魔女ノエルと8人の大魔女 〜この世で最初の魔女集会〜   作:もーる

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8頁目.マリンと旅芸人と怒髪天と……

 突然ですが、自己紹介を致します。

 

 わたくしはマリン。

 西の国のセプタ生まれセプタ育ちの魔女ですわ!

 火の魔法をある程度は操れるのですけれど、今そんなことはどうでもいいんですわ!

 一大事ですのよ!!

 

 

「そろそろ30歳になるというのに、男の1人も捕まえられてないんですのよ〜〜!!」

 

 

***

 

 

 マリンは史上50人目の男にフラれ、道端で泣きじゃくっている最中であった。

 

 

「うぅぅ……ただわたくしの修行に付き合って欲しかっただけでしたのに……。何が『僕の作った機械はあなたの炎には敵いません』よ!! 機械仕掛けの国の住人なら、耐火性の機械くらい作ってみなさいよ! うわあぁぁん……」

 

 

 彼女は魔法の修行という名目で家を出て、その旅の途中でノーリスに来ていたのだった。

 

 

「機械仕掛けの国と聞いて、とても強い機械を作っている方がいらっしゃると思っていたわたくしがバカでしたわね……。」

 

 

 マリンは大きな溜息をつく。

 

 

「これじゃ修行になりませんわ……。仕方ないですが、また別の国に……って、ん??」

 

 

 彼女の目に映ったのは、青いふたつ結びの髪の少女。

 そしてその隣にいる女であった。

 それを見たマリンはささっと物陰に隠れてしまった。

 

 

「このわたくしが見間違うわけはありませんが……な、なぜあの子が……? あとあの女は一体……」

 

 

 マリンはその場で頭を抱え、うんうんと唸っていた。

 その時だった。

 

 

「何かお困りですか〜?」

 

 

 誰かがマリンの肩を後ろから叩く。

 

 

「きゃぁぁ!? きゅ、急に驚かせないでくださいまし!?」

 

「あぁ〜ゴメンなさい! 何か困ってるように見えたもんだから!」

 

 

 マリンの目の前には、道化師のような格好をした少女がいた。

 少女は後ろへ軽くステップしてぺこりと頭を下げる。

 

 

「困っているといえば困っていますが……わたくし1人で何とかなりますわ!」

 

「その割には悩んでいたようだったけど? 私でいいなら話聞くよ?」

 

「うーん……話すにも信用できる人か分からないことには……」

 

「しょうがないなぁ……それならあの蒼髪の女の子の隣にいる人、あの人が誰なのか探ってあげようか?」

 

「話さなくても分かってるじゃありませんの!?」

 

 

 少女はニヤリと笑う。

 

 

「じゃあこれで報告を持ち帰ったら信用してくれるね?」

 

 

 マリンはピンときた顔をし、頭をかいた。

 

 

「これは一本取られましたわね……」

 

「おっ、ということは?」

 

「お願いしますわ。わたくしはあそこの喫茶店で待ってますので」

 

「了解、すぐ戻るよ!」

 

 

 そうして出て行こうとする少女をマリンが一度引き止める。

 

 

「あぁ、ちょっと待ってくださいな。お名前を聞いていませんでしたわね。わたくしはマリン。魔女ですわ」

 

「あぁ、こりゃご丁寧にどうも。私はルージェンヌ。長いからルー、って呼んでくれていいよ。今は手品師ってところかな。魔女さんってのは初めて見たよ」

 

「手品師……なるほど。それでそんな服装を……」

 

 

 マリンはルージェンヌと名乗る少女の服をまじまじと見つめる。

 

 

「んー、まぁとりあえず自己紹介も済んだし、私はさっきの依頼をさっさと終わらせようかな!」

 

「そうですわね、よろしくお願いしますわ!」

 

 

 そうしてルージェンヌは、目標へと駆けて行った。

 

 

***

 

 

 それから30分後。

 

 

「遅いですわねぇ……すぐ戻るとか言ってた割には……。あ、店員さん、紅茶をもう一杯頂けます?」

 

 

 トランプ勝負が行われているとも知らず、ただひとり待ち続けるマリンなのであった。

 マリンは待っている間に指にはめられた指輪を眺める。

 

 

「そういえば……わたくしがセプタを出て、もう7年ですか……」

 

 

 マリンは紅茶をお代わりし、飲み干してからゆっくり前へ倒れこみ、机に頭を置く。

 

 

「それだというのに……。良い男は見つかっても、みーんな『あなたにはついていけない』の一点張り……。どうしてですの〜!」

 

 

 オシャレな喫茶店も紅茶をヤケ飲みする客がいるだけで、居酒屋のような空気を放ってしまうものである。

 その様子を見かねてか、1人の店員がマリンの元にやってきた。

 

 

「あの〜お客様〜? もう少しお静かに……。他のお客様の迷惑になりますので……」

 

「あ、これは失礼しましたわ。オ、オホホホホ〜」

 

「(いけないいけない……。とにかく今はルージェンヌ……ルーさんの報告を待たなければ!)」

 

 

***

 

 

 さらにそれから1時間後。

 ようやくルージェンヌが戻ってきた。

 

 

「遅かった……いや、遅すぎですわ! もう紅茶10杯目ですわよ!?」

 

「いや〜ゴメン。まさかあの魔女さん、私の手品にケチつけるとは思わなかったもので……」

 

「は? 今、何と?」

 

 

 この時、マリンは別に遅くなった理由を聞き返したわけではなかった。

 

 

「私の手品があの魔女さんにケチをつけられたって……」

 

「……()()……ですって??」

 

「うん。あの女性は魔女で、隣の子はその弟子らしいね」

 

「は……はあぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 ルージェンヌは耳を押さえる。

 そしてマリンが落ち着くまで待って、聞き返す。

 

 

「落ち着いた? それで、あの子とあなたはどんな関係なの?」

 

「まぁ、依頼はこなして来ましたし話してもいいですわね……。あの子はサフィア。わたくしの()ですわ。でも自分が魔女だってことは知らないはず……」

 

「妹……か……」

 

 

 ルージェンヌの顔が突然暗くなる。

 

 

「えぇ、わたくしの愛する可愛い妹です。母から魔女のことは内緒にするよう言われていますから、本当は魔女なんて知らないはず……」

 

「じゃあ知らぬ間にあの人から何か吹き込まれ………っ!?」

 

 

 ルージェンヌは目の前の光景に恐怖し、手からカップを落として割ってしまった。

 彼女の目の前には、怒髪天を突くほどの殺意を放つマリンがいたのである。

 

 

「その魔女はどこにいるの……?」

 

「ひゃ、ひゃいっ!? え、ええと、そこの通りの突き当たりの宿に泊まってるそうです……はい……」

 

「……分かった。感謝するわ。ではまた……」

 

 

 マリンは怒りながらも紅茶10杯分のお金を机の上に置き、ノエルたちのいる宿に鬼の形相で猛進していくのであった。

 

 

「こ、怖かったぁ……。死ぬかと思った……」

 

 

 ルージェンヌはその場で腰を抜かしてしまっていた。

 

 

「そういやあの人も魔女だった……。その気になれば私なんて一瞬で殺されるんだろうね……。それに急に口調まで変わっちゃうんだもの……」

 

 

 そう言いながら、彼女は紅茶11杯分のお金とカップの弁償代を払い、伸びをする。

 そして、街の外れにあるカジノへと消えていくのであった。




今回出てきたキャラクター、ルージェンヌはゆらる(@Zillah_LA)さんからお借りしました。
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