少女隠線【完結】   作:畑渚

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探索

 「おい9、どうかしたか?」

 

 「……えっ?いや、何でもないよ」

 

 少しぼーっとしている9を見てジョンは不思議な顔をする。バグを疑ったが、どうもそういう様子ではない。まるで処理落ちしているかのようだという印象を抱いた。

 

 「おい!足元よく見ろ!」

 

 「えっ……きゃあ!」

 

 9は木の根が地面から飛び出ているところにつまずいてしまった。思いっきりこけてしまった9にジョンは手を差し伸べる。

 

 「ありがと、指揮官」

 

 「どういたしまして。それにしてもどうしたんだ今日は」

 

 9は答えずに気まずそうに目をそらすだけだ。

 

 「はあ、何かあるなら言ってくれ」

 

 「な、何でもないよ~」

 

 9に答える気がないことを理解したジョンはそれ以上尋ねることを止めた。

 

 

 =*=*=*=*=

 

 

 二人が町に着いたのは陽がちょうど真上に来た頃だった。とりあえず町の入り口に近い店に入ってみることにする。

 

 「こんにちはー」

 

 ジョンの声に返答はこない。ゆっくりと店の中を進んでいく。どうやらそこは雑貨屋のようで、いろいろな物がてきとうに配置されている。

 

 「指揮官、これみて~」

 

 ジョンが振り返ると、そこには正規軍のヘルメットを模したお面を被った9がいた。

 

 「何してんだよまったく。もっと緊張感をだな」

 

 「え~。だって昨日来たときも何の気配もしなかったもん」

 

 「ほんとうか~?」

 

 ジョンは店の中を歩き回りながらふと何かを見つける。9には見つからないようにそれをポケットに入れた。

 

 「何もないね、他のところも見てみる?」

 

 「そうだな、行こうか」

 

 そういってジョンと9は店を出ていく。ジョンは出ていく間際に、入り口のそばのレジにお金を少し置いていった。

 

 

 次に二人が入ったのはスーパーマーケットだった。昨日9が来たところだ。9は昨日と何も変わっていない様子を見て、やはりここには誰も来ていないということを確信した。

 

 「おいおいおい、やったぞ賞味期限前だ!」

 

 ジョンは思わず大きな声を出してしまう。食品類はほとんどがだめになっていたが、長持ちする缶詰などはまだ賞味期限がきていないものが並んでいた。二人はバッグに詰め込めるだけ詰め込む。

 

 「こら指揮官!お肉の缶詰ばっかりじゃない!」

 

 「おまえ……オカンか」

 

 「ち、違う!」

 

 「とかいって実はまんざらでもないんだろ?」

 

 「それは……」

 

 空想の世界に入った9をそのままにしてジョンは店内を進む。従業員専用の入り口へ向かい、その扉を躊躇なく開いた。目当ての物はすぐに見つかった。それは商品リストだ。ジョンはそこに書かれている日付を確認する。

 

 「やっぱり……最近捨てられた町か。でもどうしてだ?戦闘の痕跡すら見当たらない」

 

 「ちょっと指揮官待ってよ!……それは?」

 

 「商品のリストだ。これでいつ発注してここに届けられたかまでわかる。そしてここに記載された最後の日付は……数週間前だ」

 

 数週間前とは比較的最近だといってよかった。なにせこの世界は今、勢力が膠着している。ここ数週間で勢力圏の大きな変動も無かったはずだと二人は記憶していた。

 

 「じゃあどうしてこの街はすてられたの?」

 

 「わからん……もう少し他の建物にも行ってみるか」

 

 9はその言葉に頷き、外へと向かうジョンのあとに続いた。

 

 

 =*=*=*=*=

 

 

 店の中は綺麗なままだったが、民家はそうもいかなかった。何軒か回ってみたがやはり人の気配はない。仕方がないと施錠されていなかった家の一つにはいってみると、生活に不必要なものだけが残されて置いてある状態だった。

 

 「まるで夜逃げのあとだな……」

 

 「でもここに人が住んでいたってことは間違いないよね」

 

 「ああ、それに何かしら急な事情でこの町を出ていかなければいけなくなったということもな」

 

 9は家を探索していると、一枚の写真を見つける。そこには父親と母親、それに双子に見える姉妹が写っていた。

 

 「ねえ指揮官」

 

 いろいろな棚を開いては閉じてを繰り返すジョンに9は話しかける。

 

 「45姉のことをどう思ってるの?」

 

 「45か、あいつは……よくわからないやつだ」

 

 「よくわからない、か。それじゃあ45姉を殺そうと思う?」

 

 「殺す?えらくまた物騒な話だな。そんなわけないだろう」

 

 ジョンは当たり前であるかのようにそう作業の片手間に言った。

 

 「どうして?45姉は指揮官を殺そうとしたんだよ?」

 

 「ああそうだな。しかし殺さなかった。45がいったい何を考えているのかは知らんが、一度命を見逃されたという恩は感じてしまうのさ」

 

 「それじゃあ、私が45姉を殺したらどう思う?」

 

 ジョンは軽く笑って手を止め、9の方に向き直る。

 

 「どうしておまえが殺す必要があるんだ?なにか大事なものでも奪われたか?」

 

 「それは……違うけど、でも45姉は私の指揮官を殺そうとしたんだよ?配下の人形としては当たり前の行為だと思うけど」

 

 「おまえはどう思うんだ。45を殺したいと、そう思っているのか」

 

 「う、うん」

 

 「本当か?じゃあ聞くが、404小隊のメンバーはおまえにとっては家族じゃないのか?」

 

 「そ、そうだったけど」

 

 「おまえが404小隊を抜けた理由は家族を守るため、そうじゃないか?」

 

 「うん……」

 

 「じゃあ聞こう。おまえは家族を傷つけないように始めたこの生活を、家族を殺すことで終わらせたいのか?」

 

 「……ちがう」

 

 「じゃあもう45を殺したいなんて考える必要はないだろ?」

 

 「でも……でも!」

 

 「家族は大切にするもんだ。自分で殺すなんて絶対にあっちゃいけねえ」

 

 ジョンは9の持つ写真をそっと元の位置に戻した。

 

 「落ち着け。今は感情抑制がうまくできてないだけさ。じきに直してやるからさ」

 

 「でも……45姉からメール届いたでしょ?」

 

 「ああ、あれか。気にすんな。しょうもない話だぞ」

 

 「気にするよ!あれは何だったの!?」

 

 「あの文を45から入れられたプログラムに読み込ませるとロックが解除されるのさ。つまりは端末が復旧できるってことだ」

 

 ジョンは9の頭に手をのせて笑顔を浮かべてみせた。

 




嵐の前の静けさ……
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