「ん…ここは?…」
目を覚ますと見知らぬ天井が広がっていて、体を起こし周りを確認すると街病院のベッドの上に横たわっている事に気がつく。
「おぉ目が覚めたか」
「私…どうしてここに?…それにこの服…」
「ワシの娘の服だサイズが合って良かったな、夜遅くに気を失ったお前さんとそこの魔術師のお嬢ちゃんを黒い鎧の冒険者が運んで来たんだ」
「魔術師の…お嬢ちゃん?…」
自分の近場にあるベッドに、寝息を立て横たわる同じパーティだった女魔術師が無事だった事に大きく息を吐く。
「後四日殆どで目は覚めるだろう、二人分の代金は既に受け取っている。君達を連れてきた冒険者なら集会所近くの宿に泊まっているから会って来るといい」
「おはようヴェル」
「よぉ旦那、今日はどうするよ?」
「そうだなぁ…家見たいし…武具屋にも行きたいし…ん?」
今日の予定を考えながらヴェルが繋がれている綱を外し、大通りに出ると人混みが出来ていて騒いでいるのが目に入った。
「何だあれ?」
「さぁ喧嘩か?行ってみるか旦那?」
「そうだな」
ヴェルには乗らず手網を引き人混みの方へ近づく。
「そこの店から奪った武器を返すんだ!!」
黒い鎧の冒険者が泊まっている宿に向かう途中、武具屋の店主の隙をついて料金を支払わずに剣を盗んで店から出てくる三人組の男達を見つけ呼び止める。
「ふん、知らねぇよ」
「しつけぇーんだよ!!」
「失せな、じゃねぇと痛い目見るぜ嬢ちゃん?」
「知らない?、ならこれは何だ?」
白を切る細身の男が持つ鞘に入った剣を取り上げる。
「な!?クソ返せ!!」
「この剣あんたが使うには重すぎるし大きすぎる!扱い慣れてない証拠に重さで重心が偏ってた!」
「チッやっちまえ!!」
顔に刺青が入った男がナイフを取り出し向かって来るが左にかわし、下顎目掛け膝蹴りを食らわす。
「な!?」
刺青の男が気絶したのを確認し細身の男の背後に周り、うなじに手刀を当て気を失わせる。
「…おい!旦那見てみろよ…」
「ん?…あの子昨日の?」
「…あぁ、あの子結構やるぜ?代の大人が二人も落されたぜ?あのおデブちゃんも時間の問題だぜ?…」
「…あの一体この騒ぎは?」
「ん?あぁ、あの男達が武具屋から武器を盗んだのをあの子が見たらしいんだ」
「ほう…ちょっとすまんね」
状況を把握し人混みを掻き分け中心に向かう。
「このクソガキ!!」
「フッ!!」
肥満男の力任せのパンチを腰を下げかわし、空いた腹部目掛け正拳突きを食らわせる。
「ウグッ!?…クソ…ちょこまかと」
全力で打った正拳突きはダメージは入ったが肥満男をダウンするまでには至らず、腹部を押さえ数歩下がらせるだけだった。
(ダメだ…体格差とあの脂肪で衝撃が奥まで届かない…)
「スキありだ!クソガキィ!!」
「しまっ!?」
考え事をしていたスキをつかれ肥満男の拳が目の前まで迫っていた。
「イデデデ!?」
「え?…」
肥満男の情けない声に恐怖で閉じた目を開くと、見覚えのある黒い鎧の冒険者が肥満男の手首を掴んでいた。
「あ!貴方は!!」
「よう、もう怪我は平気なのか?」
「は…はい…」
「そっかんでさっきの正拳突きな、もっと腰を深くさげて腰と腕を捻って打ってみな」
「え?…は…はい!」
「な!?てめぇ何なんだ!!」
言われた通りに腰を何時も以上に下げ、腰と腕を捻り肥満男の腹部目掛け打つ。
「ウグッ!!」
正拳突きが当たった瞬間。ドスと鈍い音が鳴り、先程とは比べ物にならないくらいの衝撃が体を貫通し肥満男の背中側の服が丸く破けた。