魔女ノエルと8人の大魔女 〜この世で最初の魔女集会〜   作:もーる

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45頁目.ノエルと名簿と隠したい年齢と……

 ノエルたちがノーリスに来て4日目の朝、宿にて。

 ベッドから起き上がったノエルは、自分の右手を見て安堵した。

 

 

「よし、ちゃんと残ってるな」

 

「昨日の魔法ですか?」

 

「あぁ、どうやらあの後もバレてないみたいだ」

 

「ずっと魔力を使ったままで疲れませんの?」

 

「実はこの魔法、貼り付けた対象に近づかない限りは魔力をほとんど消費しないのさ。自然回復する分の魔力で十分に賄えるというわけだ」

 

「なるほど、ノエルらしい良く出来た魔法ですわねぇ……」

 

「やめろよ、むず痒い」

 

 

 ノエルは洗面所で顔を洗い、タオルで顔を拭いた。

 マリンは窓から街の風景を見つつ、大きな溜め息をつく。

 

 

「それにしても散々ですわねぇ。あれ以降、何の情報も得られなかったのはかなりの痛手なのではなくって?」

 

「そうだな……。この前はアタシたちが話題を振ったようなものだから良かったが、何も無しにあいつらがネタを吐くわけない。これは困ったぞ……」

 

「またあの作業員さんに聞いてみますか? 『ロヴィアさんって誰なんですか?』とか」

 

「逆効果ですわね。そもそも、誰かさんの先日のアレのせいで避けられるのが関の山ですわ」

 

「うっ……。でも、そのおかげで1つ情報が得られただろ?」

 

「だからといって、次の情報が引き出せなくなるのもそれはそれで問題でしょう? 次からはもっと考えて行動することですわね」

 

「はーい……」

 

 

 小さくなるノエルをよそに、サフィアはマリンに話を振る。

 

 

「ところで、これまでの情報からどうやって次の探索に繋げるつもりなの?」

 

「ロウィさんが本当はロヴィアさんという名前、という話でしたわね……。であれば、一番手っ取り早いのは住民名簿の確認でしょうか」

 

「住民名簿って、その国に住む人がいつどこで生まれた誰の子供か、とかが全部書かれた資料だっけ」

 

「その通りですわ。住民名簿は王立図書館に行って許可さえもらえば閲覧可能ですし、今回の調査にはもってこいでしょう」

 

 

 立ち直ったノエルがそこに口を挟む。

 

 

「でもなぁ……。閲覧履歴が残るから避けたいところではあるんだよな……」

 

「いきなり慎重になるのはおやめなさい、ノエル。こういう時こそ大胆に行くのがいつものあなたでしょう?」

 

「お前に言われるがまま、考えて行動しようとした結果なんだが!?」

 

「あれは、1人で勝手に突っ走るなという意味ですわよ! 誰もそこまで慎重になれとは言ってません!」

 

「あーもう、分かったよ! とにかく図書館に行けばいいんだろ! それで文句はないはずだ!」

 

「おお、最近ノエル様が身を引くようになってる……。あたし、感激です!」

 

「ちょっと思うところはありますが、それでこそノエルですわ。早速朝食をとって王立図書館へ行きましょう!」

 

 

***

 

 

 それからしばらくして、3人はノーリス城の近くにある王立図書館に到着した。

 王立図書館には様々な本や資料などが保管されており、誰でも閲覧することができるようになっている。

 特にノーリスは8つの国に囲まれた央の国であるため、ここ王立図書館はこの大陸で最も多くの情報が集まっている場所と言われている。

 なお魔導書は一般人でも使える危険なものであるため、国王に許可をもらった者しか閲覧できないと司書から聞いて、ノエルたちは残念がるのであった。

 

 

「って、当初の目的を忘れてませんか? 魔導書なんて後回しですよ!」

 

「おっと、そうだった。住民名簿だったね。何度もすまないが、住民名簿はどこで見れるんだい?」

 

「住民名簿でしたら、この先の通路を右に曲がって頂いた部屋の中にありますよ。名簿の複製書類ではありますが。それで、どなたの名簿をご覧になります? 記録に残す必要があるので」

 

「えーと、ロウィっていう女の名簿だ」

 

「ロウィさん……あぁ、確かに記録されていますね。分かりました。では、あちらの部屋へどうぞ。他の方の名簿を見ても構いませんが、どうぞ悪用されないようお願いしますね。この場所は信頼の元、成り立っていますので」

 

「もちろんですわ。さて、これで謎が解けると良いのですが……」

 

 

 ノエルたちが案内された部屋に入ると、そこは数え切れないほどの本棚が置かれた広い部屋だった。

 周りを見回すと、そこには何千冊、何万冊もの分厚い本が配架されている。

 どうやら過去の住民の名簿もあるらしく、ノエルたちは現在の住民名簿の場所を探し回った。

 その結果2時間ほどで、どうにかロウィの住む地域の現在の住民名簿を探し出すことができたのだった。

 

 

「工房街の……えーと、魔導地区…………あった! ありましたよ、ノエル様!」

 

「お、見つけたか。って、魔導地区に住んでるのあいつくらいしかいないんだっけ。普通に工房街の住民名簿を探す方が骨が折れたねぇ……」

 

「んー……。パッと見た感じは、ここ数年以内に作られた普通の書類といった感じですわね……」

 

「名前の欄にも『ロウィ』って書いてあるね。他に書いてある情報は住所と職業と出身国と……あれ? 生年月日と年齢が空白だ」

 

「まあ魔女だからって理由で見た目と年齢が違うのを気にして隠したがる人も居るらしいからねぇ。アタシはあまり気にしない性分だが」

 

 

 そう言って、ノエルはマリンの方をチラッと見る。

 

 

「どうしてこっちを見るんです。わたくしはちゃんとセプタに住民登録した時点から何も変えてませんわよ! 失礼ですわね!」

 

「いや、すまない。他意はないんだ、本当に」

 

「はいはい、そこまでです。とりあえずこの住民票に変なところはないってことで良いんですか?」

 

「一応アタシも確認しておこうか。えーと……名前はロウィ、住所はさておき職業は工房長、生年月日と年齢は空白で、出身国は……サヴァン……?」

 

「聞いたことのない国ですわね。違う大陸の国でしょうか?」

 

「アタシも聞いたことがない。だが幸いなことにここは大陸一の王立図書館だ。調べてみるか」

 

 

 ノエルとマリンは他に見落としがないか確認した後、住民名簿を閉じて本棚に戻した。

 そしてまた司書の所に戻り、他大陸の国についての本がある場所を目指すのだった。

 

 

***

 

 

 それから1時間で、ノエルたちはようやく『サヴァン』という国についての資料を見つけ出した。

 

 

「王立図書館が広すぎるってのと、他大陸の資料の場所がやけに遠かったせいで思ったより時間がかかったな……」

 

「移動に20分くらいかかりましたものね……。あとは、どの大陸の国かも知らずに調べようとしたせいでもありますが」

 

「じゃあとりあえず読んでみましょうよ! サヴァンっていう国がどんな所なのか!」

 

 

***

 

 

『獣人の国・サヴァン』

 

 サヴァンは大陸の南方に位置する別大陸にある、非常に自然豊かな島国である。

 サヴァンには様々な獣人が住んでいるが、異なる種族同士の共存が国の掟となっているため、非常に平和な国でもある。

 サヴァンに住む獣人の中には、秘術と呼ばれる力が宿っている者がおり、その力を巡ってかつて戦争が起きたこともあった。

 また、種族にはそれぞれ名前がついており、ワーウルフ族、ガルダ族、ケットシー族など、数多くの種族が存在する。

 船での貿易が盛んで他大陸とも親交が深い。

 そして獣人は150年以上生きるため、国王は50年に一度しか変わらない。

 

 

***

 

 

「あぁ、別大陸にある国だったのか。確かラウディかどこかから船で行けるんだっけ」

 

「渡航にかなりの時間がかかるとは思いますが、記憶によるとそうですわね。ただ問題は……」

 

「ロウィさん、どう見ても普通の人間だった!」

 

「そう、獣人の国出身なのにアタシたちと姿形が同じ人間だった。まあサヴァンで生まれ育った人間という可能性もあるが、逆に考えるとそこが何かの手がかりになる可能性があるってことだね」

 

「まとめると、ロウィさんは本当はロヴィアさんという名前で、獣人の国・サヴァン出身の若魔女。そしてこの国に来た後に色々あって、魔導工房の工房長になっている……って、また複雑になってきましたわね」

 

「ん……? あれ……?」

 

 

 ノエルは今のマリンの言葉に何か引っかかっている様子を見せる。

 

 

「何か間違っていまして?」

 

「いや……あいつ、何歳くらいに見えた?」

 

「20歳かそこらですわね」

 

「あたしも、ルカさんと同じくらいの年齢だと思いますよ」

 

「だったらまだ若魔女と呼ぶべき年齢でもないよな? どうして若魔女だと言った?」

 

「それは生年月日を書かずに年齢を誤魔化したい年頃の方だと思ったから……って、あら?」

 

 

 ノエルに続いてマリンも怪訝な表情になり、その瞬間サフィアは気づいた。

 

 

「あっ……! おかしいです! 20歳くらいなら、特に年齢を隠す理由がありません!」

 

「それだ! あの見た目なら年齢を隠す意味がない。だったら、見た目以外に年齢を隠す意味があるってことか! よく気づいたなサフィー!」

 

「いえいえ、ノエル様のおかげです! でも、他に年齢を隠す意味って何なんでしょう?」

 

「わたくしの思いつく限りでは何とも言えませんわね……」

 

「じゃあそれがこの謎を解く手がかりになるかもしれないな。獣人の件も含めてまた考え直すとするか」

 

「了解しました!」

 

 

 サフィアが敬礼した瞬間、サフィアのお腹が鳴った。

 

 

「さ、さあ、そろそろお昼の時間ですよノエル様! 手がかりに気づいたご褒美に美味しいものを所望します!」

 

「アタシのおかげとか言っときながら、ちゃっかりしてるな! まぁ、今回は特別だ。好きなものを頼んでいいぞ」

 

「やったー! 何にしようかなー!」

 

 

 3人はレストランで食事をし、サフィアは満足するまで食べ続けるのであった。

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