魔女ノエルと8人の大魔女 〜この世で最初の魔女集会〜   作:もーる

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49頁目.ノエルと秘術と狂った国と……

 ノエルたちは黙ってロヴィアの言葉を受け止めていた。

 ロヴィアは辛い表情をしつつも、そのまま話を続ける。

 

 

***

 

 

 ロウィの工房……つまりはこの工房が事故の現場だった。

 事故が起きたその日の昼頃、1人の作業員が血相を変えて私の所へやって来た。

 ロウィがいつも私の話をしていたらしく、私の宿の場所も聞いていたみたいだった。

 

 

「ロヴィアさん! 姐さんが……。ロウィの姐さんが……!」

 

「どうしたの? いつもみたいに何かやらかしたって感じじゃなさそうだけど」

 

「歯車に巻き込まれちまったんだよ!!」

 

「何……ですって……?」

 

「とにかく急いで来てくだせえ! ロヴィアさんの魔法なら何とかできるかもしれねえ!」

 

「わ、分かったわ! 魔導結晶全部持っていくから手伝って!」

 

「了解しやした!」

 

 

 私は全速力で工房へ向かった。

 すると、そこには巨大な歯車を手で止めようとしている作業員たちの姿があった。

 私は急いでゴーレムを出してその歯車を壊し、ロウィを外へと運び出した。

 そして私たちはロウィの元へと駆けつけた。

 

 

「ロウィ!!」

 

「姐さん!!」

 

 

 見るからに即死と言えるほどの惨状だったのに、私たちは何度も呼びかけた。

 だけど、何度呼びかけても彼女は返事をしてくれなかったわ……。

 彼女の死因は歯車に巻き込まれたことによる圧死。

 不注意で足を転ばせてそのまま……って、事故を目の前で目撃してしまった作業員から後で聞いた。

 私はその遺体を布に包ませ、作業員たちに葬ってもらうことにした。

 

 ここまでだったら悲しい不慮の事故って話で終えられたんだけど、本題はここからよ。

 

 

***

 

 

 ノエルは手をあげてロヴィアに尋ねる。

 

 

「ここからって時にすまないが、質問しても良いか?」

 

「すぐに終わる質問ならどうぞ」

 

「ロウィはどうしてその日、お前の所に来なかったんだ? 毎日来てたんだろ?」

 

「まあ確かにほぼ毎日来てたけど、その日は国の視察がある日で、工房長として立ち会う予定があったらしいわ。それが終わり次第来る予定だったみたいだけど……」

 

「待てよ? ってことはもしかして『本題はここから』ってのは……」

 

「ええ、それじゃ話を続けるわね……」

 

 

***

 

 

 その日は工房に国の視察が入る日だった。

 視察っていうのはその工房が国の言う通りに働いているか、機材や人材に不備はないか、とかを調べることね。

 だから事故の現場にはその視察の人もいた。

 だけどそれは、国に急いで伝える役目の人が居たということにもなる。

 私がロウィの遺体を外に運び出して間もなくのことだった。

 そこに『アイツ』がやって来た。

 

 

「これはどういうことだ? なぜ歯車が止まっている?」

 

「こ、()()()!? わ、我々の工房長が歯車に巻き込まれ、その救出のために歯車を壊した次第でして……」

 

「この巨大な歯車を人力で破壊などできるわけがなかろう!」

 

 

 私はアイツ……国王の所へと行き、答えた。

 

 

「いえ、私がゴーレムを作って歯車を壊しました!」

 

「貴様が歯車を壊した、だと……?」

 

「はい。彼女を助けるためには仕方なく──」

 

「なぜ歯車を壊した! ()()()()()()()()の回収をするために国民の生活を危ぶませるとは、貴様は何を考えている!!」

 

「は…………?」

 

 

 私はそれを聞いて、混乱と憤りのあまり固まってしまった。

 

 

「おい、貴様らも早く作業に戻れ! 他の歯車はまだ動いているのだろう! 牢獄行きにされたくなければさっさと行け!」

 

「い、嫌です! せめて姐さんを弔わせてくだせえ!」

 

「ならぬ! 国民の生活がかかっているのだぞ!」

 

「いいえ! あっしらは絶対にここから動きやせん!」

 

「それなら仕方ない。……やれ」

 

 

 すると、国王付きの兵士たちが槍を構え、一斉に突き出した。

 

 

「待ちなさい!!」

 

 

 その瞬間、私はいつの間にかゴーレムを出してその槍を弾いていた。

 そして私は国王に尋ねた。

 

 

「歯車の代わりにあの機械を動かすことができれば、彼らは彼女を弔っていいんですよね?」

 

「ああ、そんなことができるのなら……。なるほど、それを使うということか」

 

「はい。このゴーレムたちであの機械を動かせば歯車を使わなくても良いはずです!」

 

「それは(まこと)か? 本当にあの機械をそのゴーレムとやらが正しく動かせると?」

 

「では実演してみますから、ご覧ください」

 

 

 私は感情を殺しながらゴーレムたちに指示を出し、機械を動かした。

 そしてその実演は無事に成功した。

 

 

「ふむ、良かろう。では今日に限ってそのゴーレムで機械を作動させるのだ。明日までにはその歯車を修繕し、元通りにしておくのだぞ」

 

 

 そう言って、アイツらは王城に帰っていった。

 私はそれを見送った後、急いでロウィの所に駆け戻った。

 

 

「ロヴィアさん。姐さんとあっしらを助けてくれて、本当にありがとうございやした……」

 

「お礼は後で聞くわ。少し彼女から離れてくれないかしら?」

 

「え? しょ、承知しやした……」

 

 

 私は彼女の身体に触れながら、泣いて謝った。

 

 

「ごめんなさい……。このまま黙って遺体を葬ってあげようと思ったけど、そういう訳にはいかなくなったわ……」

 

「ロヴィアさん、一体何を……?」

 

「私の力で、ロウィを生き返らせる」

 

「ええ!? そんなことができるんですかい!?」

 

 

 私には魔法の他に、特殊な獣人の力『秘術』があった。

 それを使えばロウィを擬似的に蘇生させることができると思ったの。

 

 

***

 

 

 ノエルはすぐさま話を断ち切り、ロヴィアを問い詰める。

 

 

「待て待て待て! 秘術だと!? それに蘇生させるだって!?」

 

「やっぱり食いついてきたか……。私が生まれ持った秘術は『融合』。2つのものを混ぜ合わせる、使いようによっては危険な力ね」

 

「ん? どうしてそれが蘇生に繋がるんだ?」

 

「融合したのよ。()()()()()()

 

「な……!? そ、そうか! だから人間と獣人の特質を持ってて、見た目の年齢も若くなってるわけだ!」

 

「ご明察。蘇生の話は昔話と一緒にしてあげるから、少しだけ待ってなさい」

 

 

***

 

 

「私の秘術で私とロウィが混ざれば、ロウィの魂の器は私の中で保管することができるわ。あとは魂を戻しさえすれば、彼女は私の中で復活できるはずよ!」

 

「姐さんの魂……ですかい?」

 

「ええ、もしかしたら身体に少しは魂が残っているかもしれないけど、魂っていうのは死んだらどこかにカケラとして散らばってしまうものなの」

 

「つまり、それを掻き集めれば姐さんは生き返るんですね! どうやって見つければ良いんでしょう!」

 

「残念ながら、魂は彼女の魂の器を持った私にしか見えないの。だからとりあえず先に彼女と融合しても良いかしら?」

 

「姐さんが蘇るのであれば、あっしらの意見は同じです! ロヴィアさん、よろしくお願いしやす!」

 

 

 そして私は秘術を使ってロウィと混ざった。

 予想通り、彼女の魂の器にはほとんど魂は残っていなかった。

 

 

「あ……あぁ……! 姐さん……!!」

 

「あぁ……。なるほど、顔はあの子の顔になっちゃったってことね……。ごめんなさい、この顔でも私はロヴィアのままだから……」

 

「でも姐さんもそこにいるんでしょう?」

 

「ええ、魂はまだ戻ってないけど……」

 

「だったらあんたは姐さんだ! ロヴィアの姐さん!」

 

「そう言われると変な気持ちになるわね……。でもまあ、そうね。私は今日からロウィでありロヴィア……!」

 

 

 私はその姿でもゴーレムを扱えることを確認して、そのまま王城に向かうことにした。

 

 

「ロヴィアの姐さん、どうして城へ?」

 

「このままじゃあの事故が繰り返される可能性があるでしょう? だからゴーレムをずっと使わせてもらえないか、許可を取りたいの」

 

「で、ですがそれじゃあ、あっしらの仕事は……?」

 

「歯車の管理が蒸気の機械の管理になるだけだから、そこの心配はいらないわよ」

 

「それなら安心でさあ。行ってらっしゃいやせ!」

 

 

 そして私は王城へ行き、アイツに話をつけることに成功した。

 騒音もあったし、事故の危険性があるなら歯車を止めても構わないという話だった。

 ちなみに見た目が変わってることについては、余所行きの変身魔法って言って誤魔化したわ。

 だけどその帰り際、アイツはとんでもないことを言った。

 

 

「そうだ。先ほど事故死した遺体の死亡届は出さずとも良いぞ」

 

「え……? なぜです?」

 

「国民の不安を煽るわけにもいかんからな。あの事故はなかったことにして、あの遺体は元から存在しないことに決めた」

 

「……どういうことでしょう?」

 

「彼女の()()()簿()()()()()()から死亡届を出すなと言っておるのだ」

 

「……っ!?」

 

 

 私は再びとてつもない怒りが湧き上がったが、どうにか堪えて尋ねた。

 

 

「で、ですが、もし事故のことがバレたらどうするんです? 明日以降、歯車の音が止まったら誰もが疑うのでは……?」

 

「ははは! 民衆は誰1人として気付くまい! 何せ、自分の生活が守られれば、上で何が起きてようと気にも留めないのだからな!」

 

「な……何ですって……? 事故が起きても誰も気にしない、と……?」

 

「その通り。まあ、外から来た連中には違う話で何とか誤魔化せるように、口裏は合わせておかねばならぬか……」

 

 

 その時、私は決心した。

 この国を、この国王をこのままにしていてはいけない。

 ロウィは確かに事故で死んだかもしれないけど、それを国の都合で消された時点で国に殺されたも同然だ。

 どうにかしてロウィを生き返らせて、この国を変えなければならない。

 これが私なりのロウィの死に対する復讐だと思った。

 

 

***

 

 

「こうして、私はロウィが生き返るまで国王に従うふりをして口裏を合わせ、それから今に至るまでずっと、魂のカケラを探し続けているの──」

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