※こちらはコナン原作の最初の方しか知らない作者がネットを頼りに捏造しまくって書いたものです。降谷零の幼少期、家族を捏造しています。
ご注意ください。
転生オリ主=夏目慶太(なつめけいた)
―――ガッシャァァンッ!
何か大きなものが引き倒れる音と共に目の前には土煙が立ち込め何も見えない。
目を開けていると砂が入るため、目を凝らすようにしてそれを阻止する。
ようやっと晴れた視界に飛び込んできたのは最近仲良くなったばかりの少年が真っ青になって立ち尽くす姿だった。
空色の瞳は潤んで今にも零れそうになっているし、褐色の肌が今だけは血の気が引いてやや白い。
「れいくん、だいじょうぶ?」
「……、」
言葉が出ず、腕を小さく胸の前に縮めコクコクと何度も頷く姿は見ていて可哀想になってくる。
「よかった」
彼を安心させるよう意識しながらにっこりと笑いつつ、こちらも内心は大騒ぎであった。
――良かった!今度こそ死ぬかと思った……!!!
夏目慶太、転生した先で世界に殺されかけています。
転生前、俺はただのしがない介護職員だった。
別に目指していたわけではないけれど、やりたいことも見つけられず就活するもご縁がありませんでしたと断られ続け、切羽詰まった先にあったのは人手がなく、更に切羽詰まった会社でした。
見学だけと言ったはずがあれよあれよという間に契約まで持ってこられ、NOと言えない日本人代表の俺はそのままそこに就職。
辞めることも出来ないままうだうだと過ごし気がついたら三十間近だった。
そうなってくると今度はある程度指示する側にも回るようになり、上の相談に乗りつつ下の者も面倒みなければいけない。
要するに身動きが取れずそのままあっという間に四十を過ぎてしまったのだ。
そしてそこまで来てしまえばぬるま湯に浸かるのにすっかり慣れてくる。今更転職なんて大掛かりなことをする勇気も気力もなくなってくるのだ。
そうしてだらだら過ごしているうちにある日車に轢かれた俺はぽっくり逝ってしまった。
そして次に俺の意識が戻ってきたのは3歳の時だった。
子供は熱発しやすいというが、この時もただ単にちょっとはしゃぎ過ぎたとかそんな理由だったと思う。
突然の高熱にうなされながら、唐突に過去の記憶が濁流の様に押し寄せてきたのだ。前世の名前は分からない、家族の顔も分からない。だが、2つ上の姉がいたとか、好物はたくあんだったとか、どんな風に生きてきて、どんな人達と関わって来たのか。
どうでもいいようなことから重要なことまでない交ぜになったそれらは俺に混乱を与えた。そして二度と戻ることの出来ない悲しみと恐怖から三日三晩寝込んだまま泣き続けたのだ。
そしてそのあと俺こと夏目少年は数ヶ月無の境地で過ごす事になる。
その時の夏目夫婦は息子を心配しかなり動揺していた…ような気がする。気がするという曖昧な表現なのは如何せん自分のことで手一杯だったので何一つ覚えていなかったせいである。
しかしその期間は心のバランスをとる重要な期間だったのだと今なら断言出来る。
少しずつ、前世の自分と今の自分が混ざりあって、反発して、折り合いをつけて……ようやく今の夏目慶太が生まれたわけである。
1度受け入れると心がそれまでよりも楽になり、少しずつ本来の夏目少年の子供らしさが溶け込んでくる様になった。
いやだって想像してみて欲しい。
その頃夏目少年はようやく幼稚園の仲間入りを果たしたところだった。
ということはだ、四十過ぎのおっさんがまた幼稚園児たちと共にお歌を歌ったり外を駆け回ったり、娘程の若い先生にお世話してもらったりしなくてはいけないわけである。
どう考えても無理だ。絶対無理。
そう思っていても本来の夏目少年はまだ3歳。
お友達と遊びたいし、親にだって甘えたい。
それを許せたのは恐らくそうした前世が関係しない本来の夏目慶太の部分が大きく関係しているからだろう。
というか、そうであって欲しい。
子供は大人よりも心の振り幅が激しいのでいちいちそれに引っ張られてしまう。ちょっとの事で泣いたり騒いだり…自分の感情に振り回され前世の俺は潰されてしまう。
そうならなかったのはきっと少しずつ溶け込んだあの三日間のせいだと思っている。
実際、そのおかげで幼稚園でもちょっと他の子よりおっとりした大人しい少年という皮をかぶって何とかやってきたのだ。
さて、そんなわけで俺こと夏目少年はどうにかこうにか振り幅の多いこの身体と可愛い幼稚園児を見守る周囲とやってきた。
それまでは割と平和だったのだが、ある日からそれが一変する。
最初は忘れもしない台所でのことだ。
喉が渇いた俺は飲み物を探していたのだが、生憎母親は一緒に寝入ってしまっていた。
起こすのも悪いだろうと思い、冷蔵庫から何か飲み物を取れないかと苦戦していた時だった。
何がどうなったのか分からないが、たまたままな板の上に置いてあった包丁がたまたま俺の頭上まで滑り落ち、そのまま足元に突き刺さるというある意味子供あるあるなお約束事件が起きたのだ。
いや、それだけならばよくあると言ってはなんだが、親が心配する子供のやらかしあるあるだったと思う。
しかしその日を皮切りに、散歩に行けば車に引かれそうになり、庭を歩けば植木が落ちてきたり、携帯を触って発火ということもあった。
そう、夏目少年は何がどうなったのかいや、十中八九前世を思い出した影響だろうがどういうわけか不運…いや悪運を手に入れてしまったのだ。
そこから2年、生きていたのが幸運としか思えない数々の仰天事件を乗り越え夏目少年は5歳を迎えた。
いやぁ長かった……。
誘拐事件に巻き込まれたり、水撒きしていたホースが外れて勢いよく路面に流されたり、その先で川に落ちかけたり実際川に落ちたりなどなど。
もはや呪いと言って差し支えないだろう。
しかし良いこともある。
あまりにも普段から身の危険に晒されるせいで些細なことでは動じなくなったことだ。
ただし表面上は、の話だが。
これにも深いわけがある。
ごく普通のわが子を愛している夏目夫婦が毎度息子の危機に遭遇するのだ。
しかも夏目少年は一人っ子である。たった一人のわが子がこんなにも危機に瀕するなど、普通だったら発狂ものだろう。
流石に精神年齢的にはまだまだ自分より若いこの夫婦を思い、なるべく表情に出さないよう務めた結果、物干し竿が降ってこようが、目の前でガラスが割れようが動じない夏目少年が誕生したわけである。
まぁそれも見た目はニコニコしていられるというだけで内心は大荒れなのだが。
そんなこんなで何とかやっていた夏目少年にも変化が訪れる。
何と、隣に俺と同い年の息子がいるお宅が引っ越してきたのだ。
ちなみに隣の中田さんは庭仕事中に枝切り鋏を落とし、たまたま帰ってきた俺の首に突き刺さりそうになった事件の後いつの間にか引っ越していた。
いや、そりゃ自分のせいでいたいけな少年が死にそうになったら青くもなるだろう。しかもそれが月2回ほど定期的に訪れるのだ。
なんかごめんね、中田さん――!!
中田さん無き後、やってきたのはとてもとても見目麗しいご夫婦だった。
そしてそんな美しい両親から生まれた息子もまた愛らしい見目の少年だったわけである。
柔らかい金髪に澄んだ青い瞳、そしてそれとは相反するエキゾチックな褐色肌。
「れい、ご挨拶なさい」
「……ふるや れいです。はじめまして」
ツンとした雰囲気でそっぽを向くのもまたギャップがあって可愛らしい。というか見目がよければ多少ふてぶてしい様子でも許せてしまう。
これは大人になったらかなりイケメンに育つなぁなんて呑気に思っていたが、それどころではなかった。
――――ふるや れい?
どこかで聞いたことあるなと思いつつ、思い出せない。
思い出せなくてもやもやしながらも、同じく少年に挨拶する。
「はじめまして、なつめけいたです。れいくん、なかよくしてね」
そしてにっこり握手を求める。この年の子供にしては完璧だろう。
少年はというと、こちらを警戒するようにつり上がった青い瞳でこちらを見つめていた。
笑顔のまま、首を傾げる動作をすると渋々といった様子で握手し返してくれる。
あ、この子見た目の割に結構力強いなぁ。
可憐な美少年といった容姿だが、意外にも力強い握手だ。
まぁ単に気に入らないからというのもありそうだが。
うちの子少しやんちゃでと言いつつ、夫人の方が自分の方にかがみ込む。
「けいた君、れいと仲良くしてね」
「うん!れいくん、またきてね」
俺の言葉にやや驚いたあと、ぷいとそっぽを向くれい少年を連れて、隣ご夫婦は頭を下げつつ帰って行った。
どうやられい少年はやや反抗期気味の様だ。
そうしてお隣に越してきたふるや一家(漢字が未だ分からない)だったが、幼稚園も案の定れい少年と夏目少年は一緒であった。
そしてそこでれい少年の反抗期の理由も判明した。
どうやられい少年はあの日本人離れした容姿のせいで子供達と喧嘩になっていたらしい。
喧嘩と言っても、他の子達がれい少年を一方的に仲間外れにし、酷い時はいじめ紛いの事までしていた。
人間、特に日本人というのは自分達と違う者を弾きたがる。
それは子供だろうと高齢者だろうと変わりない。
むしろ高齢になればなるほどそういったいじめ紛いのことはよく起こる。前世の職場でも高齢者同士の虐めは頻繁にあった。
まぁ、それを起こさないように配慮するのが俺達の仕事だったわけだが。
しかし5歳の子供が越してきて早々この歓迎を受けるのは惨いだろうと、夏目少年こと俺は本腰を入れてそれに噛み付くことにした。
何か言われればぐっと我慢するれい少年の横で時には言い返し、喧嘩で相手が手をあげれば仲裁に入った。
仲裁と言っても、一体一なら放っておいて様子を見てたので全部に割り込んでいったわけではない。
それでも根気よく子供達に人と違うことはおかしな事じゃないと言い続けた。
最初はそれを毛嫌いしていた様子のれい少年だったが、何度騒動が起きても変わらない俺の態度に警戒を解いてくれたのか、少しずつ歩み寄ってくれるようになった。
にこにこしている夏目少年の態度のせいもあるだろう。
声を掛けても怒らなくなり、自由時間にもいつの間にか隣で本を読んでいたりと、少しずつ変化が生まれた。
れい少年の傷はこれからも色々な人の前に晒されるだろうし、これしきのことで消える物でもないだろうが、少しでも味方がいると感じてもらえればいいなと思う。
ここまでならば、イイハナシダナーで終わるのだが夏目少年の悪運
がそうは許さない。
そしてたまたま少年達が遊んでいた公園の前で接触事故が起き、吹っ飛ばされたバイクが2人の間、むしろ夏目少年目掛けてスライディングしてきてそれを目撃したれい少年が真っ青になる冒頭へと戻るわけだ。
今にも泣きだしそうな、けれど強ばりすぎて泣けない表情の彼を見て俺は唐突に思い出した。
ふるやれい、ふるやれい、ふるや、れい
――――降谷、零
公安警察のエリートであり、ファンのお姉様方が百億の男にしようと応援していた青年――降谷零
ぴたりとハマった容姿の一致にここが何処なのか理解した。
――あ、ダメだ今度こそ死ぬかもしれん。
一部で歩く死神と呼ばれる某主人公に出会ったらこの悪運体質でも避けきれる気がしない。
というかそれまで生きていられる気がしない。
「すなばはやめてブランコにのろうか!」
「……うん」
この後ブランコの鎖が切れて吹っ飛ばされたり、帰り道でたまたま割れ掛けていた側溝の蓋が一部欠けて落下する俺を見て降谷少年がギャン泣きすることになるなど夏目少年はまだ知らない。
そしてあまりにもトラブル体質な夏目少年を目の当たりにした降谷少年が
「あ、ダメだこのこボクがどうにかしないとしぬ」
と齢5歳にして仲良しのお隣さんの死を覚悟することになることも二人はまだ知らない。
――誰か助けてくれ!
――今度こそ、死ぬかもしれんんん……!!!
是非とも1度書いてみたかったものの、途中で挫折して切り上げてしまいました。
読んでいただきありがとうございました!