魔女ノエルと8人の大魔女 〜この世で最初の魔女集会〜   作:もーる

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40頁目.ノエルと申し出とお別れと……

 その翌日。

 ノエルたちは宿で次の旅の支度をしていた。

 ルカを引き入れることに成功した以上、この国(ラウディ)にいる理由が無くなったからである。

 

 

「よし、荷物はある程度まとまったな!」

 

「ノエル様〜。タオル忘れてますよ〜」

 

「おっと、うっかりしていた。ありがとう、サフィー」

 

「うーん……。最近のノエル様、うっかりが多い気がしますね?」

 

「はぁ……。アタシもそろそろ歳かねぇ……」

 

「何を言ってるんですの。若魔女に歳も何もないでしょうが」

 

 

 マリンは服で一杯になったカバンを閉めてそう言った。

 

 

「え、そうなの?」

 

「ええ、騙されてはいけませんわよ、サフィー。見た目が若いままとは言ってますけど、体内年齢も若いままなのですから」

 

「ってことは、ノエル様のうっかりが重なってるのは偶然ってこと?」

 

「確かに偶然という線もありますが……。でも最近は特に何もありませんでしたし、疲れているわけでもありませんわよね?」

 

「ん……? 疲れてる……?」

 

 

 サフィアは何かに気づいたように、ノエルの顔をじっと見つめる。

 すると、ノエルはあからさまに目を逸らして顔を背ける。

 

 

「ねえ、ノエル様……? どうしてルカさんに治してもらったはずの目の下のクマが、また荒れているんですかねぇ……?」

 

「い、いやあ……。最近色々あって寝るのが遅くなっていたといいますか……」

 

「つまりは徹夜した、ということですね……?」

 

「…………3日ほど」

 

 

 ノエルはサフィアに聞こえないくらいの声でボソッと呟く。

 

 

「はい? 3日連続で徹夜? なぜそれをあたしに黙っていたんですか?」

 

「ヒイッ、聞こえてた!」

 

「サフィーは昔から地獄耳ですから……」

 

「う……。徹夜したって言ったら怒られるだろうな、と思って黙ってました……」

 

「そりゃもちろん徹夜したら怒りますけど、だからって黙ってるのはダメです! この旅はノエル様の健康が第一なんですから!」

 

 

 サフィアは目に涙を浮かべている。

 ノエルはそれを見てたじろいだ。

 

 

「そ、そこまで心配させてすまない……。今後は控えるようにするよ……」

 

「その言葉が本当なら嬉しいんですけど、いつも言われてるような気がしますね? まあ、だからって魂の盟約とかを交わす気はありませんけど」

 

「そもそも今回はなぜ徹夜をしたんですの?」

 

「……新しい闇魔法を作ってたから」

 

「完成は?」

 

「3日で完成する予定だった」

 

「はぁ……。未完成ということですわね……」

 

「でもまあ、サフィーにここまで心配させたんだ。魔法作りの続きは昼間にでもやっとくことにするよ」

 

 

 サフィアはそれを聞いて、緊張を解いて言った。

 

 

「約束、ですからね!」

 

「あぁ、分かってる。徹夜は控えるし、する時は必ず言うから」

 

 

 2人は指切りをするのであった。

 

 

「無事解決したようですわね。それでノエル、次はどの街へ行きますの?」

 

「あ、決めてなかった」

 

「またうっかりですの!?」

 

「流石に冗談ですよね……?」

 

「いや、うっかりでも冗談でもないんだが、どこに行くか迷ってるままだったんだよ」

 

「一応候補を聞いておきましょうか」

 

「分かった。地図を見てくれ」

 

 

 ノエルはカバンから大陸地図を取り出して指を差す。

 

 

「ここが今いる南の国・ラウディの王都だ。そして、残りアタシたちが行っていない国は全部で3つ」

 

「北の国・メモラ、北東の国・ヘルフス、北東の国・プリング、ですよね!」

 

「その通りだ、サフィー。この北の三国がアタシたちの目指すべき行き先ということになる」

 

「どこもここからは遠いですわね……。馬車でも3日はかかる距離ですわ」

 

「だからとりあえず、各国へ鉄道が通っている央の国・ノーリスに戻ってみようかとも思ったんだが……」

 

「ん? 何か問題でもあるんですか?」

 

「あぁ。後々、ラウディ周辺の街や村を探索するのが大変になりそうだな、と……」

 

 

 南から北、北から南へと3人で移動するには相当の時間とお金がかかる。

 鉄道で往復するだけで、今回の一件で得た報奨金の余りを半分近く持っていかれるのであった。

 

 

「確かに資金難になるのは頂けませんわねぇ……」

 

「とはいえ南側にある残りの街や村、全てを回るとなるとこれもこれで時間がかかる」

 

「まぁ、つい最近まで街や村の探索をしていましたしね。でもラウディは海に面してますし、周辺の探索にはそんなに時間はかからないのでは?」

 

「うーむ……確かにそう言われてみるとそうだな……。なら仕方ない。次の目的地はラウディ周辺の──」

 

「ノエルさん、話は聞かせてもらいました!!」

 

 

 その瞬間、突然部屋のドアが勢いよく開かれる。

 ノエルたちの視線の先には、ルカがいたのであった。

 

 

「ル、ルカ!?」

 

「びっくりしたぁ!」

 

「何事かと思いましたわよ!」

 

「いやぁ、すみません。こういう登場、一度はしてみたかったもので……」

 

「それで、何か用でもあるのかい?」

 

「そうでした。今の話が偶然聞こえてしまいまして、お手伝いしようと思った次第です」

 

「お手伝いって?」

 

「ラウディ周辺に優秀な魔女がいるかどうか、ボクが調べて差し上げましょうか?」

 

 

 ルカはニコニコしながらそう提案したのであった。

 ノエルたちは食い入るようにルカに詰め寄る。

 

 

「い、良いのか!?」

 

「ええ、ラウディにいる以上は周辺の街に行くことも多々あるでしょうし、何よりボクも同じ魔女として、あなた方の旅の手助けしたいと思ったんです。今は魔法で支援することもできませんし、これくらいならと思いまして」

 

「でも、魔法の研究もしなきゃなんだよね?」

 

「少なくとも、あなた方が北の三国を回っている間に研究は終わっているでしょう。研究で魔女を探す暇がなかったとしても、次会うまでには探索しきってみせますとも」

 

「本当に心強い協力の申し出ですわ……。断る理由も特にありませんわね!」

 

「そうだな。ルカ、よろしく頼んでも良いかい?」

 

「はい、喜んで! あなた方のお眼鏡に叶うような魔女を見つけ出してみせますよ!」

 

 

 こうしてラウディ周辺の魔女探索の役目はルカに任され、ノエルたちの次の目的地は央の国・ノーリスとなった。

 

 

「ところで……。何で偶然アタシたちの部屋の前に?」

 

「話を聞いてしまったのは偶然ですが、ここに来たのは目的あってのことです。そろそろ出発するだろうと思ったので、見送りに来たのですよ」

 

「なるほど、それはご丁寧にどうも。もう少しで支度が終わるから待っていてくれ」

 

「承知しました」

 

 

***

 

 

 それから数十分後。

 ノエルたちは鉄道に乗るべく、ラウディにある駅に来た。

 ルカも見送りのために付いてきた。

 

 

「次の列車は……ちょうど30分後に出発するみたいですわ」

 

「じゃああたし、切符買ってきまーす」

 

「あぁ、よろしく」

 

 

 サフィアは駆け足で切符売り場へと向かっていった。

 ルカはノエルとマリンに向かってぺこりと頭を下げる。

 

 

「この度は本当にお世話になりました」

 

「ん? あぁ、いや、こちらこそ……」

 

「ノエルはこういう堅苦しい別れ方、いつまで経っても苦手みたいですわねぇ」

 

「仕方ないだろう。そもそも別れってのが苦手なんだ。不安とか心配とか色々あって頭が痛くなる」

 

「あはは……。でもそれはきっとノエルさんが良い人だからですよ。師匠もボクが卒業する時、そんな顔してました」

 

「そんな変なところで似ていると言われてもなぁ。褒められているのかそうじゃないのか分からないじゃないか?」

 

 

 そう言って3人は楽しげに笑った。

 

 

「買ってきました〜。って、何の話をしていたんですか?」

 

「別れは色々あって悲しいもんだよな、って話さ」

 

「んー、あたしは特に悲しいとは思いませんけどね? むしろまた会える日が楽しみですもん!」

 

「なるほどな……。そういう考え方もあるのか……」

 

「我が妹ながら物凄く前向きで、感無量ですわ……」

 

「じゃあ……そうだな」

 

 

 ノエルは少し考え、ルカに近づいて手を握った。

 

 

「ルカ、数年後にまた会う日を楽しみにしてるよ」

 

「ええ、きっと良い報告ができるよう頑張ります」

 

「あたしも! 次会う時には風魔法の上級くらいは使えるようになっとくから!」

 

「ボクとしてもサフィアさんの成長は楽しみです。また会いましょう」

 

「それでは最後にわたくしが。研究が終わったら、ぜひその魔法を世界中に公開してくださいな。きっとわたくしたちの旅の役に立ちますから」

 

「分かりました。出来るだけ早く研究が終わるよう精進しますので!」

 

 

 3人と握手を交わし、ルカはもう一度礼をする。

 

 

「本当にありがとうございました。ではまた会いましょう!」

 

「あぁ、またな」

 

「バイバイ!」

 

「ごきげんよう〜」

 

 

 こうして3人はルカと別れ、ラウディを出発した。

 鉄道は走り出し、3人は再びノーリスへと向かうのであった。

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