魔女ノエルと8人の大魔女 〜この世で最初の魔女集会〜   作:もーる

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93頁目.ノエルと転入生とお年頃と……

 ノエルたち災司(ファリス)探索部隊の4人は、ヴァスカルの国民全員を守る結界を作り終えたルフールたち魔法研究部隊と合流した。

 ノエルたちはルフールに称賛の言葉を送り、魔法の完成を喜ぶのであった。

 間もなく、クロネは学長室に用事があると言ってノエルたちと別れ、7人はアカデミーの入り口でジュンが来るのを待つことにした。

 

 

「なあ、ノエル。以前聞いた連中の目撃情報はクロネ経由で聞いたんだよな? それだったらワタシたちが直接ジュンって子に聞かなくてもいいんじゃないのか?」

 

「何を言ってる、ルフール。ちゃんと実際に聞く意味はあるぞ。クロネさんにあまり負担をかけたくないというのもあるが、聞き込みをした本人たちから聞く情報の方が得られる情報量が多いんだからな」

 

「そういうものか。ま、そういうのはノエルたちの仕事なわけだし、ワタシたちは何も口出ししないさ。今の質問は単なる好奇心だ」

 

「あ、来ましたよ。ジュン君〜! こっちこっち!」

 

「あー、いたいた! ノエル先生〜!」

 

 

 ジュンは元気そうに手を振りながら、ノエルたちの元へ駆け寄ってきた。

 以前、ジュンの後ろにいた生徒たちの姿はなく、ジュンは手に何かを持って1人で走ってきたのだった。

 

 

「はい、これ。全員の目撃情報をまとめた資料。ライジュ先生がまとめてくれたんだぜ」

 

「おお、助かるよ。ライジュにも礼を言っておいてくれ。それで……他の生徒たちは?」

 

「あぁ、今は魔法の実践授業の最中だから魔法訓練室にいるよ」

 

「どうしてお前は参加していない? 同じクラスじゃなかったのか?」

 

「先生から『お前は今日の単元をマスターしてるから、大魔女様の呼び出しに応じてこい』って言われたんだよ。だから今は自由時間ってわけ。で、前来た時いなかったのが3人くらいいるみたいだけど……」

 

「そうだった。こいつらもアタシたちと同じ大魔女さ。さ、どっちも自己紹介をしておきな」

 

 

 ルフール、ルカ、エストはジュンに自己紹介をし、ジュンもそれに返す。

 

 

「ノエル先生の師匠と、アカデミーの首席卒業生と、運命魔法を使える魔女か〜! やっぱり大魔女って凄い人ばっかりだ!」

 

「アチキだけ魔法の種類で判断されるんスねぇ……。これでもプリングの結界貼ったり色々してるんスけど……」

 

「プリングの結界の凄さをまだ知らないだけさ。気にするんじゃないよ」

 

 

 そう言って、ノエルはエストを慰める。

 そして、ノエルはジュンに向き直って尋ねた。

 

 

「早速だが、何か新しい情報はあるかい? この資料に書いている内容でも、身の回りで起きた小さな変化でも、何でも構わない」

 

「昨日、学長に報告した分以降だよな? それ以降となると……。あ、そうだ」

 

「お、何かあったのか?」

 

「今日、オレのクラスに転入生が来たんだよ。オレくらいの身長の女の子」

 

 

 7人がジュンを見下ろすと、それなりに小柄であることがわかる。

 サフィアは呆れながら言った。

 

 

「確かにノエル様は何でも構わないって言ったけど……逆にそれくらいの情報しかなかったの? 目撃情報の続報とかは?」

 

「あったら真っ先に学長に報告してるっての。少なくとも、オレの身の回りに変化があったから言っただけだ。役に立つ情報がなくて悪かったな」

 

「ごめん、言い方が悪かったわ。ジュン君が悪いとは言ってないから。ちゃんと情報を集めた上で報告してくれてるんだし、文句なんて言えないもの」

 

「なるほど……転入生か。どんな子だった? 性格とか見た目とか、使える魔法とか」

 

「え、えぇ……? うーん……あんまり喋ったりしなさそうな大人しめの子で、顔は……あんまり覚えてないな。魔法は何が使えるんだろ?」

 

「情報不足っスねぇ……。ってか、ノエル。明日には連中来ちゃうんスし、もう時間ないっスよ? こんなどうでもいい内容を聞くより、実地調査をした方がいいんじゃないっスか?」

 

 

 ノエルはエストに向き直り、こう言った。

 

 

「昨日のクロネさんの言葉を覚えてないのか? 『もっと聞き込みをしてもっと情報を集めてもっと正確な予測を立てたい』って、そう言ってただろう。じゃあ、こんな小さな変化でも放っておけないじゃないか」

 

「そ、そうだったっス……」

 

「じゃあ、決定だな。ジュン、転入生の他に何か変化はあるか? 今のうちに聞いておきたい」

 

「んー……。今のところは転入生くらいかな」

 

「分かった。それじゃあ、どうしようか。できればアタシたちの存在がバレないようにその子について調べたいが……」

 

「そうですわね……。とりあえず、魔法の属性だけでも確認しましょうか。どうやら、確認するにはちょうどいい時間のようですし──」

 

 

***

 

 

 ノエルたちはジュンに連れられて、アカデミー内にある魔法訓練室の外壁近くに来た。

 部屋の窓を覗くと、中の様子がよく見える。

 

 

「なるほど、実践授業中なら魔法を使っているところが見れるっスもんね」

 

「あ、いた。壁際にいるあの子だ」

 

 

 ジュンが指を差した方向には、1人で魔法を操る少女の姿があった。

 それは確かにジュンと同じくらい小柄で、短髪の少女だった。

 

 

「使っている魔法は……水魔法かしら? サフィアちゃん、合ってる?」

 

「見たことない魔法だから魔力感知して見てるけど、確かにあれは水魔法ね……。でも、あたしでも信じられないくらい魔力を込められた水を生み出してるわ……。とても透明で綺麗……」

 

「お前たちのおばあさまの水よりも、か?」

 

「いえ、流石にそこまでではありませんが……。でも、少なくともあたしはあんなことできません。あの子、かなりの実力かと」

 

「サフィアが認めるくらいの実力、か……。であれば、熟練度を鑑みて、水魔法だけを扱えると考えて問題ないってことだ」

 

「ノエル、それは甘く見過ぎじゃないか? ワタシたちのように強い魔女がいないとも限らないんだぞ? 別の属性の魔法も使える可能性だってある」

 

 

 ルフールはそう言って、集中して魔力を感じ取る。

 

 

「まぁ、今のところは水魔法の魔力しか感じ取れないが……。とにかく、決めつけはしないことだ」

 

「分かったよ。で、ジュン。あの子の名前は? そういや聞いてなかった」

 

「えーと……ジェニー、だったっけ。数日前にヴァスカルに引っ越してきて、年齢的にオレのクラスに入ることになったって」

 

「ボクの記憶が正しければ、アカデミーの編入試験はかなりの難関だったはずです。クロネさんの確認も入りますし、数日でそれを突破した実力は本物だと言えるでしょうね」

 

「うーん……」

 

 

 ノエルは首を傾げて唸っている。

 

 

「ノエル様、どうかしましたか?」

 

「いや……普通に怪しくないか?」

 

「と、言いますと……。まさかジェニーちゃんが、ですの?」

 

「そりゃそうさ。こんなタイミングで転入してきて、魔法の実力もあるときた。連中と関わりがないとは言い切れない」

 

「あんな女の子が災司(ファリス)だなんて、そんなことがあり得るのでしょうか? ノエルさんの言うこととはいえ、流石のボクでも信じられませんが……」

 

「いや、あり得るっス……」

 

 

 エストはそう言って、ルカの方へ振り向く。

 

 

「アチキになりすましたっていう模倣する土塊(ミミック・クラッド)とかいう魔法。あれなら子供の姿にもなれるはずっス。元の身長が小柄なら、あれくらいの子供に化けるのも可能なはずっスよ」

 

「ワタシも一瞬そう思ったよ。だが、あの子は水魔法の魔力しか帯びていない。そこをどう説明するんだ? 土塊を被ってる状態なのだとしたら、土の魔力を帯びていないとおかしいだろう」

 

「それは……そうっスね……」

 

「あのー。よく分からない話してるけど、オレは聞いてていいのか?」

 

「あ、すまない。お前を置いて話を進めてしまったな」

 

 

 そう言って、ノエルはジュンの頭に手を当てる。

 すると、ジュンはルフールにこんなことを言った。

 

 

「ちょっと聞いてて気になったんだけど、魔力が感じ取れないってことは魔力を隠してるんじゃないのか?」

 

「うん……? そりゃあ、魔力を隠せたら感じ取れないだろうけど……。でも魔法を全身に被ってる奴の魔力なんて、どうやって隠せるんだい?」

 

「例えば……別の魔法でさらに周りを覆ってるとか?」

 

「水の魔力を感じるってことは、全身を水で覆ってるってことになるっスけど……。どう見てもそんな感じはしないっスね?」

 

「うーん……。じゃあ、見えない魔法で覆ってたり……って、そんなことあり得ないよな。すまない、オレの言ったことは忘れてくれ」

 

「見えない魔法……見えない……水魔法……。あっ…………あぁっ!」

 

 

 サフィアはあまり響かないよう声を抑えつつ声を上げた。

 

 

「何か気づいたか?」

 

「はい。あの子が使っている透明な水の魔法……あれなら全身を覆わなくても、自分の周りを水の魔力で誤魔化せるんじゃありませんか?」

 

「なるほど……あり得るな。じゃあ、もしジェニーって子の周りから水の魔力の残滓が全く消えなかったら、あいつはアタシたちが探している災司(ファリス)ってことになる……!」

 

「となると……。そうですわ、ジュン君は魔力感知使えるようになりました?」

 

「ま、まあ多少は……。でも、まだまだだよ。かなり近くにいないと感知できないからな」

 

 

 それを聞いたマリンは腰に手を当て、ジュンを指差してこう言った。

 

 

「でしたら、大魔女からジュン君に仕事を与えます。今日の放課後まで、ジェニーちゃんと一緒に過ごし、水の魔力の残滓が消えるかどうか確認しなさい。もし水の魔力の残滓消えたら、土の魔力を感じたかどうかもお願いしますわ」

 

「えっ……。えぇ……気が進まないんだけど……」

 

「おや、もしかして……。お前、女の子が苦手なのかい? いや、それとも魔女が苦手なのか……?」

 

「そんなわけじゃないけど……。喋ったこともない子に話しかけるなんて、緊張するじゃん……」

 

「あぁ、そういうお年頃ってやつかい。そういえばイースにもこういう時期あったな……。まあでも、サフィアとは初対面でもちゃんと話せてたわけだし、気にしないでいいと思うぞ」

 

「そうかな……。じゃ、じゃあ……頑張ってみる……!」

 

 

 こうしてノエルたちはジュンに仕事を任せて、ジュンと夕方に合流する約束を取り付け、災司(ファリス)の目撃情報があった実地調査に行くことにしたのだった。

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