“即位3周年記念式典”が開始され、ギーシュ達“
“アクイレイア”は、複雑な水路が入り組んだ狭い街である。
そこには“ハルケギニア”中から“ブリミル教徒”達が集まって来たのだから堪らないといえるだろう。
細い、幅が2“メイル”程度しかない道は、押し合い圧し合いする信者達で埋まっている。
教皇がルイズ達巫女を従え、朝の5時から祈りを捧げている“聖ルティア聖堂”の前など、まるで戦場であるといえる様体である。
青字に白の百合と“聖具”の紋をあしらったサーコートに身を包んだギーシュ達は、見学者達の整理におおわらわであった。
整理というよりも、実際には戦争に近しいモノと言い換えることもできるほどである。教皇の御姿を一目だけでも拝見しようとする“ブリミル教徒”達は、我先にと“聖ルティア聖堂”の入り口から中へと押し掛けようとするのである。だが、一般の見学は、聖堂の外からと定められている。
従って、ギーシュ達は、何とか教皇聖下を間近で見ようとする“ブリミル教徒”達との果てしない死闘じみたモノを繰り広げる羽目になったのであった。
「こ! この! 見学はそこの線からと定められているんだ! 入ってくるなあ!」
「やいやい、こっちは“ゲルマニア”からわざわざ旅して来たんだ! ちょっとくらいわねえだろ!」
「この仔牛に聖下から祝福を戴くまでは、俺は国に帰えれねえんだよ!」
「教皇聖下に一目で良いから御逢いさせろ!」
“水精霊騎士隊”の少年達は、“杖”を抜いて押し掛ける平民達と対峙したが、逆に舐められてしまう始末である。
「おら! 退け! 怪我したくなかったらすっ込んでろ!」
「そういう訳にはいかん! 大人しく見学し給え! 理解らんのか!?」
中々見学の順番が回って来ない民衆の怒りは、とうとう警備の騎士達へと方向を変え始めた。
「こいつ等をやっちまえ!」
「こ、この……!」
“魔法探知装置”があることもあり、“魔法”を使う訳にもいかず、ギーシュは冷や汗を垂らしながら、配下の少年騎士達に命令した。
「諸君! “杖”を抜け! ここで喰い止めるんだ! たが“魔法”はいかんぞ!」
“杖”でポカポカと殴り付ける少年騎士達であるが、血走った目付きをした“ブリミル教徒”達には火に油だといえるだろう。
逆に、マリコルヌは“杖”を奪われてしまい、散々に小突き回されることになってしまった。
「わ!? わ! 止めろ! この“平民”共! 無礼者!」
「生意気な“貴族”のガキめ! 遣っちまえ!」
ギーシュ達はマリコルヌの加勢に向かおうとするのだが、暴徒と化した民衆に囲まれ、掴まれ、殴られ、蹴られ、散々な目に遭わされてしまった。
「こいつめ! 幾ら口で言っても理解らんようだ!」
怒ったギムリが、ついに“魔法”を唱えようとした。
1人の男の頭を抱えて拳で殴り付けていたギーシュが気付き、焦った様子を見せる。
「いかん! 君、“魔法”はいかんよ!」
その時……白い上衣を纏った一団が聖堂の中から飛び出して来た。
「“聖堂騎士”!」
神と“始祖”の守り手とされる“聖堂騎士”の恐ろしさは、ここ“ハルケギニア”に住むヒト皆が知っている。“聖具”を模した“杖”を振り回し、“聖堂騎士”達は詰め掛けた民衆に躍り掛った。
「我等に逆らう者は異端と見做す!」
その言葉と純白の上衣に恐れをなし、暴徒と化した民衆達は慌てて引き退がって行く。
1人の“聖堂騎士”が帽子の鍔を持ち上げ、少年達を小馬鹿にしたような笑顔を見せ付ける。
「カルロ殿!」
ギーシュ達を救ったのは、この前“ロマリア”の酒場で“水精霊騎士隊”と乱闘を繰り広げたカルロ・クリスティアーノ・トロンボンティーノ率いる“アリエステ修道会”付きの“聖堂騎士隊”であった。
「おやおや。書生騎士諸君ではないか。暴徒のあしらいは、“学院”では教えてくれなかったのかな?」
“聖堂騎士隊”の面々から笑い声が飛んだ。
ギーシュ達は屈辱で震えた。
「あの副隊長はどうした? 確か、ヒリギャ・シットとかいう変な名前の」
「ヒラガ・サイトだ!」
「ああ、そんな名前だったな。で、どこに行ったんだ? 姿が見えないようだが……」
“水精霊騎士隊”の少年達は困った顔に成った。
マリコルヌが、小さな声で言った。
「……こ、故郷に帰ったんだ」
「何だと? 大事な任務を放り投げて逃げ出したのか? 流石は“平民”上がりだな!」
カルロは大声で笑った。
“聖堂騎士”達も一緒に笑った。
「臆したのであろうよ! 何せ今回の相手は大国だからな!」
「随分と勇敢な副隊長だな!」
ギムリが、「うぬ、言わせておけば」と前に出ようとしたが、ギーシュとレイナールに止められた。
代わりに、ギーシュが低い声で言った。
「カルロ殿。貴男は10,000の軍勢に、1人で立ち向かえるかね?」
「10,000? 馬鹿を言うな。幾ら私が相当な使い手と言っても、出来ることには限りがある」
「僕の副隊長は完璧にそれをやって退けた。しかも相手は10,000じゃなく、110,000だった。せめて10,000を喰い止めてから、彼の勇気を問い給え」
カルロは笑い飛ばそうとした。
が、ギーシュが真顔であったために、つまらなさそうに顎をしゃくった。
「ふん、行け。ここは私達が警備する」
すごすごと“聖堂騎士”に場所を譲る少年達に、カルロは言葉を続けた。
「ああ、明日からここには来なくて良いぞ。君達は今日から街での警邏任務だ。怪しい奴がいたら報告しろよ」
そんな風に言われて腹が立ったのだが、仕方なく少年達は街の警邏に出掛けた。警邏といえば聞こえは良いが、「何、御前達は足手纏いだからその辺りで遊んでいろ」と言われたようなモノである。
水路道路が入り組んだ狭い街には人が溢れ、騎士隊が警邏するどころではない。
ギーシュ達は聖堂横の広場の片隅に固まって座り込み、ボンヤリと浮かれ騒ぐ人々を見詰めていた。
幾つもの屋台が並び、酒や雑多なモノが売り捌かれているのが見える。
「やっぱり、サイトがいないと駄目なのかなあ……」
売り娘達の張り上げる声を聞きながら、マリコルヌが元気のない声で呟く。
それは騎士隊の少年達もボンヤリと考えていたことであった。どこかで才人に頼っていた部分は確かにあり、そして、突然の御別れということに心が着いて行っていないのである。
「ルイズめ、勝手なことしやがって!」
ギムリが拳を固めて、地面を叩いた。
「……でも、気持ちは理解るよ。あいつ、良く知らないけど遠い所から来たんだろ? “ちきゅう”だっけ? 家族に逢いたい気持ちは皆一緒だ。ルイズは何のかんの言っても女の子だから、いつまでもそんな奴に戦いをさせるのが嫌だったんじゃないのかなあ」
レイナールが立ち上がり、両手を広げて言った。
「おいおい、いつまでメソメソしてるんだ? サイトがいなくたって、何とかしてみせようじゃないか。ここで手柄を立てて、僕達だって“アルビオンの二大英雄”に負けず劣らずの実力を持っていることを証明するんだ」
何人かの少年達が首肯く。
「でも、警備は良いって言われちゃったぜ。手柄を立てるどころじゃないよ」
沈黙が彼等を包んだ。
そんな中……ギーシュが1人、楽しげに鼻歌なぞ唄いながら、何かを一生懸命に作っている。
見ると、側には、いつのまにやらどこかで買って来たのか酒の盃まで置かれている。
「なに酒なんか呑んでるんだよ? ギーシュ」
「ん? もしかしたら戦になるかもしれんからな。景気付けだよ。ほら、君も試してみろ。“ヒッポクラテス”とか言うカクテルだ。ジンジャーと砂糖をワインに垂らし込んだモノだが……中々味が濃くて旨いぜ」
呆れた声でレイナールが言った。
「戦になんかなるもんか。“ブリミル教徒”がこれだけ集まっている場所に戦なんか仕掛けたら、どんなことになるか“ガリア”だって承知しているはずさ。世界を敵に回すことになるぜ!」
するとギーシュは、少し眉間に皺を寄せた。
「まあ、マトモな王様ならそう考えるだろうな……マトモならね。でも、あの“ガリア”の王様は、何かとんでもないことをしそうだよ。こないだ“ガリア”に乗り込んだ僕には、そう想える。きっと一筋縄じゃいかんだろうな……おっと! 彫り過ぎた!」
「なあギーシュ、さっきから君は一体何を作ってるんだい?」
「ん?」
ギーシュは顔を上げると、マリコルヌに手の中のモノを見せた。それは、白い貝殻であった。女性の横顔のレリーフが彫られている。
「ブローチを作ってるんだよ。“ロマリア”じゃ、こうやって貝殻に彫り物をして女性に贈るんだそうだ。モンモランシーを怒らせたままだからね。何とか御機嫌を取らないとなあ! あっはっは!」
流石にマリコルヌは、眉を顰めた。
「全く、こんな時なのに、良く貝殻なんか彫ってられるな。戦になりそうなんだろ? おまけに僕達の中のサイトが、帰っちまったんだぜ?」
「別に良いじゃないか。聞いた時にゃ驚いたが、ここでやいのやいの言ったって、サイトが帰って来る訳じゃない。君、人生は愉しむためにあるんだぜ?」
ギーシュはそう言うと、できうる限りお能天気さで笑った。
「僕はそんな君が羨ましいよ。随分勇気があるんだな」
皮肉っぽくマリコルヌが言った。
「いや……何と言うかな」
「うん」
「言い訳が欲しいんだよな。きっとね」
「言い訳?」
「ああ。あんな恐ろしい連中と戦になるかもしれん、と考えたら正直怖くてね。だからこうやって、死んじゃいけない理由を積み上げてるのさ。僕はモンモランシーにこのブローチを届けんきゃいけない。だから死ねない‥とまあ、そんな感じだな」
笑いながらギーシュは盃に入っている酒を呑み干した。
マリコルヌは、「ま、それももっともだなー」、と悩ましげに首を振った。
少年達は、2人のそんな様子を前に不安を覚えた。
「“ガリア”にいる敵って……良く理解らないけど、そんなに恐ろしい連中なのかい?」
レイナールが、ゴクリと唾を呑み込んで尋ねた。
ギーシュは、うむ、と大きく首肯いた。
「恐ろしい」
「強いのかい?」
ギーシュは悩むように腕を組んだ後、大きく首肯いた。
いつの間にか、ギーシュの周りを少年達は取り囲み、その顔を喰い入る様に見詰めている。
「何な風に強いんだ?」
マリコルヌとギーシュは顔を見合わせる。それから、「御前が言えよぉ」といった風に肘を突き合わせる。
「ハッキリ言え! 言ってくれ!」
結局、ギーシュがポツリと言った。
「“エルフ”が着いてる」
“エルフ”……其れは“ハルケギニア”の、“貴族”のみならずヒトにとって、まさに恐怖の象徴とでもいえる存在である。
少年達の顔色が変わった。御互いに顔を見合わせると、はははは……と力なく笑い合う。
ギムリが目を細めてマリコルヌの肩を叩いて尋ねる。
「それ、ホントか?」
「いやもう、それが、ね、ホントのホント。参っちゃうよね」
と、タバサを救出しに行った時のことを想い出したのだろう、マリコルヌが冷や汗を垂らしながら呟く。
そこに、ギーシュが更に追い打ちを掛ける。
「“サーヴァント”だって居るんだ……セイヴァーと同じくらいの強さを持ってるかもしれない」
少年達は、よっこらせ、と立ち上がると、一目散に駆け出そうとする。
ギーシュが大声で制した。
「待ち給え! 諸君! 安心しろ!」
ギーシュのその言葉に、少年達は振り返った。
「僕が……いや、セイヴァーやイーヴァルディがいる」
親指を胸に手を当て、不敵な笑みを浮かべ、直ぐに自信無さげな様子をギーシュは見せる。が、直ぐにまた不敵な笑みを浮かべて呟いた。
少年達は顔に絶望の色を浮かべると、首を振って逃げ出そうとする。
「待て待て! 君達はそれでも“貴族”かね!?」
そのギーシュの言葉で、少年達はやっと我に返った様子を見せ、肘を突いて空を仰ぎ始めた。
「参った……それを言われるとなぁ……」
「なぁに、負けるって決まった訳じゃないぞ。それにだね……」
「何だよ?」
「さっきも言ったが、セイヴァーとイーヴァルディがいる。それに、僕にはどうしてもサイトが帰ってそれっきり、なんて想えないのさ。なんとなく、そのうちにヒョッコリ顔を出すと想うんだよ。そう、僕達が二進も三進も行かなくなった時にね。ここで逃げたら奴に笑われるぞ? 俺は逃げなかったぜってね」
そう言われ、少年達は(そうかもしれない)と想い始めた。
何せ根は単純な連中であるのだから。
「まあ、そうなると逃げ出す訳にはいかんけどさ……」
などと、ぶつくさ言い始める
「だから、せめて今は愉しくやろうじゃないかね。人生は、基本、1度っ切りなんだからな!」
そんなこんなで、少年達はとうとう酒盛りを御っ始めた、とんでもない警邏であるといえるだろう。
広場から見える聖堂の窓の向こうに、小さく巫女姿のルイズを見付けたギムリが、苦々しげに言った。
「全くルイズの奴……僕等がこれだけ気を揉んでいるのに、暢気に御祈りなんかしやがって……“エルフ”と対峙する僕達の身にもなれってんだ」
「おいおい、僕等より、もっとルイズは悩んでいるだろうよ。サイトを帰す、なんて余程の決心が要ったことだろうぜ」
少年達はシンミリとしてしまった。
そこに色取り取りの道化の格好をした楽団が通り掛かり、派手な音楽を掻き鳴らし始めた。敬虔な“ブリミル教徒”達から、「煩い!」、と野次が飛ぶ。
ヒョイッと、ギーシュは立ち上がる。
「おいギーシュ、何処に行くんだ?」
「なあに、そろそろ御祈りも休憩だ。ルイズを慰めてやろうじゃないか」
昼になり、“聖ルティア聖堂”の祭壇で祈りを捧げていた教皇ヴィットーリオが立ち上がった。
側に控えた神官達に付き添われ、奥の控室へと向かう。
昼餐の時間である。
巫女服姿のルイズとティファニアも目配せすると立ち上がった。次いで、窓の外の観衆に向かってペコリと一礼すると、歓声が沸いた。
「とっても素晴らしい典礼だったわね。私、誇らしい気分になったわ。教皇聖下の巫女を勤めさせて頂いてるなんて、未だに良く信じられないわ」
ルイズはにこやかな顔で、隣のティファニアに言った。
「そ、そうね」
「私達、神に選ばれた“系統”の持ち主なんだってことが、とても良く実感できたわ……嗚呼、もっと頑張らなきゃ」
目をキラキラとさせながら語るルイズを見て、(ホントに良かったのかしら?)とティファニアは戸惑いと罪悪感などの色を浮かべた。
ルイズに懇願されて、ティファニアは才人に関する記憶をルイズから消してしまった――奥底へと押しやってしまったのだが……その時よりルイズはこのような感じである。
まるで熱に浮かされたかのように、“ハルケギニア”の理想についてを語り、いかに自分達が重要な存在であるかを、殊更に捲し立てるのである。
「そんな私達の身を狙う“ガリア”の陰謀……何としてでも阻止しないとね!」
「ちょ、ちょっと怖いけどね」
ティファニアが正直に感想を言えば、ルイズは目を吊り上げた。
「怖いなんて! まあ気持ちは理解らないでもないけど、恐怖に負けちゃ駄目よ! それこそ、神と“始祖”に対する冒涜というモノだわ」
「う、うん……」
まるでルイズは、ティファニアの予想通りに、人が変わったかの様子を見せている。それは勿論プライドが高いというところに変化は見受けられない……が、これほどまで極端ではなかったといえるだろう。それだけ、才人の存在が、ルイズの中で大きかったということである。
そんな風にティファニアが戸惑っていると、裏口の扉が開き、どやどやと派手な格好の一団が雪崩れ込んで来た。
「やあ! 御嬢様方! 御機嫌よう!」
「……誰?」
一瞬、ティファニアは入って来た者達が何者であるのか判らなかった。
それぞれ、奇抜かつ奇妙な衣装に身を包んでおり、顔には白粉を塗りたくっていたためである。
「ギーシュ?」
「やあやあやあ、今から昼餐だろ? “アクイレイア”名物のゴンドラにでも乗って、長閑に船旅と洒落込みませんか?」
「ゴンドラ? 素敵ね……でも……私達この聖堂を離れる訳には……」
「良いじゃないか。ちょっとは楽しみがないと、息が詰まってしまうだろ? それに、ハッキリ言うけど陰謀なんて起こりっこないよ。見たけど、街中様々な罠が仕掛けられてる。僕は一応“土”の使い手だからね。そういうことには気が回るのさ」
ギーシュも、伊達に街中をブラブラとしていた訳ではないのであった。
「こんな中、何とかしようと想ったら軍隊でも持って来ないと話にならんと想う……何てね。まあ、“サーヴァント”は別だけど……まあ、取り敢えずパァーッとやろうじゃないかね? パァーッと!」
だが、ルイズは首を横に振った。
「貴男達、何を言ってるの? 私達は聖なる巫女として、教皇聖下の御手伝いをさせて頂いている真っ最中なのよ。それに、いつなんどき敵の襲撃があるか判らないじゃにあ。良いこと……きゃっ!?」
しかし、ギーシュ達はルイズを抱え上げると、ワッショイワッショイと運び始めた。
「ちょっと!? あんた達! 離しなさいよ!」
水路に浮かべられたゴンドラの上まで運ばれたルイズは、そこでギーシュ達“水精霊騎士隊”の馬鹿騒ぎに付き合うことになった。
狭いゴンドラの上は、少年少女達が乗り込むことでギュウギュウとなり、岸辺からは当然笑い声が飛んだ。
「もう! あんた達ってば、不謹慎よ!」
マリコルヌが、そんなルイズに盃を渡す。
ギーシュ達は顔を見合わせた。
「強がってるんだよ……可哀想に。君も辛かったよなあ……」
「何言ってるのよ? 辛い? 誰が?」
だが、ルイズはキョトンとした顔で、ギーシュを見詰める。
道化姿のギーシュは、その格好に似合った間抜けな驚き顔を浮かべてみせた。
「ルイズ……君は悲しくないのかい?」
「私が? どうして? と言うかあんた達、早くこの馬鹿騒ぎを止めなさい!」
そんな風にルイズから怒られたモノだから、思わずギムリが言い返してしまった。
「そんな言い草はないだろ! 大体君がなあ、勝手にサイトを……むぐ!?」
“水精霊騎士隊”の少年達は、ギムリの口を押さえた。
「まあまあまあまあまあ」
だが……それでもルイズはキョトンとしている。
「……サイトって、何?」
ゴンドラの上は、ティファニアとルイズを除いて騒然となった。
「ルイズ! ルイズ! とうとうショックで可怪しくなっちゃったかぁ!」
「仕方ないよな……あれだけ君は……その、サイトに……」
ギーシュ達は顔を押さえて嘆き始めた。
その勢いでゴンドラがグラグラと揺れ、落ちそうになったルイズはギーシュ達を怒鳴り付けた。
「可怪しくなった? もう、良い加減にして! 変なのはあんた達よ。やれ、サイトサイトって……何なのよそれ?」
「ひ、人の名前」
「人の名前? 随分変な名前ね」
「君はその、変な名前の男を“使い魔”にしてたんだぜ?」
「“使い魔”ぁ? 男ぉ? 良い加減なこと言わないで! 私にはまだ“使い魔”はいません!」
そこまでルイズは言い切り、得意げに腕を組む、と、ふんっ! と顔を背けた。
そこで、ギーシュは、隣でモジモジしているティファニアを見詰めた。そして、(そう言えば……彼女はいつだか“アルビオン”で才人とセイヴァーの、偽りの記憶、とやらを消したことがあったっけ……もしかしてあの“魔法”?)と気付いた様子を見せる。
ギーシュ達“水精霊騎士隊”の面々は、ルイズとティファニアが“虚無の担い手”であるということを既に知っている。だからこそ彼女達は、アンリエッタの女官として、教皇の巫女として、大事に扱われているのである。
だがそれでも、(御偉方のことに首を突っ込むのはあまり宜しくない)と肌で感じ取っているために、その辺のことを深く考えたことがなかった。いや、考えないようにしていた。下手すると出世などに響くことや、最悪首が飛ぶ可能性だってあるのだから。
だが、ギーシュは、(でも、今はそんなことを言ってはられないな)と、巫女服のティファニアの顔をジッと覗き込んだ。ティファニアが、記憶に関する“魔法”を扱えることを知っているのは、この中ではギーシュだけであるのだから。
女性に対してそのような態度を取るのことのないギーシュにしては珍しい行動であったために、周りの少年達は目を丸くする。
「ティファニア嬢。御質問だ」
「は、はい」
「……君、もしかしてルイズに“魔法”を掛けたんじゃないのかね?」
ティファニアは、横を向いてプルプルと震え始めた。
ギーシュは、パチン、と指を弾いた。
「ティファニア嬢を拘束し給え」
嬉しそうに、少年達はティファニアに飛び掛かり、ロープでぐるぐる巻きにした。途中、ルイズが、きゃあきゃあ、と喚いて文句を言ったために、同じくロープで縛り上げた。
縛り上げられたティファニアは、ゴンドラの中に転がされ、顔を真っ赤にさせてワナワナと震えている。その理由は言うまでもないであろう。
「ちょっと! あんた達何考えてるのよ!? 女王陛下の近衛隊でしょ――ッ! それが私達を縛るなんてどーゆーこと? 良い加減にしないと怒るわよッ! 陛下に言って叱って頂きますからね!」
そんなルイズを無視して、ギーシュはティファニアに詰め寄った。
「ルイズに“魔法”を掛けたね?」
「か、掛けてません」
ギーシュは再び指を、パチン、と弾いた。
道化用の三角巾を冠ったマリコルヌが、ノリノリでティファニアの身体を、手に持った羽根で擽り始める。
「吐けや。御嬢ちゃん」
「ひ!? ひう! 擽らないで! 擽らないでッ!」
身体が敏感なティファニアは、それだけで死にそうになってしまうほどの感覚を覚えた。
グッタリとしたティファニアに、更にギーシュは顔を近付けた。
「僕は女性への乱暴を好まない。でも、時と場合によるぜ。マリコルヌ、ティファニア嬢の胸が本物かどうか、調べて差し上げろ」
「好い命令だ。実に好い命令だ。隊長殿」
マリコルヌの手が、サワサワと厭らしく動きながら、ティファニアの胸へと近付く。
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!」
すると、ティファニアはいきなり謝り始めた。
「やっぱりな」
「だって、そうした方が良いと想ったんだもの!」
「ちょっと! あんた達! ティファニアに何してんのよ!?」
怒り狂うルイズに、ギーシュは優しい声で言った。
「なあルイズ。ちょっと良いかい?」
「ホントに全くもう、何考えてんのよ!? 早くこのロープを解いて!」
「君には“使い魔”がいた。僕達と同じくらいの少年だ。君はそいつに何度も助けられた。で、彼は君のことが好きだった。ホントに忘れちまったのかい?」
ギーシュにそう言われても、ルイズはキョトンとするばかりである。
「あのね? 何度言えば理解るの? 私に“使い魔”はいないのよ?」
「春の“召喚の儀”だ。君は何回も“サモン・サーヴァント”を失敗して、最後に彼を喚び出した」
「ああ。私はその時、結局何も喚び出せなかったの。その時は落ち込んだけどね……ちゃんと理由があったの。その理由は私の“系統”に関することだから、あんた達に話せないけど……見てなさい、そのうち、とんでもない強力な“使い魔”が現れるわ」
ギーシュは、ガックリと項垂れた。それから、恨めしそうにティファニアの方を見詰める。
哀しそうに、ティファニアは俯いた。
「……ルイズがそう言うんなら、そっちの方が幸せなのかなって……女王陛下も、シオンも、セイヴァーも……私には、そう想ったの……だって、ホントに苦しそうだったから」
「僕は男だからね。そうは想えない。男にとって、想い出は宝石だからね。でも、ルイズがそう決めたって言うんなら、僕が口を出すべきことじゃないのかもしれない。もしかすると、セイヴァーもそう思ったからこそなのかもしれないしね」
それからギーシュは大きく溜息を吐いた。
「でも、納得はできないけどね」
仲間達を促し、ギーシュは、ルイズとティファニアを拘束しているロープを解いてやった。
ゴンドラを岸に着けると、ギーシュ達は下りて行く。
場に残されたルイズは、プリプリしながら其の背を見送った。
「ホントに、あいつ等何考えてるのよ!?」
そんなルイズを見詰めながら、ティファニアは、(ホントに、私は正しかったのかしら? これしか方法はなかったのかしら? 良く判らない。理解らないわ)と想い、何やら悲しく成って、涙を流した。
そんなティファニアを、ルイズは慰め始めた。
「どうしたの? 大丈夫? もう、あいつ等ってホントにデリカシーがないんだから! 後できっちり陛下に叱って頂きましょう? ね? ティファニア?」
「よお、“
「セイヴァー……」
ゴンドラから降りて歩いていた少年達は、足を止め声を掛けた俺の方へと振り返った。
彼等の視線は妙に複雑な感情が込められていることが判る。やりきれない、といった様子である。
「なあ、セイヴァー。御前は、どうしてサイトが帰ることに何も言わなかったんだ? 何故、ルイズの記憶を消すことに反対しなかったんだ?」
少年達が詰め寄り、問い掛けて来る。
「当然、俺は彼女等の意志を尊重した。ただそれだけのことだ」
「なら! サイトはどうなんだよ!? サイトの意思は!」
「ああ、確かにあいつの意思もまた尊重すべきだな。だが御前等、才人が本当に帰ったと想っているのか?」
俺のその言葉に、少年達は疑問符を浮かべるが、直ぐに感情を爆発させる。
が、ギーシュとマリコルヌ、レイナールの3人は中でも冷静な様子を見せ、尋ねて来た。
「それってどういう意味だい?」
「先ず、御前達“メイジ”にとって“サモン・サーヴァント”によって喚び出した、喚び出された“使い魔”とは一体どういった存在だ?」
「それは勿論」
「そうだ、御前達の考えている通りだ。才人は、御前達かららすると“異世界”出身であり、そこから喚び出された。“使い魔”になるべく喚び出されるのは、主人となる“メイジ”の素質、“系統”などが関係している。才人は1度死んだが、蘇り、そして再“契約”した。更には、“サーヴァント”としても“契約”を果たした。ルイズには、まだ“令呪”が残っていただろう?」
「“令呪”って、あの赤い痣のようなモノかい?」
「そうだ。そう言った数度出逢いと別れを繰り返しては、それでも“契約”が続いている。“サモン・サーヴァント”の件もそうだが、“聖杯戦争”に於ける“サーヴァント”の“召喚”には先ず、その目的の“英霊”を喚び出すための“触媒”が必要だ……が、それなしで喚び出され、“契約”することができるのは、余程縁があるか、相性が良いかのどちらかだ。この点に関してはかなり共通しているな」
少年達の1人が、「確かに」と呟く。
「何よりも、“使い魔”とその主は、“愛”と“運命”によって繋がれている。そんな強い繋がりのある2人が、そう簡単に離別する訳がない。死んだ訳じゃないからな……」
「でも、それとことはまた話が別だ。サイトは、その、“ちきゅう”に帰ったんだろう?」
「さて、それはどうだろうな? 異なる“世界”を繋げるのは、そうそう簡単なモノではないのだからな」
「だから、サイトが本当に帰っちゃったのかを……いや、待てよ。確か、君にとってこの世界は、架空のモノだったんだよな? なら」
「さてどうだろな? 御前等に俺から言えることは、1つだけだ。信じろ」
深夜……双月の明かりが曇り空に淡い光を灯している。
先日、教皇の御召艦――“聖マルコー号”が入港した“アクイレイア港”に、1隻の大型船が滑り込んで来た。大きな翼を取り付けた異様な雰囲気のその艦は、着水のショックでバランスを崩すと、大きく船体を左右に振った。巨大な翼が海面を叩く。
勢い余って岸壁に打つかりそうになったが、甲板から幾重にも“風魔法”が飛んだ。
空気の塊が喫し壁と“フネ”の間に入り込み、クッションになって衝突を免れた。
入港して来たのは、いつもより喫水を大幅に下げた“オストラント号”であった。
甲板に並んだ“貴族”が幾つもの“風魔法”を用いて、やっとのことでその巨体を安定させた。
次いで黒尽くめの男達が港の石造りの倉庫の陰から現れて次々に催合を投げ、“オストラント号”を岸壁へと固定した。
すると、ガラガラと音がして“オストラント号”の艦首が鳥の嘴であるかのように上下に開いた。大量に物資を搭載するための、コルベール設計による機構である。
舌のように突き出して岸壁に接した下側の嘴のようなモノに、何本もの丸太が並べられた。丸太の左右には“貴族”達が並ぶ。その数は大凡20名。先程の甲板の上から、“風魔法”を飛ばした連中である。
“貴族”達の顔には疲労と緊張の色が浮かんでいるのが見て取れる。無理もないことであった。この“アクイレイア”まで大きくて重い荷物を運ばされて来たのだから……。
嘴の奥の貨物庫から、ゴロゴロと音がして、大きな何かが“魔法”によって運ばれて来た。ちょっとした2階建ての家ほどもあるであろうその物体は……“ロマリア”の“カタコンベ”にあるはずの“タイガー戦車”であった。
“タイガー戦車”の下に並べた丸太でもって……かつて、築城の際に大きな石を運んだ時のように、“タイガー戦車”を移動させようというのである。
戦車の上に立って、“ロマリア貴族”達に指示を飛ばしているのはコルベールであった。
「諸君! 注意してくれ給えよ! “硬化”を掛けてある丸太だって、120,000“リーブル”の重さの鉄塊相手では幾らも保たぬ!」
成る程、その重量に耐えられず、嘴がギリギリと悲鳴を上げている。
そして、恐れていた事態が起こった。
掛けられた“硬化”の耐荷重を超えた重量に、1本の丸太がグシャッと潰れてしまったのである。
ユックリと“タイガー戦車”の巨大が右に傾いた。このままではバランスが崩れ、海に落っこちてしまうだろう。
「右! 右ですぞ! 早く! “レピュテーション”を!」
嘴の左右に並んだ“風”の使い手達が、隙かさず“レピュテーション”を唱え、“タイガー戦車”の右側を持ち上げる。これほどの数の“メイジ”をもってしても、浮かび上げることは到底適わないのである。だが、嘴の軋みは止んだ。
「御苦労様、俺が運ぶから下ろしてくれて構わないよ」
そう言って、俺は建物の陰から“タイガー戦車”へと近付き、軽く持ち上げ移動させる。
そのように、“メイジ”達は、上に立っているコルベールは驚いた様子で見詰めて来る。
「セ、セイヴァー君……」
「やあ、コルベール。御苦労様、だよ」
挨拶を済ませ、俺はユックリと“タイガー戦車”を石畳の広場へと下ろした。
コルベールはホッと行きを吐くと、戦車の上でしゃがみ込んだ。もう、“フネ”が墜落したり、戦車を海に落としてしまうなどといった心配はない。そのために、安心し切って、身体から力が抜けてしまったのである。
「もう良いぞ。ミス・ツェルプストー。ミス・タバサ」
“タイガー戦車”の砲塔上面の司令塔ハッチの蓋が横にズレて開き、キュルケが顔を出した。頭には、車内に在ったで在あろう黒い士官帽を冠っている。
次いで隣の装填手用のハッチが開き、タバサが小さな頭をチョコンと出した。
2人は、中で“魔法”を使い、戦車のバランスを保っていたのである。
「2人共、御疲れ様」
「有難う、セイヴァー」
「有難う」
再会の挨拶と労いの言葉を俺が掛け終えたのと同時に、集まった黒装束の男達の中から、白い衣装に身を包んだ少年が現れ、コルベールに向けて一礼した。神官装束であるというのにも関わらず、その礼は軍人のそれであるだろう。
ジュリオである。
「御苦労様です。ミスタ・コルベール。貴男がいなければ、この“工芸品”はここまで運ぶことができなかった」
コルベールは、ヒョイッ、と戦車の上から跳び降りると、ジュリオと礼を交わした。
「この“オストラント号”は、多少の貨物を積めるように設計したが……これほどの重量のモノは想定外だ。20人もの“メイジ”に、絶えず“レピュテーション”を唱えさせ、それでやっと船底が抜けぬように処理できた。ホントだったら、“フネ”が浮かび上がることすらできないんだ。今回限りにして欲しいね」
コルベールがそう言うと、ジュリオは笑みを浮かべた。
「勿論ですとも。そう何度も無茶をさせるつもりはありません」
それから、ジュリオは興味深そうに、“タイガー戦車”の後ろから運ばれて来る大きな樽を目にして言った。
“ゼロ戦”用の“ガソリン”が詰められた樽である。
「で、こいつを動かすことはできそうですかね?」
「まあ何とかなるだろう。どうやら、この“工芸品”も、あの“竜の羽衣”と同じく、がそりん、で動くようだ。まあ、多少の質の違いはあるようだがね。取り敢えず、構造を把握する時間が必要だ。直ぐという訳には行かん。セイヴァー君、手伝ってくれないかね?」
「元よりそのつもりだが」
「結構です」
コルベールの言葉に、ジュリオは了承の一礼をした。
「さて、式典警護に使うのは良いが……ちょっと大袈裟過ぎんかね?」
コルベールは大きな鉄の塊……“タイガー戦車”を見詰めながら呟いた。この“工芸品”を初めて見た時はそれはもう、驚いた。飛行機械を見た時も驚きはしたが、今回もそれに負けず劣らずといったほどであった。(これほどの鉄を……鋼鉄を用いて、寸分の狂いなく組み上げられた鉄の砦。車体後部に納められた、“竜の羽衣”以上の技術で作られたであろう、えんじん。突き出た大砲など、完全な芸術品だ。ここから撃ち出される砲弾はどれほどの精度を持って敵に届くのだろう? どれほどの威力を持って敵を破壊するのだろう?)と感想を抱いたのであった。
純粋な知的好奇心がコルベールの中で膨れ上がり、彼は早く試してみたくて堪らないといった様子を見せる。
が、コルベールは、(しかし……自分はこれを何とか動かすことはできるだろうが、戦わせる、ことは無理だ。それにはサイト君の左手の力やセイヴァー君の力が要る。2人がいなければ、これはただの大きな鉄の箱に過ぎない)と冷静に考えてもいた。
「ところでサイト君はどうしたね? “ロマリア”で呑み別れたっ切りでね。この“アクイレイア”に来ているのだろう? 逢わせてくれんかね?」
するとジュリオは、俺に目配せをして、それから首を横に振った。
「彼は今、旅、に出ていましてね。直ぐという訳にはいきません」
「旅?」
「ええ」
ニッコリと、ジュリオは笑った。
コルベールは、(こんな時に旅?)と当然訝しんだ。
才人は、アンリエッタ女王陛下の近衛隊の副隊長である、
コルベールは、(何やら密命でも帯びたのかもしれん)と想い直し、それ以上の追求を止めた。
黒装束の男達は、取り敢えず倉庫に運び込むべく、“タイガー戦車”の全面に取り付けられたフックにワイヤーを繋げる。
「ああ、いや、待て。俺が運ぶから」
そう言って、俺は“タイガー戦車”を、黒装束の男の指示に従い運ぶ。
戦車のハッチから顔を出した後に降りたキュルケは、ジュリオと何やら打ち合わせを行っているコルベールを、細めた目で見守っていた。
「何だか臭いわね……街はとっても綺麗でよろしいけど。中は泥で泥々だわ」
キュルケが呟くと、戦車から同時に降りたタバサが首肯いた。
「貴女の騎士様、一体何をさせられているのかしらね?」
帽子を外すと、キュルケはヒョイッとそれをタバサに冠せた。
名実共に才人の記憶を消すことで“聖女”となったルイズは、部屋に在るベッドで寝ていた。
どこか幸せそうな寝顔を浮かべている。が、直ぐにその真逆の恐怖などといった感情を含んだ表情を浮かべる。
(誰……? 誰なの、貴方は……?)
ルイズは夢の中で、自分と近い年齢の少年と笑い合っていた。
が、その少年の姿はハッキリとはしていない。ボヤけている。いや、真っ黒な影に覆われているのである。
それでも、ルイズは。そんな少年と思しき影のようなモノと一緒にいることで幸せなどといった感情を覚えた。
小舟の上で押し倒されて唇を重ねる……何故か、その少年らしき影に鞭で叩いたり、“魔法”を使用して攻撃したりしている……少年らしき影から「好きだよ」と囁かれる。
が……。
その影は、唐突に掻き消える。
遠くへと、影は歩み去って行く。
夢の中のルイズは、それを必死になって追い掛ける。
(待って! 行かないで! 一緒にいて! 私はまだ、貴男に言えてないのっ! 伝えることができてない! だから――)
そこで、ルイズは目を覚ました。
身体を起こし、夢であることを再確認する。
それから、ルイズは自身の頬が濡れているということに気付いた。