「指揮官!」
9はジョンの手を引いた。突然の行動にジョンは前に倒れ込む。
銃弾が窓ガラスを突き破って真っすぐ飛んできていることを9は見ていた。そしてそのまま弾丸は9の目に吸い込まれていく。
「9!大丈夫か!?」
「大丈夫!視界が狭くなっただけ!」
そういいながらも9は右目を抑える。粉々に粉砕された視覚モジュールとともに液が漏れ出していた。
弾丸は二人の頭上を埋め尽くし、立ち上がることすら不可能である。
「指揮官!逃げよう!」
「逃げるってどこへ!?」
9は少し考える。
「この家ってシェルターとかないかな?」
「シェルターか、よし探してみよう!」
ジョンと9は姿勢を低くしながら家の中を探してみる。しかし、シェルターどころか地下室すら見当たらない。
「指揮官!鉄血兵たちが近づいてきてる!」
「待て……一つ試してみたいことがあるんだ」
ジョンは車の置いてあったガレージの扉を指さした。そして9に小声でその内容を話す。
「指揮官、本当にやるの?」
「ああ、この包囲網を抜けなきゃ蜂の巣にされるからな」
ジョンはキーを回して、エンジンをかけた。
=*=*=*=*=
イントゥルーダーは銃撃音にまぎれて聞こえたエンジン音に気がつく。聴覚センサーを調整してみると、それは二人が潜んでいる家から聞こえるようだった。
配下の人形たちに銃撃を止めるように指示する。ピタリと止まった銃声に反して、エンジン音は鳴り止むことはない。
間もなくしてガレージのシャッターが吹き飛ぶ。配下の人形たちが一斉にそちらに銃を向けた。
飛び出してきたのはただの乗用車だ。
「待て!撃つな!」
イントゥルーダーの声で鉄血兵たちの指はトリガーから離れた。
車の座席に人影はない。ハンドル操作もされず真っすぐ道を進んでいくだけだ。
「まだ二人は家の中よ!撃て!」
鉄血兵は何も迷うことなく命令に従う。もはや蜂の巣となった家に対して、念入りに弾を撃ち込んでいく。
イントゥルーダーが車の方を見たのは偶然だった。
車は曲がり角で曲がった。タイヤが曲がったように車体が回転していく。それは正常な動作である。ただし、それは人が乗っていた場合である。
イントゥルーダーはガトリングの引き金を引く。射線上に鉄血兵がいるが気にしない。味方を撃てないなんてシステムは元から搭載されていない。
車体に銃弾が突き刺さるが、すぐに曲がり角を曲がってしまう。イントゥルーダーは急いで軍事衛星をハッキングし映像を見る。車はコンクリート製の建物の近くへと止まり、中から二人が建物へと走る姿が見える。
「グズグズしないで!早く二人を殺しなさい!」
鉄血兵たちは無言のまま、建物を目指して行軍し始めた。
=*=*=*=*=
「うまくいったな!」
「喜んでる場合じゃないよ指揮官!鉄血の連中がすぐにきちゃうよ!」
「まあ落ち着け。ここにはいっぱい武器があるんだよ」
ジョンの言葉に9は首をかしげる。個人宅であれば武器が隠されていても不思議ではない。しかしここは公共の施設のようである。
9の様子をみてジョンは笑う。
「武器といっても銃じゃないさ。この限られた空間ならこいつでも十分武器になる」
そういってジョンはパイプ椅子を手に持った。
「……本気?」
「もちろんだ」
9はやれやれと肩をすくめた。
「代案も思いつかないし……指揮官に従うよ。さあ私に命令して?」
某作品の影響により満腹になったので絶望控えめ