「ん…」
「気がついた…わね」
目を覚ますと泣きボクロが印象的な女魔術師が顔を覗き込み、微笑んでいた。
「貴女は?それにここは?…痛っ…」
上半身を起こすと腹部に激痛が走った。
「まだ動いては…ダメよ、傷が開いてしまう…わ…ここは町病院…よ」
「き…傷?」
泣きボクロの銀等級の女魔術の手を借り再び横になり自分の体を見ると、至る所に包帯が巻かれていた。
「何処まで覚えている…かしら?、ゴブリンの洞窟…で、貴女達のパーティーが壊滅しかけた時の…事を」
「洞窟で…ゴブリンに腹部を…刺されてからは…他の皆は!?、貴女が助けてくれたんですか!?」
「助けたのは私じゃない…わ…生き残った…のは…貴女と女神官と女武闘家…よ、剣士の坊やはダメだったよう…ね」
「そう…ですか…他の二人は今どうしているんですか?」
「二人共貴女達を助けた冒険者達の弟子になった…わ…」
「そう…ですか…」
「貴女はどうする…の?」
「弱い私を弟子にとる人なんていませんよ…杖のない魔術師の私なんて…」
「フフ、杖ってこれの事…かしら?」
「え…」
涙を流す女魔術に彼女が学院卒業の証として貰った杖をさしだす。
「ど…どうして!!確かにゴブリンに折られたのに!?」
痛みを忘れ上半身を起こし杖を受け取ると折られた箇所をじっくり見るが、嘘の様に傷一つ付いていなかった。
「貴女達を助けた冒険者の一人…が…防具屋に頼んで修理して貰った…のよ…渡すように頼まれた…の、貴女の大切な物なのよ…ね?」
「は…い…」
「もう一つ頼まれている…の…」
ベッドの端に腰掛け、女魔術の涙をふく。
「貴女が良けれ…ば…私の弟子に…ならない?」
「わ…私が?…」
「そう…よ…貴女が目覚め…たら…面倒をみて欲しい…と…武闘家のお嬢さんから聞いた…わ…その歳…で火矢が、二発…も放てる…らしいわ…ね…」
「私でも…強くなれますか?」
「勿論、よ…」
「もう少し難易度が高い依頼こなさないと昇級が…」
「よせよぉ、無理すると怪我すんぞ?」
新しい依頼が掲示板に張り出され、大勢の冒険者で賑わうギルド内。
様々な難易度の依頼がある中でやはり難易度が低く、報酬が安いゴブリン討伐の依頼書が掲示板に貼り残されていた。
「ハァ…」
「どうしたの?ため息なんてついて」
受付で若い受付嬢が深い溜息をつくと、もう一人の受付嬢が心配そうに声をかける。
「今日でゴブリンの依頼が五件も来てて…」
「あぁ…」
ゴブリンは絶えない。
数が多く人間の子度程の身体能力を持った怪物で、新人の冒険者でも討伐が可能。
故に国は動かない。
「ハァ…新人の冒険者に当たらせるしかないとしても万が一の事が…でも何もしなければ村が…うぅ…胃が痛い…」
「アハハ大丈夫?…そう言えばまだ彼来てないのね?」
「彼?…」
「ほら、ゴブリン討伐の依頼を好き好んで受けている…」
「へぇ、ここがこの街のギルドか」
ドアベルの音と共に、漆黒の鎧を纏った冒険者と真新しい装備を纏った女の冒険者がギルドに入って来るのがカウンターから目に入った。
「凄い装備…見かけない冒険者ね?あれ?…あの子って…」
「確か最近この街に来たって言う冒険者じゃない?」
「最近この街に?…」
(あんな強そうな冒険者がゴブリン討伐を受けてくれたらなぁ…)
異様な雰囲気を放つ漆黒の鎧を纏った冒険者が掲示板に進んで行くと、周りの冒険者達が無言で避けていく。
先程までの賑わいがまるで嘘の様だ。
「師匠何の依頼を受けるんですか?」
「まずはゴブリン討伐の…あった五件かよし」
掲示板から依頼書を剥がし、カウンターまで持っていく。
「この依頼を」
「はい…え!?…ゴブリン討伐…ですか?」
「あぁ、今俺の弟子の修行中でな」
漆黒の鎧の冒険者から隣にいる女武闘家の顔を見ると、それは以前新人の冒険者のパーティーの一人だと思い出した。
(そうだ、あの時の…)
「最近この街に来た冒険者ですよね?すいませんが、ヘルムを外して顔と身分証の確認をさせて頂きたいのですが」
「あいよ」
「え!?…」
顔を覆うヘルムが独りでに動き素顔が顕になり首元から出された身分証を見た瞬間、あまりの驚きで声が出なかった。
(銀色や金色じゃない!?それに…もしかしてあの鎧は魔装!?…じゃああの背負ってる剣は…魔剣!?…漆黒の魔装に二振りの魔剣…ま…まさか…史上数人しかいない伝説の白金等級冒険者の一人…)
「は…白金…等級の…ぼ…冒険者…過去に魔神王をたった一人で討ち取った…英雄…ジーク!?…」
『えーー!!、英雄ジーク!!』
受付嬢の声に周りの冒険者達が驚きの表情を浮かべる。
「あぁ、そう呼ばれている」