中――直撃した。

 吸い込まれた弾頭が、“ゴーレム”の身体に減り込み、そこで上手く信管を作動させたのだろう爆発した。

 才人とルイズは思わず目を瞑る。

 耳を劈くような爆音が響き、“ゴーレム”の上半身がバラバラに砕け散る。

 土の塊が雨のように辺りへと降り注いで来る。

 そして、俺は自身の“魔力”で障壁を眼の前に生み出し、2人を爆煙や爆発で吹き飛んで来る破片や砂などから守る。

 才人とルイズは、ユックリと目を開いた。

 白煙の中、“ゴーレム”の下半身だけが立っているのが見える。

 下半身だけになってしまった“ゴーレム”は一歩前に踏み出そうとするのだが……ガクッと膝が折れ、そのまま動かなくなった。

 そして、滝のように腰の部分から崩れ落ち……ただの土の塊へと環って行く。

 昨夜と同じように、後には土の小山が残された。

 ルイズ、そして上空にいるタバサとシオン、木陰に隠れているキュルケの4人はその様子を呆然と見つめる。

 ルイズは腰が抜けたかのようにヘナヘナと地面に崩れ落ちた。

 木陰に身を隠していたキュルケが駆け寄って来るのが見える。

 才人は溜息を吐いて、立ち尽くしている。

 

 

 

 キュルケが才人へと抱き着く。

「サイト! セイヴァーも! すごいわ! やっぱりダーリンね! 」

 “ウィンドドラゴン”(化)から降りたタバサが、崩れ落ちたフーケの“ゴーレム”を見つめながら、呟いた。

「フーケはどこ?」

 そんな彼女の言葉に、俺を除く全員はハッとする。

 辺りを偵察に行っていたロングビルが茂みの中から現れた。

「ミス・ロングビル! フーケはどこからあの“ゴーレム”を――?」

 キュルケがそうロングビルへと尋ねようとするが、俺は手を差し出してその言葉を止める。

「さて、ミス……そろそろ芝居はやめたらどうだ?」

「どういう意味かしら、ミスタ?」

「言葉通りの意味だ。“土くれのフーケ”」

 俺の言葉に訊き返すロングビルだが、俺の2度目の言葉に対し、ロングビルを除く全員が驚きの声を上げる。

「どうしてそう思うのかしら?」

「ふむ、そうだな。いくつかあるのだが……まず1つ、宝物庫の側には俺たちがずっといた。にも関わらず、君はどうして“土くれのフーケ”が来た、と、壁に書かれた犯行声明についてを知っている? 2つ目、なぜ君は、近隣の住民が“黒尽くめの者が男”だと言ったことにした? そいつはただ、黒い服を着ているだけで、遠目では男か女かもわからないというのに……あとまあ、そうだな……タイミングが良すぎる」

 その言葉に、皆が一斉にロングビルへと目を向ける。

 そして――。

 返答ではなく、その代わりにロングビル――“土くれのフーケ”は、小さく最小限の動きで自身の“杖”を懐から取り出し、素早く振った。

 そして、全員の後ろの土塊――土“ゴーレム”だった土の小山の一部から何箇所かが盛り上がり、ギーシュが生み出す“ワルキューレ”に酷似した兵隊のような形へと変化する。

「クソッ!」

 才人たちがそれに対し、“杖”と剣を構える。

 そして、土の兵隊の一体が“破壊の杖”を持ち、“土くれのフーケ”へと持って行く。

「そう。さっきの“ゴーレム”を操っていたのは私。昨夜のもそう……流石は“破壊の杖”ね。私の“ゴーレム”がバラバラじゃないの! それに貴男、セイヴァー……だったかしら?」

 フーケは、あまりにも稚拙な俺の指摘を受け入れ、とぼけるといったこともせずに肯定してみせた。それから、自身が生み出した土の兵士から“破壊の杖”を受取り、構える。

「…………」

「貴男だったのね。昨夜、私の“ゴーレム”に穴を開けたのは」

 フーケはそう言いながら、先ほど才人がしたように“破壊の杖”を肩にかけ、俺たちへと狙いを付ける。

 タバサが“杖”を振ろうとする。

「おっと。動かないで? “破壊の杖”は、ぴったり貴方たちを狙っているわ。全員、“杖”を遠くに投げなさい」

 仕方なく、ルイズたちは“杖”を放り投げた。

 これにより、“メイジ”であるルイズやシオンたちは“コモン・マジック”を除いた“魔法”を唱えることができないようになった。

「そこのすばしっこい“使い魔”君たちは、その折れた剣を投げなさい。あんたは“武器”を握ってると、どうやらすばしっこくなるみたいだから」

 才人は言われた通りにし、俺もまた“投影”した“武器”を放り投げた。

「どうして!?」

 ルイズがそう怒鳴るとフーケは、「そうね、ちゃんと説明しなくちゃ死に切れないでしょうから……説明して上げる」と口にし、妖艶な笑みを浮かべながら言葉を続ける。

「私ね、この“破壊の杖”を奪ったのは良いけれど、使い方がわからなかったのよ」

「使い方?」

「ええ。どうやら、握っても、“魔法”をかけても、この杖はうんともすんとも言わないだもの。困ったわ。持っていても、使い方がわからないんじゃ、宝の持ち腐れ。そうでしょ?」

 そんなフーケの言葉を受けて、ルイズが飛び出そうとする。が、才人はその肩に手を置いて彼女を止める。

「サイト!」

「言わせてやれ」

「随分と物理解りの良い、“使い魔”だこと。じゃあ、続けさせて貰うわね。使い方がわからなかった私は、貴方たちに、これを使わせて、使い方を知ろうと考えたのよ」

「それで、あたしたちをここまで連れて来た訳ね」

 そんな才人とルイズを前に、フーケは不敵に笑いながら説明を続ける。

 そして、そんなフーケに対して確認をするキュルケ。

「そうよ。“魔法学院”の者だったら、知ってても可怪しくはないでしょう?」

「私たちの誰も、知らなかったらどうするつもりだったの?」、

「その時は、全員“ゴーレム”で踏み潰して、次の連中を連れて来るわよ。でも、その手間は省けたみたいね。こうやってきちんと使い方を教えてくれたじゃない」

 フーケは笑う。

「じゃあ、お礼を言うわ。短い間だけど、楽しかった。さよなら」

 そんなフーケの言葉に、キュルケは観念して目を瞑る、タバサも、ルイズも、シオンも同じようにだ。

 が、才人と俺は、目を瞑らなかった。

「勇気があるのね」

「いや、ちょっと違う」

 才人はそう言って剣を拾い上げ、俺は “勝利すべき黄金の剣(カリバーン)”を“投影”する。

 選定の剣。持つ者の年齢の上昇――老化を止める剣。“所持者が王として正しく、そして完成された時、その威力は聖剣に相応しいモノになる”という聖剣。斯の“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”や、先ほど使用した“無毀なる湖光(アロンダイト)“などと同じ“神造兵装”の1つだ。

 光り輝くその剣は、武器として扱うことができるが、それ以上に“王としての資格”などを表し、“神秘”を持ちながら、周囲を自然と圧倒しながらも惹き付ける。

 フーケは咄嗟に、才人がしたように“破壊の杖”のスイッチを押した。

 が、先ほどと同じように羽を付けたロケット状のモノが飛び出す、ということは当然起こるはずもなかった。

「な、どうして!?」

 フーケはもう1度、スイッチを押す。が――。

「それは単発なんだよ。“魔法”なんか出やしない」

 俺と才人は不敵に笑う。

「た、単発? どういう意味よ!?」

 才人の言葉に、フーケは怒鳴るように確認する。

「使い切りのアイテムだという事だよ、マチルダ」

「言っても理解らんだろうが、そいつはこっちの世界の“魔法”の“杖”なんかじゃない」

「なんですって!?」

 才人の言葉に、ルイズとシオン、キュルケとタバサ、フーケの5人は驚く。

 そして、フーケは怒鳴り、“破壊の杖”を放り投げ、“自身の杖”を握ろうとする。

 才人は電光石火の速さで駆け寄り、フーケの腹に剣の柄を減り込ませた。

 フーケは、地面へと崩れ落ちてしまう。

 才人は“破壊の杖”を拾い上げる。

 俺は使うことがなかった……ただ、フーケを威圧し、正義はこちらにあると見せるために“投影”した“勝利すべき黄金の剣(カリバーン)”を消す。

「サイト? セイヴァー?」

 ルイズたちは目を丸くして、才人と俺とを見つめる。

 才人は言った。

「フーケを捕まえて、“破壊の杖”を取り戻したぜ」

 ルイズ、キュルケ、タバサ、シオンは顔を見合わせると、俺たちの方へと駆け寄った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “学院長室”で、オスマンは戻った俺たち6人の報告を聴いていた。

「ふむ……ミス・ロングビルが“土くれのフーケ”じゃったとはな……美人だったもので、なんの疑いもせず秘書に採用してしまった」

「いったい、どこで採用されたんですか?」

 隣に控えたコルベールが尋ねた。

「街の居酒屋じゃ。儂は客で、彼女は給仕をしておったのじゃが、ついついこの手がお尻を撫でてしまってな」

「で?」

 コルベールが先を促す。

 そして、オスマンは照れたように告白した。

「おほん。それでも怒らないので、“秘書にならないか?”と、言ってしまった」

「なんで?」

 ホントに理解できないといった口調でコルベールが尋ねた。

「カァーッ!」

 オスマンは、年寄りとは思えないほどの迫力を出して、目を剥いて怒鳴った。

 それからオスマンは、コホンと咳をして、真顔になる。

「おまけに“魔法”も使えると言うもんでな」

「死んだ方が良いのでは?」

 コルベールがボソッと言った。

 オスマンは、軽く咳払いをすると、彼に向き直り重々しい口調で言った。

「今思えば、あれも“魔法学院”に潜り込むためのフーケの手じゃったにちがいない。居酒屋で寛ぐ儂の前に何度もやって来て、愛想好く酒を勧める。“魔法学院学院長は男前で痺れます”、などと何度も媚を売り売り言いおって……しまいにゃ尻を撫でても怒らない。惚れてる? とか思うじゃろ? なあ? ねえ?」

 コルベールは、ついうっかりフーケのその手にやられ、宝物庫の弱点について語ってしまったことを思い出した。

 それを誤魔化すかのように、コルベールに合わせて同調した態度を取る。

「そ、そうですな! 美人はただそれだけで、いけない魔法使いですな!」

「その通りじゃ! 君は上手いことを言うな! コルベール君!」

 才人とルイズ、そしてキュルケとタバサ、シオンと俺の6人は呆れて、そんな2人の様子を見つめる。

 生徒たちと“使い魔”である俺たちのそんな冷たい視線に気付いたのだろう、オスマンは照れたように咳払いをし、厳しい顔付きをして見せる。

「さてと、君たちはよくぞフーケを捕まえ、“破壊の杖”を取り戻して来た」

 オスマンからの言葉を受けて、誇らしげに、才人と俺を除いた4人が礼をした。

「フーケは、城の衛士に引き渡した。そして“破壊の杖”は、無事に宝物庫に収まった。一件落着じゃ」

 オスマンは、1人ずつ頭を撫でる。

「君たちの、“シュヴァリエ”の爵位申請を、“宮廷”に出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。と言っても、ミス・タバサは既に“シュヴァリエ”の爵位を持っておるから、“精霊勲章”の授与を申請しておいた」

 そのオスマンの言葉に、4人の顔がパアッと輝いた。

「本当ですか?」

 キュルケが、驚いた声で言った。

「ホントじゃ。良いのじゃ、君たちは、そのくらいのことをしたんじゃから」

 ルイズとシオンは、先ほどから元気がなさそうに立っている才人を見つめた。

「……オールド・オスマン。サイトとセイヴァーにはなにもないんですか?」

「残念ながら、彼らは“貴族”ではない」

 ルイズからの質問に、オスマンもまた沈んだ表情で答えた。

 が、才人は言い、俺もそれに続く。

「なにも要らないですよ」

「右に同じく、だ」

 オスマンは、ポンポンと手を打った。

「さてと、今日の夜は“フリッグの舞踏会”じゃ。この通り、“破壊の杖”も戻って来たし、予定通り執り行う」

 キュルケの顔がパッと輝く。

「そうでしたわ! フーケの騒ぎで忘れておりました!」

「今日の舞踏会の主役は君たちじゃ。用意をして来たまえ。せいぜい、着飾るのじゃぞ」

 4人は、礼をするとドアへと向かった。

 が、ルイズとシオンは、才人と俺とをチラッと見つめ、立ち止まる。

「先に行って良いよ」

「そうだな。先に行って準備をしておくと良い」

 才人と俺の言葉に、ルイズとシオンは心配そうに見つめていたが、2人同時に首肯いて部屋を出て行った。

 彼女たち全員が“学院長室”から外に出て、離れるのを確認すると、オスマンは才人と俺の2人へと向き直った。

「なにか、儂に訊きたいことがおありのようじゃな」

 才人と俺は首肯く。

「言ってごらんなさい。できるだけ力になろう。君たちに爵位を授けることはできんが、せめてものお礼じゃ」

 それからオスマンは、コルベールに退室を促した。

 ワクワクしながら俺たちの話を待っていたコルベールは、渋々といった様子で部屋を出て行った。

 コルベールが出て行った後、才人は俺へと一瞥をし、俺が首肯くのを見ると口を開いた。

「あの“破壊の杖”は、俺たちが元いた世界の武器です」

 オスマンの目が光った。

「ふむ。元いた世界とは?」

「俺たちは、“ハルケギニア(こっちの世界)”の人間じゃない」

「本当かね?」

「本当です。俺たちは、あのルイズとシオンの“召喚”で、“ハルケギニア(こっちの世界)”に喚ばれたんです」

「概ね合っている」

 オールド・オスマンの確認の質問に、才人が簡単な補足をし、俺は曖昧な回答とフォローをする――首肯く。

「なるほど。そうじゃったか……」

 オスマンは目を細める。

「あの“破壊の杖”は、俺たちの世界の武器だ。あれをここに持って来たのは、誰なんですか?」

 オールド・オスマンは溜息を吐いて、思い出したように口を開く。

「あれを儂にくれたのは、儂の命の恩人じゃ」

「その人は、どうしたんですか? その人は、俺たちと同じ世界の人間です。間違いない」

「死んでしまった。今から、30年も昔の話じゃ」

「なんですって?」

 オスマンの言葉に、才人は目を見開き驚きの声を上げる。

「30年前、森を散策していた儂は、“ワイバーン”に襲われた。そこ救ってくれたのが、あの“破壊の杖”の持ち主じゃ。彼は、もう1本の“破壊の杖”で、“ワイバーン”を吹き飛ばすと、バッタリと倒れおった。怪我をしていたのじゃ。儂は彼を“学院”に運び込み、手厚く看護した。しかし、看護の甲斐なく……」

「死んでしまったんですか?」

 才人からの質問に、オスマンは首肯いた。

「儂は、彼が使った1本を彼の墓に埋め、もう1本を“破壊の杖”と名付け、宝物庫に仕舞い込んだ。恩人の形見としてな……」

 オスマンは遠い目になっている。

「彼はベッドの上で、死ぬまでうわ言のように繰り返しておった。“ここはどこだ? 元の世界に帰りたい”とな。きっと、彼は君たちと同じ世界から来たんじゃろうな」

「いったい、誰がこっちにその人を喚んだんですか?」

「それはわからん。どんな方法で彼がこっちの世界にやって来たのか、最後までわからんかった」

「くそ! せっかく手掛かりを見付けたと思ったのに!」

 質問に対するオスマンのその返答に、才人は嘆いた。見付けた手掛かりは、あっと言う間に消えてしまったのだから無理もないだろう。

 オスマンは、次に才人の左手を掴んだ。

「お主のこの“ルーン”……」

「ええ。こいつについても訊きたかった。この文字が光ると、なぜか“武器”が自在に使えるようになるんです。剣だけじゃなく、俺の世界の“武器”まで……」

 オスマンは離すべきかどうかを悩んで居るのだろう。口をつぐんでいる。

 が、しばし悩んだ後、彼は口を開いた。

「……これなら知っておるよ。“ガンダールヴ”の印じゃ。“伝説の使い魔”の印じゃよ」

「“伝説の使い魔”の印?」

「そうじゃ。その“伝説の使い魔”は“ありとあらゆる武器を使い熟した”そうじゃ。“破壊の杖”を使えたのも、そのおかげじゃろう」

 才人は首を傾げた。

「……どうして、俺がその“伝説の使い魔”なんかに?」

 オスマンは、キッパリと「わからん」と言った。

「わからんことばっかりだ。すまんの。ただ、もしかしたら、お主がこっちの世界にやって来たことに、その“ガンダールヴ”の印は、なにか関係しているのかもしれん」

 才人は「はぁ……」と大きく溜息を吐いた。

「力になれんですまんの。ただ、これだけは言っておく。儂はお主の味方じゃ。“ガンダールヴ”よ」

 オスマンはそう言うと、才人を抱き締めた。

「良くぞ、恩人の杖を取り戻してくれた。改めて礼を言うぞ」

 才人は疲れた声で「いえ……」と返事をした。

「お主たちがどういう理屈で、こっちの世界にやって来たのか、儂なりに調べるつもりじゃ。でも……」

「でも、なんです?」

「なにもわからなくても、恨まんでくれよ。なあに。こっちの世界も住めば都じゃ。嫁さんだって探してやる」

 オスマンからの言葉に感謝の念は抱いているだろうが、それでも帰れる手掛かりを見付けたと思ったと同時に簡単に指の間を摺り抜けてしまったこともあって、才人は再び溜息を吐いた。

 

 

 

 才人が退出し、残ったのはオスマンと俺だけだ。

「で、まだなにか用がおありかの?」

「惚ける必要はない。訊きたいことがあるのはそちらだろう?」

「はて、なんのことやら?」

 まだ惚けた風を装うオスマンに対し、俺は思わず溜息を吐く。

「では、こちらから話そうか。お前たちは俺のことを警戒している」

「…………」

「見たことのない“ルーン”と似たモノを主に刻み込んだ存在……得体の知れない存在だからな、当然だ。そして、才人とギーシュの決闘の後のあれを見て、より強く警戒をした。そして、今回の件で確認といったところか」

「ふむ……面白い見解じゃの」

「まあ良い。一応言っておくが、俺はあんたたちと事を構えるつもりりはまったくない。が、“マスター”である彼女に危害を加えない限り、といった条件が付くがな」

「あくまでも、“使い魔”であり、主を守る、と?」

「そうだ。安心したか?」

「なら、こっちからはなんもせんよ。むしろ、彼女をしっかりと守ってやって欲しいくらいじゃ。そして、すまんかったの。疑ったりして」

「良いさ。それは当然のことだからな」

 互いに笑みを浮かべ、これ以上彼女を待たせる訳には行かないので俺は退出をする。

 彼の眼の前で、わざわざ“霊体化”して、だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 “アルヴィーズの食堂”の上の階が、大きなホールになっている。舞踏会はそこで行われていた。

 中では着飾った生徒たちや教師たちが、豪華な料理が飾られたテーブルの周りで歓談している。

 才人はバルコニーの枠にもたれかかりながら、料理のお溢れにありつき、ワインを呑んだりしながらぼんやりと中を眺めている。

 キュルケは沢山の男子生徒たちに囲まれ、笑っている。

 黒いパーティドレスを着たタバサは、一生懸命にテーブルの上にある料理と格闘をしている。

 俺は、シオンのエスコートを中断し、そこからかなり離れた場所で夜風に当たっている。

「ここにいたんだ……」

「パーティーには参加しないのか、“マスター”?」

「ちょっと疲れちゃって……」

「そうか。なら仕方ないな」

 ここからでも、パーティーによる音楽や楽しそうな喧騒などが聞こえて来る。

「本当に、別の世界から来たんだね」

「なんだ、藪から棒に……信じていなかったのか?」

「ううん。実感がなかっただけ」

 そう言いながら、シオンは軽くドレスの裾を摘み、一礼をする。

 そして、ニッコリと優しい笑みを浮かべてこう言った。

「1曲、一緒に踊ってくださらない?」

 真っ暗な空に浮かぶ2つの月の明を浴びて、彼女の長く整った金髪や白くきめ細やかな肌はより一層綺麗に輝いて見える。

「ああ。是非、喜んで」

 俺はそんな彼女の手を取り、遠くから聞こえて来る曲に合わせて2人流麗に身体を動かした。

 

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