魔女ノエルと8人の大魔女 〜この世で最初の魔女集会〜 作:もーる
117頁目.ノエルと泉と正体明かしと……
ノエルたちが最初の大魔女集会で別れて、およそ5年の月日が経過した。
彼女たちは半年に一度集まるようにしていたため、お互いの研究の成果や魔女としての成長を十分に共有することができていた。
そして、その全ての成果が熟したと考えたノエルたちは、最初の大魔女集会から数えて11回目の大魔女集会で
そんな彼女たちが
***
「ここ……で合ってるんですの?」
「ああ、この地図によると……な」
「最初からヴァスカルに集まって、一緒に行けば良かったのに……。二度手間じゃありません?」
ノエルたち3人は、クロネが送ってきた手紙に添えられていた地図を片手に、メモラにある森の入り口に来ていた。
「ここ、クロネさんが見つけたファーリの生家があったっていう森だったよな。まさか、あの時に預けた猫からこんな場所に繋がるとは……」
「でも、どうしてここを決戦場にしようと思ったんでしょう? 森なんて木が邪魔で戦闘に向いてないと思うんですけど……」
「それは相手もお互い様と思ってのことか、もしくは悪魔や
「いや待て、そもそも……!! その作戦が全くアタシたちに共有されてないのはどういうことだ! この『ファーリの心臓』を持っているのはアタシたちだから、作戦の肝になるのは間違いないはずだろう?」
「まあ、確かに……? とはいえ、わたくしたちだってこの数年で得た知見がありますし、作戦が伝えられていなくとも十分に動けるでしょう? その『ファーリの心臓』だって、悪魔だって結局は……」
「はいはい、それも
サフィアに引き連れられ、ノエルたち3人は森の中を進んでいった。
***
森を抜けると、ノエルたちは綺麗な泉のある広場に出た。
ノエルが試しに魔力感知をしてみると、膨大な量の魔力が周囲にあること、そして魔法の痕跡があることが分かった。
ノエルは魔法の痕跡を目で追う。
「……あ、いたいた! おーい!」
ノエルが手を振ると、遠くにいた人影が近づいてくる。
すると、そこには6人の大魔女たちが集まっていた。
「なんだ、もう全員来てたのか。もしかして、作戦の内容を知らないのってアタシたちだけ……?」
「本当ならノエル以外全員に先に来させておきたかったんじゃが、それだとあまりに可哀想だとソワレに言われての。仕方がないからお主ら3人に知らせずに呼びつけたんじゃ」
「アタシだけ……? まあ一先ずはいいとして、どうしてこの場所なんだ?」
「そうじゃの。到着して早速で悪いが、すぐに作戦の準備に入らねばならん。お前たち3人とルフールはあっちに用意した拠点に集まってくれ。そこで説明しよう。他の皆は早急に作戦準備を始めるのじゃ!」
ノエルたち3人以外は元気に返事を返し、それぞれの持ち場らしき場所へと歩いていく。
状況が飲み込めていない3人は、クロネに言われるままクロネとルフールについていった。
***
「さて、早速じゃが、作戦の概要を説明するぞ。時間がないからの」
「何で……って質問に答える時間も惜しいって感じだな。分かった、説明してくれ」
「うむ。まず確認じゃが、『ファーリの心臓』は持っておるな?」
「ああ、もちろんだとも。というか、魔力検知で分かるだろう?」
「持っているならいいんだ。あともう一つ確認させてもらうよ。前回の大魔女集会でワタシたちに教えてくれた『悪魔の正体と倒し方』……あれは確かなもので揺るぎないか?」
「ええ、正体については間違いないと確信していますわ。倒し方に関しては倒した経験があるわけではないので、確実とまではいきませんが……」
クロネとルフールは頷きあい、ノエルたちに作戦の話を始めた。
「まず、これまでお前たちが
「えっ……? 5年前のあの日以降、全く姿を見せなかった
「この場所は奴にとっても放っておけない場所じゃろうからな。
「……そうか、ここでアタシたちが知った『ファーリの心臓』と『悪魔』の真実に繋がるんだな」
「そして、それが証明されるのがその悪魔の前というわけだ。まあ、何にしても、お前たちが持っている心臓は、間違いなく悪魔にお前たちの場所を教えている発信源。それが心臓のせいなのかあいつの魔法なのかは分からないけど、それを利用させてもらったというわけさ」
「あぁ、なるほど。つまり、ノエル様がこの泉に来ることがこちらにとってもあいつらにとっても作戦開始の合図だった、ってわけですね。でもそれくらいなら最初から教えてくれても良かったんじゃ?」
クロネは首を振って言葉を返す。
「作戦の詳細をお前たちに手紙で伝えたりなんてしたら、それこそ連中の目に触れる可能性があるじゃろう? もし手紙を届ける配達員が
「あー、だからアタシしか読めないような汚い地図だったのか」
「汚い地図で悪かったな? あれでも丁寧に描いたつもりだったんだが……。まあ、とにかくここからが作戦の概要だ」
そう言って、ルフールは周辺の地図を机の上に広げた。
「今、ソワレたちにはそれぞれ森の中を囲うように結界を張ってもらっている。呪いの魔力が通ったら反応して、場所を教えてくれる結界だ。そして、ワタシたちが
「そのあとはどうするんだ?」
「そこからはノエルたちに任せてもいい……そうじゃったな?」
「あぁ、なるほど……。そこで悪魔の正体明かしと討伐をすればいいってわけか。だが、あいつを倒すには膨大な魔力が必要だと言ったはずだが、それはどうすればいい?」
「ようやくここであやつの出番か。ほれ、出てこい」
クロネが拠点の後ろに声をかけると、その奥からヴァスカル王が歩いてきた。
「どうにか魔力の受け渡しをできるくらいまでの魔導士に仕上げといたぞ。これで文句はなかろう?」
「余がまさか魔力の貯蔵庫扱いされる日が来ようとは……。だが、我らが祖先たるファーリを穢した悪魔を討伐するためなら、どれだけでも余の魔力を使ってくれ」
「魔力問題は解決、と。じゃあ、あとは……『原初魔法』の件はどうなってる? もう報告を受けてるんだろう?」
「あぁ、ルカ・ロヴィア・ソワレの3人とも習得済みらしい。まさか5年の間にルカがそこまでの魔女に成長するなんて、ある意味で誤算だったけどねえ」
「じゃあバッチリだな。となると、クロネさん・ルフール・エストの3人が
「無論じゃ。そのための5年間じゃったし、持ち前の魔法でどうにでもできるわ」
クロネとルフールは自慢げに胸を張る。
ノエルはそれを鼻で笑いつつ、マリンたちに確認を取る。
「……何か足りないものはないっけか」
「
「あ、作戦とは関係ないかもですけど、スノウとナイトはどうしてるんです?」
スノウとナイトというのは、ノエルたちが5年前に預けた猫の名前だ。
スノウが白い方で、ナイトが黒い方。
名前がないと呼びにくいということで、クロネが勝手に名付けたという。
「あー、あの2匹か……。
「元気なら良かった。この場所で育ったかもしれないって話だったんで、連れてきたりしてないかなーって思っただけです。まあ、作戦には邪魔でしょうし、置いてきて正解だとは思いますけど」
「とにかく、今は作戦優先だ。これ以上忘れたことがなければ、そろそろ持ち場についてくれ。いつ来るか、エストの運命魔法で感知できない以上、先んじて準備しておくしかないからな。ワタシは先に行ってるよ」
そう言って、ルフールは拠点から出て行った。
ノエルたちも跡を追ってそれぞれの準備を始めた。
***
そして、それぞれが持ち場について30分が経過した頃。
突然、結界に魔力が引っかかった音が響いた。
ノエルたちがハッとして身構えると、クロネたちの読み通り、5年前と同じ
しばらくすると、魔法同士がぶつかり合う衝撃が森の奥から泉まで伝わってきた。
「……騒がしくなってきたな。クロネさんたちが戦い始めたらしい」
「じゃあ、ここからは私たちの出番ってわけね。ノエルの恨み、ロウィと一緒に晴らさせてもらうんだから……!」
「あの頃のボクと違うってところ、見せつけてやりますよ!」
「ヴァスカル王さんのおかげで魔力が枯渇することもなさそうだし、久々にお姉ちゃんらしいことができそうね。私の腕、鈍ってなきゃいいけど……」
「鈍ってても原初魔法が使えるのなら十分ですわよ。どうしてノエルの家系はこんなにも魔女らしい果てしなさを感じさせるのでしょう……。まあ、わたくしも負けていられませんわね!」
「あたしたち姉妹だって、ノエル様たちと同じくらい強くなったもんね! ですよね、ノエル様……?」
ノエルは魔導書を開き、答えた。
「ああ、もちろんだとも。お前たちは間違いなくアタシが集めた最高の魔女たちだからな。それを証明するためにも、まずは
ノエルがそう叫んだのも束の間、
泉には太陽が差し込んでいるというのに、それは黒く、暗く、澱んだ色で現れた。
まるで全ての光を吸収しているかのように、それが存在する位置から全ての色が消えていた。
すると、その顔らしき部分にギョロリと目と口のようなものが開かれた。
「……久方ぶりだな。ファーリの子らよ」
「思ったよりも素直に出てきてくれたじゃないか。『悪魔』」
「否。我々は悪魔にあらず。『真の精霊』なり」
「いいや、お前は精霊なんかじゃない。確かに魔力を有した存在だとしても、アタシたちはお前を精霊とは認めない。ここからはアタシたち3人の成果発表だ……!」
ノエルとマリンとサフィアの3人は頷きあい、クロネたちにも聞こえるくらい大きな声で、悪魔に向かって叫んだ。
「「「お前の正体は……『ファーリの産んだ魔物』だ!!」」」