魔女ノエルと8人の大魔女 〜この世で最初の魔女集会〜   作:もーる

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9頁目.ノエルとドロボーと愚か者と……

 その日の夜、宿にて。

 

 

「また負けたぁ……。強いな、サフィーは」

 

「い、いやいや、あたしの魔法が今回のトランプ勝負に有利なだけですって!」

 

 

 2人はベッドの上で『魔法有りの神経衰弱』をしていた。

 サフィアが得意とする水魔法は、氷として形成すれば形を保つことができる。

 サフィアは自分が見た数字を、手に氷で書いて記録していたのであった。

 しかし、ノエルが得意とする闇魔法は形というものがない。

 

 

「流石にししょーが不利すぎですって……」

 

「だってそうでもしないと負けた時悔しいし……」

 

「はぁ……。ししょーの負けず嫌いは相変わらずですねぇ……」

 

 

 すると突然、ドンドンドンと部屋の扉が強く叩かれる。

 

 

「ん? アタシたちそんなにうるさくしてたかねえ?」

 

「いえ、そんな文句言われるほどではなかったはずですよ?」

 

 

 その瞬間、バンッとドアが破られ、その向こうから怒り狂ったマリンが突進してきた。

 

 

「わたしのサフィーに何をしたぁぁあああ!!」

 

「うわぁぁぁああ!?」

 

「きゃぁぁあ……ぁぁ……? って……お、お姉ちゃん!?」

 

 

 ノエルはサフィアとマリンの顔を交互に見て、驚く。

 

 

「お姉ちゃ……ええ!? お前、姉なんていたのかい!? 確かに顔が似てなくも……いや、歳離れすぎじゃないか!?」

 

「いや、あの、その、わたくしのサフィーに何を……」

 

「はい! この人があたしのお姉ちゃん。マリンお姉ちゃんです! あたしのこの指輪が何よりの証拠です!」

 

 

 サフィアは左手の人差し指についた青い指輪を見せる。

 ノエルはその指輪とマリンの左小指についた指輪が似ていることに気づいた。

 

 

「あ、ホントだ。お揃いの指輪じゃないか。まぁいいや、もう1回神経衰弱やろうか、サフィー」

 

「む、無視するなぁぁ!」

 

 

 マリンは真っ赤な顔をしてノエルたちの前に立ち塞がった。

 ノエルはそれを見上げながら頭を傾げる。

 

 

「何だよ、今は真剣勝負の真っ最中だぞ。外野は去った去った」

 

「あ、そういえばお姉ちゃん、何でここに……」

 

「さ、サフィーぃぃ……。わたくしの話を聞いてくれるというのですわねっ……! お姉ちゃん、嬉しいですわ!」

 

 

 マリンはサフィーをギュッと抱きしめる。

 

 

「チッ、わざと無視してたってのに……」

 

「あぁ!? やかましいわよ、このドロボーババア!」

 

「あぁ?? 初対面の相手にそういう口を叩くと痛い目見る……よっ!」

 

 

 ノエルの手元から土魔法『盲目砂(めつぶし)』がマリンめがけて飛んでいく。

 

 

「ぎゃぁぁぁあああ、目がぁぁぁ!!」

 

 

 その目潰しがマリンの目に直撃した瞬間、マリンの姿は煙のように消えてしまった。

 

 

「消えた……。これはもしや……魔法で作った分身か……?」

 

「あれ、お姉ちゃんは?」

 

「え、えげつないですわ……」

 

 

 ドアの向こう側からマリンの声が響く。

 

 

「あ、お姉ちゃん。こっちにいたのね!」

 

「えげつないですわ、えげつないですわ! 初対面の相手に不意打ちで目潰しとかえげつなさすぎですわ!!」

 

「いや、だって今にも襲ってきそうだったし……。お互い様だろう?」

 

「まぁ確かに事と次第によってはあなたを殺す気マンマンでしたけど……。そうだ、サフィー! 久しぶりですわね! 元気にしてました? 元気なら何よりですわ〜!」

 

 

 マリンがサフィアに飛びつ………こうとした瞬間。

 

 

「ゎぶっっ!!」

 

 

 ノエルが手刀でマリンの頭をはたき落とした。

 マリンは空中から思い切り頭を床に打ちつけ、床からはゴツッと硬い音がしたのであった。

 

 

「不審者は撲滅っ! って……あれ? 消えない……」

 

 

 鼻血を出しながらマリンはよたよたと立ち上がる。

 

 

「消えるわけ………消えるわけあるかぁぁぁあ!!」

 

 

 マリンは炎を拳に纏わせ、ノエルに殴りかかった。

 

 

「い、いやあ、もしかしたらまた分身なのかなぁと……。うぉっと、危ない危ない……」

 

 

 マリンはずっと殴り続ける。

 しかしノエルは身軽にひょいひょい避けるのであった。

 

 

「そんなに分身は作れないわよ! 何かしら、あんたはとりあえず不審ならぶん殴る単純な脳みそしてるのかしら? 流石はババアね!」

 

「あぁ!? お前もアタシと年齢は似たようなもんだろうが、この年増シスコンババア!」

 

「あぁぁ!? 誰がシスコンよ、誰が! わたくしはただサフィーが好きなだけです〜! 家族愛なんです〜! それに服装的に多分あなたの方が年齢は10以上は上よ!!」

 

「ああもう、あたしを巡って争うのはやめなさーい!!」

 

 

 サフィアが水魔法で大量の水を生成し、喧嘩する2人にぶちまける。

 

 

「え、いや、ま、待てサフィー??」

 

「さ、流石にその量の水はマズイです……ゎ……ブクブクブクブク……」

 

 

 サフィアはまだ魔力の調節をうまくできないために部屋全体が水没し、サフィア以外は全員溺れてしまった。

 その後、サフィアが冷静になると同時に水はみるみるうちに消えていき、マリンとノエルが目を覚ますまでサフィアはひとりでトランプをかき集めるのであった。

 

 

***

 

 

 それから1時間後。

 

 

「さぁ、2人とも仲直りしなさいっ!!」

 

「「は、はい……」」

 

 

 ノエルとマリンはサフィアの目の前で握手をさせられた。

 もちろんサフィアにバレない程度にお互い本気で握りしめ合っていたが、キリがないことに気づいた2人は手を離す。

 その後、2人はサフィアの前で正座をさせられ、事情の説明会が開かれるのであった。

 

 

「じゃあまずはお姉ちゃんから、ここに来た理由を説明しなさい!」

 

「ええと……サフィーがこのババ……じゃなくて、ノエルとかいう魔女と一緒にいるのを見かけたので、何かされたんじゃないかと……」

 

「今お前、明らかにババアって言いかけただろう……」

 

「大丈夫よ、ししょーは信頼できる人だし、あたしも段々魔法は上達してるから」

 

 

 マリンはビッとサフィアを指差す。

 

 

「そこですわ! あなたは自分が魔女だって知るはずなかったのに、どうして?」

 

「あー、それはアタシからいいかい? お前はちょっと前にあったセプタで起きた事件を知っているか?」

 

「え、ええ、もちろん。『水のベールの発生』ですわね。それが何か?」

 

「それ、発生させたの()()()

 

 

 そう言ってノエルはサフィアを親指で指差す。

 

 

「へぇ、そうなんですの……って……はぁぁぁ!? あんな量の水をこの子が!?」

 

「違う違う。お前も知ってるだろう、お前たちの祖母が作った噴水。あれが水源だ。その噴水を壊したのがこいつなんだよ」

 

「えぇぇぇ!? おばあさまの噴水、壊れたんですの!? サ、サフィー!?」

 

 

 マリンは顎が外れそうなほどに口を開いて驚いている。

 

 

「でもあたしはどうして壊れたか分かんないの。歌ってただけなのに」

 

「それもアタシが説明する。この子の歌は実は噴水の核を刺激する風魔法だったんだが、それを長年続けていた影響で刺激が蓄積されて壊れたんだよ。それで、まあ、色々あってこの子がアタシに弟子入りした」

 

「はい? 話が見えないのですが……。どうして噴水が壊れたらこの子が魔女だと自覚するんですの!」

 

「はぁ……いちいちうるさい奴だなぁ……。もういいよ、アタシのせいだ。この子を守るためにアタシが魔法を使って敵を追っ払った。そしたらこの子が魔女に興味を持ったんで色々話しちまったのさ」

 

「やっぱりお前がサフィーを……!」

 

 

 マリンから殺気が放たれる。

 

 

「お姉ちゃん、待って!!」

 

 

 その一言で、一瞬にして殺気が収まる。

 

 

「どうしてお姉ちゃんはあたしが魔女になることに反対するの? どうしてししょーが悪いの?」

 

 

 マリンはうつむく。

 すると突然、涙をこぼし始めた。

 

 

「魔女になってもロクなことはないんですわ。寿命が長いこと以外は辛いことばかり……。そんな命の無駄遣い、妹にはして欲しくなかった……。それなのに………どうして!」

 

 

 サフィアは即答した。

 

 

「それはね、お姉ちゃん。()()()()()()()()()()()()()()()、だよ!!」

 

「サフィー……? あなた、もしかして……」

 

「うん、あたしは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。お姉ちゃんも魔女だってお母さまから聞いた時はびっくりしたけど、お姉ちゃんも同じようなことを考えてたんじゃないかなって思ったの」

 

 

 マリンは目から涙を流したまま、サフィアの顔を驚いた目で見つめている。

 

 

「おや、その顔を見る限り図星みたいだねぇ?」

 

「それなら……姉妹揃って愚か者ということですわね!」

 

 

 涙目のまま、マリンは微笑むのであった。

 

 

***

 

 

 それからしばらくして、とりあえず夜も更けてきたため、マリンは自分の泊まっている宿に戻るのであった。

 

 

「……って、おい。勝手にウチの弟子を攫うな」

 

「え? 妹と一緒に宿に戻るだけですが……」

 

「当然のように話を進めるんじゃないよ! サフィーの気持ちも考えろ!」

 

「サフィーはお姉ちゃんと一緒に寝たいですわよねー?」

 

「うーん……今はししょーと一緒がいい!」

 

「そ、そんなぁ……!?」

 

 

 マリンは肩を落としながら、部屋から出ていくのであった。

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