少女隠線【完結】   作:畑渚

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416

 416の視界にダイアログボックスが映り込む。そこには45との通信が切れたと書いてある。

 

 「ああもう!どうしてこんなことになっちゃったのよ!」

 

 416は壁に手を叩きつける。

 

 「しょうがないよ416、それより早く行かないと」

 

 「あんたは平気なの!?もう二人も抜けちゃったのよ!壊滅してるのよ!?」

 

 「うぅ、わかってるよぉ。でもここで足を止めてたら状況は悪化するだけだよぅ」

 

 大声をだす416に怯えながらもG11はそう答えた。

 

 「……ごめんなさい、取り乱したわ」

 

 416は深呼吸をする。それはただいつもよりも大きく呼吸しただけに過ぎない。しかし、416は思考がクリアになったように感じた。

 

 「こう取り乱してちゃ完璧の名が廃るわね」

 

 自分に言い聞かせるようにそう言った。416はバッグから緊急用の通信機を取り出す。それは、数日前に45から託された荷物の中に入っていたものだ。メモリに記録されているのは、404小隊専用のSOS回線だ。

 

 「まさかこうなる可能性を考えて……?」

 

 スイッチを入れると正常に作動した。オペレーターが一方的にヘリの到着地点と時間を伝えてくる。視界の端にそれらをメモしたものを表示しながら、再び移動し始める。

 

 「416、ヘリの場所が近すぎない?」

 

 「どういうこと?」

 

 「ここはいま、前線ではなくてもG&Kの勢力圏とは言えないでしょ?それにしてはずいぶんと深くまでヘリを送ってくれるなって」

 

 G11の指摘に416は目を見開く。射撃の腕は良く、銃の特性もあって制圧力も素晴らしい。それに加えてこの頭脳があれば、404小隊などという部隊ではなく一軍のエースになれる。

 

 「はぁ、そろそろ疲れた。416、おんぶして~」

 

 「ダミーにでも担がせなさい」

 

 すぐサボりたがる癖さえなければ、彼女こそ完璧にもっとも近いと言えるかもしれないのにと416は考えた。

 

 

 =*=*=*=*=

 

 

 ヘリは時間通りに指定された地点に到着した。乗り込んで座席に身体を預けると、いままでかかっていた負荷が疲労感という形で416に襲いかかる。416は目を閉じて負荷を減らす。G11は座席に寝転がるなりすぐに寝息を立てていた。

 

 「そういえばあなた」

 

 416はパイロットに話しかける。

 

 「どうして一人なの?G&Kはいつの間に操縦士一人体制になったのかしら?」

 

 パイロットは最近失った二人の操縦士の話をしてくれた。元から人員がそこまで多くないG&Kは応急的に一人体制に移行したらしい。

 

 「人員不足ねぇ。人形には任せないのかしら」

 

 操縦士は答えない。何も言わなくなった操縦士に416は目を向ける。

 

 「ちょっと、どうしたの――ちょっと!」

 

 操縦席は赤く染まっていた。それは言うまでもなく、先程まで話していた操縦士の血だ。

 

 416は急いで操縦席に手を伸ばす。操縦桿は不安定に揺れており、それを力ずくで止める。

 

 しかし不安定な体勢で、しかもヘリの操縦について一切知識のないものがそんなことをしても、一度崩れた機体のバランスは戻らない。

 

 「G11!起きなさい!」

 

 「ふぇ?えっ?なに!どういう状況!?」

 

 「落ちるわ!掴まりなさい!」

 

 G11は座席につかまろうとするが、突然機体が傾いて外に投げ出されてしまう。

 

 「もう!行きなさい!」

 

 416のダミーの一体が飛び出ていったG11へと飛びつく。これでましにはなるだろう。

 

 機体の回転はさらにひどくなっていく。416は座席に捕まっていたが、あまりの力に手が離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「どうやら助かったみたいね……」

 

 服に着いた泥を落とすと、自分をかばってくれたダミーを見る。

 

 「ありがとう。さて、G11を探さないとね」

 

 ヘリの落下地点からは離れた場所に落ちたはずである。416は唯一動ける状態のダミー一体とともに、森の中へと足を踏み入れた。

 

 

 =*=*=*=*=

 

 

 歩いている途中、だんだんと左手と左足が動かなくなっていく。どうやら落下の衝撃でなにか問題が生じていたらしい。

 

 一人で歩く分には問題ないが、動きはとても遅くなってしまう。それに左手が使えないとなれば、射撃精度も下がってしまう。

 

 「先に行って偵察をお願い」

 

 ダミーもボロボロだが、自分の主を守るために身体にムチを打っていた。

 

 

 

 

 何かが歩く音がして416はその場に止まる。見回せば、木に隠れるようにして男が一人いた。音の発生源とは別な気がしたが、おそらく敵の仲間だろう。

 

 ダミーを回り込ませて男を後ろに向かせる。男は素晴らしい腕の持ち主のようで、一発でダミーのコアに当てた。ボロボロだった416のダミーは、そこで役目を終えたかのように倒れる。

 

 「少女……いや、戦術人形か!」

 

 男が勢いよく振り返るが、416は落ち着いて銃を構えた。この距離ならば外すことはない。

 

 「ええ、正解よ」

 

 416は銃の引き金に指をかけ、力を入れていく。

 

 

 

 

 「待って!その人を撃っちゃダメ!」

 

 416はその声に動揺した。もう二度と会えない人物だと思っていた。

 

 「9!?あなたいままでどこに!」

 

 「話はあと!とりあえず銃をおろしてよ」

 

 「まさかこの男にたぶらかされてるの!?正気じゃないならここで――」

 

 「落ち着いてよぉ。感動の再会なんだからさ」

 

 「G11、あなたまで?」

 

 「あぁもう信用度ゼロだよ、どうしよう9」

 

 「こうだよ」

 

 9は416に銃を向けた。これで416に向く銃口は二つである。

 

 「……降参よ」

 

 416は納得のいかない顔をしながら銃口を下げた。

 





詳細は活動報告内にしますが、とにかくやらかしました。穴があったら入りたいです。
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