「やっと見つけたぞ……」
暗闇から声が聞こえる。声の主は配下の人形たちに指示を出していく。眼下にはもう誰もいない町が広がっていた。
「必ずここで殺してやる……くくっ楽しみだ」
声の主はガトリングをなでる。その手はまるで愛らしいものを愛でるかのようだった。
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「じいちゃん。俺、卒業したらじいちゃんとこで働きたい」
青年と読んでも差し支えないくらいに成長した男の子は、決意のまなざしで祖父を見た。
「ダメだ。うちは新卒はとらんと決めておる」
老人は孫を見もせずにそう言った。
「じゃあ他のところに就職してからにするよ!」
「そこまでしてうちの工場に来たいのか?」
「ああ!だって昔からの夢だからな」
「そうか……そんなに人形をつくりたいか」
「俺が作りたいのは人形じゃない、ヒトだ。じいちゃんもそうだろ?」
男の子は首から下げた金属プレートを取り出す。勉強を怠らなかった彼は、それに書かれた文字列が彼の祖父が組んだプログラムに関するコマンドの一つだと理解していた。
「そう……だったな。よし、知り合いのところを紹介してやろう。大手の下請け企業だがノウハウを知るにはちょうどいいだろう」
「本当か!ありがとう!」
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目が覚めたジョンは長い夢を見ていた気がした。首のチェーンを手繰り寄せれば、ドッグタグの他に一枚の金属プレートが光を反射する。
「おはよう、指揮官」
いつもどおり腕の中にいる9はなんとも言えない顔をしていた。
「おはよう。変な表情してるぞ、どうかしたか?」
「わからない。でもなんか嫌な予感がするの」
「いつのまに虫の知らせシステムが人形に搭載されたんだか」
「危険を事前に察知できるなら良い機能かもね」
9はそういいながらベッドから出る。ジョンも起き上がって身体をほぐしはじめた。
「このままここに住みたいくらいだ」
「私はこんな不気味なところ嫌だよ。でもベッドがあったのは嬉しかったね」
久しぶりのベッドは疲労回復に役立ってくれた。いつもよりも身体が軽く感じていた。
ジョンはバッグから端末を取り出す。そして45からのメールをプログラムに読み込ませた。進行度合いを示すダイアログボックス内のバーが右端までいき、端末が自動で再起動した。
「いけそうだ。9、端子をつないでくれ」
「……45姉を信じるの?」
「まだ言うか。それよりも急がなきゃいけない理由があるだろ」
ジョンは9の銃へと目を向けた。ゆがんだストックに気づいていたのだ。
「これはその……」
「敵を味方と識別してしまったらトリガーにロックがかかるんじゃないのか?」
「さ、さすが指揮官。よく知ってるね」
「はあ、とりあえずそこを優先的に直さないとな」
「……わかった」
9は首のパネルを開けて端子をつないだ。
「あっ……45姉……」
その言葉を最後に、9はベッドへと倒れ込んだ。
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「ここは……どこ?」
そこは建物の屋上だった。9はフェンスに近寄るも、その先は作られていないかのようになにもない空間が広がっているのみだ。
ガチャリ
屋上の扉が開く音がした。扉を開けて屋上へと来た人物は、45であった。
「45姉!いったいここはどこ!?」
9の顔にはいらだちが浮かんでいるが、45はそれに反応しない。
「9、これを聞いているということはきっと私を信用してくれたということよね。これはメールに添付したファイルで、人形に決まった夢を見させるというものよ」
45は9の方を向いてはいるが、その瞳に9の姿は映り込んではいない。45の形をしたものは一方的に話を続ける。9は為す術もなく、その話を聞くことしかできなかった。
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ジョンは起動コマンドをたたき込んで一息つく。敵味方識別システムのバグは取り除けたはずだった。ペットボトルにわずかに残る水を一気に飲み込んで、ため息をつく。そして9の方を見ると、ゆっくり起き上がっているところだった。
「おはよう、なにか異常はあるか?」
「ううん、ないけど……」
「けど?」
「夢を見たの」
9の言葉にジョンは訝しげな顔をする。人形が夢を見るなんてことはないはずだ。だからある意味、それは異常事態であるといえた。
「どういう夢だ?」
「45姉が出てきた。メールに添付したって言ってたけど」
ジョンは端末を操作してメールを見る。確かに謎のファイルが隠れて添付されていた。
「それで、45はなにを話したんだ?」
9は夢の一部始終を語る。大まかに言えば、45はいまの9の状況を理解しており、404小隊メンバーには隠すこと、そして直ったら再び小隊へと戻ってきてほしいとのことだった。
「良かったじゃないか。理解してもらえて」
「うん、でも私……45姉にひどいことをしちゃった。ダミー相手にとは言えあんなこと」
「大丈夫さ、謝ればゆるしてくれるだろ。それより早く直す理由が増えたな」
ジョンが9の頭をなでる。9はそれを受け入れてジョンを見上げる。
ジョンの後ろの窓の外から、何かの丸い反射光が見えた。