「いやぁぁぁ」
鋭い悲鳴と共に女武闘家の服がゴブリン達の手によって引き裂かれ、白い肌が向きだにしなる。
「いや!離して!!」
剣士に群がっていたゴブリン達も加わり、女武闘家の手足を抑え付け、数体のゴブリンとそれより遥かに巨体のゴブリン、田舎者[ボブ]が肩に弓が刺さった女神官と腹部から血を流した瀕死状態の女魔術士の元へ受かっていく。
(嫌…このままゴブリンに犯されて死ぬまで苗床にされる何て…嫌…誰か助けて…誰かぁ…)
必死に手足をバタつかせ抵抗するが、ゴブリン達の手からは逃れられない。
「…誰か助けて!!」
無意味な悲鳴をあげた瞬間、自分の手足を抑えていたゴブリンが白目を向き事切れ倒れていく。
「な…なに?…」
ゴブリンの死体を見ると頭部にダガーナイフが突き刺さっていて、洞窟の入口側から小さな光が近づいて来ていた。
「な…なに!?」
田舎者や残りのゴブリン達も小さな明かりと共に近づいてくるソレから流れてくる威圧、殺気を感じ取ったらしく、自分達には目もくれず威嚇しながら小さな明かりの方へ向かっていく。
「だ…誰か…助けに来てくれたの?…」
肉や骨が砕け散り音が鳴り響く松明がきえた暗闇を見つめていると何かが足元に転がって来てそれに目を凝らし見ると、先程の田舎者の生首だった。
「ひっ!?」
恐怖で体がこわばっていると、ゆっくりこちらに近づいてくる足音で我に返る。
「松明消えちまったな…」
「大丈夫だ、暗闇に目がなれた。お前は見えているのだろ?」
「まぁな」
「人の…声…」
「お!生きてる大丈夫か?…ほらこれ」
「ぼ…冒険者…」
暗がりから現れ黒い鎧を纏い自分の姿を見てマントを差し出す冒険者と、消えた松明に火を灯す冒険者を見て自分達が救われた事に体の力が抜ける。
「あ…ありがとうございます…」
「いいさ気にするな、よく頑張ったな」
マントを受け取り、纏うと大きな手で頭を撫でられる。
「そっちの子肩に矢が刺さってる!、おい!そっちの魔術師の子は重傷じゃないか!?…ゴブリンスレイヤーその子達にも明かりを…ほら立てるか?」
「だ…大丈夫です」
支えられ立ち上がり、おぼつかない足取りで女神官と女魔術師の元へ向かう。
「ゴブリンの矢か…引き抜くぞ!間に合わなくなる」
松明を持った冒険者は女神官の元に行くとポーチから回復薬と解毒薬に包帯を取り出し、肩に刺さった矢を握る。
「ゴブリンの武器には奴らの糞尿や毒草で作った毒が塗られている、一気に抜くぞ!」
「は…はい!…クッ…あ”あぁ」
劈く悲鳴と共に肩から矢が引き抜かれる。
「早く飲め」
「か…彼女に…使ってあげて…くれませんか…」
女神官が指を刺したのは一番重傷の女魔術師だった。
「息はあるが完全に毒が回ってる…これじゃ君の奇跡も解毒薬も効果がない…」
女武闘家を座らせ意識のない女魔術師の傷を見るが毒の影響で傷口が既に化膿し始め、周りの皮膚が黒く壊死していた。
「そんな…」
「何とかたならいんですか!?せっかく助かったのに…諦める何て…」
「そうだな、まだ諦めるには早いよな!」
涙を流す女武闘家の頭をもう一度撫でポーチから包を取り出し、ドス黒い丸い苔の様な物ををとりだし傷口に塗る。
「それは?…」
「蠱毒と言う苔の一種さ」
「蠱毒!?神殿で教わったんですがどんな奇跡も効かない、解毒薬もない猛毒じゃないですか!!そんな物をどうして傷口に?」
回復薬を飲んだ女神官が駆け寄り、紫色に変色した蠱毒を見つめる。
「蠱毒は特殊でな、同じ宿主の他の毒を解毒して自分だけさらに増殖するんだ、それとコイツに奇跡も解毒薬必要ないよ」
白い粉末が入った瓶の中に水筒の水を注ぎ、軽くまぜ蠱毒にかける
「それは?」
「塩水だ蠱毒は塩に弱いから海風が届く沿岸部には生えないんだ、ほら」
塩水をかけた蠱毒が白くなりまるでカサブタの様になった。
「凄い…」
「塩水をかけた蠱毒は完全に無害、止血もしてくれるからこのまま医者に連れていこう」
「ここから先は俺一人で十分だ、お前が医者つれてってやれ」
「いきなりだな、ゴブリンスレイヤー?」
「ここの巣はあまり大きくないし、殆どのゴブリンはここで狩れたから奥にはシャーマンと数体のゴブリンだけだ」
「はぁ分かったよ」
顔色が良くなった女魔術師を抱き上げ、奥に進んでいくゴブリンスレイヤーを見送る。
「あの!私は着いていきます!照らす事位なら出来ます!」
「なら私も!」
「大丈夫です、貴女はこの人と一緒に医者に行ってください」
女神官が両手で杖を持ち、ゴブリンスレイヤーの後を追う。
「おい!…行っちまったよ…仕方ない、行くぞ」